会長日記
2005年06月27日
会長日記〜挨拶回り
会 長 川 副 正 敏
17年3月28日から4月12日までの間、恒例の役員就任挨拶回りを行い、約120箇所を訪問しました。
福岡市内とその周辺は、午前九時過ぎに会館を出発、筑後・筑豊・北九州地区は午前8時前後にバス・電車に乗り、ほぼ終日駆けずり回って、戻るのは夕方五時過ぎというスケジュール。気分だけは高揚しながらも、身体はヘトヘトで嵐のような日々が過ぎていきました。150箇所以上も回った会長がおられるのを聞くにつけ実際に自分で体験してみると、その超人ぶりに尊敬の念を超えてあきれる思いです。
とはいえ、今回の訪問先も、裁判所・検察庁、警察、拘置所・刑務所、少年鑑別所、自治体、経済団体、労働団体、新聞社・放送局、福祉関係機関、総領事館等々、これまで弁護士会が関わりを持ってきたり今年度の会務活動に関係する機関・団体等をできるだけ網羅しました。先方は、高裁長官・地家裁所長、高検検事長・地検検事正、県知事、県警本部長を始め、ほとんどトップの立場にある人が鄭重に応対しました。
当会が地震直後にいち早く着手した被害者への法律相談活動に対する賛辞には大いに勇気づけられました。
儀礼的な挨拶にとどまらず、法律相談センター、当番弁護士、弁護士過疎地支援制度、高齢者・障害者権利擁護などの活動や司法制度改革の具体的課題に関する話題を出して意見交換をするようにしました。先方からも、それぞれの立場で関心のあるテーマについての見方や感想が率直に述べられ、相互理解を深めることができました。
共通して取り上げられたのは裁判員制度でした。裁判所・検察庁では、模擬裁判の実施を含めた具体的な裁判のあり方に関する実務的な協議や市民への広報活動を協同して行うことの重要性について語り合いました。警察でも、裁判員裁判に耐えられる捜査仕法の見直しの必要性に言及しました。いずれも、取調の可視化等の個別的問題に関する見解の相違はあるものの、総論的な制度設計の議論に劣らず、各論ないし実行の難しさの認識では一致しました。
法曹以外の方々からは、一般市民が重大な刑事事件を裁くことへの不安や「国民性と乖離」との見方、裁判に拘束されることでの仕事や私生活への支障に対する懸念など、消極的な意見が多く出されました。その一方で、長期的にみて日本の民主主義を深化させることへの期待感や裁判員体験願望を語る人もいましたが、総じて裁判員制度に対する市民の理解は得られておらず、あらゆる場で積極的に広報活動を展開していかなければならないと痛感しました。
そのための方策として、マスコミに対しては、わが会員の登場の機会を多く作ってもらうよう要請し、経済・労働団体には会員を講師とする勉強会の開催を提案して、いずれも前向きな回答を得ました。
自治体では、司法支援センターの準備状況を説明するとともに、地域司法の充実という観点から、引き続き地方自治体の役割が重要であることを訴えました。全国知事会会長に就任した麻生県知事からは、地方分権実現への熱い思いを聞き、地域経済やアジアとの経済交流活性化の観点から、知財高裁設置という形での司法の中央集中化の問題点にも話題が及びました。
外国公館の総領事とは、いわゆる歴史認識問題などについての率直な意見交換をしましたが、いかにも外交官らしいウイットに富んだ語り口に接し、少しでも身に着けたいものだと思いました。
こうして、当会への信頼と期待の大きさを肌で感じ、改めて責任の重さを噛みしめながら、わくわくするような緊張感で2005年度執行部丸は出帆しました。
2005年07月11日
「ゲートキーパー問題を考える」
会長 川 副 正 敏
一 はじめに
四月と五月の日弁連理事会では、ゲートキーパー問題に対する新たな行動指針をめぐって熱く厳しい議論が交わされた。六月中にはその採否を決定する予定である。\n この件は、弁護士業務に不可欠な依頼者との信頼関係の基盤である守秘義務(職務上の秘密保持は弁護士の権利でもある。弁護士法二三条)のあり方を大きく左右するとともに、弁護士会自治の根幹にも関わる深刻な問題である。そこで、会員各位のご意見をお寄せいただきたく、問題の所在と議論の要点を報告する。
二 ゲートキーパー問題とは
この問題については、これまで日弁連から多数の資料が配付されており、昨年七月に発行された『ゲートキーパー問題Q&A』にも解説があるので、ここでは確認の意味でポイントだけを述べる。
一九八九年のアルシュ・サミット経済宣言に基づき、OECD諸国などによる政府間会議として「金融活動作業部会」(略称「FATF」)が設置された。FATFは一九九〇年にマネー・ロンダリング(資金洗浄)対策のための四〇項目の提言(略称「四〇の勧告」)を採択した。その中では「疑わしい取引」についての金融機関の届出義務などが定められ、一九九六年の改訂で前提犯罪の拡大などが盛り込まれた。これを受けて、日本は組織的犯罪対策法の中に金融機関の義務を法制化した。
さらに、アメリカの九・一一同時多発テロで盛り上がったテロ防止対策強化の国際世論を背景に、二〇〇三年六月、四〇の勧告は大改訂された(新勧告)。
新勧告は、資金洗浄防止のための各種義務をテロ資金供与防止目的にも拡げる一方で、規制対象先を金融機関だけではなく、弁護士等の専門職(金融取引の門番=ゲートキーパー)にも拡大し、各国に対して速やかな国内法整備を求めるに至った。
新勧告によれば、弁護士が依頼者のために次の各取引を準備または実施する場合(特定業務)、公的資料に基づく本人確認及び記録の保存義務が課せられる。また、その際に取引の資金が犯罪収益またはテロ関連であると疑ったか疑うべき合理的な根拠があるときは、これを金融監督機関に報告する義務を負うことになる。
(特定業務)
(1)不動産の売買、(2)依頼者の金銭・有価証券・その他の資産の管理、(3)銀行預金口座・貯蓄預金口座・証券口座の管理、(4)会社の設立・運転または経営のための出資金のとりまとめ、(5)法人または法的機構の設立・運転または経営・並びに事業組織の売買\n その一方で、新勧告は「守秘義務の対象となる状況に関連する情報」を報告義務の対象外としているが、具体的場面での判断は、「疑わしい取引」に当たるかどうかとともに、必ずしも容易なことではない。
三 日弁連の従来の対応方針
新勧告について、日弁連は、顧客の「疑わしい取引」の報告義務を弁護士に導入する動きが始まった当初の段階から、一貫して反対の方針を掲げて活動してきたが奏功せず、新勧告が出された後の二〇〇三年一二月二〇日、理事会で次の方針を承認した。
本人確認と記録保存の各義務については、会規制定等に向けた検討を進める。他方、依頼者の「疑わしい取引」の報告義務制度は、従来どおり反対の方針を堅持するものの、仮に法制度化が不可避な状況となった場合に備えて、以下の努力を行うとの会内合意の形成に努める(旧方針)。
(1) 「疑わしい取引」の要件は、弁護士が当該取引に関与し、かつ依頼者がその取引の違法性を認識していた場合に限定するよう努める。
(2) 守秘義務の範囲は、この制度によって新たに制約されないことを明確化し、とりわけ訴訟手続を前提としない法的なアドバイスの提供についても守秘義務の範囲内であることを法制度上明確にするよう努める。
(3) 報告制度の報告先を弁護士会とすることの是非につき全会的な討議を行う。
四 新たな行動指針の提案
日弁連は、ゲートキーパー問題対策本部事務局を中心にして、旧方針に基づき国内外での取組みを展開してきた。しかし、昨年一二月、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は「テロの未然防止に関する行動計画」を策定した。
この行動計画では、FATFの新勧告を完全実施するため、弁護士等に対し顧客の本人確認、取引記録の保存及び「疑わしい取引」の届出の義務を課すことなどについて、今年七月までにその実施方法を検討して結論を得ることとし、法整備を必要とするものは二〇〇六年の通常国会に法律案を提出し、それ以外のものは同年上半期までに制度の整備を行うとしている。
このような情勢を踏まえ、五月七日の日弁連理事会で、執行部は新たな行動指針を提案した。
これは、本人確認と記録保存義務の会則改正・会規化をするだけで報告義務の法制度化を回避するのはほぼ不可能であり、報告義務に関して、何らかの自主的措置を講じなければ、金融監督機関に対する個々の会員の直接的な報告義務を定めた法案が上程されて成立するのは避けられないとの状況認識に基づくものである。\n 新指針の要点は以下のとおりである。
「疑わしい取引」の報告義務の弁護士への導入に反対との立場は変えないが、政府の行動計画に基づく法制度化の動向を踏まえ、会規制定を行うことも視野に入れ、次の行動指針について会内合意の形成に努めるとともに、関係機関との協議を進める。
(1) 「疑わしい取引」の要件は、単なる疑いのレベルではなく、客観的に疑わしいと認められる類型に限定する。
(2) 守秘義務の範囲は旧方針の(2)と同旨。
(3) 報告制度の報告先は日弁連とするが、いかなる形でも関係省庁の監督を受けないものとする。
旧方針との基本的な違いは、同じく報告義務反対の旗は掲げつつも、その法制度化自体は避けがたいとして、報告先を日弁連とする自主的報告制度の会規制定に向けて舵を切ろうというものである。
五 新行動指針についての議論状況
四月と五月の理事会で交わされた討議や質疑応答の中からいくつかを紹介する。
(1) 日弁連宛報告義務の会規化をめぐる利害得失・問題点
a 会規化しなければ、個々の会員は金融庁等に直接報告義務を負う制度の立法化がなされ、違反に対しては、過失による報告懈怠を含めて刑罰が科せられる。
「疑わしい取引」か否か、守秘義務の範囲内かどうかについて、個々の会員の責任で判断する制度になると、金融庁等による判断と食い違った場合には、会員は直接その攻撃にさらされる。
日弁連を報告先とする報告制度の会規制定をすれば、これらの該当性判断について、日弁連に第一次的判断権を留保することで、会員のリスクを回避できる。
b 報告義務の会規化を前提として、法案策定作業の段階から交渉をすることを通じ、「疑わしい取引」の限定や守秘義務の範囲の明確化を図れる。
c FATFの新勧告でも、自治組織がその専門職の特性に応じて、報告義務等を独自に定めるのを容認しており、その中でよりましな制度を追求すべきだ。
