福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2011年11月号 月報

給費制維持緊急対策本部だより「第7回災害復興支援に関する全国協議会in神戸のご報告」

月報記事

会 員 中 村 亮 介(63期)

1 はじめに 平成23年9月28日(水曜日)午後0時から1時20分まで、参議院議員会館1階講堂で、院内集会が盛大に行われました。
院内集会には、鴻池祥肇議員、米長晴信議員をはじめ、多数の国会議員が参加され、約20名もの国会議員からのご挨拶がありました。 院内集会は、清水鳩子先生による開会宣言で始まり、その後、順に、法科大学院修了生、国会議員、大学学部生、日弁連から次々と発言がなされ、最後は、宇都宮健児日弁連会長による閉会宣言で集会は終りました。 発言の要旨は、以下のとおりです。

2 法科大学院修了生の声
アベケイイチさん(立命館大学法科大学院修了生)
自分は、宮城県仙台市出身で、今年の3月に法科大学院を修了し5月の新司法試験に向けて準備をしていた。しかし、受験の直前に震災が起き、過度のストレスのため今年の受験を断念した。その後、震災の影響で実家からの経済的援助が受けられなくなり、合格後は貸与制に移行し、就職難が待ち構えているという状況から考えて、弁護士になること自体を諦めざるを得なくなった。
貸与制になると、人のために役に立ちたいと思って弁護士になろうと思っても、裕福な人しか弁護士になれなくなる。お金のない人は、弁護士になりたいという夢を奪われる。
自分と同じような思いをする若者がこれ以上出ないように、貸与制への移行はするべきではない。

3 発言された国会議員の発言要旨
(1) 大口善徳議員(公明党)
給費制維持の問題については、3党協議も呼びかけている。法案成立に向けた時間は切迫しているが、給費制の維持に向けて頑張っていきたい。
フォーラムは、内容のない形だけの議論をしただけで、一時とりまとめをした。法曹養成は危機的な状況にある。根本的な議論の必要性がある。その議論をすることなく、財務的な問題があるからといって、貸与制にするのは、問題がある。なによりも他学部、社会人からの志望者が減っているが、このことこそ問題とするべきである。平岡大臣には、フォーラムの内容を否定して欲しい。フォーラムを継続するのであれば、根本的なところから議論して欲しい。
(2) 井上哲士議員(共産党)
フォーラムは、弁護士の5年目の年収のことしか検討していない。そもそも司法試験を受けることすら断念するという状況を全く見てないし、給費制の意義についても、検討していない。
戦後の厳しい中でも、給費制を実現したことを考えるならば、むしろ今こそ、給費制は必要なのではないか。
(3) 福島瑞穂議員(社民党)
給費制廃止は、大反対。法曹養成が借金が前提になると、日本の司法制度全体が崩れていく。
法律家養成だけの問題ではない。社会の人材育成の問題。
もんじゅは、1日5,000万円、年間200億円も維持費がかかっている。給費制のことくらいけちけちするなといいたい。
(4) 照屋寛徳議員(社民党)
法曹志望者が経済的な理由で法曹になることを断念するようなことがあっては絶対にならない。それは国家の大きな損失になる。
沖縄銀行は、琉球大学法科大学院の学生を支援して7名合格者を輩出した。民間が支援しているのになぜ国が支援しないのか。
私は、1970年から72年まで司法研修所で勉強した。家族は9人兄弟で貧乏だったが、旧司法試験ではそのような私も司法試験に合格することができた。現在のように、法科大学院修了が受験資格である新司法試験制度だったら、私は司法試験に合格することができなかった。
(5) 今野東議員(民主党)
莫大な学費がかかり借金を前提とする法科大学院に行こうとする人がいなくなっている。
そもそも、小泉時代の司法制度改革が破綻している。そのことから議論を始めるべきではないか。法曹養成制度全体のことから議論を始めるべきであり、給費制の議論はその後にするべきである。議論の順番が逆になっている。
(6) 吉田忠智議員(社民党)
法案成立に向けた日程がタイトである。厳しい状況ではあるが、給費制を見直すことには問題がある。給費制は絶対に存続していかなければならない。
(7) 山本剛正議員(民主党)
借金が増えていくと心がすさむ。これから法曹となる者に借金を課してくことは、道理として許すことはできない。法曹界が目指すべきは、質の高い弁護士を育てていくことである。
(8) 松野信夫議員(民主党)
私は現在、法務部門会の座長をしており、給費制問題の責任者である。
法曹養成をどうするか、という姿勢を示していかなければ、単に給費制、貸与制の二者択一の議論にしてはいけない。
7年前の司法制度改革において、法科大学院は大きな柱であった。しかし、現実にはうまくいっていない。法曹志望者が激減している。新司法試験の合格率も低迷している。
お金がない人でも、志のある人は立派な法律家になってもらう、そんな仕組みを作る必要がある。とにかく、経済的な負担があるために法曹を断念することがないようにする。
(9) 仁木博文議員(民主党)
当面給費制の継続をみんなで一緒に勝ち取っていきたい。
(10) 横粂勝仁議員(民主党)
裁判員制度をはじめとした司法制度改革は、明らかに理念に逆行している。
現状は厳しいが、諦めたらそこで試合終了。諦めずに頑張っていきましょう。
(11) 牧山ひろえ議員(民主党)
私はアメリカで弁護士をしていた。アメリカのロースクールで学んでいたとき、友達のほとんどは借金していた。どういった経済状況であっても夢が実現できる、そんな社会にしなければならない。 (12) 道休誠一郎議員(民主党)
私は医療の現場から議員になった。医療も法曹界も、パブリックインフラとしてとらえていく必要がある。弱者を守っていくための弁護士を育てる必要がある。政治も志が必要だが、法曹界も志ある人がなる必要がある。
(13) 中屋大介議員(民主党)
私は、今33歳になる。ちょうど法科大学院が始まった頃には大学院に在籍していた。学部と大学院で併せて数百万円の借金があった。その頃、自分に万が一のことがあったら借金のことで親に迷惑がかかると思い、生命共済をかけた記憶がある。
若い人にとって、数百万円というお金がどれだけ大きなお金か、もう一度改めて考えてみる必要があるのではないか。
(14) 姫井由美子議員(民主党)
給費制がなくなるのは、国益を損なう。
この国はどうやって人の権利と財産を守っていくのか、というところから議論していきたい。
(15) 荒木清寛議員(公明党)
我が国は人材に対する投資を惜しんではいけない。
(16) 広野ただし議員(民主党)
よい人材を育成するためには、給費制は絶対に必要。日弁連の活動には、全面的に賛同します。
(17) 穀田恵二議員(共産党国会対策委員長)
今朝の宇都宮先生の話を聞いて、改めて給費制を守る意味合いの深さに気づいた。

