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最終弁論

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 最新の判例タイムズ(1266号)に、わかりやすい弁論の工夫が紹介されています。大変参考になります。(な)
最終弁論
 最終弁論は、被告人側が冒頭陳述で予告したストーリーを証拠調べでいかに証明してみせたかを説き、裁判員に自らそのストーリーを受け入れる意思を持たせるための、口頭による最後のプレゼンテーションである。
 これは、その後に続く評議に効果をもたらす最後の機会であるから、最終弁論は単なる締めくくりではなく、それまでの手続すべてを踏まえた「総集編」でなければならない。それを意識して効果的に弁論をするためには、冒頭陳述から尋問までの成果と一貫した流れを持つ、それ自体も完結したストーリーを組み立てなければならない。
 構成を組み立てる際の留意点として、初頭効果と新近効果が意味をもつ。二番目に重要なことを「最初」に、一番重要なことを「最後」に配置する。
 最終弁論は口頭で行われるから、口頭で述べた場合に分かりやすい構成と内容でなければならない。
 最終弁論も、当然、「読む」弁論から「話す」弁論に変わる。朗読方式はすすめられない。朗読を始めただけで、マイナスイメージを持つ裁判員がいる確率は高い。
 公判が集中審理であれば、直前までの審理の成果を完璧な文章に盛り込むことは不可能である。「文書の文化」から「口頭の文化」への脱皮を目ざすべきである。
 口頭による弁論では、あれもこれも、ともかく網羅的に言っておく、という「文書の文化」の手法はそもそも不可能だし、できても裁判員には伝わらない。すなわち、重要な要素にしぼり、それらに集中して内容を配置する構成が望ましい。

共同正犯・共謀共同正犯

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『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)からの紹介です。実際のあてはめはかなり難しいことがあります。(な)
○ 共同正犯(きょうどうせいはん)
  2人以上で一緒になって犯罪を行った人たち。犯罪行為の一部しかやっていない人でも、全部について責任を問われる。
○ 共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)
  直接には手を下していない人でも、犯罪の計画に加わって重要な役割を果たしていれば、共同正犯となることがある。
○ 裁判の場面
  たとえば、検察官の冒頭陳述において、「被告人Aは、被害者Fの手をナイフで刺して全治10日間のケガをさせ、そのすきにBは、金を探し出し現金100万円を奪いました。AとBは、強盗致傷罪の共同正犯です」と主張する。
  また、弁護人の最終弁論のとき、「検察官は、Cが、AとBと一緒にこの強盗の計画を練ったとして、共謀共同正犯だと主張していますが、Cは単に、F宅に金がありそうだと教えただけで、正犯と評価できるものではありません」という。
○ 共同正犯とは
  Aが被害者Fをナイフで脅してケガをさせ、そのすきにBが金を探し出して現金  100万円を奪ったとき、AもBもどちらも同じく、強盗致傷罪の共同正犯となる。
  ケガをさせるだけなら傷害罪、金を盗っただけなら窃盗罪だが、このように共同して行った犯罪は全体を通じて一連の行動とみる。共同正犯となれば、Aはケガをさせたことだけでなく金を奪った責任も問われ、Bは金を奪ったことだけでなくケガをさせた責任も問われ、2人とも強盗致傷罪になる。
  一般に、主犯という言葉は「中心的な役割を果たした人」、共犯、共犯者は「従的な役割を果たした人」という意味で使われる。しかし、法律用語の共同正犯は、役割上の主従関係ではなく、強盗致傷罪という犯罪を一緒に行ったとして責任を問われることを意味する。
  A、Bそれぞれが果たした役割の軽重は、量刑で評価されることになる。
○ 共謀共同正犯とは
  Cが、AとBにこのような強盗を支持しただけで現場に行かず、ケガをさせたり金を奪ったりする行為にまったく加わっていなかった場合でも、共謀共同正犯として強盗致傷罪に問われることがある。
  裁判では、犯罪行為の現場にいなかった人が共謀共同正犯として起訴され、弁護側がそれには該当しないとして争うことがある。犯罪行為に直接加わっていない人を、実際に犯罪行為を行った人と同様に処罰することになるので、慎重な検討が必要になる。
  また、計画に加わっても、重要な役割を果たしたとは見られない場合には、教唆(きょうさはん)となることがある。

