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裁判員裁判・傍聴記(その8)

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 2月下旬、ある裁判を傍聴しました。
 検察官の論告・求刑そして弁護人の最終弁論があります。
 検察官は主任ではなく、女性検事が立ち上がりました。証言台の前に立って、左手に原稿を持ち、右手にパワーポイントを操作するためのペン型のスティックを構えます。
 本件は公訴事実に争いはなく、量刑が問われています。パワーポイントによって場面を次々と切り換えて話を進めます。被告人に有利な情状にもあえて触れます。被告人が若いこと、前科・前歴のないことは、あたりまえのこと、ごくごく常識的なことだと切って捨てました。
 そして、求刑として懲役12年としました。
 傍聴席からすると、この時点で初めてパワーポイントの画面によって求刑を知るわけですが、実際には、裁判員の手元にはA3ペーパー1枚が配布されていますので、気の早い人はペーパーを手にしたときに求刑が12年であったことを知ったことでしょう。
 論告のとき、多くの裁判員は手元のパーパーに目を向けていて、検察官のほうを注視している人のほうが少ないように見受けられました。
 求刑があったので終わりかと思うと、検察官は、つい先ほどの被告人質問をふまえて、次のように付言しました。
 被告人は、先ほど「後悔していない」と述べました。これは犯行直後の供述調書と同じ言葉です。検察官は、今日の時点で、被告人が謝罪の言葉を述べることを期待していたのですが・・・。
 このときには、もちろん、あらかじめの原稿があったわけではありません。用意していたペーパーは証言台の上に置き、裁判員の顔ぶれをしっかり見ながら語りかける口調でした。裁判員も検察官のほうをじっと見つめて、考えている気配です。やはり、このようにして裁判員との交流があったほうが効果的ではないかという印象を持ちました。
 次の弁護人による最終弁論に移行する前、裁判長は検察官の配布していたペーパーに誤記があるのを指摘していました。もちろん、直ちに検察官はそれを認め訂正手続をとることにしました。
 弁護人の最終弁論は、直前にペーパー1枚を配って開始しました。
 これから弁護人の意見を申し上げます。その内容は終わった直後にペーパーを配布しますので、裁判員の皆さんは、私の話をよく聞いてください。
 このように言って弁護人は熱弁をふるいました。
 パワーポイントは使わず、OHPです。両手を証言台について、裁判員たちを順繰りに見つめながら大きな声で最終弁論を展開していきます。キーワードを2つに設定して、それぞれにもとづいて展開するというやり方は、初めて見ましたが、裁判員の興味・関心をひきつけるうえでは有効だろうと思いました。
 最後に、結論として、弁護人は量刑として懲役6年が相当であると結びました。弁護人は裁判に対して、ペーパーを2種類配ることになります。そして、弁論用の原稿も別に用意していました。
 双方の意見が終わって、次の手続に移ると思っていると、突然、裁判長が大きな声で傍聴席に向かって話しかけます。
 「傍聴席の最前列の人」という呼びかけには、私も最前列にいましたから、ドキッとしました。そして、裁判長の次の言葉を聞いてある意味で安心しました。
 「寝るのなら、廊下に出てからにして下さい」
 えっ、何のこと、誰だろうと思って左のほうを見ると、なるほど、60歳ほどの背広を着た男性が大口を開けて眠りこけています。恐らく、本件とは関係のない人が暇つぶしを兼ねて軽い気持ちで法廷に入ってきたのでしょう。それにしても、ひどい話です。人が殺されたという事件で、弁護人が熱弁を奮っているのに大口を開けて最前列で居眠りするなんて信じられません。公開の法廷というのは、ときにとんでもないことが起きるものです・・・。(な)

裁判員裁判 傍聴記(その7)

