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シリーズ ―私の一冊― ハードボイルドはいかが…藤原伊織「ひまわりの祝祭」講談社

カテゴリー:月報記事

会員 匿 名 希 望(40期)

匿名希望の私、シリーズ2回目の登場である。 「趣味は読書」と言えば、「どんなものを読むか?」と問われる。ふと、回答に戸惑わないか。それは回答者の嗜好、知性に結びつけて考えられてしまうことになりかねないからである。もちろん匿名希望の私に戸惑いなどあるはずもなく、推理もの、中でもハードボイルドが好きだ。主人公はスーパー・ハードに強くなくてはならない。必ず理不尽な窮地に追い込まれ、脇の重要人物は死んでしまう。ただ、主人公自体は決して殺されることがなく、最後には必ず大どんでん返しで切り抜けてみせるのである。小気味の良い展開で謎解きがなされ、読者をして、読んで良かったと唸らせることができなければ不作である。ちなみに村上春樹のベストセラー1Q84は、ラスト付近まではわくわくしながら読み進んだが、作者自身ストーリーに収拾がつかなくなってしまったのか、読者である私が読解力に乏しかったのか、読後完全な消化不良になってしまった。有り体に言えば、つまらんかった。

調べてみた。ハードボイルドは、現に探偵をしていたダシール・ハメット(1922年デビュー、34年引退)と並んでレイモンド・チャンドラー(33年デビュー、59年没)が黎明期とされている。村上春樹は、最近になってチャンドラーの長編「ロング・グットバイ」、「さよなら愛しい人」の2編を新訳している。ハリウッド脚本家としての一面を持つチャンドラーが、その作家生活の中で残した長編はわずか7作品しかなく、いずれも私立探偵フィリップ・マーロウが登場する。7冊全部読んでみた。なかなかのものだった。オススメに値する。ただ、翻訳ものは訳者のフィルターによる新たな創作になるため、原文とは味わいが異なっているのではないか、また単純に訳本は読みづらい、と思う。それで、英文を読解できない私や読者の皆様には、原文和書がいい。昔は、大藪春彦とか落合信彦、北方謙三もよかったが、このごろは、藤原伊織、大沢在昌、東直己、樋口明雄、福井晴敏などが好きで、新刊のハードカバーで全部読んでいる。

ご紹介するのは、藤原伊織の「ひまわりの祝祭」(四六版426頁)である。あの「テロリストのパラソル」発表後の次作第一弾である。読んだのは10年も前なのでざっと再読してみたが、やはり一気に楽しめた。謎の自殺により妻英子を亡くし、そのショックで世を捨て無為徒食生活にあった秋山(40歳)のもとに妻に似た麻里という若い女が現れる。秋山は無精子症だったが、自殺した英子は妊娠しておりこれを隠していた。英子は美術館の学芸員でファン・ゴッホに深い関心を抱いていた。ところで、史実では、ファン・ゴッホ(1853~90自殺死)の名作「ひまわり」は全部で12枚画かれている。うち1枚は安田火災が1987年に約58億円でオークションで落札したことで有名であるが、12枚のうち7枚が、彼の芸術的ピークとされた南仏アルルでの2年半の間の作とされている。本作品は、アルルでの8枚目の「ひまわり」が存在し、しかもそれが日本にあるということがベースになっている。秋山は、麻里の登場を機に、時価数十億とされる「ひまわり」の探索・争奪をめぐる欲望と抗争に巻き込まれていく。なぜ英子は自殺したのか?「ひまわり」は本当にあるのか?その鍵は、秋山と英子との記憶の中にあるという。ヤクザ、闇の大物、大企業が「ひまわり」の争奪をめぐる攻防を展開する美術ミステリーとなっている。

以下本文より。「数十億?」「ひょっとしたら百億を超えるかもしれない」「見つかった。ようやく私はたどりついた。ひまわり。アルルの8枚目のひまわり。」「もし、それが事実なら世界の美術界が震撼する。伝説が修正される。神話がもう一つ誕生することになる。」

なお、著者は48年大阪生まれ、73年東大卒。電通に在籍して77年デビュー。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞受賞、翌96年の直木賞の史上初のダブル受賞。相当の酒豪で知られていたが、07年7月食道癌で逝去している。享年59歳。