メディアにどう対応するか

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 刑事弁護人はマスコミにどう対応するべきか、『自由と正義』(08年5月号)にのっている議論は大変興味深いものがありました。そのエッセンスを紹介します。不正確かもしれませんので、ぜひ全文をお読みください。(な)
○ 国民から無作為で裁判員を選ぶ裁判員制度がまもなく導入される。連日報道される衝撃的な事件について、捜査機関からの情報だけで報道されれば、特定のイメージが作られて、裁判員に大きな予断を与えることは確実だ。そのとき、弁護側がノーコメントでは、弁護活動が機能しなくなる。弁護側もマスコミを無視できず、公判で効果的な弁護をするためにも、公判前から世論にアピールする手法が主流になるはずだ。
○ その見解には基本的に反対。捜査段階の記者の攻勢は、単にネタを取りに来ている。捜査段階ではとにかくネタを取って、面白おかしく書くというのが今のマスコミだ。
 裁判員裁判を意識するのであれば、公判段階、起訴された後に、弁護側が伝えたいことを、2時間でも3時間でも4時間でもかけて、弁護側の方針や言いたいことを十二分に伝える。それをやれば十分、そうすればとんでもない記事にはならない。
○ 裁判員だから予断を受けやすい、職業裁判官だからそうじゃないと区別して議論を展開するのはどうなのか。そういう区別はないし、むしろ、大きく報道された影響は、職業裁判官のほうが受けることがありうる。職業裁判官のほうが、大報道の事件の場合には、有罪に傾くのではないかと思う。
○ マスコミの報道によって裁判員が予断を持つ、これは正しい。しかし、そのために裁判員に対して裁判官と別途の対応が必要かというと、同じだと思う。
 むしろ職業裁判官のほうが、事件の報道については敏感で、記憶力もすぐれた人が多いから、その影響は同じか、大きい。普通の人は3ヶ月前の犯罪報道を覚えていない。裁判官は、理屈では分かっているけど、報道で概略は理解していると思っている。
 裁判員のほうが「あ、そうか」と思って、ちゃんと証拠に向き合ってくれることも、ありうる。
○ マスコミからの取材攻勢があるときは、まさしく刑事弁護とは何かを訴えるチャンスだ。だから、弁護人に逃げろとか、マスコミの前に顔をさらすなとは言わない。常に、なぜ今、接見内容について言えないのかと話している。
 裁判員裁判になれば、バラ色の裁判ができるとは決して思っていない。弁護人がしっかりしなければ、それは悲惨な裁判になると思っている。裁判員が抱く予断もあるだろう。だけど、原則は何かということを今、この激動の時代にもう一度考えるべきだと思う。

合理的な疑問(合理的な疑い)

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『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より、引き続き紹介します。(な)
○ 弁護人による最終弁論の例
  証拠を見て、証拠にもとづいて、皆さんの常識に照らして「有罪であること」に少しでも疑問があったら、有罪にはできません。
  皆さんの常識に照らして「無罪なのではないか」という疑問が残らない程度に検察官が証明していないのであれば、有罪の判決はできません。
 裁判員の皆さんは、「被告人が犯人か、犯人ではないか」という結論を出すことにこだわる必要はありません。皆さんの常識に照らして証拠を検討した結果、検察官が証明しようとしていることについて、少しでも疑問があれば、皆さんは無罪の評決をしなければなりません。
 皆さんは被告人が犯人か犯人でないかを決めるのではなくて、犯人だと断定することに「疑問があるか、ないか」を判断すればよいのです。有罪と無罪を分けるのは、この点です。
○ 評議のとき、裁判官の発言の例
  有罪と判断するには、皆さんが証拠にもとづいて判断して、被告人が間違いなく犯人であることが確実であると言えなければなりません。
  もし有罪らしく見える証拠があったとしても、皆さんの常識から見て犯人でない可能性が残る場合には、それは「確実」とは言えません。
○ 刑事裁判における「有罪判決」のルール
  刑事裁判では、検察官が主張していることと弁護人が主張していることと、どちらが正しいのかを判断するのではありません。検察官は、被告人が有罪であることを証明する責任を負っています。検察官がこの証明に失敗した場合には、被告人は無罪となります。
  裁判員は、検察官が有罪の証明に成功したかどうかを検討すればよいのです。
  検察官は、合理的な疑問を残さない程度の証明を行わなければなりません。合理的な疑問を残さないという意味は、裁判官と裁判員が審理のなかで現れた証拠を検討して、常識に照らして、検察官の主張(被告人が有罪であること)が間違いないと言い切れるということです。したがって、被告人が有罪であることが常識に照らして間違いないとまでは言い切れないときは、被告人が有罪であることについて合理的な疑問が残ったということになり、検察官は有罪の証明に失敗したことになります。このときは、被告人は無罪となります。

員面調書

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「裁判員のための法廷用語ハンドブック」(三省堂)より紹介します。(な)
員面調書とは、警察官が、事件について、容疑者を取り調べたり、被害者その他の関係者から事情を聞いたりして、その内容を書き記したもの。
○ 「司法警察員(警察官)の面前における供述を録取した調書」を、略して員面調書といいます。
○ 調書が例外的に証拠として採用される場合があることは検察官調書と同様ですが、員面調書が証拠として採用される要件は、検察官調書よりも厳しくなっています。
  例外として採用されるのは、次のような場合です。
? 証拠調べ請求をした相手側(たとえば、検察官が請求した場合は被告人・弁護人)が同意した場合
? 事情を聞かれた人が死亡したり行方不明になっており、員面調書に記載された供述内容がその犯罪の証明に欠くことができず、その供述がとくに信用すべき状況の下でされたものである場合
 しかし、とくに?の採用は厳しく、員面調書が、事実認定に使用できる証拠として取り調べられることはほとんどありません。
 ただし、証人尋問において、証人が員面調書に記載された供述と異なる証言をした場合、その証言が信用できないということを証明する目的で利用される場合があります。このような目的で使われる証拠を、弾劾証拠といいます。

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