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法廷で目で見て耳で聞いて分かる審理

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 引き続き裁判員裁判の審理のあり方についての今 ?幸彦判事の指摘を紹介します。傾聴すべき意見です。(な)
 「裁判員裁判の審理に求められる理念は、『法廷で目で見て耳で聞いて分かる審理』という言葉に尽くされている。審理の改善をめざすすべての努力はまず、この審理の実現に向けられるべきである。
 全国各地で行われている模擬裁判の中には、依然として精密司法、調書裁判を前提としたとしか思えないような実践例を耳にする例すらないではない。施行をわずか1年半後に控えた今、早急に原因を明らかにし、在るべきプラクティスを定着させていく必要があると思われる」
 「いかに分かりやすく話すか、どのようにして裁判員から議論を引き出すか、円滑な議論を実現するためにどのような発言が適切か(適切でないか)といった問題であり、社会心理学やコミュニケーション能力を巡る様々な研究分野に関連する問題と思われる」
 「審理の結果を受けて、実質のある評議をどれだけ分かりやすく、合理的、効率的に進行させて結論に至るかの問題である。『法廷で目で見て耳で聞いて分かる審理』の成果を評議にいかに生かすかの問題といってもよい」

裁判員裁判と判決書のあり方

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 前回に続いて判決書のあり方についての今崎幸彦判事の指摘を紹介します(な)。
 「判決書の記載が委曲を尽くしたものであろうとすればするほど、判決文が長大となりがちであった。また、こうした詳細な判決書を支えてきたのは、証拠書類を立証の中心に据えた精密司法にあったわけであるが、裁判員制度の導入に伴い、当事者の主張が徹底的に絞り込まれ、証拠も厳選されて、簡潔で分かりやすい審理が実現することになれば、精密司法を前提にした判決書の作成はもはや不可能になる」
 「模擬裁判を実践した報告によれば、時間的な制約や裁判員の集中力の問題から、裁判官同士においてされているような細かな事柄まで議論するのは難しく、多くの場合、判決理由中のいわば骨格に当たる部分を議論するのが精一杯であり、ましてや、判決書の構成や表現まで裁判員と評議をする余裕などないというのが実情のようである」
 裁判員裁判における「判決書はよりコンパクトなものになっていくであろう」
 「これまで、合議事件では、ときには判決書の構成や表現まで含めた緻密な評議を行い、判決書完成までに比較的簡単な事件でも数日から1、2週刊、複雑困難な事件であれば数ヶ月単位の時間をとって書き上げていた。これに対し、裁判員裁判では、判決書作成作業は、より短期に集中して行われることになると思われる」
 「ただし、いかに時間的な限界や裁判員の集中力の問題があるとはいえ、安易な簡略化が許されないのはいうまでもない」
 「評議の結論を判決理由として明らかにすることが求められているという事情も看過できない」「判決書として必要な機能を果たしつつ、評議に忠実で、簡潔かつ分かりやすい判決書とは何かという観点からその具体像を追求していく作業が求められる」

難解な法律概念と裁判員裁判

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 最新の判例タイムズ(1255号)に今崎幸彦判事が、各地の模擬裁判をふまえて興味深い指摘をしていますので紹介します(な)
 「難解な法律概念を分かりやすい言葉に置き換えるという作業」がすすめられています。しかし、「我が国の実体法の解釈は、膨大な量の裁判例に裏打ちされた難解かつ精緻なものであり、いかに分かりやすい言葉を用いようと、単純な言葉の言い換えでは、法律の専門家でない裁判員にその本質を過不足なく伝えることは不可能である」
 そして、分かりやすい言葉は、「裁判官が、評議において、裁判員に対し議論する事項を説明する際に用いられることはもちろんである。しかし、それに勝るとも劣らないほど重要なのは、それが、当事者の主張・立証においても用いられるべきものであるということである。なぜなら、仮りに新たな枠組みが見いだされたとしても、当事者がそれを利用せず、従来の難解な法律概念を用いて主張・立証したのでは、裁判員には理解されず、結局、裁判官が評議でその意味を説明しなければならなくなるからである」