4 大学学部生
ナガセヒロアキさん(青山学院大学法学部生)
学部、大学院、司法修習でお金を借りて、就職難も待ち構えている。そんな道を選ぶ人が果たしてどれだけいるだろうか。
貸与制移行は、司法修習生になった後にも、親のすねをかじるか、それができない者は国からお金を借りるという選択を迫るもの。そんな状況で、果たしてどれだけの人が法曹になる道を選ぶだろうか。
どうか、この国の若者の夢を崩さないでほしい。

5 日弁連からの報告
(1) 川上明彦会長代行
数字には表れていないが、なんと、高校生が法学部を目指さなくなってきた。これは非常に問題がある。
国会の日程から考えると、10月に給費制が法案には出ない状況で、厳しい。
1年6ヶ月たっても、まだ結論が出ない。長期戦になっている。われわれ自身との戦いになっている。
(2) 宇都宮健児会長
こういう集会をあと何回かやらないといけない。
フォーラムで決まったからもうだめだ、と思ったらそこで終わり。われわれは諦めない。給費制の問題は、国が財政難だからということで、やめていいという話ではない。
貸与制にするということは、弁護士の資格が個人のものになるということを意味する。それは、それまで公共的な役割を担ってきた弁護士の性格が変わることを意味する。
この運動は、日弁連だけではなく、市民団体も一緒に戦ってくれている。市民が政治に参加している。これこそが民主主義ではないか。
またビギナーズネットの皆さんと一緒にやってこれたことはすばらしい。
最後まで諦めないで、ビギナーズネットの皆さんと一緒に戦っていきたい。

6 おわりに
院内集会に参加して、ますます給費制維持の必要性を感じたとともに、諦めなければ、給費制維持は必ず実現できるのだという思いを強くしました。今後も、この給費制維持活動に積極的に参加して参りたいと思います。
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