d 「疑わしい取引」や守秘義務該当性に関する日弁連の判断と金融庁等との判断が食い違った場合、制度的には日弁連執行部の責任が問われる形になり、弁護士会自治侵害への懸念は払拭できない。
e 法律に基づく義務であれば、依頼者に通報やむなしの説明がつくが、日弁連会規を根拠に報告するというのでは理解を得られない。
f 日弁連が会員に対して、懲戒の制裁を背景に、その業務内容についての報告義務を課すのは、弁護士業務の自主性・独立性を日弁連自ら侵すものだ。
g 守秘義務・権利は弁護士業務の根幹であり、これを損なう会規を日弁連自身が作るべきではない。将来、会員が報告義務を違法として争う訴訟を提起した場合、日弁連も容認しているということで、適法の根拠にされかねない。
(2) 欧米の実情
a イギリスは弁護士個々人が金融当局に直接報告している。その数は極めて膨大で、当局による実質的審査は事実上不可能な実情にある。\nb フランス・ドイツ・ポルトガルなどは弁護士会に報告する制度になっている。
フランス等では弁護士会長が審査権を持っている。ドイツは審査権を持たず、理由を付して当局に報告する。本当に「疑わしい取引」のみが報告されており、弁護士会を報告先とすることによって、弁護士会自治が侵害されるような事態や依頼者との紛争は生じていない。
c アメリカとカナダでは、直ちに法制度化するような動きは見られない。
(3) 個人情報保護法などとの関係
a 日弁連の会規に基づく「疑わしい取引」の報告は、個人情報の目的外使用であって、かつ法令に基づかない場合ということにならないか。また、弁護士法二三条ただし書きとの関係も疑問がある。
b (aに対し)日弁連を報告先とする報告制度を包含した立法となるであろう。
六 むすび
他にも幾多の論点があるが、紙数の都合上割愛せざるをえない。
マネー・ロンダリングへの弁護士の関与などというのは、グリシャムの小説の世界のことであって、私たちの仕事とは無縁のことのようにも思える。しかし、特定業務には、成年後見や企業再生、M&Aなどが広く含まれている。不動産取引は一五〇万円以上という広範なものが対象になる。
さらに、組織的犯罪対策法の改正作業では、日弁連の反対にもかかわらず、その前提犯罪を約五〇〇件へと著しく拡大せんとしている。脱税もその対象に挙げられており、税務事件の民刑事事件の弁護費用すら犯罪収益にされかねない。これがゲートキーパー規制と連動すれば、日常業務にも深く関わる問題とならざるをえない。
報告義務を含む弁護士へのゲートキーパー規制自体は、何らかの形での法制度化を止められないというのが日弁連執行部の情勢判断である。
これを前提としつつ、刑罰の背景の下に「疑わしい取引」や守秘義務該当性如何の判断のリスクを会員個々人に負わせるような法制度の導入を黙過するのか。それとも、これを避けるために、次善の策として、日弁連の第一次的審査権が確保され尊重される制度の樹立を追求すべきか。それは可能なのか。その場合でも、日弁連の判断を否定する当局の権力的介入を招き、弁護士会自治が危殆に瀕する\n事態にならないのか。
ジレンマの中での決断が迫られている。
2005年08月17日
会 長 日 記
会 長 川 副 正 敏
一 各種団体の総会行事
例年五、六月は、当会や日弁連だけでなく、各種団体の年次総会の季節。業際ネットワーク参加組織(司法書士会、土地家屋調査士会、公認会計士協会、税理士会、行政書士会、社会保険労務士会、弁理士会)のほか、調停協会、人権擁護委員会連合会、宅地建物取引業協会、福岡BBS会(付保護観察少年の支援団体)等々、多くの団体から来賓出席の案内が来ます。主催者の役員や他の来賓諸氏など、各界の指導的立場の方々との面談を通じて、弁護士会を大いに宣伝する機会と考え、最優先で出席するようにしています。
これらの会合では、祝辞などの公式挨拶だけでなく、司法制度改革をめぐる諸問題の中から、それぞれの団体に関連する話題を取り上げ、懇談かたがた意見交換をすることに努めてきました。
二 日弁連定期総会での討論
五月二七日、日弁連の第五六回定期総会が開催されました。この総会での重要議題は「司法改革実行宣言」(全文は日弁連総会資料として配付済)であり、圧倒的多数で可決されました。
私は、以下のような賛成討論をしました。
一七世紀のフランスのモラリスト、ラ・フォンテーヌの言葉に、「議論するだけなら議員は大勢いる。実行が問題となるとだれもいなくなる」というのがあるそうです。
それは、今私たちがとるべき態度ではないと思います。
私たちは、「市民と手を携え、分かりやすく、利用しやすい、頼りになる司法を実現する」という旗を掲げ、一九九〇年の第一次司法改革宣言から数えると一五年の歳月をかけ、内外の厳しい議論や様々の勢力との確執を繰り返しながら、戦後改革に次ぐ困難な司法改革運動を展開してきました。
その結果、昨年末までにほぼその骨格ができあがった制度の多くは、国民の参加による透明で公正な、隅々まで法の支配が貫かれる社会を築くという私たちの理念を実現する上で、もとより完全なものではないにせよ、少なくとも大きな橋頭堡を築いたものだと考えます。
他方で、今次改革の目玉ともいうべき裁判員制度や被疑者国選弁護制度を始めとする刑事司法改革分野においては、いわゆる人質司法や調書裁判の打破、捜査過程の可視化等々、積み残された大きな課題が山積しています。
司法支援センターについても同様です。法に掲げられた事業は、私たちが法律扶助協会とともに、これまで実践してきた様々な権利擁護活動の延長線上のものであって、長年にわたる運動の成果と評価できると思います。しかし、犯罪被害者救済制度や過疎地対策などに見られるように、対象事業の種類や内容の点で、なお十分でないところがあるといわざるをえず、その組織と財政の規模を含めて、解決すべき難しい問題も少なくありません。\n また、センターの運営面では、弁護士会の主導性や個々の弁護活動の自主性・独立性を確保するための制度的担保をどうするのか、いわゆる自主事業の委託化の是非とその場合の展望をどう考え、いかに対処すべきかなど、焦眉の急を要する重要な課題が横たわっています。
しかし、そのことのゆえに、私たちが刑事弁護や法律扶助の公益的活動から離れ、あるいは、司法支援センターへの参加を回避するなど、制度の実行・実践に少しでも手を緩めるようなことがあれば、それこそ、一六年前にわが九州・福岡から始めた当番弁護士活動など、これまでに私たちが営々と積み重ねてきた努力は水泡に帰するだけではなく、かえって市民の信頼を根底から失うことになりかねないと思います。
私たちは、この司法改革運動の出発点がそうであったように、今こそ、現場での地道な実践活動を積み重ねることを通じ、広範な市民の信頼を勝ち得て、実践の中から改革を発想し、市民とともに運動を作り上げてきたという原点に立ち返ることが必要です。新たな制度を私たちの血肉とした上で、さらなる改革に向け、ここに指摘されている諸課題に全力で取り組んでいかなければなりません。
そのようなときに当たり、この宣言を発することは、司法改革の実行に向けた日弁連の結集力と不退転の決意を会の内外に表明し、その存在感と主導性を一層大きなものにすることに資するものだと考えます。\n 以上の理由により、私は本宣言案に賛成いたします。
2005年09月28日
「ゲートキーパー問題を考える・その2」
会 長 川 副 正 敏
一 日弁連理事会の審議結果
ゲートキーパー問題に関する日弁連執行部の新行動指針について、六月一六日と一七日に開催された日弁連理事会で審議・採決が行われました。結果は、賛成六九、反対七、保留五、棄権〇の圧倒的多数で可決されました。
採択された新行動指針の要点は次のとおりです(詳細は月報六月一日号参照)。
「依頼者の疑わしい取引の報告義務制度の立法化に反対しつつも、その動向を踏まえ、会規制定を行うことも視野に入れて、次の行動指針について会内合意の形成に努めるとともに、関係機関との協議を進める。
(1) 「疑わしい取引」の範囲は、客観的に疑わしいと認められる類型に限定する。
(2) 守秘義務の範囲は、この制度によって新たに制約されることがなく、訴訟手続を前提としない法的アドバイスの提供についても守秘義務の範囲内であることを明確にする。
(3) 報告先は日弁連とし、いかなる形でも関係省庁の影響を受けないものとする。」
二 私の意見
当会選出の日弁連理事である私と近藤副会長はいずれも反対を表明しました。\n 私が理事会の席上で発言した意見の要旨は以下のとおりです。
「会員に対する刑事罰を背景とした官公庁への権力的報告義務制度の立法化が不可避の状況にある中で、日弁連執行部がこれを防ぐために、『疑わしい取引』 や守秘義務の範囲に関する第一次的判断権を日弁連とする必要があると判断し、よりましな選択として、日弁連を報告先とする自律的制度を提起されたこと自体は理解できる。
しかし、マスコミを含めた一般国民はもとより、多くの会員の間でも、この制度が守秘義務とこれに支えられた依頼者との信頼関係を基盤とする弁護士業務のあり方に根本的な変容をもたらしかねない重大な問題であるとの切迫した認識には至っていないといわざるをえない。
日弁連執行部は、本行動指針に基づいて、いわば条件闘争を行った末に、結果的に三つの条件を獲得できなかったときは再度全面的な反対運動に取り組むと言われる。しかし、このような会内外の状況下では、その段階になって改めて運動を展開するエネルギーを生み出すのは極めて困難なことではないだろうか。
遅ればせながらとはいえ、事態が切迫した状況に直面している今こそ、中長期的なたたかいをも見据えた抜本的反対運動の構築に向けた大方の会員の共通認識を醸成することがそれに劣らず重要だと考える。\n 現時点では、そのための全会的な取組みがなされたとは言えないと思う。そのような段階で条件闘争の方針を打ち出すことには賛成できない。」
*****
この案件について、県弁執行部は極めて重大な問題であるとの認識に立ち、日弁連からの情報提供とあわせて、Fニュースや月報で問題点のご報告と意見聴取をしてきました。また、定期総会・常議員会に諮り、関連委員会での検討もお願いしました。しかし、残念ながら当会内での議論を十分に深めるには至りませんでした。\n このような中で、執行部内で議論を重ねつつ、私自身、ぎりぎりまで判断しあぐねましたが、最終的には、右のような理由で、現段階ではこの行動指針には反対せざるをえないとの決断をした次第です。
