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2016年5月 の投稿

福岡市医師会とのパートナーシップ講演会

カテゴリー:月報記事

会員 楠田 瑛介(66期)

平成28年3月30日に、福岡市医師会・福岡県弁護士会パートナーシップ協議会の主催による講演会「虐待と非行」が開催されました。

講演会の報告の前に、主催団体である医師会・弁護士会パートナーシップ協議会についてご説明します。

この協議会は、医師会、弁護士会が互いの専門的知識の共有を図り市民へのサービス向上に繋げることを目的として平成19年2月に立ち上げたものです。

協議会の具体的な活動を担う組織として「高齢者障害者権利擁護委員会」と「児童虐待防止対策委員会」が置かれ、勉強会や講演会を実施してきました。

児童虐待防止対策委員会は、発足以来、活発な活動を行ってきました。

具体的には、定例委員会を2か月に1回程度開催し、福岡市児童相談所(こども総合相談センター)、NPO法人ふくおかこどもの虐待防止センター(F・CAP―C)とともに、児童虐待に関する様々な知見や制度について学んできました。

また、平成20年以降、震災のため中止となった平成23年を除く毎年3月に、児童虐待に関する講演会を開催して、医療関係者や弁護士のみならず、行政職員、NPOの方々など一般市民に対して、児童虐待に関する啓発をしています。

さて、今年の講演会は、「虐待と非行、そして発達障害−被害と加害の臨床を考える−」として、花園大学社会福祉学部臨床心理学科の橋本和明先生にご講演いただきました。

まず、虐待と非行について、加害者の中にも過去に虐待などの被害を受けた者もおり、「被害と加害の逆転現象」あるいは「被害と加害の反復現象」に対応する必要性について強調されました。

虐待が子どもに与える影響について、様々な影響がある中で、橋本先生は、「解離」について詳しく話されました。

解離とは簡単にいうと、意識の連続性がなくなることです。トラウマ体験があると、その体験を「冷凍」しなければ自分を保てない、そのような体験を人格・意識から切り離す、そうした心理的メカニズムが解離です。解離にも一次解離から三次解離(健康な解離から解離性同一性障害)まで広がりがあります。

三次解離の具体例として【性的虐待を受けているのは別の女性で自分ではない】というのが挙げられます。

次に、虐待と非行のつながりについてのお話です。虐待から逃れようと、非行の一歩手前、回避的行動をとる、暴力粗暴型非行・薬物依存型非行・性的逸脱型非行という非行の種類によって様々な行動があり、それは解離状態ともいえる、この回避的行動にいち早く気が付き、別の手段を与えることが大切である、と、橋本先生は、具体例を交えながら説明されました。

次に発達障害についてです。すでに残り時間がわずか、DSM-5による分類など細かな話は省略です。

発達障害と非行について、「自我と枠」の関係を橋本先生が書かれた絵を参考にしながら、成長とともに自我と枠のバランスが悪くなり、逸脱が生じると説明がありました。なかでも、性に関するつまずきや逸脱が多くなる理由として、親密な仲間関係から知識が得にくいハンディキャップなどを挙げられました。ものの見方が違うようです。例えば、「(少しふくよかな女性)担任の先生に対して、『先生が浴槽に入っているのを見たい』と言った」という例を挙げられました。フツーは、「先生の裸を見たい」ととらえるのではないでしょうか?しかし、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害−アスペルガー障害や自閉症)の子は、「先生が浴槽に入ったときの『水位』」に興味を持っているのです。

ここで時間切れとなってしまいました。最後に橋本先生は、虐待・非行・発達障害は本来関係が遠いはずが、それぞれへの対応によって距離が近くなる、と強調されました。

このように、分かりやすい具体例を交えてのお話だったので、抽象的になりがちなお話について大変わかりやすい講演でした。

橋本先生は、近年は、少年の裁判員裁判などでの情状鑑定に力を注いでおり、人材育成もされているようです。

みなさま、来年はどのようなテーマになるか分かりませんが、大変勉強になるので、ぜひ講演会にご参加ください。

連載/高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説 第4回/地域包括支援センターの役割

カテゴリー:月報記事

高齢者・障害者委員会 委員 大町 佳子(62期)

1 地域包括支援センターの概要

(1) 地域包括支援センターは、下記2で説明する事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設です(介護保険法第115条の46第1項)。

(2) 地域包括支援センターの設置主体は、市町村、または市町村から委託を受けた者です(介護保険法第115条の46第2項、第3項)。

(3) 地域包括支援センターの職員としては、原則として保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置されています(介護保険法施行規則第140条の66第1号)。

