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カテゴリー: 月報記事

シリーズ仲裁人に聞く

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松村龍彦

平成一四年一二月、当弁護士会に紛争解決センターが設立され、およそ半年が経過しました。そこで、紛争解決センター運営委員会では、今後、定期的に仲裁人にインタビューし、月報に掲載することにしました。

第一回は、岩崎明弘会員にお話を伺いました。同会員は、仲裁人として、紛争解決センター設立後、初めて和解が成立した事件をご担当になられました。

Q 紛争解決センターの設立について、どのような感想をお持ちですか?

A 私は、一五年以上も前の月報に、当会でもADRを設立すべきだという意見を掲載したことがあります。

紛争の「公平な」解決機関が裁判所だけというのは裁判所にとっても荷が重いでしょうし、「紛争を公平かつ迅速に解決したい」という国民の需要に応えるには、弁護士が仲裁に当たることが不可欠だと考えていたのです。

Q 和解成立第一号事案は、どのような事件だったのでしょうか?

A 貞操権侵害を理由とする慰謝料請求事件でした。当事者双方に弁護士は就いておらず、「慰謝料の額」が主たる争点となりました。

Q 仲裁人として、どのような点に留意されたのでしょうか?

A 「公平な」専門家であることについて各当事者の信用を獲得、維持することや履行を確保することに注意しました。また、「迅速な」解決を目指して、期日を集中的に入れました。

Q 差し支えない範囲で、和解成立の経緯についてご教示下さい。

A 申立人は、相手方の処罰を望む一方で、できれば早期に解決したいという希望を抱いていました。そこで、私は、常識的な範囲内での金銭賠償で満足する他ないことを丹念に説明しました。

その結果、第二回期日で、ほぼ合意に達したのですが、解決を急ぐと、相手方が不満を覚え、履行を確保できないおそれがあったので、相手方に対し「ご納得頂いたら、次回、和解金を持参して下さい」と告げ、第三回期日を指定しました。

相手方は、第三回期日に和解金を持参し、和解成立の席上で、これを支払いました。

Q 申立てからどのくらいの期間がかかりましたか?

A 申立てから第一回期日までが二週間余り、申\立てから和解成立までが約一か月でした。

Q 随分、迅速な解決でしたね。同席調停の形はおとりになったのでしょうか?

A 事案の性質上、同席調停は行いませんでした。各当事者には別個の控室を与えて、顔を合わせることがないようにしました。もっとも、和解成立の席では、当事者を同席させ、和解の内容とくに清算条項について十分に説明しました。

Q 「和解成立第一号」ということで、ご苦労なさった点は?

A 慎重に、和解条項を作成しました。特に、仲裁費用の負担条項は前例がなく、また今後は先例にもなるので、気を遣いました。

Q 紛争解決センターの今後について、どのようなご意見をお持ちですか?

