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裁判官に反論する勇気をもとう

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 安原浩元裁判官は、評議の場で裁判員となった市民は裁判官に反論する勇気をもとうと、次のように呼びかけています。(な)
 「国民が特に心配されるのは、裁判官が『こう考える』と言って強引な訴訟指揮をしたとき、どうすればいいのかということだと思います。
 もちろん、裁判官の説明がすとんと落ちる、自分の考え、感じ方から見ても納得できるときには問題はないですが、『どうも納得できない』『反発を感じる』というときには、市民の感覚を刑事裁判に取り入れるという裁判員裁判を設けた趣旨からして、しかもほとんどの人は1回きりでしょうでしょうから、『反論する勇気』を持ってもらいたいと思います。
 裁判官を教えるというか、『新鮮な感覚で見た見方も取り入れるシステムではないですか。我々の意見も聞いてください』『こういう証拠については、どう評価するんですか』などと、思った意見・質問を率直にぶつけてほしいというのが、私の願いです。
 実際には難しいかもしれませんが、それをしないままで黙ってしまうと、それこそ変な評議・判決になってしまったという心の傷が残ってしまう危険があります。重大な事件ばかりですし、そこは責任を持ってやってほしいという思いです」

裁判官による説示

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安原浩元裁判官が、私なら次のように説明すると言っています。とても分かりやすい説明ですので、参考のためにご紹介します。
 「刑事裁判というのは、場合によっては命を奪うことができるくらいの重大な不利益を人に課すことになります。そのため、検察官・国の側に有罪を立証する責任があります。ですから、検察官が言っていることと被告が言っていることとを同じレベルで比べるのはおかしいんです。被告人の言い分は置いておいて、まず検察官の言っていることが胸にすとんと落ちるかどうか、検察官の立証で間違いないと言い切れるかどうかを中心に考えることが必要です。被告人がウソを言っているかどうかというのは、その次の問題です。
 検察官の主張・立証が、自分の胸にすとんと落ちて、納得できれば有罪です。しかし、どうも自分の考え方からするとおかしいなと思ったら、それを他の人にぶつけてみて、他の人の意見を十分に聞いても納得できないときは無罪にしてください」
(な)

裁判員の守秘義務

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 裁判員が評議の内容や、裁判員の氏名・住所など、公開の法廷以外の場で知った秘密を漏らしたときは、6ヶ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられます。
 しかし、裁判官や検察官、弁護人の発言に分かりにくい点はなかったか、評議のとき裁判長が議論を誘導しなかったか、裁判員をやって良かったか、こういう点について感想を述べることは許されています。
 ところが、評議のときに自分が言った意見は秘密にふくまれると解されています。
 裁判員に課せられている守秘義務は重すぎるという批判が各方面から出ています。
 マスコミは、裁判員に感想を求めることが出来ますので、裁判が終わった時点で、裁判員には記者会見に応じてほしいと要望しています。(な)

模擬裁判の成果と課題

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 これまで全国各地で実施された模擬裁判の反省点をふまえて最高裁判所(事務総局刑事局)が検討した結果が判例タイムズ1287号(09.3.15)に紹介されています(「模擬裁判の成果と課題」)ので、2回にわけて、ごくごく一部を紹介します。実務のうえで参考になると思いますので、興味をもったら、ぜひ原典にあたってみて下さい。(な)
○ 量刑についての評議資料
  従来どおりの総花的な情状事実の列挙によっては、裁判員に的確に主張を理解してもらうことは困難であり、当事者においてもいずれの量刑事情を重視すべきか、当該量刑事情が具体的な求刑・量刑意見にどのように結びつくかなどといった点についての説得的な説明方法をふくめ、論告・弁論の在り方を一層検討していく必要があろう。
  論告・弁論においても裁判員裁判用の量刑検索システムを意識した意見が展開されることが望ましい。もしこれにもとづくもの以外の量刑資料を用いた求刑または量刑意見がなされた場合、とりわけ特殊な裁判例が引用された場合は、裁判員を混乱させるおそれがあるのみならず、当事者の主張した量刑資料が妥当であるかを確認するために判決書などの証拠調べが必要となって、裁判員の大きな負担ともなろう。
  もとより、当事者が独自の量刑資料の提出を強く求めた場合、これを制限することはできないものの、当事者の求刑または量刑意見を評議の議論の中で的確に反映させるためには、当事者においても、裁判員裁判用の量刑検索システムにもとづく量刑資料を使用し、当該事案の個別事情の存在を主張して、量刑分布の中に当該事案を位置づけて求刑・量刑意見を述べてもらうことが有益であろう。
  論告・弁論において、各量刑事情は、総花的でなく、重要度を考慮して位置づけられる。量刑評議においては、そうした各量刑事情全体を基にして1つの視点を提供する論告と、別の視点を提供する弁論を、それぞれ全体として説得的なものとして評価できるかどうかを検討していくものであるべきである。
  この検討の結果、量刑評議において到達する事件全体の構図・見方について、「論告が全面的に正しい」とか「弁論が全面的に正しい」という結果になることはあるかもしれないが、まれであろう。同一の事情に関しても「論告の言い分はもっともであるが、弁論にもうなづける部分がある」ということが多いのではないか。判決の量刑の理由は、この検討の結果をそのまま記載するものとなろう。
  刑期の議論だが、裁判員裁判では、刑の量定に関しても国民の率直な視点や感覚が反映されることが前提となっている。しかし、刑法所定の刑罰の幅は広く、事実認定をしたあと、検察官の求刑や弁護人の量刑意見はあるものの、それ以外の判断材料のない状態で具体的な量刑意見を述べよと言っても、それは裁判員に不可能を強いるものであろう。
  そこで何らの手がかりが必要となろう。裁判員裁判用の量刑検索システムにもとづいて作成される量刑分布グラフは、この手がかりのための有効な方策として作成されたものである。量刑分布グラフを提示することをためらう必要はないであろう。
  量刑分布グラフを示す場合には、あくまでも具体的な量刑意見を述べてもらうための参考資料であり、量刑分布グラフに示された量刑の幅に必ずしも縛られる必要はないであろう。
  量刑分布グラフを示す場合には、あくまでも具体的な量刑意見を述べてもらうための参考資料であり、量刑分布グラフに示された量刑の幅に必ずしも縛られる必要はないことについて、適切に説明しておくことが必要であろう。