結果的にはごく少数派でしたが、賛成を表明した理事の多くも、各単位会内では賛否の意見が拮抗しており、迷った末の判断だと述べていました。\n その意味で、今回の日弁連理事会決定は、その票差から受ける印象とは異なり、ぎりぎりの苦渋の選択であったといえます。
三 今後の展開など
日弁連執行部は、採択された新行動指針に基づき、これから法務省等との厳しい協議に臨むことになります。
そして、その結果如何によっては、今年度中にも、日弁連を宛先とする「疑わしい取引」の報告義務を定める会規制定如何が理事会・総会に付議されることになる可能性があります。その段階では、新行動指針の三条件が実質的にどこまで獲得できたか、あるいはその見込みがあるかといった点を含めた判断が迫られます。\n このように、新行動指針に基づく日弁連のこれからのたたかいは、基本的には「疑わしい取引」の報告義務制度に反対の姿勢を堅持しつつも、立法化不可避の状況下では、当面、報告義務制度の中に頭書の三条件を確保して、可能な限り毒素を取り除くことにより、弁護士業務における守秘義務と弁護士会自治を守るとともに、中長期的には制度自体の廃止を追求していくということになります。\n いずれにしても、議論を重ねたうえで組織的決定がなされた以上、全単位会・全会員が一丸となって、この方針に基づく報告義務制度の最終的な廃絶に向けた日弁連の取組みを支えていかなければなりません。
会員各位の一層のご理解とご協力をお願いします。
2005年10月21日
『15年目の釜山訪問』
福岡県弁護士会 会長 川副正敏
七月一七日から一九日までの三日間、恒例の釜山地方弁護士会訪問をしました。
一九九〇(平成二)年の姉妹提携開始以来一五年が過ぎ、この間の交流の積み重ねによって、普段着の付き合いをすることができるようになりました。ただ、今年は「日韓友好の年」であることや釜山側会長の意気込みもあって、大変な歓待を受けました。
今回の訪問で印象に残ったのは、外見的には、街の様子がこの数年間で大きく変容し、真新しい白亜の裁判所・検察庁の各庁舎、弁護士会館を含め、高層ビルが林立していて、良くも悪しくもグローバル・スタンダードな都市空間になっていることでした。美しい浜辺のリゾート地・海雲台にも、二、三〇階建のホテルやマンションが建ち並び、夜は花火大会と見まがうような原色のネオンの海となって、人工の美しさを誇示しているようでした。
内容面では、表敬訪問をした検事正の口から、「被疑者の人権保障」、「捜査過程の透明化、民主化」という言葉が繰り返し出たことです。「日本では、捜査官と被疑者の人間的信頼関係を通じてこそ被疑者は真実を話すから、被疑者取調べの録音・録画化は自白を導くのを阻害するといった捜査側の意見があるが、どう思われるか」との私の質問に対し、検事正は苦笑しながら、「私たちはそうは考えない。自白獲得目的の取調べであってはならない」と自信に満ちて言われました。\n 他方、地元新聞社のインタビューでは、記者側から、「取調べの録音・録画化が捜査段階での供述の証拠能力を補完する役割を果たし、公判を有名無実化して、むしろ被疑者・被告人の人権保障に逆行しかねないのではないか」との危惧が指摘されて、私の意見を求められました。\n 可視化が現実化するにつれて、各方面で本質に迫った活発な議論が交わされている実情を管見する思いでした。
いずれにしても、伝聞法則のあり方など、日本とは制度面での色々な違いがあるため、一概に比較することはできないものの、弁護士会はもちろんのこと、マスコミ、さらには官の立場にある人々も、国際的人権水準に近づき、達成しようとの熱い思いがみなぎっていることを肌で感じました。
この原稿が月報に掲載されるころには、釜山側が来福する日程も確定していると思います。今回先方から受けた歓迎に少しでも応えるためにも、多くの会員が関連行事に参加されるようお願いいたします。
公式行事での私の挨拶の一部を以下に記して、今回の訪問に臨んだ思いの一端をお伝えします。
「今年三月二〇日に福岡を襲った地震に際し、ファン・イク会長から心温まるお見舞いと激励のお言葉をいただきました。本当にありがとうございました。
さて、私が初めて釜山市を訪問したのは一九九〇年三月一日、サム・イル・ヂョル(三・一独立運動記念日)の日でした。
この年、釜山地方弁護士会と福岡県弁護士会は姉妹提携を開始しましたが、私もこの仕事の一端を担当したことを密かに誇りに思っております。
当時の貴会の会長はパク・チェ・ボン先生であり、当会の会長は亡き近江福雄弁護士でした。お二人が固く握手する姿に大変感動したことを想起しています。
それから一五年の歳月が流れ、今回釜山に到着した昨日、七月一七日は奇しくもチェ・ホン・ヂョル(成憲節。憲法制定記念日)の日です。このように、私は、一五年前も今年も、貴国のとても大切な日に訪問できたことをうれしく思っています。
さらに、今年は貴国の独立六〇周年、日本との国交回復四〇周年に当たります。このような歴史的な年に福岡県弁護士会を代表してこの場に立つことのできる私は大変に幸運です。\n この一五年間、姉妹交流を続け、友情を深めてきた両弁護士会の歴代会長をはじめ、国際委員会の委員など、多くの会員の皆様に心から感謝いたします。そして、これからも次の一五年、三〇年に向かって、両弁護士会とそれぞれの会員の交流を一層深め、本当に身近な友人として、揺るぎない信頼関係を築いていきたいと思います。
今、日本では、裁判員制度や捜査段階の被疑者国選弁護人制度などの刑事訴訟手続改革、法科大学院制度などの法曹養成制度改革といった司法制度全体の大きな改革が行われています。これらの改革は、市民に身近で、市民に開かれ、市民が参加する司法を目指すものです。弁護士会としても、このような基本的な考え方に立って改革を進めてきました。
しかし、制度を作る段階から具体的な実行の段階に入ると、様々の難しい問題が出てきています。改革の時代には、夢や希望が大きければ大きいほど、それに比例して、克服しなければならない課題も多く、また大きなものになるのは避けられません。
そのような困難に直面したとき、私は、六〇年前に福岡の地で非業の最期を遂げた貴国の偉大な詩人、ユン・ドン・ジュ(尹東柱)の詩『新しい道』の中の次の言葉を思い出して、自分を勇気づけています。
我が道はいつも新しい道
今日も…明日も…
川を渡って森へ
峠を越えて里へ」
2005年12月19日
会長日記 〜任期の折返し点で思う〜
会 長 川 副 正 敏
一 公的弁護態勢確立のための意見交換会に思う
八月三〇日、日弁連と九弁連の主催による「公的弁護制度の対応態勢確立のための意見交換会」が当地で開催されました。
二〇〇六(平成一八)年一〇月に始まる被疑者国選を含む公的弁護制度への対応態勢をめぐり、九州各県の弁護士会、ことに離島などの弁護士ゼロ・ワン地域を多く抱える会を中心にして、ジュディケア制だけで弁護人を確保することはできず、相当数のスタッフ弁護士の配置を求める意見が多く出されました。とりわけ、必要的弁護事件が対象となる二〇〇九(平成二一)年に向けた深刻な実情が報告されました。
他方、国選弁護の運営主体である日本司法支援センターのあり方についての不透明感から、同センターとの契約締結に対する疑義も一部で出されている状況があります。そこで、これを払拭して、一部の会員の過大な負担によるのではなく、広範な会員によって公的弁護を担うことが必須であって、そのための方策を早急に検討しなければならないとの認識で一致しました。
詳細は別稿で報告されますので、ここでは、会議の終わりに行った私の締めくくりの発言の要旨を掲記し、問題意識を共有するためのよすがにしたいと思います。
* * * * *
梶谷日弁連会長は、常々「司法改革の実行段階は地方の時代」と言われています。
これは、制度改革の実施に際しては、現場の実情に基づくきめ細かな検討が必要であって、それには地方からの積み上げが重要であることを指摘しているのだと理解しています。そして、公的弁護態勢の確立及びその運営主体である日本司法支援センターの実施設計と施工における課題を考えるうえで、このことはまさに当てはまります。
いわゆる重罪事件の被疑者国選が開始する二〇〇六(平成一八)年は待ったなしの目前に迫っており、二〇〇九(平成二一)年の必要的弁護事件のそれが始まるのも遠い先のことではありません。
本日の意見交換会では、各地の実情とこれを踏まえた具体的な問題点が出され、率直な意見交換が行われましたが、それだけにまた、多くの課題が一層浮き彫りになりました。その中で、捜査段階と公判段階のリレー方式や県境を越えた共助、引受け可能な件数枠を個々に定める方式を検討するなど、できる限りジュディケア制で対応するための提案も出されました。
九州は、大分県弁護士会と福岡県弁護士会が相次いで開始し、その後燎原の火のごとく全国に広がった当番弁護士発祥の地であり、その牽引車としての役割を果たしてきたと自負しています。
今から一五年前にここ九州で始まった当番弁護士運動は、絶望的と言われて久しい刑事司法の抜本的な再生を実現するための取組の主柱であり、その公的制度化への道筋は私たちが市民に提示した展望でした。だからこそ、「弁護士会の戦後最大のヒット商品」と評され、多くの市民がこの運動に結集してくださいました。
今日、私たちは少なからぬ不安や困難に直面していますが、今こそ、この原点を想起しなければならないと思います。
日弁連、九弁連、単位会、そして個々の会員が互いに他は何をしてくれるのかというのではなく、共に何をなすべきかという観点に立ち、一緒にこの変革の時代を担い、それぞれの役割を分かち合うとの思いを共通にして取り組まなければなりません。
私たちが目指してきたところは、捜査・公判を通じてあまねく国費による弁護制度を確立し、弁護の自主性・独立性を堅持しながら、被疑者・被告人の十全な人権擁護を果たし、適正手続の実質的保障に資することにあるのは言うまでもありません。