本作品は講談社から文庫化されており、ミステリー、ハードボイルド好きの方にはイチオシの作品である(了)。

◆憲法リレーエッセイ◆

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 小 川 威 亜(53期)

私の修習期は53期で、2000年10月に弁護士登録しました。

その約1年半後の2002年から昨年2009年まで、北九州市において、「北九州憲法集会」なる集会を憲法記念日に(時にはその前後に)事務局長として開催してきました。 憲法に関する集会は、大きく分けて改憲派の集会と護憲派の集会があると思いますが、私が開催してきた集会は護憲派の集会です。 これまで8回の憲法集会を事務局長として開催してきて、強く感じたのは、憲法を護るという活動には終わりがないということです。 現に存在するものを守っていくという活動が、客体が存在する限り終わりがないことは、考えてみれば当たり前のことなのですが、頭で判っているのと実際にやってみるのでは大違いで、集会の準備をしていると(護憲派の私から見れば)、「何で、そんな違憲なことばかりやるんだ!」と言いたくなるような政治家の言動がとても目につきますし、そんな政治家が総理大臣になったり、改憲を政策目標に掲げたりしますから、憲法を護る活動の終わりのなさを本当に痛感します。

しかも、憲法記念日は、ゴールデンウィークの一部ですから、私にとっての連休はいつも5月4日からです。

この活動に終わりがないということと、連休が削られるということは、憲法集会を裏方として支えるメンバーにも大きな影響を与えます。同じ様な内容の集会をやっていては、新鮮みが無くなり面白くないし、当日参加してくれる人も少なくなります。その結果、裏方のモチベーションも低下するということで、2002年の段階で一緒に活動を始めた三役のうち、2009年まで残っていたのは、私1人でした。

もちろん、三役で残ったのが私だけというだけで、当初からメンバー何人か残っていますし、新しく参加してくれたメンバーもいます。短気で、すぐに愚痴を言う私を支えてくれたこれらのメンバーにはとても感謝しています。

憲法が最高法規として存在するにもかかわらず、憲法問題は社会に沢山ありますので、集会のテーマとする事柄には困りません。しかし、所詮素人の集まりに過ぎない私達で、人を呼べるだけの集会を形作るのは、なかなか大変な作業です。

毎年四苦八苦して、ハンセン病問題や、イラク派兵問題、派遣切り問題などをテーマに据え、講演形式にしたり素人で劇を行ったりと演出を変えて集会を行ってきましたが、やはり実質的なトップである事務局長が同じでは、マンネリ化は避けられません。そこで、今年の集会から事務局長を後輩弁護士に交代してもらい、私は平メンバーとなって準備に参加しています。

平メンバーになると、とたんに準備活動への参加頻度が鈍ってしまい、新事務局長には申し訳なく思っています。このエッセイ担当を機に、心を入れ替えて頑張って参加していこうと考えています。

事務局長の交代により多少の若返りを果たすことが出来ましたが、やはり事務局長の個人的頑張りに支えられた集会では、組織的な活動とはいえません。また、集会当日に参加して下さる参加者の多くが50歳代から60歳代で、20歳代や30歳代の参加者数が下手をすると70歳代よりも少ないという、憲法を護る運動に共通する大きな問題に対応する必要もあります。

そこで、数年前頃から始めたことですが、大学生が主体となった集会運営を確立することを目論んでいます。

集会に参加してもらうことで、憲法についてより関心を持ってもらうことができますし、活動を後輩に引き継いでもらうことで、新陳代謝が確立されます。何より、弁護士が作る理屈っぽい集会が若者の目線からの集会に代わっていきます。

加えて、主催者側で参加した学生の友人達が、当日、観客側として参加してくれるという効果も期待できます。

この目論見の最大の問題は、今時の大学生の扱い方を、私や新事務局長がいまいち判っていないという点です。会議をすっぽかされたり、しばらく連絡が途絶えたりすることがままあり、頭を抱えることも少なくありません。修習生ですら扱いに苦労する位ですし、自分自身が大学生だった頃のことを考えると致し方ないことでしょうね。

まだまだ、大学生主体の憲法集会を確立することは出来ていませんが、何とか新事務局長の次の事務局長には大学生を引き込みたいと頑張っています。

「いつまでもあると思うな親と金」という諺がありますが、これは現憲法にも当てはまると思います。なくなってからでは遅すぎます。これを読まれた北九州の護憲派の皆様、是非ともご協力とご参加をお願いいたします。