A 大いに発展させたいと考えています。そのためには、会員や利用者となり得る市民に、制度の存在、目的等について知ってもらうことが重要でしょう。

岩崎明弘会員には、ご多忙のところ、約一時間にわたってお話を頂き、誠にありがとうございました。

当会における弁護士過疎解消に向けて

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石渡一史

  1. 熊本県弁護士会の弁護士過疎解消に向けた取組み  当会月報三月号に、長弁護士が日弁連ひまわり基金による熊本地方裁判所八代支部管内の公設事務所へ赴任するにあたっての記事を寄せている。その八代で、八代ひまわり基金法律事務所の開所式と披露パーティーが五月一〇日に日弁連副会長、九弁連理事長、熊本県弁護士会会長、八女市長等が出席して、盛大に行われた。  私は、かねがね弁護士過疎地域に行く弁護士こそ、優秀な弁護士が行くべきだということを持論としており、その意味でもふさわしい弁護士を送り出すことが出来たと思っている。長弁護士が、八代の地でつつがなく派遣弁護士としての任務を全うされるよう願う次第である。  九弁連だより四月号には、やはり当会から玉名ひまわり基金法律事務所に行った田中裕司弁護士が記事を寄せており、熊本県弁護士会の弁護士過疎地域克服に対する積極的な取組みがうかがえる。
  2. 当会に弁護士過疎はないか  同じく九弁連だより四月号に当会筑後部会の弁護士過疎対策についての記事も掲載されている。この記事によれば、多数の若手の定着が筑後部会の最大かつ最善の「過疎対策」であり、おそらく本当の過疎地域から見れば筑後はもはや過疎地域ではないと言われるかもしれないとのことである。しかし、この見解には、にわかには賛同し難い。まず、筑後部会に五二名の弁護士がいる(日本弁護士連合会会員名簿平成一六年度版による)ことからどうして筑後地域全体が過疎でないという結論が導かれるのであろうか。(ちなみに、久留米市から八女市、大牟田市は、公共交通機関とタクシーで裁判所へ行くとどちらも四五分であるが、大牟田市の弁護士が〇になった時も弁護士過疎はないということになるのだろうか。)
  3. 弁護士が足りているかどうかは住民の視点からも検討が必要  私は、弁護士がその地域に必要であるかどうかは、弁護士の視点だけでなく、住民の側の判断にも委ねるべき問題であると考えている。(九弁連だより四月号で田中裕司弁護士が言っているように、弁護士が常駐することにより、いままで眠っていた事件や、知識不足ゆえに不当な扱いをうけたりするケースも発掘される。私たちは街中まで相談に行けばいいじゃないかと思うが、そういう風に考えられるのは行動範囲が広い一部の人たちで、実際は地元から出たことがない人も多いし、ましてや何のものかも分からない遠方の弁護士のところに相談に行くのは一大決心で躊躇してしまう人も多いのであるという意見には同感である。)  私は、弁護士過疎であるかどうかを判断するにあたって裁判所の管轄のみが基準になるとは思わないが、弁護士会の部会が基準になるとも思わない。ちなみに、平成六年の久留米部会の弁護士数は三二名(うち久留米市二四名、大牟田市五名、八女市一名、柳川市〇名、その他二名)、同一六年度では、五二名(うち久留米市四一名、大牟田市六名、八女市〇名、柳川市一名、その他四名)である。つまり、増えているのは久留米市だけと言ってもよい
  4. 当会の弁護士過疎問題について積極的な議論を望む  九弁連だよりの筑後部会の弁護士過疎対策に関する記事では、部会制度という福岡県弁護士会の独特のあり方や公設事務所の評価に関する理念的な問題とも絡むため、もう少し議論を整理しながら、あるべき方向性を見いだしていきたいと述べられており、結論として八女、柳川への公設事務所の設置を否定している訳ではない。  もし八女や柳川に公設事務所が設置されても、住民のニーズがなければ、住民は公設事務所には行かず、久留米市の弁護士のところへ行くだけであろう。(全国の例で言えば、公設事務所は盛況であり、やはり地元に法律事務所があることを住民は望んでいる。)最初から弁護士過疎はないというのではなくいろいろな角度から弁護士過疎対策をやってみていいのではないか。  法律相談センターを久留米に最初に作ろうとしたとき、当時の久留米部会では、積極論と消極論の対立があったが、現在では、急速な弁護士増加の原因の一つとして揚げられるほどになっている。また、弁護士実務修習を久留米支部で制度的に実施するに至った目的は、筑後部会全体の弁護士過疎の解消ではなく、筑後部会内の各地域の弁護士過疎の解消にもあると考えるべきではなかろうか。

英国便りNo.1 苦労した学生ビザ取得(2003年8月16日記)

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松井仁

これから時々、近況やイギリスの法律事情など報告したいと思います。  ロンドンへ到着する飛行機を降りて、今までの海外旅行では経験したことのない緊張を覚えました。入国審査で学生ビザをもらえるかどうか不安だったからです。  学生ビザの取得のためには、