模擬裁判の成果と課題

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 これまで全国各地で実施された模擬裁判の反省点をふまえて最高裁判所(事務総局刑事局)が検討した結果が判例タイムズ1287号(09.3.15)に紹介されています(「模擬裁判の成果と課題」)ので、2回にわけて、ごくごく一部を紹介します。実務のうえで参考になると思いますので、興味をもったら、ぜひ原典にあたってみて下さい。(な)
○ 公判における供述調書の朗読
  供述調書については、その実質的な内容を全て公判廷に顕出するためには、基本的に、全文朗読または限りなくこれに近い要旨の告知(供述調書の全文を一言一句読み上げることまでは要しないといった程度の要旨の告知)の方法によることになろう。
  そうした方法により、裁判員に書証の内容を的確に理解してもらうためには、書証の内容自体が犯罪事実と重要な情状事実に即した簡にして要を得たものとなっていることが必要であるとともに、朗読の仕方に工夫が必要となってこよう。
○ 評議のあり方
  裁判員裁判の審理は、公判廷での審理そのものによる心証を形成できるようなものでなかればならず、審理が終わればそのまま評議が可能な状態となっていなければならない。評議を行うために裁判官から審理の説明が必要となるような審理であってはならないのである。
  評議では、審理での当事者の主張立証、最終的には論告・弁論を参考に、検察官の主張する主張する事実が、弁護人の主張立証したところを踏まえても、合理的疑いを容れない程度に立証できたかを議論する。
  こうした評議の在り方は、裁判員裁判において、裁判員の負担を軽減しつつ、裁判員と裁判官が一体感を持って実質的な評議を行い、適正な事実認定および量刑に至るための実践的な指針としても、正しい方向性を持つと思われる。
  もっとも、必ず論告・弁論に記載されたとおりの順序で評議をしなければならないというわけではない。そのように形式的に考えてしまうと、評議が硬直化し、ともすると裁判員の自由な意見表明を阻害することにもなりかねないであろう。この点、公判前整理手続において的確な争点整理がされていれば、通常は、評議においても論告・弁論に記載された順序で議論がされることになると考えられる。
  評議においては、裁判員には裁判官が持っていない視点や感覚の提示が期待される一方、それは単なる裁判員の意見・感想のぶつけ合いの雑談であってはならず。裁判官においても、犯罪や刑の本質、自らの知識と経験に根ざした証拠評価の観点などを裁判員と同じ目線で提示することによってはじめて、裁判官と裁判員との真の協働を実現することが可能となる。
  裁判員裁判のもとでも刑事裁判の本来の真相解明機能は損なわれないのと同じ意味で、裁判官の専門性は少しも損なわれない。いや、犯罪や刑の本質などを非法律家と共有できる専門性を求められるということでは、より高い本質的な専門性が必要とされるのである。
  評議においては、裁判官としても、自己の意見を過不足なく正確に述べることが必要であろう。ただし、その際は、裁判員の意見にも真摯に耳を傾け、裁判員との対話により、より説得力のある結論が導き出され得ることを常に念頭に置いて議論することが肝要であろう。

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