~法教育シンポジウム(in 仙台)に行って参りました!!~

カテゴリー:月報記事

会 員 春 田 久美子(48期)

1 会員の皆様、“法教育”ってご存じですか?
県弁の数ある委員会の中でも、出来てからの年月がまだまだ若い、新しい分野のお話しです。

平成22年1月30(土)、杜の都~仙台で、法務省が主催するシンポジウムが開かれたので行って参りました。サブタイトルは、“未来を拓く法教育inせんだい”。

2 法務省大臣官房司法法制部長の方の挨拶を皮切りに、・基調講演として、東京大学法学部教授の大村敦志氏のお話は「法教育と市民教育‐共通点と相違点」。
フランスの子供たちは、友達同士の会話で『セパ ジュスト!』(ずるいよ!正しくないよ!‐あるべきルールに従ってないよ、という意味)というフレーズがよく出てくるようです。背景として、フランスでは、絵本で以てjusticeの概念を学び、いかにして裁判が公平なものになりうるか、を自然と学べるようなのです。そして、中学では議論の仕方を学び、高校では現行制度を歴史や外国の類似の制度と比較しながら学習し、そうやって『市民』が出来上がっていくそうです。

3 次は・学校現場における実践報告として、宮城教育大学附属小学校の教頭先生の発表です。教頭先生自ら(キメキメ王国の)王様に扮し(冠や髭、マントの着ぐるみ)、もしもテレビのチャンネルが一つだけ、新聞も一種類のみ、インターネットも王様が許可した内容しか流せない、という具合になったらどうする?というバーチャルな国のお話。子供たちの授業の様子がスクリーンに上映されます。

4 休憩をはさみ、いよいよメインのパネルディスカッション。「新時代の法教育~学校現場で期待される法教育とは~」とのお題で、コーディネーターは、仙台家・地裁の大谷太裁判官、パネリストは、上記大村教授、文部科学省教科調査官の大倉泰裕氏、仙台弁護士会から神坪浩喜弁護士、島田仁郎前最高裁長官、宮城教育大学の松岡尚敏教授、そして、芸能リポーターとして著名な東海林のり子氏の6名です。

・島田氏は、そもそも法教育が、どういうところから出てきたものか、裁判員裁判を生み出した司法制度改革の話に遡って、語られました。将来裁判員になったときにも対応できるよう、犯罪が起きないような世の中にしていくために、法教育は大切だ、というお立場。・大倉氏は、平成18年に教育基本法が改正され、今後、法教育がますます盛んになるはずだ、と予測されました。今、学校現場で☆★教育と付くものは何と130を超えるそう・・・(学校の先生も忙しいはずです)。・大村氏は、法教育の実践者として実務家・プロが関与していくことが大切と力説されました。・松岡氏は、教育者らしく、何事も、小さなうちから教える事が大切、大人になってからではあまり意味がない、と仰る一方で、今後は、大人も子供から学び取るようなシステムが必要ではないかと。心に残ったのは・神坪弁護士と・東海林氏のお話でした。神坪弁護士が熱く語られたのは、自己肯定感を植え付けてあげることの大切さ。ご自分が小学生だったころの担任の先生との暖かな交流が根っこになって、今の自分がある、幸せに他人と(暖かく)つながっていけるような生き方を授ける方法として法教育というものを考えてよいのでは、というご提案でした。東海林氏は、長年、芸能リポートの仕事をされ、たくさんの人にインタビューするうちに、今では、子供と言うよりお母さん達にこそ、法教育をする必要性を強く感じる時代になった、と仰っていました。

5 会場からは、質疑応答も出て、夜は、日弁連や東北弁連の法教育担当の先生方と仙台の地酒でほろ酔い気分になり、翌日は、仙台弁護士会会館での委員会等に出席して福岡に帰って参りました。

6 福岡でも、法教育のネットワークや弁護士会の受け皿としての法教育センターを近々立ち上げる予定です。今後の新しい活動についても、適宜ご紹介していくつもりです。

法律事務所のエコ(その2)

カテゴリー:未分類

会 員 後 藤 富 和(55期)

