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ヤミ金融根絶を目指す決議 〜九弁連定期大会にて〜

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石田光史

1 去る10月25日(金),熊本市内のホテル日航熊本において,第55回九州弁護士会連合会定期大会が開催されました。その大会の中で,当会の提案により「ヤミ金融根絶を目指す決議」がなされましたので,ご報告いたします。

2 決議の内容・提案理由等については,全会員に配布される大会議事録をご確認いただきたいと思いますが,決議内容を簡単に要約すると,1.弁護士会としてヤミ金対策を実施するとともに,警察や行政機関などとも連携を取りヤミ金根絶のための活動を行う,2.ヤミ金による超高利の違法な貸付に対しては「返済しない」という基本方針で臨む,ということです。

4 しかし今回,当会があえてこのような内容の決議を提案したのにはもちろん理由があります。

1つには,ヤミ金を根絶するためには,単に捜査機関や行政機関に取締を求めていくのみでは全く不十分で,弁護士が個々の事件処理の中でヤミ金に対して経済的打撃を与えていくことが絶対に必要であり,そのためには「返済しない」という方針を九弁連全体に周知する必要がある,ということです(関係機関との連携等と個々の事件の適切な処理は,ヤミ金根絶を目指す上で車の両輪と考えます)。\n

もう1つ,ヤミ金事件を扱っている会員(特に若手の会員)は,みなヤミ金に手を焼いています。そのような会員に,ヤミ金と対峙する上での武器・拠り所を提供したかった,ということがあります。九弁連で「ヤミ金には返済しない」という決議がなされたということになれば,ヤミ金から「何で返さんのか!」とすごまれても,「いやあ,九州の弁護士の集まりで,返済しないってことになってねぇ。私だけ返すわけにはいかんやろ?」と切り返せます(この点,佐賀県弁護士会の平山泰士郎先生が,賛成討論の中でユーモアたっぷりに指摘されました。)。不適切な対応をした警察に対しても,「九弁連では返さないという方針を確認した,なのに『借りた物は返せ』なんて指導するとは何事だ!」と文句が言えます。そして何より,「返さないという方針は,自分だけがやっていることではなく,九弁連決議という土台があるのだ。」と思えることは,ヤミ金との交渉の際に心理的・精神的な拠り所となるのではないかと思います。

本提案は,我々のこれらの意図を会場の各会員にご理解いただき,圧倒的賛成多数で決議されました。

5 我々は決議提案をするに際して,単に取組みを表明するだけの決議ではなく,実務に「使える」決議にしたいと考えました。もちろん決議自体に会員に対する拘束力はありませんが,ヤミ金根絶のため,「使える」本決議を十\二分にご活用いただき,「ヤミ金に対して返済しない」という方針でヤミ金事件の処理をしていただきたいと思います。

「女性の権利110番」実施報告

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山崎あづさ

10月26日(土)、12回目となる「全国一斉女性の権利(女性に対する暴力)110番」の電話相談が行われました。

これは、日弁連両性の平等に関する委員会の設置15周年を記念して1991年から始まったものであり、毎年4月の「女性週間」にちなんで実施してきました。「女性週間」というのは、1949年から2001年まで、日本の女性が初めて参政権を行使した1946年4月10日を記念して、毎年4月10日から16日までの1週間を、「女性週間」と定め、女性の地位向上の啓発活動を行ってきたものです。

今年は、DV法実施1周年を10月13日に迎えるのに伴い、「女性に対する暴力」を相談内容の中心に据えて、10月に実施されることになりました。

今回も、ドメスティック・バイオレンスをはじめストーカー、セクシュアル・ハラスメント等、女性が抱える問題についての相談に応じるため、6人の弁護士が午前、午後に分かれて担当しました。

この日の相談は17件でした。回線が2つしかなく、しかも一つの相談が内容上どうしても長くなってしまいがちなので、電話をかけたけれどもつながらなかった方もいたと思います。