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 2月下旬、ある事件の法廷を傍聴しました。
 2日目となりました。今日もテレビカメラの前撮りがありました。2分間、じっと身動きしないというのも気疲れするものです。
 午前9時50分に裁判開始の予定ですが、カメラの調子が良くないようです。書記官の人たちがいろいろ操作して、ようやく動くようになり、被告人が入廷します。若い女性です。上はブラウスにカーデガン、下はジーパン姿です。いわゆるジャージ姿ではなく、町で普通に見かける女の子スタイルですので、違和感はありません。履いているのはサンダルですが、一見すると革靴のようにも見えました。裁判員に予断を抱かせないよう、被告人の衣装にも気をつけています。
 被告人の腰縄・手錠が外されたあと、裁判官たちが入ってきます。一番最後に左陪席の裁判官が入ってきて、扉を閉め、全員そろって黙礼してから着席します。法廷内の全員も立って黙礼して着席しました。
 昨日受けとった包丁とロープは持参されませんでした。どこかにしまってあるのでしょう。
 尋問の前に裁判長が被告人に注意します。
 「あなたも事件について好きこのんで言いたいことではないでしょうが、裁判所としても一生懸命に聞いていますので、できるだけ大きな声で言ってください」
 被告人は黙ってうなずきました。まずは、弁護人から被告人に質問します。
 質問項目を書いたペーパーを右手に持ち、自席に立って、左を机について、少し前傾した姿勢で質問します。これは実は私もよくする姿勢なのですが、傍聴席から見ていると、やはり前傾姿勢というのはあまり見栄のよいものではありません。被告人に対して熱心なあまり身をのり出しているという姿勢を示すものとも言えますが、改善したほうがよいようです。自戒の念をこめて報告します。つまり自分の席にむいて背中を伸ばして立ったほうが格好よく見えるということです。
 あとで、検察官もときどき同じような前傾姿勢をとっていました。
 弁護人の質問が40分間ほどあったあと、25分間の休憩に入ります。恐らく、このとき、裁判官が裁判員に対して、初歩的なことを含めて、いろいろ手続について解説しているのだと思います。
 休憩後に検察官から質問があります。検察官としては、前日に被告人調書の朗読によって基本的な立証は終えているという考えのようで、被告人の今日の答弁のいくつかについて、主任そして女性検察官の順で質問していきました。
 被告人の声は大きくなかったのですが、マイクが使われているようで、傍聴席にいてもはっきり聞きとれました。これまでの法廷では、証言台で前を向いてボソボソ話されるとマイクがないものですから、傍聴席からはよく聞きとれないということがありましたが、改善されたようです。
 検察官の質問が終わり、裁判長が弁護人に対して補充質問がないかどうかを確認しました。弁護人が質問はないと答えると、裁判長が午後からは裁判所のほうから質問しますといって午前11時20分、早い休憩に入りました。(な)

裁判員裁判 傍聴記(その6)

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 2月下旬、ある事件の法廷を傍聴しました。
 証人調べのあと、被告人の供述調書が朗読されました。
 被告人が女性だったからでしょうか、女性検事がゆっくり読み上げていきます。
 主任検事がその前に、これから読み上げる調書に何が書かれているか、簡単にコメントします。
 身上・経歴、犯行に至る経緯、犯行の動機、犯行の状況、犯行後の行動など、10通ほどの被告人調書が読み上げられ、被告人の心理状況や行動が明らかにされます。
 調書のなかで問答部分になっているところは、主任検事が問いを読み、答えを女性検事が読むというような役割分担もあります。
 犯行状況の再現写真も調書のなかで出てきますが、こちらのほうは、先の遺体写真とは違って法廷内のモニター画面に大きく映されました。
 被告人の供述調書の読み上げにちょうど1時間かかり、午後4時すぎに第1日目の裁判が終了しました。(な)

裁判員裁判 傍聴記(その5)

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 2月下旬、ある事件の法廷を傍聴しました。
 午後からは、いよいよ証人尋問です。尋問の前に裁判長が検察官と弁護人の双方に注文をつけました。
 「両脇の裁判員から被告人の顔が見えなくならないように、質問するときの立つ位置に気をつけてください」というものでした。
 なるほど、裁判官3人、両脇に裁判員が3人ずつ座っていますので、両端にいる裁判員は、検察官や弁護人の立つ位置によっては被告人の顔が見えなくなる恐れがあります。
 検察官は質問するとき、法廷内が暑いため、背広の上着を脱いでシャツ姿になり、自席から動いて検察官席の脇に立って質問を始めました。気がつくと首から何かぶら下げています。どうやらマイクのようです。そう言えば、中央にある書記官の机の上にはカメラのレンズが見えます。レンズは小さな木の箱に覆われていて、あまり注意を引きません。ただし、裁判長は証人に対して証言は録音録画していますということは述べていました。証人の証言はビデオ取りされ、評議のときに再現できるようになっているのです。
 検察官の質問のあと、弁護人が質問します。双方の質問が終わったあと、いったん休憩します。再開後、裁判体からの質問が予定されていますが、裁判長が促しても裁判員からの質問はありませんでした。
 そこで、次に裁判官2人から、先ほどからの証人の証言の意味を確認するような質問がなされました。(な)

裁判員裁判 傍聴記(その4)

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 2月下旬、ある事件の法廷を傍聴しました。
 午後からも供述調書の朗読が予定されています。ただ、その前に、遺体などの写真は午前中に取り調べすみになったわけですが、実は被告人に示していなかったということで、検察官は被告人席のすぐ近くに行って写真を示しました。被告人は無言のまま見ていました。
 関係者の供述調書について、女性だったら女性検事が読むと先に報告しましたが、午後からは女性の調書なのに女性検事に読ませず、主任検事が自ら朗読しました。
 警察のつくった捜査報告書も取り調べられました。これは争いのない事件なので、時間の節約のために関係者の供述調書までは不要としたもののようです。
 犯行に使われたロープと包丁が被告人に示されました。
 このとき、検察官がロープを素手で扱っているのを見て驚きました。ビニール袋に入れておき、必要なら取り出すべきものだったように思われます。包丁のほうはガラス箱に入れて、しっかり固定されていました。
 いずれも被告人に示したあと、壇上の裁判官席に置かれました。裁判員にはあとで回覧するのでしょうか・・・。(な)

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