  1. 入学を許可されたことを示す大学からの手紙
  2. 銀行の残高証明書
  3. 帰りの航空券

が必要ですが、それがそろっていても認められない場合があると言われています。  同じ飛行機を降りた観光客が皆簡単に入国審査をすませているなか、私と妻は、案の定、入国審査官から専攻科目や滞在先などについていろいろ質問され、なかなかビザの判を押してくれません。  特に、妻のほうは、大学からの入学をオファーされた手紙は持っていたものの、返事を出す時間がないまま渡航しており、入学許可証明書が完全ではなかったため、「あなたはなぜまだ返事を出していないのか。」と、明らかに疑いの目で見られていました。私たちは必死で、「大学から手紙が来たのが直前で、自分たちの引越も重なって、時間がなかったんです。」、「行き違いになったら困るので直接大学に返事を出したほうがいいと思ったんです」などと説明したのですが、渋い顔は変わりません。 その間、私の頭の中には、(もし拒否されたら、異議申立をしようか、いや、観光ビザで入って大学の手紙を取り直して変更申\請か・・・)などと、英国の入管手続など知らないくせに考えがぐるぐる回っていたのですが、最後は、私たちの銀行残高証明書を見て、ようやくパスポートに1年間の学生ビザの判子を押してくれました。不法就労目的ではないと納得してくれたのかもしれません。  今まで、弁護士として何度か外国人依頼者のビザの変更や更新の手続を手伝ったことがありましたが、ビザをもらったときの嬉しい気持ちが、はじめて身に染みて分かりました。

ホームページ委員会だより

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中野俊徳

第一 私がHP委員会の委員である意味

昨年度末頃にホームページ委員会の委員になりまして一年が経過しました。

私は今年三月三一日の時点で七つの委員会等の委員にしていただいておりますが、誠に申し訳ないことに、このホームページ委員会を含め、ほとんどの委員会等で幽霊委員と化してしまっています。

しかし、多くの委員会ではMLを持っており、MLに入っていることで少なくとも情報・意見交換は可能な状態です。

そういったことから、私のように福岡市から遠い地の事務所に属する者が弁護士会の活動に継続的に参加するためには、弁護士会の活動のIT化は必要不可欠なことなのだろうと実感していますし、そういった観点から、福岡市以外の地に事務所を持つ弁護士にとっての弁護士会のホームページのあり方を考えろというのが、私がホームページ委員会の委員である意味であるのでしょう。

第二 私の弁護士会HP利用の内容

そこで、幽霊委員ですのであたかも非委員かのような第三者的な書き方になってしまいますが、私が日頃の弁護士業務において弁護士会のホームページをどのように利用しているかを考えてみます。

改めて思い返してみると、私は、日頃の業務時間の中で、弁護士会のホームページを見ることが案外多いように思います。

他の先生方の電話番号、ファックス番号を知りたいときは会員情報のページで確認しますし、刑事弁護で量刑について検討したいときは量刑資料検索も見ています。

また、筑豊以外の裁判所での訴訟等を受任したときは、裁判官・検察官配置表で裁判官・検察官の名前や期を確認したりもしています。

掲示板で刑事弁護の事案について悩みというか愚痴を書いたこともありました(その事案がその後思わぬ展開となってしまいましたが・・・・・・)。

今や、情報収集や他者とのコミュニケーションの多くの場面でインターネットを利用することが当然の時代になっていますが、その中で弁護士会のホームページが弁護士業務に果たす役割は大きいのだろうと思いますし、もっと専門的な情報提供(たとえば、兵庫県弁護士会のホームページでの消費者問題判例検索ページのような)ができたらいいなと感じてもいます。