それがまさに始まろうとする現在、様々の問題が顕在化していることは否めません。しかし、そうであればこそ、現場の実情を一つ一つ検証し、その克服のための具体的方策の定立と実践を積み重ねることが求められていると思います。とりわけ、自主性・独立性を核心とする刑事弁護の質の確保、これに沿ったあるべき司法支援センターの組織運営の確立に向けた獲得目標の提示及び国との精力的な折衝、それを支える会内外における強力な運動の展開は、会員の結集を得るうえでも極めて重要です。
そのために、日弁連と九弁連及び各単位会はそれぞれの立場で最大限の尽力をすることを確認し合って、本日の意見交換会の結びとさせていただきます。
二 東アジアの司法改革管見
1 中国・国家法官学院一行の来訪
九月一二日に台湾・高雄市の裁判官が日本の家事事件・少年事件に関する調査のために当会を訪問したのに続いて、九月一四日には、中国・国家法官学院の院長Huai Xiao Feng氏を始め、役職員一行四名が当会を訪れ、懇談をしました。
中国の国家法官学院は、日本の司法研修所に相当する裁判官養成機関です。中国では市場経済化・国際化が急速に深化するのに伴い、法曹養成制度の抜本的改革を含む司法改革が進められています。
そのような中で、同学院はこのたび、福岡大学当局、特に当会の川本隆・山口毅彦両会員のご努力もあって、同大学との間で学術交流の協定を締結し、今後学生・教職員等の交流・情報交換を重ねて、法曹教育の充実のためにお互いに協力していくことになりました。
Huai院長と私は、東アジア各国では、法の支配に貫かれた公正な社会を支える法曹の果たすべき役割がこれからますます重要になるとの共通認識の下に、中国と日本の法律実務家はできるだけ交流の機会を持って信頼関係を深め、そのことを通じて、お互いの司法制度や実務を学び合うことが大切であるということで一致しました。
2 台湾の少年法院事情など
前後しますが、別稿で紹介されているとおり、台湾の裁判官が当会を訪問した目的は、二年後を目途に進められている家庭裁判所創設に向けて、日本の制度とその運用を調査するというものでした。
一方で、台湾には少年法院という日本の家庭裁判所のうちの少年事件担当部署が独立した形の裁判所があります。その法官(裁判官)は、日本の少年法の理念でもある「少年の健全な育成」の観点に立ち、当会の少年事件全件付添人制度において私たちが現に実践しているような少年への積極的アプローチを自ら行っているとのことでした。
3 進む取調の可視化
台湾や香港で取調の録音・録画が既に実施されていることは知られています。
韓国でも、警察・検察自身が「被疑者の人権擁護、捜査過程の透明化」との理念を掲げ、取調全過程の録音・録画実施に向けた準備を積極的に進めています。しかも、その制度化後の運用をめぐる具体的な検討、例えば、公判中心主義・直接主義との関係において、これ(DVD)に証拠能力を付与するための要件はいかにあるべきかといった議論が法曹界内部だけではなく、メディアでも活発に行われています。
ちなみに、韓国では、陪審制類似の国民の司法参加制度の導入に向けた具体的検討も行われていると聞いています。
当会では、九月一七日、『密室での取調べをあばく! 〜取調べの録音・録画実現に向けて〜』と題して、可視化シンポジウムを開催しました。そこでは、韓国・ソウルの警察や検察庁に設けられている上品な木製の調度品が置かれ落ち着いたクロス貼りの広い取調室の写真とともに、録音・録画実施の準備状況が紹介されました。他方、実行行為者の供述により共犯者に仕立て上げられて起訴され無罪判決を得た杷木町の中嶋玲子前町長から、自白を得るための苛酷な取調の実態が生々しく語られました。
このように、後を絶たない捜査過程における被疑者の人権侵害事例に接するにつけ、取調の録音・録画を頑なに拒む日本の警察・検察がその最大の論拠としている「捜査官と被疑者の人間的信頼関係を築くことによって真実の供述が得られる」との論理がまことに空疎に響き、先行している東アジアの国々との落差に嘆息を禁じ得ません。四年余り後に始まる裁判員裁判までには、日本でも是非実現しなければならないとの思いを一層強くしています。
4 むすび
以上のように、韓国、中国、台湾では、司法制度や背景事情などに違いがあり、内容・程度の差があるのも事実ですが、大筋では、「法の支配」が貫徹する透明・公正な社会を確立するうえで、司法ないし法曹が担うべき役割の重要性に対する基本的認識に立って、様々の面で色々な形の司法改革が進められているようです。
とりわけ韓国と台湾では、「民主化・透明化」というキーワードの下に、多くの点で、日本より一歩も二歩も先を行く制度改革・実践が官民を通じて意欲的に取り組まれており、学ぶべきものが少なくないことを実感する秋です。
* * * * *
任期の折返し点を通過しながら、これらを始めとする押し寄せる重要課題への取組をさらに強化しなければならないと、焦慮感とともに決意を新たにしています。
会 長 日 記 〜東京から金沢へ〜
会 長 川 副 正 敏
一 東京〜未決等拘禁制度改革に向けて
一〇月五日、日弁連の刑事拘禁制度改革実現本部の全体会議が開催され、地方本部長として出席しました。会議では、九月一六日に出された『未決等拘禁制度の抜本的改革を目指す日弁連の提言』(日弁連ホームページの日弁連の活動↓主張・提言↓意見書等に掲載。以下「日弁連提言」という)の確認をしたうえで、今後の運動の進め方などについて討議をしました。
今年五月一八日、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律が成立しました。これは、長年の懸案であった監獄法改正問題のうち、刑事施設及び受刑者の処遇に関する規定についての改正をしたものです。そして、この改正で積み残しになった代用監獄問題を含む未決拘禁者と死刑確定者については、来年の通常国会での法案上程を目途に、現在日弁連・法務省・警察庁の三者間で協議が重ねられており、日弁連提言もここで議論されることになります。
提言の要点は次のとおりです。
1 未決拘禁制度の基本的なあり方は、あくまでも無罪推定原則を生かし、これを保障する内容でなければならず、市民としての生活保障、訴訟当事者としての防御権確保が最大限図られるべきである。また、裁判員制度・連日的開廷の実施に伴い、弁護人の接見交通に対する障害を除去する。
2 警察留置場を勾留場所とする代用監獄制度は冤罪と人権侵害の温床であり、国際人権法上もその存続は到底許されない。したがって、これを廃止することを確認したうえで、全面的廃止に向けた確かな道筋・方法を明確にする。
3 弁護人の秘密交通権確保に留意しながら外部交通の拡充を図るべく、電話やファクシミリの使用を導入する。
4 拘置所を含めて夜間・休日接見を原則として認める。
5 長時間・深夜の取調禁止を法律上明記する、未決拘禁者に対する懲罰制度を原則としてなくす、自己労作・教育の機会を保障する、冷暖房を完備するなど、人権侵害を防止し、市民としての生活を保障するための方策を導入する。
6 死刑確定者について、「心情の安定」を理由とする現状の非人道的な処遇を抜本的に改め、人間としての尊厳を尊重した取扱を確立する。例えば、外部交通・図書閲読・差入を原則的に自由とし、他の被収容者との接触を認め、死刑執行の事前告知を行うなどの規定を設ける。
以上のような提言に対して、法務省・警察庁側の態度は極めて固く、基本的には現状維持の方針であって、ことに最大の争点である代用監獄問題については、これを廃止するどころか、この機会にむしろ恒久化しようとの意向を示しているところです。
衆議院で圧倒的多数の与党が出現した現在の国会情勢の下で、日弁連の提言を実現するのは容易なことではないと言わざるをえません。しかし、代用監獄廃止を中心とした未決拘禁制度の抜本的改革は、私たちの悲願であり、刑事司法改革の基礎に位置づけられるものです。それは、現在ホットな課題となっている取調全過程の録音・録画の導入と、いわば車の両輪として取り組んでいかなければならないと思います。
日弁連は一九八二(昭和五七)年から一九九〇(平成二)年にかけて、広範な市民をも巻き込んで、その総力を挙げて拘禁二法反対運動を展開し、これを廃案に追い込みました。このような歴史そのものをご存じでない若い会員も増えた今日、改めてこの問題の重要性に対する共通認識を確立し、今後の立法化作業に向けた対応体制を強化しなければなりません。
執行部としても、刑事弁護等委員会や刑事法制委員会を中心として、遺漏なき対処をしていく所存です。
会員各位におかれましては、この機会に日弁連提言及び『自由と正義』九月号の特集「二一世紀の行刑改革」にぜひ目を通され、現時点における問題の所在を改めて確認され、ご意見をお寄せください。
二 金沢〜業務改革シンポに参加して
一〇月五日の東京・日弁連会館での会議を終えた足で、翌六日には金沢に入り、七日朝から開催された日弁連の弁護士業務改革シンポジウムに出席しました。その内容については別稿で報告されると思いますので、若干の感想を記すことにします。
今回のシンポは「司法改革と弁護士業務〜弁護士の大幅増員時代を迎えて」と題して、第一「地域の特性に応じた法律事務所の多様な展開」、第二「新たな挑戦に向けて」、第三「ここまで来た司法IT化の波」の三つの分科会が行われ、私は第二分科会に参加しました。
そこでは、「弁護士業務の新領域を探る」との副題の下に、最近の各種業務領域の盛衰とその要因に関する分析、アメリカの一〇人未満の法律事務所の実情報告などに基づき、特色ある業務分野、例えば交通事故事件、スポーツ法、弁護士取締役、株主代表訴訟、債務整理・倒産処理、包括外部監査、エンターテインメント業界(映画、音楽、出版業界等)、コンプライアンス委員会・企業倫理委員会、敵対的買収などをめぐる現況と展望が提示されました。
これらを踏まえ、当面の具体的方策として、?弁護士に関する業務規制緩和と権限強化、?日弁連における立法支援センター設置、?民事訴訟の活性化に向けた抜本的改革(民事陪審、懲罰的損害賠償制度など)、?交通事故訴訟などの既存分野の再開発のための日弁連による改革モデルの提示といった「新規業務開発五カ年計画(要綱)」が提言されました。
弁護士大幅増員時代における業務基盤に対する不安感が漂う中で、新たな業務開拓に向けた弁護士会としての組織的対応が強く求められており、未だ十分とは言えないものの、その端緒を示すものとして、大変に興味深いものがありました。