1 弁護士がCO2排出削減に取り組むこと 昨年の月報10月号に「法律事務所のエコ(その1)」を掲載させていただきましたが、今回は、その続きで環境マネジメントシステム(EMS)について、私が所属する大橋法律事務所が昨年12月に「エコアクション21」の認証を受けた経験を交えて報告いたします。 昨年の第52回人権大会において、日弁連は「地球温暖化の危険から将来世代を守る宣言」を採択し自らCO2等温室効果ガスの排出削減に取り組むことを宣言しました。その結果、各都道府県の弁護士会はもちろんのこと私たちひとりひとりの弁護士のCO2削減の取り組みが大きな課題となってきました。 法律事務所のCO2削減の取り組みとして、前回の「その1」では、・現状のCO2排出量を知ること、・エアコンの設定温度の調整や自転車の利用などの削減努力、・カーボンオフセットやグリーン電力の導入などをご紹介しました。 ただ、これらの取り組みはあくまで自主的なものであり、面倒なことなしたくないという人間の本性に従うならCO2削減の取り組みは遅々として進まないでしょうし、何より人は「飴」の部分がないと取り組みのモチベーションが湧かないものです。 そこで、自主的取り組みに第三者のチェックを導入し客観性と推進力を付与し、取組の御褒美として「認証」を与えることによって企業の社会的責任(CSR)の面でプラスに評価し経営者に取組へのモチベーションを与えるものとして、環境マネジメントシステムがあります。

2 環境マネジメントシステムの意義 組織や事業者が、その運営や経営の中で自主的に環境保全に関する取組を進めるにあたり、環境に関する方針や目標を自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくことを「環境管理」又は「環境マネジメント」といい、このための工場や事業所内の体制・手続きの仕組みを「環境マネジメントシステム(EMS)」と言います。 環境マネジメントシステムには、環境省が策定した「エコアクション21」や国際規格の「ISO14001」、NPOが策定した「KES」などがあります。 上記の通り、環境マネジメントシステムを導入することは、それまで自主的な取り組みであった企業の環境負荷軽減に対し第三者の客観的なチェックを入れることで、取組の積極性を加速させることや、対外的に「環境にやさしい企業」であることをアピールすることでビジネスメリットにつなげ、それによって企業の環境保護へのモチベーションを高めるという意義があります。さらに、省資源や省エネルギーの取組によって大幅な経費削減効果を得ることもできます。

3 弁護士会や法律事務所の先進例 法律事務所では、2006年5月に大阪弁護士会の弁護士法人赤津法律事務所がエコアクション21の認証を受けています。また、弁護士会では、2006年12月に京都弁護士会が、2008年8月に日弁連が、2009年10月に第二東京弁護士会が、それぞれKESの認証をうけており、現在、大阪弁護士会と兵庫県弁護士会がエコアクション21の認証に向けた取組を開始しています。 そして、福岡県弁護士会では、昨年12月、大橋法律事務所がエコアクション21の認証を受けました。

4 環境マネジメントシステム導入 環境マネジメントシステムの導入について、大橋法律事務所を例に報告します。 まず、大橋法律事務所では2009年1月に「大橋法律事務所環境方針」を策定し「環境保全への行動指針」を定めるとともに、所内の実施体制を確定しました。 その後、1月から4月までの4カ月間、大橋法律事務所の事業活動で排出されるCO2等温室効果ガスの量を把握し(環境負荷の自己チェック)、そのデータをもとに事務所の環境への取組を○△×でチェックしました(環境への取組の自己チェック)。この4カ月間のデータに基づいて、具体的な環境目標と環境活動計画を立案し、同年5月から7月までの3カ月間、試験的に運用を行いました。この試用期間内の環境負荷を把握し環境目標と環境活動計画を達成できたかをチェックします。達成できていない項目については、なぜ達成できなかったのか、原因を徹底的に追求し、計画の更なる見直しをします。この一連の取組を環境活動レポートにまとめ、ホームページにアップし市民に公開します。 その後、書類審査の上、10月に審査人による現地審査を受けました。現地審査は午前9時から午後5時まで実施され、施設など現況の確認の他に、弁護士や事務員への個別のヒアリングなど(まるで口述試験のよう)も行われ、ディスカッションを通じて、さらに目標と計画を見直します。 現地審査で指摘された点を踏まえて見直した環境目標や環境活動計画等について地方と中央のそれぞれの判定委員による審査を受け、12月24日にエコアクション21の認証を受けることができました。