第三 市民にとっての弁護士会HP

また、弁護士会のホームページはいわば弁護士会の顔ですから、幽霊委員とは言いつつ、市民の方が弁護士会のホームページをどのように利用しているかも気になるところです。

今、弁護士に法律相談に行く前に、インターネットで多くの知識を得てきている相談者の方は珍しくありません。

しかし、その一方で、弁護士を探している市民の方が、弁護士事務所にたどり着く過程で、弁護士会のホームページ等、インターネットを利用しているという実感がまだまだ私にはありません。

私のところに相談に来る方は、地元の司法書士や税理士、行政書士からの紹介など口コミが多いですし、時には、私が東京での生活が長かったこともあり、当事者が共に東京在住という事件の受任依頼をいただくこともあります。

こういったことは多くの先生方が経験されていると思いますが、こういったことがある度に、市民にとっての弁護士への距離を感じてしまうのです。

個々の弁護士に関する情報は個々の弁護士のホームページで提供するべきだとも思いますが、まだまだ越えがたい壁になっている、市民と弁護士との間の壁を取り払ううえでの一定の役割を弁護士会のホームページが担っているものと認識しています。

その意味で当委員会がなすべきことはまだまだたくさんあるのだろうと思います(と幽霊委員が勝手なことを言っております)。

激震襲う! 被災者への無料相談会始まる

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藤尾順司

三月二〇日、のどかな休日のお昼、突然、震度六の大地震(福岡県西方沖地震)が福岡北西部を襲いました。この地震で事務所やご自宅が被害に遭われた会員の方には、心からお見舞い申し上げます。弁護士会館も三階の天井の一部に亀裂が入るなどの被害を受けました。

休み明けの三月二二日には、前年度執行部が地元の被災者のために無料電話相談会を実施され(前年度への気遣い)、その後、次のような相談会等を実施しましたので、併せて報告します。

急なお願いにもかかわらず、多くの会員に快く相談担当を引き受けていただきました。なかには、相談日は予定があるが、もし担当者が足りない場合は予\定を変更して引き受けてもいいと言っていただいた会員もおられたり、電話入れしながら嬉しくなるということがありました(実は、当番弁護士や国選弁護のお願いをする担当になりました。その節もどうぞよろしく!)。この紙面を借りまして、厚く御礼申し上げます。

電話相談
  1. 三月二四日から二六日の三日間
  2. 相談担当者のべ 三六名
  3. 相談件数合計 一四六件
面接相談(弁護士会館)
  1. 四月九日(土)午後一時から四時
  2. 相談担当者 一二名
  3. 相談件数  一九件
相談への派遣

福岡市から、被害が甚大であった地域に、行政、法律、福祉、住宅、健康について巡回相談を実施するので、相談担当者を派遣してほしいとの要請がありましたので、次の各地域に二名づつ派遣しました。五日間の相談件数は合計二〇件でした。

四月一日 東区 志賀島公民館
四月二日 西区 西浦岡集会所及び浦救難所
四月三日 西区 北崎公民館
四月四日 西区 今宿出張所
四月五日 西区 今宿出張所

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

紛争解決センターも地震に関する紛争については、申立手数料を免除することにしました。

これまでのところ、相談内容は、地震によって瓦が隣家に落ちて隣家の車を傷つけた、ブロック塀が倒壊して隣家に被害を与えた、マンションにおいて温水器や水道管からの水漏れにより下の部屋に被害を与えたなどによる被害の相談が三五%ほどを占めていました。その次に多いのは、借家の修繕や賃料、敷金に関する問題や、マンションやビルの補修の問題でした。

被災者の生活が落ち着きだすと、次第にマンションの修繕や保険金請求の問題など専門的知識が要求される相談が増えてくるのではないかと思います。

阪神淡路大震災後、たくさんの法律相談活動を経験された弁護士を招いて、地震の法律相談についての研修会を企画する予定です。

今後も状況を見て、弁護士会で相談会を実施することになると思いますので、ご協力をよろしくお願いします。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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