相談内容としては、離婚にまつわる相談が7件、うちDV(心理的暴力を含む)が4件、ストーカーが2件、一般的な知識を尋ねるものが2件、その他(趣旨違い、趣旨不明)が6件でした。中には、直前に夫から暴\力を振るわれて家を飛び出したケース、夫から包丁を持って脅されたケースもあり、このような場合はDVについての相談や保護を行っている各種関係機関の連絡先を伝え、できるだけ次の機関につなげるように対応します。DVの場合、弁護士が保護命令申立をするにしても、女性相談所や警察などの協力が必要になりますし、被害女性自身が一人では対処できない場合が多いので、他の機関との連携というのが重要になってきます。

DVの相談を受けていて思うのは、ひどい暴力を受けていても、まわりから「我慢しなさい」と言われたり、助けを求める方法を知らなかったりということから、暴\力に耐えるしかないと思いこんでしまい、そのためにさらに暴力が日常化していくような面があるということです。今回の電話相談で表\れたケースは本当に氷山の一角であると思いますが、こうしてできるだけ多くの窓口を用意することで、被害を受けている女性が相談できるきっかけを作ることが大切だと思います。

今後とも、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

吃驚仰天!

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渕上陽子

ある晴れた日の午後、公園を散歩して店に入る。海(男・仮名)は、日焼けした顔でパクリとドーナツを食べ、私を見てニッと笑う。まさに至福の時……。

でも、当番弁護士として出会ったばかりの海(当時一八才)は、幸福とほど遠い姿だった。首は包帯でぐるぐる巻き、顔も全身も傷だらけ。公務執行妨害罪で逮捕されてから4日経つけど、それにしてはボロボロすぎない?

海の話を要約すると、次のとおりであった。

その夜、元同級生の送別会に行くため、友だちと待ち合わせをしていたら、昔のワル仲間に声を掛けられた。彼らは、近くの広場に集まってシンナーを吸っていた。少年院を出てから真面目な日々を送っていた海であったが、恋人に裏切られた傷心もあって誘惑に負けた。

シンナーを吸い始めてすぐ、パトカーが来た。多くの少年が逃げたが、海は職務質問に応じた。ところが、いきなり両腕をひねり上げられ、パトカーの方に引きずられそうになった。「普通に話しているじゃないですか。手を離してください。」と言ったが、首をも絞められ、お腹も跳び蹴りされた。警察官はどんどん増え、何重にも囲まれた。抵抗しようにも、体中押さえつけられて動けない。あまりの痛さに、ひねられた腕を振りほどこうとしたら、左腕がスポッと抜けて、手の甲が警察官の眼鏡に当たって眼鏡が飛んだ。そのとたん、「公務執行妨害罪で逮捕する」と言われた。海は思わず「助けて!」と悲鳴を上げたが、そのままパトカーに押し込まれ、警察署で尿を取られた……。

「警察は、僕が右手の拳骨で警察官の頬を殴りつけたと言っているけど、嘘です。お願い。信じてください。」と、海は子犬のような目で私を見つめる。しかし、この時点の私は、まさか警察がそこまで?などと思わないでもなく、一〇〇%彼を信じたわけではなかった。ゴメンネ、海。

しかし、海は、その後も一貫して否認を続けた(シンナーを吸ったことは、最初から認めている)。逮捕から一〇日以上経っても調書を取られず、「認めないと少年院に行くぞ。」などと説得(脅?)され続ける毎日だったが、「今辛いけど、やってもいないことを認めたら一生後悔する。」と自分に言い聞かせていたようだ。

実際、警察の対応は凄まじかった。ある日、自己紹介をした私に、「先生は、あの子を少年院に行かせたいのか。警察官が、『殴られた』と言っている以上間違いない。無理にでも認めさせるのが弁護士の仕事でしょうが。」と大声でまくし立ててきた。「現場に目撃者はいませんでしたか。」と聞くと、「少年側の人間なんか、調べる必要はないっ。」とはねつけられた。

海は、こういった強烈な取調べに、よく耐えていたと思う。それでも、S.O.S.の電話は一日に何度も架かってきた。駆けつけると、「陽子先生!」と叫んで嬉しそうに立ち上がる姿が切ない。