5 エコアクション21の認証を受けての雑感 弁護士個人が環境負荷の削減に取り組もうと思っても、その取組が効果の薄い独りよがりのものであったり、また、日々の雑務の中でモチベーションが保てなかったりするものです。弁護士のモチベーションを高め、環境負荷削減の取組を効率的にするためには、やはりエコアクション21などの環境マネジメントシステムの導入が効果的だと感じました。この1年の大橋法律事務所の取組を振り返っても、とても私一人の自主性のみでは達成できなかったと思います。 ぜひ、福岡県弁護士会の会員の皆様も、そして、福岡県弁護士会でも、環境マネジメントシステムを導入して、効率的に環境負荷の削減、地球温暖化防止に取り組んでみてはいかがでしょうか。

法律事務所のエコ(その1)

カテゴリー:月報記事

会 員 後 藤 富 和(55期)

1 地球温暖化 第52回人権擁護大会では、地球温暖化の危険から将来世代を守ることが大きなテーマとなりました。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、産業革命以後の気温上昇を2℃以内に抑えるために、先進国において二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに25~40%削減、2050年までに80%削減することが必要と警告しています。日弁連は意見書や人権大会宣言を通して、国に対し温室効果ガスの排出総量規制などを求めてきました。麻生政権下では2005年比15%減(1990年比にすると8%減)という低い目標で誤魔化そうとしましたが、鳩山新政権は1990年比25%削減を打ち出しており、温室効果ガス削減が現実の課題となってきました。この課題は、政府や産業界だけではなく、私たち弁護士にも突き付けられています。そこで、法律事務所でも地球温暖化防止に向けた取組ができないかと考え、うちの事務所では様々な実践をはじめました。

2 まずは知ることから 温室効果ガスの削減に取り組むのであれば、まず、現状でどのくらい排出しているのかを知ることが必要です。 大橋法律事務所の2009年1月から7月までのCO2排出量は、電力・交通・廃棄物の合計で2285kgとなります(環境省の計算式)。仮に同じペースで1年間排出したとすると年間排出量は3917kgとなります。平均的一般家庭の年間排出量が6500kgといわれていますので、事業所としては少ない量に抑えることができていると思います。ちなみに、ヒノキ1本の年間CO2吸収量が約25kgといわれていますので、うちの事務所の活動によるCO2を吸収するためには156本のヒノキが必要ということになります。

3 削減努力、カーボンオフセット、グリーン電力 エアコンの温度をこまめに調整したり(思い切ってエアコンを使わず窓を開けるという選択もあり)、近距離の移動に自転車を利用したりすることでCO2の排出は大幅に削減できます。そのコツは我慢をしないということです。暑いのを我慢するのではなく、エアコンが効きすぎて上着を羽織って仕事している状態を不自然と感じられるかどうかだと思います。 それでも、削減できない部分は残ります。そのような場合に、事業により排出したCO2を別の活動で吸収し相殺する考え方をカーボンオフセットと言います。例えば、飛行機を利用したことで排出したCO2を植林によって相殺する全日空のカーボンオフセットプログラムなどがその例です。 また、電力を石油・石炭など化石燃料による発電に頼るのではなく、発電時にCO2を発生しないと考えられている風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギーに転換することで電力消費によるCO2排出を大幅に削減することも考えられます。しかし、小規模な事業所が独自に太陽光発電や風力発電システムを備えることは困難です。そこで、考え出されたのがグリーン電力証書システムです。これは、自然エネルギーにより発電された電力の環境付加価値を証書化し、証書の購入を通じて消費者(事業所)が自然エネルギーによる発電コストを負担することで、事業所で使用する電力を自然エネルギーに由来するものとみなすことができるという制度です。野村証券本社ビル、銀座のソニービル、羽田空港、全国6か所のZEPP(ライブハウス)などでこの制度が利用されています。 大橋法律事務所でも今年8月からこの制度を利用して使用電力すべてをバイオマス発電によってまかなうことが可能となりました。

4 環境マネジメントシステム(EMS)について これら環境保全に対する自主的取組を促進する制度として環境マネジメントシステムがあります。このシステムはすでに日弁連で導入され、単位会では京都弁護士会が導入しています。また、大阪の法律事務所でも導入例があります。EMSについては「その2」で述べ詳しく説明します。

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