2 地域包括支援センターの役割(介護保険法第115条の46第1項)

地域包括支援センターの主な業務は以下のとおりです。

(1) 総合相談・支援業務(介護保険法第115条の45第2項第1号)

総合相談・支援事業は、地域の高齢者が、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を継続していくことができるようにするため、どのような支援が必要かを把握し、地域における適切なサービス、関係機関および制度の利用につなげる等の支援を行うものです。高齢者だけではなく、その家族、近隣に暮らす人などからの高齢者に関する相談も受け付けています。

(2) 介護予防ケアマネジメント業務(介護保険法第115条の45第1項第1号ニ)

介護予防ケアマネジメントでは、チェックリストにより「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に該当すると判断される者に対して、その心身の状況、置かれている環境、その他の状況に応じて、その選択に基づき、訪問型サービス、通所型サービス、その他の厚労省が定める生活支援サービスから、対象者の状況にあった適切なサービスが包括的かつ効率的に提供されるように必要な援助を行います 1。なお、これらの予防サービスには、ボランティアなど住民が主体となった支援なども含まれます。

また、要支援者については、必要に応じて、介護予防訪問看護や介護予防福祉用具貸与等のサービスを利用することもできます。

(3) 権利擁護業務(介護保険法第115条の45第2項第3号)

権利侵害を受けている、または受ける可能性が高いと考えられる高齢者が、地域で安心して尊厳のある生活を行うことができるよう、権利侵害の予防や対応を専門的に行うものです。事業内容としては、高齢者虐待の防止および対応、消費者被害の防止および対応、判断能力を欠く常況にある人への支援などがあります。

例えば、高齢者に成年後見制度の利用が必要なケースについては、親族に制度の説明をして申立ての支援をし、申立てを行える親族がないと思われる場合や親族があっても申立てを行う意思がない場合は、市町村長申立てにつなげるなどしています。また、高齢者への虐待事例を把握した場合は情報の収集等を行って状況把握をしたうえで、緊急性が高い場合には養護者との分離を行ったり、養護者や家族の状況に応じた支援を行ったりします。

(4) 包括的・継続的ケアマネジメント業務(介護保険法第115条の45第2項第3号)

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務は、地域の高齢者が住み慣れた地域で暮らすことができるよう、ケアマネージャーが個々の高齢者の状況や変化に応じた包括的・継続的なケアマネジメントを実現することができるように指導や支援を行うものです。

具体的には、地域のケアマネージャーに対する個別の相談窓口を設置する、ケアマネージャーの日常的業務の実施に関しケアプランの作成技術の指導等を行う、ケアマネージャーが抱える支援困難事例について、関係機関との連携のもとで具体的な支援方針を検討し、指導助言等を行うといった業務を行っています。

また、施設・在宅を通じた地域における包括的・継続的なケアを実施するため、医療機関を含めた関係機関との連携体制を構築し、地域のケアマネージャーと関係機関の間の連携を支援するといった業務も行っています。

(5) その他

上記(1)~(4)のほか、地域包括支援センターの業務として、在宅医療・介護連携の推進(介護保険法第115条の45第2項第4号) 2 、生活支援・介護予防サービスの体制整備(介護保険法第115条の45第2項第5号) 3 、認知症施策の推進(介護保険法第115条の45第2項第6号) 4 、などもあります。

3 福岡県内における地域包括支援センター

(1) 地域包括支援センターは、市町村の人口規模、業務量、運営財源や専門職の人材確保の状況、地域における保健福祉圏域(生活圏域)との整合性に配慮して、最も効果的・効率的に業務が行えるように、市町村の判断により担当圏域が設定されることとなっています。

(2) 福岡県には、平成27年11月1日現在、173カ所の地域包括支援センターが設置されています。

1 平成26年6月18日に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下、「医療介護総合確保推進法」という。)が成立し、同月25日に公布された。これにより介護保険法が一部改正された。

この改正により、従来の介護予防給付によるサービスうち介護予防訪問介護と介護予防通所介護については介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という。)へ移行されることとなり、平成29年度までに全ての市町村で実施されることとなった。

従来の介護予防給付によるサービスのうち、訪問介護・通所介護以外のサービスについては、引き続き介護予防給付によるサービスの提供が継続される。

また、総合事業のみを利用する場合については、要介護認定等を省略し、チェックリストにより「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に該当すれば、サービスを利用することが可能となった。

2 医療介護総合確保推進法による介護保険法の改正により、平成30年度までに全ての市町村で実施されることとなった。

3 同上

4 同上

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