期待もむなしく、公務執行妨害についても家裁送致された。実況見分調書すらないズサンな記録を読み終え、ため息をついた。これだけ食い違うとは、まさに『羅生門』(映画の)である。警察側の目撃者の調書もあったが、夜一一時過ぎ(現場はほとんど真っ暗)、約五〇メートルも離れた場所から、「『右手の拳骨で』殴りつけたのを見た」、などと言われてもね…。

しかし、海の側にも立派な証拠があった。彼は気付いていなかったが、待ち合わせをしていた友人二人は、職務質問開始とほぼ同時に現場に着いたそうで、状況を目撃していたのだ。これで、海の供述はほぼ全面的に裏付けられる。海は、ラッキーだったんだろう。彼らがいなかったら、と考えると恐ろしい。

さて、家裁では、まず中間審判で海の言い分を聞かれた。第一回目の審判では証人尋問(海側、二人)が行われ、第二回目に、いよいよ裁判所の判断が下されることになった。その前に海に会ったが、最初の頃とは別人のように落ち着いていた。「無実の罪に泣く人がいなくなるように、自分は絶対にこの経験を忘れません。」なーんて言っている。彼のたくましさと成長ぶりには、学ばされる一方だった。

結果は、「非行事実なしの不処分」(毒劇法違反は試験観察)。「ふんっ、当然だよね。」とばかりに海の方を見ると、海ったら、私を見て泣いているではないか。

よかったね、海!

こんな事件は、二度とあってはいけない。

海は、最近一九才になった。仕事と野球で真っ黒になり、また急に大人っぽくなった。近ごろ「嬉しいこと」があったらしい。今度、教えてね!

心神喪失者等医療観察法案について 

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森 豊

1 去る9月27日(金曜日)午後6時から、福岡県弁護士会研修委員会の主催で『心神喪失者等医療観察法案に関するパネルディスカッション』が県弁護士会館三階ホールで開催されました。

この法案は、正式名称を「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」と言い、平成13年の大阪池田小学校事件に対する高い社会的関心や一部マスコミの煽情的報道もあって、重大犯罪を行った精神障害者の処遇を求める立法化の動きが一気に加速化し、ついに全文121条の法案として本年度通常国会に上程され、継続審議となっているものです。

2 このような急速な立法化の動き及びその結果としての法案の問題点に対してはすでに患者団体や日弁連・各地単位会はもちろんのこと、精神科医の学会・諸団体からも多くの反対声明が出されていますが、国会審議における対決法案となっていないため、これら反対論をも踏まえた十分な審議を経ないまま可決されるおそれが危惧されています。

『パネルディスカッション』は、法案(裁判官1人と精神科医1人で構成される合議体が重大犯罪行為を行った者の精神障害による「再犯の可能\性」を判断して入通院治療を強制するか否かを決定する審判制度の設置を中核とする)について、従来から指摘されてきた一般的な問題点を整理・確認するにとどまらず、さらに法案が規定する弁護士の付添人としての活動の内容に踏み込んだ問題点の洗い出しをも目指すことによって、研修委員会主催の会員研修に則したものになるように企画されました。

3 パネラーの高木茂先生は、日弁連刑事法制委員会において上記の立法化の動きをずっとフォローされ、措置入院審査会(精神科医2人、看護士、精神保健福祉士等の医療関係者の他に、弁護士及び検察官を構成員とする)で入通院治療を強制するか否かを決定する新制度の設置を中核とする対案の取りまとめに尽力されてきた立場から、立法化の経緯、裁判官が入退院の判断をする制度の弊害、判断の対象となる「再犯のおそれ」という要件の不明確性等の重要な問題点を一つずつ丁寧に指摘されました。

もう一人のパネラー池永満先生からは、国際人権規約も踏まえ人に医療を強制する制度はどうあるべきかという観点から、司法関与自体は肯定できるが、裁判官が判断すべきことと医者が判断すべきことの混同、強制入院期間が容易に継続され刑事罰と著しい不均衡が生ずる危険性、一事不再理原則の違背等の問題提起がなされました。さらにこれを補足する形で精神保健委員から、法案に規定された審判手続の種類、手続、付添人の権限等について、主に少年事件付添人と比較した問題点の洗い出し作業の報告がされました。