アメリカでの経験をふまえた裁判員選任の問題点

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 最新の判例タイムズ(12月15日号、1252号)に、アメリカで弁護人をした経験にもとづいて日本の裁判員選任手続きについて提案がなされています。日本人教授による貴重な提案と思われますので、紹介します。(な)
 アメリカ(ロサンゼルス)では、陪審員に対してあらかじめ質問票を裁判所が送っても、44%の人は返答しない。だから、フォローが義務づけられている。日本でも裁判員に対して質問票が送られることになっているが、同じように半数近くの人が返答しないことも考えられる。そのとき、これらの無返答者が自動的に排除されると、半数近い裁判員候補者が選任過程から除去されることになり、やはりきちんとフォローする必要がある。
 東京では年間400件ほどの裁判員裁判が予想されている。そうなると、2万人から4万人という裁判員候補者が裁判所に出頭することになる。そうすると、時間の節約のために、原則は一人ずつ個別に質問することになっているが、一人ずつではなく、グループ別か候補者全体に対して質問が行われる可能性がある。また、質問の数や内容も大きく削られる危険もある。
 アメリカでは陪審員の選任手続に、過半数の事件が一日で終了しているが、社会的に評判になった事件では数週間かかっている。一般的な裁判では、被告人が1人のときの中央値が2時間半で、被告人が複数でも中央値は5時間である。
 日本の最高裁は、午前中に裁判員の選任手続を終え、午後からは審理に入るという手続をイメージしているが、果たして、そのとおりうまくいくのか心配である。

裁判員裁判は刑事裁判を変える

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 最近の判例時報(10月21日号、1977号)に、第20回全国裁判官懇話会において裁判員裁判についてなされた議論が紹介されています。第一線にいる真面目な裁判官の指摘するところに共感を覚えましたので紹介します。(な)
○ 今の刑事裁判の問題点を考えたとき、裁判員制度は現在考えられる最善の選択ではないかと思っています。
  というのは、今の刑事裁判は、良かれ悪しかれ供述調書を中心とする裁判になっています。しかも、その供述調書を基礎とする裁判に慣れてしまった裁判官が、有罪慣れをしている危険があります。刑事裁判官が有罪慣れをしているところに大きな問題があり、これをどう変えていくのかというのが、刑事裁判の緊急の課題であると思います。
  裁判官と社会とのコミュニケーションが欠けてきているというのが、民事・刑事を問わず歴史的に見て今の日本の裁判官の最大の問題点ではないかと思います。
  裁判官は外との交流がほとんどなくなってしまっているのが今の状態ではないかと思います。そのために、市民感覚なり、国民の意識なりとどんどん離れていく危険があります。
  3対6となったら、裁判主体が根本的に変わったと評価すべきではないかと思います。この制度を積極的に進めていくようにしないと、日本の刑事裁判はいつまでたっても変わらないのではないでしょうか。
○ では、今のような制度設計で、調書裁判依存から脱却できるんだろうかという点について、根本的に疑問を持ちます。
○ 国民の市民感覚による司法参加が望ましいということを錦の御旗にしているようですが、それは誤りではないか。民主主義は、多数者の支配であるとともに、少数者を多数者支配の行き過ぎから守るものでもあり、前者の担い手が立法と行政、後者の担い手が司法ではないかと思います。したがって、立法・司法に求められているのは、少数者に対しては公正な理性的精神、換言すれば、理性に裏づけられた在野の精神というべきものではないかと思います。
  裁判員制度を肯定し、非法律家が多数を占める合議体を裁判所と認めることは、被告人の裁判所の裁判を受ける権利を骨抜きにするものであって、同様に非法律家である軍人が多数を占める合議体による軍事裁判所、軍法会議の創設に道を開くことになるのではないか。
○ 裁判員制度は、私たちがやってきた職業裁判官による刑事裁判の中の、とくに事実認定に対する批判から出発している。
 裁判員制度に対して反対されているけれど、それでは元の裁判でいいのかとは言い切れない。やはり、前の裁判よりは少なくとも良くなるのではないか。
  ある裁判官は「有罪の偏見から出発しているような判決を見ると、やっぱり裁判員裁判にも賛成せざるを得ないのかな」という感想を漏らしていました。練達の刑事裁判官がそういう感想を持たざるを得ないほどに、職業裁判官による刑事裁判というのが、いわば批判を受けているという問題がある。
○ いろんな問題があるかもしれないけども、日本の裁判が市民参加のもとにすること自体にもっと価値を見出したらいいんじゃないか。
○ 本来、刑事訴訟法は供述調書は例外的にしか使わないシステムとしてできています。それを実際上変えて運用しているのは実は裁判官なんです。その裁判官の意識を、すなわち裁判主体そのものを変えるということが、裁判制度の一つの大きな眼目だと思っています。
○ 今の裁判をどのくらい変えなければならないかですが、要するに、刑事訴訟法の原則に戻ればいい。つまり、弁護人は、書証は原則全部不同意にする。そのうえで、証人を呼ぶことが訴訟経済に著しく反するとか、証人ではかえってわかりづらくなるとすれば、検察官と合意書面をつくって、わかりやすく争いのない事実を裁判員に呈示する。
  調書が使われなくなると、捜査側も厚いものはつくらなくなる。
  しかし弁護士も、骨の髄まで調書裁判主義がしみついています。

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