当会では、刑事弁護等委員会における刑事弁護実務に関する情報交換、倒産支援センターのメーリングリストでのノウハウのやり取り、高齢者・障害者支援における行政等との連携、交通事故被害者救済センターによる交通事故事件の掘り起こし、行政問題委員会による定期的一一〇番活動、犯罪被害者支援など、さまざまの分野で人権擁護活動とも結合しながら、業務拡充策を展開してきました。これらを「業務開発」という観点からさらに充実させるのはもちろんのこと、シンポで提言された業務分野のほか、信託、地方自治体の私債権処理、第三セクター問題等々、新たな分野に関して、会員だけではなく、会外の関係者・専門家との共同研究を立ち上げるなどして、我々のウイングを大きく拡げていく取り組みを深化させるべきだと痛感しました。この面では、若手会員からの創意に満ちた提案と積極的な行動を大いに期待します。
目まぐるしく駆けずり回る日々の中で、合間を見て散策した秋の兼六園と武家屋敷跡の風情にほっと一息をつく思いでした。
このシンポジウムの運営委員として尽力された当会の山出和幸・加藤哲夫両会員に心より感謝いたします。
2006年01月05日
少年非行と付添人活動
会 長 川 副 正 敏
福岡県弁護士会では2001(平成13)年2月に少年身柄事件全件付添人制度を発足させ、以来5年近く経過しました。
これは、非行事件を起こしたとして観護措置(身柄拘束)を受けた少年に対し、費用負担ができなくても、弁護士が付添人に就いて家庭裁判所の少年審判手続に関与し、正しい非行事実の認定と少年の真の更生に向けた適切な処遇を実現するために活動するもので、日本で初めての制度でした。
現在、福岡県弁護士会では361名の会員がこの活動にたずさわっており、付添人選任数は年間900件前後の全観護措置件数の約70%にのぼるなど、ほぼ定着しています。他の弁護士会でも逐次同様の制度が導入されてきており、着実に全国的な広がりを見せています。現在検討されている少年法改正案にも、一部の事件に限定されてはいますが、国選付添人制度が取り入れられるに至りました。
成人が起訴された場合は、国選弁護人が選任されてその法的援助を受けられるのに対し、発達途上にあって、可塑性に富み、成人よりも防御能力が劣る少年について、当然に弁護士が付添人に選任される法制度が用意されていないのは均衡を失しており、人権制約をするには適正手続の保障が不可欠であるとの憲法上の原則にもとるのではないのか。私たちが手弁当でこの制度を始めたのは、このような問題意識に基づくものでした。
また、非行事件を起こした少年に寄り添い、非行に陥った原因を彼らと一緒に探求し、その自覚と反省、被害者への謝罪の念を醸成して、更生の意欲をうながし、環境調整を図るうえでも、弁護士が付添人となって活動することに大きな意義があると考え、現に実践しています。
私も付添人活動をするときは、河合隼雄著『心の処方箋』の中の次の一節をいつも想起するようにしています。
一番大切なことは、この少年を取り巻くすべての人がこの子に回復不能な非行少年というレッテルを貼っているとき、「果たしてそうだろうか」、「非行少年とはいったい何だろう」というような気持をもって、この少年に対することなのである。
近時、少年による重大事件が起こるたびに、その厳罰化が叫ばれ、今次の少年法改正案でも、14歳未満の子どもに対する少年院送致の導入や触法少年等に対する警察官の調査権限の法定化などが盛り込まれています。
しかし、1990年の第8回犯罪防止及び犯罪者処遇に関する国連会議で採択された「少年非行予防のための国連ガイドライン」(リヤド・ガイドライン)が述べているように、少年非行防止のためには、家庭、学校や地域において、子どもの人権を尊重した教育と福祉的アプローチが重視されるべきだとの基本的視点が忘れられてはなりません。その意味で、この少年法改正案には大いに疑問があると言わざるをえません。
少年事件付添人制度は、「少年の健全な育成を期する」という少年法の理念を現実的に意味のあるものとして生かすことに寄与し、このことがひいては少年非行を減らし、その深刻化を防ぐ道でもあると思います。
福岡県更生保護協会『福岡更生保護』第728号(平成17年12月1日)より
2006年05月17日
会 長 日 記 〜平和と人権を考える因幡路の旅〜
会 長 川 副 正 敏
一 小さな弁護士会の大きな人権擁護大会
一一月一〇日と一一日の両日、鳥取市で開かれた日弁連の第四八回人権擁護大会に参加しました。参加者総数は延べ四三〇〇人という盛況でした。会員数わずか三一名の鳥取県弁護士会にして、よくぞここまで準備をされたものと頭が下がりました。
初日に三分科会で行われたシンポジウムを踏まえ、二日目の大会では次の一つの宣言と二つの決議が採択されました。
(1) 「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」
(2) 「高齢者・障がいのある人の地域で暮らす権利の確立された地域社会の実現を求める決議」
(3) 「安全な住宅に居住する権利を確保するための法整備・施策を求める決議」
これらの内容は日弁連のホームページに掲載されていますので、ここでは立ち入りませんが、いずれも日本の政治と社会が直面している極めて重要な課題に関するものであり、各シンポジウムの充実ぶりは、人権問題に関する最大・最高のオピニオンリーダー、シンクタンクとしての日弁連の面目躍如との思いを深くさせるものでした。
二 高齢者・障害者の人権確立と住宅の安全性確保
(2)の高齢者・障害者の人権確立の決議に関して、当会の活動は、「あいゆう」や精神保健当番弁護士制度に見られるように、先進的な取組みとして全国的にも高く評価されています。今回のシンポジウムも、九月一六日に福岡で開催された「高齢者・障害者の権利擁護のつどい」の成果を踏まえ、これをさらに深化させるものであり、当事者組織及び保健・医療・福祉・教育の専門職と機関や団体、行政との地域ネットワークの構築、そしてその中での法律家の積極的な取組みの必要性が再確認されました。
「小さな政府」のかけ声の下で、障害者自立支援法に見られる利用者負担の増大・応益負担への転換が押し進められつつある今日の状況は、高齢者・障害者が地域で自分らしく安心して生活できる社会の実現を促すものとは言いがたいように思われます。そういった現実とこれを打開するための私たちの役割の重要性を改めて認識させられました。
提案理由を聞きながら、「障害者を閉め出す社会は弱く脆い」という一九八一年・国際障害者年の国連総会決議の言葉を思い浮かべ、この面での当会の活動のさらなる拡充に向けた決意を新たにしました。
(3)の「安全な住宅に居住する権利」についても、当会の会員有志がかなり以前より建築士と連携しながら研究及び救済活動を展開していることはよく知られています。
シンポジウムでは阪神淡路大震災の被災実態とその後今日に至る行政や関係機関等の対応の問題点が指摘されました。福岡でも、三月の地震を契機に問題点が顕在化しており、弁護士会として、より広範で組織的な取組みをする必要性を感じました。
三 改憲論にどう向き合うか
立憲主義の堅持と憲法三原則の尊重に関する?の宣言をめぐっては、三時間余りにわたり白熱した議論がおこなわれました。最大の論点が憲法九条問題にあったのは言うまでもありません。
原案では、九条を一項の戦争放棄条項と二項の戦力不保持・交戦権否認条項に分け、前者を一般的な恒久平和主義、二項を「より徹底した恒久平和主義」として、前者は尊重すべきであると表明する一方で、後者については、「世界史的意義を有する」との評価を示すだけで、その改廃の是非や自衛隊の憲法適合性如何には直接言及しないとしています。
反対意見は次のようなものです。
改憲論の核心はまさに憲法九条二項であって、最近発表された自民党の新憲法草案でも二項廃止と自衛軍保持・集団的自衛権行使の容認等を明記しており、民主党の改憲派もほぼ同様のことを主張している。このような状況下で原案の宣言を出すのは、日弁連として事実上九条二項廃止論に与することになる。そのような宣言を出すのは単に無意味であるという以上に、むしろ有害である、と。
他方、原案を支持する意見の要旨は次のとおりです。
会内に賛否両論があり、高度に政治的な問題でもある九条二項の改廃の是非に関し、強制加入団体たる弁護士会としてそのいずれの立場に立つかを明確にするのは適切ではない。人権尊重よりも「国民の責務」に傾斜した自民党の新憲法草案など、立憲主義を軽視する改憲論が出される中で、弁護士会として、立憲主義の理念の意義を再確認してその堅持を求め、国民主権・人権保障・広義の恒久平和主義の尊重とともに、戦力不保持を含めた日本国憲法のより徹底した恒久平和主義の世界史的意義を強調することは大変有意義なことである、と。
原案賛成論者の大多数も、「憲法九条二項を堅持すべきであって、その改定には強く反対する」との個人的見解を表明しつつ、これと異なる意見を持つ会員を含めた会内合意が得られるぎりぎりの線として、この宣言案を採択すべきだというものでした。
賛否双方の意見を通じて、非武装・絶対的平和主義憲法の持つ掛け替えのない価値を認めることではほぼ一致していました。
このような議論を経て、宣言案は人権擁護大会としては異例の挙手による採決に付され、賛成四八〇名、反対一〇一名の賛成多数で原案が採択されました。
四 『平和の政治学』 を想う
厳しくも真摯な討議が展開されるのを眼前にしながら、学生時代に読んで感銘を受けた石田雄著『平和の政治学』(岩波新書・絶版)の次の一節を想起しました。
「非武装憲法は歴史上例がないというただそれだけの理由で無意味と決めつけてしまうのは、自分の構想力の貧弱さを告発するだけである。それと同時に、平和憲法があるからそれでいいのだとすませているのも、現実的な思考を伴わない怠惰な態度といわざるをえない。どのような条件の下で平和憲法が現実に意味をもちうるかを冷い計算で検討してみる必要がある。」
抑圧とテロ、報復戦争と再テロという暴力の連鎖が止まることを知らない世界を前に、「戦争ができる国家」の再構築に向けた改憲論が声高に喧伝される今日、どうやって日本と世界の非軍事化への道筋を付けていくのか、第二次大戦の惨禍を二度と繰り返さないため、不戦と非武装を高らかに謳った憲法九条に今どう向き合い、現実的意味を持たせるために何をすべきか、またできるのか、様々の思いが巡りました。