刑事法制と精神保健の両論客の仲裁の大役を担う司会者は、精神保健に深い見識をお持ちの八尋光秀先生で、司会者として適宜の解説等をしながらも、新制度の設置そのものに反対する持論を時折披露されました。

4 法案反対・精神医療全体の改善こそ最良の問題解決策であるという共通項がありながらも、法案反対のスタンスがそれぞれ異なる三者の間の緊張をはらんだ議論のやりとりに、2時間の所定時間はすぐに消化されました。

週末、夕刻の時間帯で強い雨ということもあり、参加会員は必ずしも多くはありませんでしたが、この法案の重大な問題点や反対する立場の多様性をよく理解して頂けたのではないかと思います。

福祉の当番弁護士

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迫田登紀子

会員の皆様、「福祉の当番弁護士」という電話相談の窓口があるのをご存知でしょうか。これは、行政機関、福祉団体、施設等において高齢者や障害者の相談を担当している方を対象に、それらの方の疑問を法的な側面からアドバイスすることを目的とした電話相談です。現在「あいゆう」に登録をした会員(福岡部会中120名)の中から、登録を承諾された49名の会員によって担われています。

2000年9月18日から始まった「福祉の当番弁護士」の丸2年を記念して、去る9月20日に九弁連及び当弁護士会主催の記念シンポジウムが行われました。本稿では、このシンポのプレ企画として9月12日に行われた、高齢者ご本人の相談をも含む電話と面接による相談会についてご報告します。

当日は、朝10時の開始直後から2台の電話ともにふさがるという盛況ぶりで、午後5時の終了までに合計30件もの多数の相談がよせられました。相談の会場には、新聞・テレビの記者が大勢駆けつけ、テレビカメラも数台入りましので、相談の状況がお昼のニュースに流れると、また途絶えることなく相談の電話が続きました。(この日私は、テレビカメラがきているなど全く知らず、「今日は人に会わないもんねえ。」とぼさぼさの頭のまま、相談会場に出かけたのでした。にもかからず、なぜかテレビにうつる羽目になり、そんな日に限って、たくさんの人から観られていて・・・。何人もの依頼者が、にこにこと「先生、見ましたよ!」声をかけてくださるので、何故だかとても落ち込みます。)

相談は、福祉団体や施設からが4件、その他は高齢者ご本人やその家族からでした。

主だった内容としては、行政手続き・行政とのトラブルに関するものが9件、負債関係が5件、家族間のトラブルに関するものが3件、弁護士とのトラブルに関するものが3件、遺産分割・遺言に関するものが2件、入所者の対処に関する施設からの相談が2件ありました。行政手続に関する質問や法的観点からのアドバイスは必要ないと思われる質問も少々見られましたが、このことは、相談窓口が分からずに1人で悩みを抱えておられるご高齢者が多いこと、そして「弁護士による相談」に対する期待・信頼が高いことの証でもあると思います。

これらの他にも、労働問題、刑事手続き、消費者問題、医療過誤に関する相談などもありました。高齢者の相談といっても、成年後見をはじめとする高齢者特有の相談ばかりでなく、一般相談と同様に幅広い相談がなされたと分析できると思います。

この企画の後に行われた2周年記念シンポジウムでも、高齢者や障害者の権利擁護のために、弁護士と関係各機関とが連携をすることや、その中における弁護士の役割の重要性が確認されました。

幅広い市民の皆様に弁護士を知って頂き、そして利用していただこうとしているこの司法改革の中で、高齢者や障害者の分野は、まだ私たちがなかなか手をつけられないでいる未開拓の分野であるといえるのではないでしょうか。会員の皆様、高齢者・障害者へのリーガル・サービスの提供のため、是非「あいゆう」そして「福祉の当番弁護士」にご登録ください。

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