九条二項を改定(削除)して、戦力の保持と交戦権の容認を憲法上明記することは、自衛隊の位置付けや集団的自衛権行使の是非の問題にとどまらず、「軍事的公共性」が正面から人権制約の根拠とされ、「軍事的合理性」に基づく人権抑圧的統治機構(危機管理のための権力集中、戒厳令、軍事法廷等々)への変容をもたらすのは不可避であって、それがまた戦争への障壁を低くすることも歴史が教えるところです。
ともすれば「テロとの戦い」や「ならず者国家に対する戸締まり論」などの単純化した論理や勇ましい言葉で語られがちな改憲論議に対して、このような観点からの冷静な問題提起をしていくことは、強制加入団体という弁護士会の限界を踏まえても十分に可能なことであり、むしろ私たちに課せられた大きな責務だと思います。
五 余韻と感動、そして美味
大会では、宣言・決議の採択に先立ち、今年四月に名古屋高裁が出した名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚に対する再審開始決定について、弁護団からの特別報告が行われました。担当した弁護士は淡々と語り始めましたが、話題が奥西氏との面会の様子に入った途端に絶句し、大粒の涙を流しながらしばし嗚咽した場面は、日弁連の人権擁護活動の原点を象徴するものでした。
晩秋の因幡路の古都で、白熱した議論の余韻と無辜の救済に打ち込む若手会員の一途な姿への感動に包まれながら、解禁直後の本場の松葉ガニに舌鼓を打つ、平和に生きる幸せを実感する充実の二日間でした。
会 長 日 記 〜年頭にあたって〜
会 長 川 副 正 敏
一 はじめに
明けましておめでとうございます
昨年を振り返りますと、一月にはスマトラ島沖大地震と大津波の報に地球の終末の始まりかと驚かされ、その衝撃もさめやらぬうちに、私たちの足下で予期せぬ地震に見舞われました。夏には「郵政民営化・小泉劇場」が喧伝される中で、衆議院に三分の二の巨大与党が生まれました。
年末になると、次々に起こる幼女殺害事件、そしてマンションやホテルの耐震構造計算偽装事件が世を騒がせました。世界では、抑圧とテロ、報復という暴力の連鎖がこの瞬間も続いています。
戦後六〇年、還暦に当たる年でしたが、各方面で制度疲労が顕在化し、あるいは普遍的なものと考えてきた価値観が大きく揺らぎ、将来への漠たる不安がただよう中で新年を迎えた感があります。一〇〇年後の歴史家はこの二〇〇五年について、良くも悪しくも様々な意味で、大きな区切りの時代として総括するのかもしれません。
そのような中にあればこそ、次の還暦のサイクルの始めの年である今年は、未来に向かって、改めて我々の時代の「坂の上の雲」を見出し、その雲を仰ぎ見ながら、一歩一歩着実に歩んでいかなければならないと思うこのごろです。
さて、私たち執行部の任期も残すところ三か月を切り、最後の追い込みに入りました。夏休みの終わりに宿題をやり残して焦った悪童時代の苦い思い出がよぎります。
この機会に、当面の主要な課題について申し述べることとします。
二 憲法改正問題への取り組み
先に自民党の新憲法草案が公表され、民主党も九条二項の改定を含む憲法改正に前向きの姿勢を示す中で、次の通常国会には国民投票法案が上程されるという情勢にあります。私たちにとって不動の価値基準としてきた憲法が揺らぎ始めています。
当会では、昨年末に憲法委員会を立ち上げ、この問題に対し、強制加入団体としての枠内でできる限り、正面から取り組んでいくことにしました。父母・祖父母の世代が悲惨な犠牲を払って築いてくれた、恒久平和を希求し、その下で個人の尊厳を至高の価値として追求する「このくにのかたち」を次の世代に確実に引き継ぐ責務が私たちにはあると思います。
三 各種治安立法阻止と未決拘禁制度改革の運動
弁護士が依頼者の「疑わしい取引」を国に密告するというゲートキーパー立法に対し、日弁連は昨年六月、取扱機関が金融庁であることを前提として、日弁連が会員からの報告の受け皿となることを骨子とする方針を立て、法務省との折衝を重ねてきました。しかし、その後関係省庁間での協議の結果、この問題の主管庁が金融庁から警察庁に変わることとなり、日弁連は昨年末、改めてゲートキーパー立法そのものに断固として反対し、強力な運動を展開するとの方針を打ち出しました。
また、再三にわたって廃案とされてきた共謀罪の立法化も現実の問題となっています。少年院送致年齢の下限(一四歳)の撤廃や触法少年・ぐ犯少年に対する警察官への強制捜査権の付与などを盛り込んだ少年法改定にも大きな懸念があります。
「テロとのたたかい」や日本社会の「安全神話」崩壊に対する防波堤構築を金科玉条として、治安優先の立法が次々と出され、圧倒的多数の与党が占める国会でさしたる議論もなされないまま可決成立しかねないという構図には、背筋が寒くなる思いです。
他方、未決拘禁制度改革も今年中の決着に向けた法務省・警察庁との厳しいせめぎ合いが続けられています。このような中で、昨年末に有識者会議が発足し、今年二月を目途に提言が出され、その後立法化作業に入る見通しです。代用監獄廃止に向けた道筋を付けるため、全力を傾注しなければなりません。
人権擁護と社会正義の実現という使命を与えられた弁護士・弁護士会の見識と力量が今こそ問われているのだと思います。
これらの問題について、当会でも早急にしかるべき組織を立ち上げ、日弁連及び全国の単位会とともに、強力な運動を展開していくことが求められています。
四 司法支援センターと公的弁護態勢確立
今年四月の日本司法支援センターの発足まで三か月を切りました。夏前には地方事務所がオープンし、秋からは法定合議事件の被疑者弁護を含めた国選弁護人指定業務などが開始されることになります。
司法支援センターに対しては、今も懐疑的な見方がありますが、実際の業務開始を目前に控えて、弁護活動の自主性・独立性を確保しつつ、広範な国民に対して真に良質な法的サービスが提供できる組織運営を実現するため、弁護士会はこれを傍観視するのではなく、積極的に関わっていくべきだと考えます。
そのために、当会としては、地方事務所の要となる所長・副所長には、会の総意に基づく最適任者を推薦し、職員についても、弁護士会で従来から国選・扶助業務にたずさわってきた優秀な人材を確保して、弁護士会との緊密な連携体制を構築するように鋭意準備作業を進めているところです。
地方事務所の設置場所についても、床面積約一五〇坪(福岡)ないし約六〇坪(北九州)以上という条件を満たすとともに、既存の弁護士会の相談センターとの場所的・機能的一体性を確保することを前提として、適当なビルの調査を行っています。また、発足時には事務所設置が見送られた筑後と飯塚についても、その必要性を訴え続けて実現を期さなければなりません。
司法支援センターにおける国選業務のあり方については、現在、業務方法書・法律事務取扱規程・国選弁護人契約約款に関する日弁連の要綱試案に対する単位会の意見照会がなされており、当会では全会員に情報提供をして意見を出していただくようお願いしているところです。弁護権・防御権の確保を基本として、当会としての適切な意見を出さなければなりません。
そのうえで、大多数の会員が引き続き国選弁護をお引き受けくださるようご協力をお願いいたします。一人が一〇の仕事をやるのではなく、一〇人が一の仕事を分かち合うとの思いを共有したいものです。
今年九月には、日弁連の国選シンポジウムが福岡で開催されることになっており、公的弁護態勢確立と国選弁護充実の契機として、是非とも成功させたいと思います。
五 刑事司法改革への対応
昨年一一月に始まった公判前整理手続は、現在適当な事件を選んで試行的に実施されていますが、逐次拡大していき、裁判員裁判開始に向けて、連日的開廷をにらんだ集中審理・迅速化が押し進められていくことが想定されます。そのような中で、刑事裁判の適正・充実の観点がおろそかにされ、弁護権・防御権の保障がいささかでも弱められるのは防がなければなりません。
そのような観点から、未決拘禁制度改革や取調全過程の録音・録画化の実現に向けた取り組みを強化するとともに、会員の弁護活動に対する弁護士会としてのバックアップ体制の確立を図るべきです。
六 後輩の育成
法曹人口大増員時代に向け、法科大学院〜司法修習〜入会時研修を通じて、多くの後輩がその力量を高め、質量ともに豊かな弁護士業務を展開できるようにするために、弁護士会としての支援策や受入体制を作って実行していくことも焦眉の急です。
七 むすび
司法改革が各論に入って行くほどに、我々の現実的な業務のあり方を大きく左右しかねない具体的問題に直面し、次々に厳しい決断と実行を迫られるのを痛感します。
正月早々から重い話題を書き連ねましたが、いずれも今年度から来年度にかけてやり遂げなければならない重要な課題です。
「怒れる風体にせん時は、柔らかなる心を忘るべからず」(風姿花伝)の教えを想起しながら、残された任期を全力で務めていく決意です。会員の皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
会 長 日 記 〜一月の会務日誌から〜
会 長 川 副 正 敏
一 ひとときの休息
元旦と二日、おせち料理に舌鼓を打ちながら、藤沢周平や城山三郎を終日耽読するしばしの休息のときを過ごしました。
しかし、読後の余韻を楽しむ暇もなく、三日からは一週間後の常議員会に向けて、ゲートキーパー規制立法反対会長声明や日本司法支援センターの国選弁護人候補者指名業務に関する諸規則についての日弁連要綱試案に対する当会の意見書などを起案したり推敲するのに追われ、短くも貴重な休暇は矢のごとくに去っていきました。
二 仕事始め
一月五日午前九時、県弁事務局仕事始めの挨拶に続き、本年第一回目の正副会長会。
大小さまざまの宿題の山に嘆息しつつも、みんなで深呼吸をして、「あと一歩」と叱咤激励し合いました。
一月五日午後、簡易裁判所判事推薦委員会・応募者の面接。
これからのあるべき裁判所・裁判官像について、「国民に開かれ、分かりやすく迅速で、信頼される裁判・司法」という、今次司法改革を通じて定着した感のある言葉が多く発せられたのが印象的でした。
椅子を温める間もなく、新年は対外行事などが目白押しです。儀礼的なものを含め、弁護士会の顔としてできる限り参加し懇談することに努めましたが、社交下手な私にはとても大きなプレッシャーでした。そんな中からいくつかをしたためます。
三 新春行事など
一月五日夕、西鉄主催の新年祝賀会。
地元政官界・経済界・労働界・報道機関・在福外国公館・専門職団体等々各分野の指導的立場の人々が会場を埋め尽くして、「明日の福岡」を語り合いましたが、景気回復への期待の声が各所で聞かれました。
私が懇談した方々からは、裁判員制度についての疑問や不安の話題が出されました。今から八〇年以上前に陪審制導入を審議した枢密院で、原敬首相がその必要性を訴えたときの言葉、「憲法(大日本帝国憲法)実施後三〇年を経た今日に於ては、司法制度に国民を参与せしむるは当然の事なり」とのフレーズなどを引用しながら、酒席を顧みずに熱弁をふるってきました。
一月六日、第五九期司法修習生第二班弁護修習開始式・会長講話。
裁判員制度の標語として裁判所も用いるようになった「司法が変わる」という言葉に示された司法改革の核心的意義とこれからの課題について、若き法曹にも認識を共有してもらい、一緒に汗を流してほしいとの思いを込めて話しました。
一月七日、民団(在日本大韓民国民団)福岡県本部新年祝賀会。
顔見知りの駐福岡大韓民国総領事・金榮昭氏らと懇談をしました。役員や来賓の方々からは、在日永住外国人に対する地方参政権の実現が熱っぽく語られました。
一月一三日、日本公認会計士協会北部九州会新年賀詞交歓会。
新年を寿ぐ華やかな雰囲気の一方で、同会会長の挨拶では、カネボウ旧経営陣による粉飾決算事件にからみ、昨年九月一三日、会計監査を担当した中央青山監査法人の公認会計士がこの不正に加担した疑いで逮捕された事件の衝撃とこれを踏まえた信頼回復への取り組みの決意が危機感をもって述べられました。他山の石としなければとの思いを強くしました。
四 本格的始動
一月一四日、山崎拓衆議院議員(自民党)及び木庭健太郎参議院議員(公明党)にそれぞれ面談。
ゲートキーパー規制、少年法改正、共謀罪などについて、弁護士会の見解を説明し意見交換をしました。今後、他の地元選出国会議員とも面談の機会を得るよう努めていくことにしています。
木庭議員からは、公明党として、今通常国会に在日永住外国人の地方参政権(相互主義)を実現する法案を提出し、審議入りを図ることにしており、弁護士会にも理解を求めたいとのお話しがありました。
私は、当会が一五年以上にわたって釜山地方弁護士会と毎年交流を続けてきていることに加えて、二〇〇〇(平成一二)年には、執行部(春山会長)を先頭に会を挙げて、福岡県内の自治体に対し地方公務員の任用に関する国籍条項撤廃の要請活動を展開したことなどを説明しました。そのうえで、今後も日本における多民族共生社会のより良いあり方を追求するため、それぞれの立場で積極的に取り組んでいく必要があることを確認し合いました。
韓国では、既に永住外国人への地方参政権付与が法制度化されており、日本でも真剣に検討する時期に来ていると思います。
一月一五日、福岡部会・加藤達夫会員の旭日中綬章を祝う会。
「古今二路無」。「今も昔も、賢人の行く道は一つしかない。それは、今自分の前にある責任をひたすら黙々と果たしていくことに尽きる」。そんな禅語にふさわしい加藤先生の生きざまを盛会のうちに垣間見る思いでした。
五 テレビ出演
一月二二日、RKB毎日放送のテレビ番組『元気 by 福岡』に出演。
キャスターの納富昌子さんと裁判員制度について対談しました。一〇分足らずの緊張の時間でしたが、彼女の歯切れのよい語り口につられて、何とか役目を果たすことができ、ほっと胸をなでおろしました。
裁判員制度の実施開始まで三年半を切りました。市民への広報活動もさることながら、裁判員裁判及びこれと連動する公判前整理手続などの新たな刑事訴訟制度の下における私たち自身の弁護のスキルを磨くという面でも、待ったなしの本格的な取り組みが求められています。
六 むすび
「♪春は名のみの風の寒さや」の候とはいえ、執行部が交替する桜花の季節は目前です。この拙文が届くころには、当会でも日弁連でも、二〇〇六(平成一八)年度の会長をはじめとする執行部が確定していることと思います。
しかし、代用監獄問題等の未決拘禁制度改革、共謀罪、少年法改正、ゲートキーパー規制といった立法問題への取り組み、四月からの司法支援センター発足と秋からの被疑者国選弁護開始に向けた準備、県弁会館敷地取得問題等々、年度替わりの「休み」は一日たりとも許されません。
寒風の中で駑馬に鞭打つ日々が続きます。
会 長 日 記 〜バトンゾーン〜
会 長 川 副 正 敏
一 『アラバマ物語』
二月一〇日、テレビの洋画劇場で『アラバマ物語』を見ました。
舞台は大恐慌の嵐が吹き荒れる一九三二年のアメリカ南部の小さな町。若い白人女性とその父親がでっち上げた「暴行事件」の犯人として、無実の黒人青年トムが起訴された。厳しい人種差別と偏見の中で、グレゴリー・ペック扮する知性と正義感にあふれた弁護士アティカス・フィンチの奮闘むなしく、陪審員団は有罪の評決を下す。
その現実とこれを目の当たりにしながら成長していくアティカスの幼い子どもたち(兄・妹)を描いた作品です。
クライマックス・シーンで、穏やかな中にも毅然とした口調で語るグレゴリー・ペックの次の言葉が強く印象に残りました。
「法廷と陪審は完全なる理想ではない。法廷とは生きた真実である。」
三年余り後に始まる裁判員裁判が、本当に司法の国民的基盤を強化するとの立法趣旨に沿ったものとして定着し、民主的で公正な司法の理想に近づくことになるのか、裁判員法廷で実際に展開される「生きた真実」が私情と偏見を排し、立場の異なる者の間での冷静な熟慮と議論のコラボレーションに基づく正しい結論を導くものとなるのかどうかは、ひとえにこれからの私たちの周到な準備と実践にかかっています。
一九一〇年の大逆事件裁判の戦慄にうながされて、八五年前、「司法の民主化」を目指して陪審制導入に踏み切った平民宰相原敬の決断を想起し、それが戦時体制下で潰えさせられた歴史の轍を繰り返してはならないとの思いを共有したいものです。
二 少年付添研究会と刑事弁護研究会
二月二日に開催された第一回少年付添研究会を傍聴しました。弁護士になったばかりの若手会員から、過ちを起こした自分の子どもを見放す父親に罵倒されながらも、何とか説得して親子関係の修復に努めた話、個人的なつてをたどって、少年の就業場所を見つけようと奔走した体験談などが語られ、参加した同輩・先輩会員との間で熱い議論が交わされました。
数年前から行われている、同じく若手会員による刑事弁護のスキルアップのための刑事弁護研究会にも、他の会務と重ならない限り、できるだけ顔を出すようにしました。そこでも本当に頭の下がるような熱心で充実した弁護活動の報告とこれをめぐる真摯な議論が毎回展開されています。
「今どきの若い者」に敬服するとともに、秋からの被疑者段階を含めた公的弁護対応態勢確立への自信と公的付添人制度実現への決意を新たにすることができました。
壮年、熟年の会員もぜひ出席して議論に参加されるようお勧めします。自らの仕事を顧みて、マンネリ化に対する強力なカンフル剤となること請け合いです。
三 未決拘禁制度改革と代用監獄問題
昨年一二月から六回にわたって行われてきた未決拘禁者の処遇に関する有識者会議は、今年二月二日に「提言」という形でその審議結果を公表しました。
この提言は、「治安と人権、その調和と均衡を目指して」という副題にも見られるように、無罪推定を受けるべき未決拘禁者の地位とその人権保障に対する視点が非常に弱いものとなっています。そして、最大の課題である代用監獄制度については、今回の法整備ではこれを存続することが示されました。他方、拘置所での夜間・休日における接見、電話・ファックスによる外部交通などについては、その導入が認められるべきであるとしていますが、具体的な内容はごく限定された不十分なものです。
政府はこの提言を踏まえて法案策定をし、今通常国会に提出することにしており、今後、日弁連・単位会の総力を挙げた取り組みが必要です。当会でも三月三一日に代用監獄問題に関する集会を計画していますので、ぜひ参加されるようお願いします。
四 バトンゾーン
二月中旬までに、二〇〇六(平成一八)年度会長・羽田野節夫会員をはじめ、次年度執行部の顔ぶれが決まりました。私たち現執行部は、年度末の会務処理に追われる日々の合間に、前年度の松?執行部から受け継いだバトンを落とすことなく、何とか無事に羽田野執行部に手渡せるゾーンまでたどり着けた安堵感を覚えながら、こもごも引継書を書いています。
そんな中で、私は次年度日弁連副会長としての引継業務のため、二月から三月にかけてほぼ半分の日数を東京で過ごしています。これは歴代の当会会長がやり遂げてきたことですが、県弁の執行体制のあり方として、果たしてこれからも現状のままでよいのだろうかとの疑問を禁じえません。
最近の『会長日記』でも触れていますように、司法支援センターと公的弁護対応態勢、公判前整理手続等の改訂刑事訴訟法下での刑事裁判実務と裁判員裁判に向けた準備など司法改革関係の諸制度の実施にかかわる具体的な取組課題、さらには未決拘禁制度改革やゲートキーパー規制問題などが一日の休みもなく押し寄せてきています。
このような中で、執行部には年度替わりのブランクは許されず、むしろ三月から四月にかけての今の時期こそが一年中で最も多忙で重要な時期ではないかとも思われます。法曹人口大幅増員時代を迎えて、会務活動がますます多岐に及ぶことから、この傾向が一層強まることは確実です。
ちなみに、ここ数年の歴代会長と同様、私もこれまで、心身ともに会長の職務に完全に専従する毎日を過ごしてきました。
五 県弁会長と日弁連副会長の完全分離へ
このように、県弁執行部の責任者たる会長が会務活動にとって最も重要な時期に、日程的にはひと月の半分、精神的にはほとんど大部分を日弁連の用務に費やすというのはどう考えても不合理です。
他方で、九弁連選出の日弁連副会長については、今年度から、福岡県とそれ以外の七県弁護士会(七県の間では予め決められた順番による)が一年ごとに出すという制度が実施されることになりました。そして、七県の第一順位である長崎県弁護士会ではすでに二〇〇七(平成一九)年度の日弁連副会長予定者を内定しています。
また、九弁連では、この予定者が日弁連の諸課題に精通してスムーズに日弁連副会長職を行えるようにするため、九弁連副理事長として、ほぼ毎月二日間開催される日弁連理事会にオブザーバー参加してもらうこととし、これに必要な制度を整備して、予算措置をとることになりました。
この制度の下では、福岡県弁護士会でも、県弁会長である者が次年度の日弁連副会長に就任するという必然性は、制度的にはもちろん、事実上もないということになります。このことは、日弁連副会長に就任する県弁会長とそうでない会長という二種類の存在のおかしさを想定すれば明らかです。
このように考えてくると、福岡県弁護士会から日弁連副会長を出す年であれ、そうでない年であれ、前年度の県弁会長であるかどうか、さらには県弁会長の経験者であるかどうかとは関係なく、日弁連副会長として仕事をする意欲のある会員は誰でも自由に立候補して全会員の信を問うことが、単に制度的なものとしてだけではなく、実際の運用としても行われるべきです。九弁連における日弁連副会長交互選出制が定着するのを見定めながら、その方向性(県弁会長と日弁連副会長の完全分離)を追求していく必要があると考えます。
県弁会長の翌年度に日弁連副会長に就任する方式が確立してから約二〇年を経た今、司法制度改革の具体化と会員の大幅増加の時代を迎え、執行体制強化の観点を中心にしながら、委員会の組織・運営のあり方を含め、改めて機構改革の議論をすべき時に来ているとの思いを深くしています。
2006年05月30日
福岡県弁護士会役員就任披露宴ごあいさつ
2006年(平成18年)5月24日
福岡県弁護士会 会長 羽田野節夫
1.(序) 只今御紹介に預かりました、福岡県弁護士会会長の羽田野節夫です。
本日は、皆様には、公私共に御多用の中を、福岡高等裁判所長官龍岡資(すけ)晃(あき)様や福岡高等検察庁検事長佐(さ)渡(ど)賢(けん)一(いち)様、福岡市長山崎広太郎様を初めとして、福岡県弁護士会と関係の深い、各界各層の方々に御出席を賜わり、誠にありがとう存じます。
本日は、当会の過去の活動を検証し、更に今後の活動を皆様に御紹介し、御理解を願って、皆様から忌憚のない御意見や、御忠告を戴く場として、本日のような宴を催す次第です。皆様におかれましては、当会の役員に対しては元より当会の若い会員に対して苦言、提言又は暖かい励ましのお言葉をかけて下されば幸いでございます。
2.福岡県弁護士会の構成員と
弁護士会の組織について若干御紹介します。弁護士会は、強制加入団体であって、どのような政治信条を有するかにかかわらず、どこかの単位会に所属すべきこととされています。
福岡県弁護士会は、伝統的に4つの部会制をとっており、4つの部会は、純粋に独立対等の関係でございます。
各々の部会と構成員数は、前方の画面に表示されたとおりです。
また、九州ブロックには8県・8単位会が存在し、九州弁護士会連合会を組織し、九州内の共通の問題を協議しています。
日本全国には52単位会があり、個々の弁護士と全国の単位会とを構成員とする日本弁護士連合会(所謂、日弁連)という組織を作っています。
(1) 弁護士の自治
各弁護士会は、自治権があり、所属する個々の弁護士を監督し、更に日弁連が監督する関係にあります。しかし個々の弁護士の日常業務を弁護士会が監督する立場にはありません。個々の弁護士の不祥事に対し、弁護士会が懲戒権を発動し、当該弁護士を懲戒処分することによって、自浄作用を発揮します。
この弁護士自治制度は、司法権の独立のための制度的保障であり、市民にとっても重要かつ重大な制度です。もし、弁護士や弁護士会が特定の国家機関の統制下にあるとするならば、市民の為に弁護活動をする弁護士に対して個別の圧力が容易に加わり、司法作用がいびつとなり、司法の独立が保てません。
(2) 弁護士の警察に対する依頼者密告制度法案反対特別決議
本日の定期総会におきまして、皆様のお手元に配布しました「弁護士による警察等に対する依頼者密告制度」(ゲートキーパー問題)法案反対特別決議」がなされました。この制度は、依頼者との話の中で疑わしい取引があれば密告しなさいというものです。これは、弁護士と依頼者との信頼関係を根底からくつがえさせる、とんでもない法案です。いかにテロ予防対策とはいえ、テロの被害国アメリカやその隣国カナダも真っ向からこの法案に反対しています。当会が、政府が作ろうとしている法案に対して堂々として反対意見を申し上げることができるのも、弁護士自治制度があるからです。
本日御列席の皆様も、弁護士の自治を守ることがゆくゆくは市民の基本的人権を守り、社会正義の実現につながること、そして弁護士自治制度は、市民の権利を守るために必要不可欠な制度であることを御理解下さいますようにお願いします。
3.福岡県弁護士会の特徴
(1) 当会は、熱心な会員による委員会活動を中心として、弁護士会の会務活動が実践されています。
(2) 各種当番弁護士制度の発足と関係機関の連携
当会は、全国に先駆けて、平成2年当番弁護士制度を創設し、逮捕直後から、弁護士が被疑者のところに駆けつけ、被疑者の権利擁護に努めてきました。その後、全国に広がった当番弁護士制度は、16年の歳月を経て、ようやく今年の10月より、重大事件という限定的ながら、被疑者弁護人国選制度を実らせました。
(3) 当会は、その後も各種委員会が活発な活動をつづけ、常に日弁連をリードしてきました。全国に先駆けて、?刑事の当番弁護士制度のみならず、?精神保健付添当番弁護士制度、?福祉の当番弁護士制度、?少年事件全件当番付添人制度の各々の導入を実現しました。又、当会は、国際委員会による国際交流も盛んです。すでに15年前より始まった韓国釜山地方弁護士会との交流、そして中国大連市の法律家との国際交流も継続されています。私は、このような活発な委員会活動を展開してきた当会の先達の精神に学び、そして、福祉の当番弁護士などの活動を通じて培われた、行政、医療、福祉施設等々の関係機関との連携を大切にして、更に新たな視点で、市民のための司法改革を実践したいと考えています。
4.司法改革と当会の実践目標について述べます。
平成2年の日弁連・司法改革宣言に始まった市民のための司法改革は、いよいよ実践段階に差し掛かっています。ここで、司法改革の主要課題と当会の実践目標について御紹介します。
(1) 法科大学院と法化社会
(2) 日本司法支援センターの発足
今年4月から、独立行政法人「日本司法支援センター」が発足しました。10月からは、その業務が開始され、短期1年以上に該当する重大事件のみ、逮捕後勾留されたときから、被疑者に対し国選弁護人を選任します。この弁護人の選任作業を司法支援センターが担当し、弁護活動そのものは、各単位会の弁護士が担当します。
(3) 裁判員制度と法教育
司法改革の主要課題の一つである裁判員制度は、今から3年後の平成21年5月までに実施されます。憲法が国民主権を謳いながらも、市民が司法の分野に直接関わることはありませんでした。そこで、市民が裁判に直接参加することによって市民の感覚を裁判に反映させようとして実施されるのが裁判員制度です。
今から3年後に実施が予定されていながら果たしてどれだけの市民がその仕組みを知っているのでしょうか?
今後、当会は、種々の機会を利用して、法曹三者一体となって、市民に対し、広報活動を展開する所存です。
去る5月3日のどんたくに際しては、検察庁、弁護士有志や市民やく200人が、裁判員制度の広報宣伝のために、パレードに参加しました。
又、学校教育現場において、法律の背景にある基本的な価値観(正義や公平)や社会のルールを認識理解させ、そのような価値観に基づき問題を解決する能力を育成する「法教育」が必要です。当会は、中学・高校の社会の授業において、「法教育」を学んで貰うため、講師派遣出前授業を展開しています。これによって、中高生が将来の裁判員制度の担い手として成長して下されば幸いです。
(4) 高齢者・障害者支援センター(あいゆう)の法人化と福祉の当番弁護士の全国展開
平成12年4月から高齢者の介護保険制度と成年後見制度が導入されると同時に、当会は高齢者・障害者支援センター(あいゆう)を設立しました。
今や「あいゆう」の活動は、平成12年9月から実施された福祉の当番弁護士制度と相まって、行政や医療機関、施設関係者に絶大なる信頼と支持を獲ち得たと自負しています。
当会は、現在「あいゆう」の法人化を検討しています。
併せて、福祉の当番弁護士制度を刑事の当番弁護士同様、全九州並びに全国に展開したいと考えています。
(5) 弁護士過疎地対策と法律相談センターの拡充
司法改革の重要課題のもう一つに、弁護士過疎地対策があります。我が県内にも弁護士が存在しない地域があります。
私は、弁護士過疎地対策の一つは、法律相談センターの拡充ではないかと考えています。当会の法律相談センターは、昭和60年4月に発足し、現在の天神の法律相談センターを開設して20周年を迎えます。
現在では、福岡県内に法律相談センターが19ヶ所存在します。法律相談センターの数としては、東京の弁護士会に劣らず全国第1位です。当会は、福岡県民のために、「いつでも、どこでも、誰でも」容易に司法にアクセスできる体制を作っていきたいと思います。
5.行動の基本指針
ところで、昨今の商道徳や、行為規範を逸脱した幾多の社会現象(例えば、耐震偽造問題、ライブドアの粉飾決算、公共工事の談合、架空請求、オレオレ詐欺等の事件)は、一体何が原因なのでしょうか?
企業は、その活動に際して、所謂、社是、綱領といったその会社の行動の基本指針があったはずです。それが、規制緩和というお題目の下で、従来のタガがはずれた感が否めないのが、作今の情勢です。国家行動の基本指針は、所謂、国是といわれ、日本国憲法がそれに該当します。今、基本的人権の尊重と恒久平和を目標とする日本国憲法が改正されようとしています。国家の綱領ともいうべき憲法の改正については、慎重にあるべきだと考えます。国家のタガとも言うべき、憲法を軽々しく緩めるべきではありません。
先日、ある明治時代創業の某商事会社にあいさつに伺ったところ、九州支社長室には、会社の綱領が掲げてありました。
?所期奉公 ?処事光明 ?立業貿易
という三つの言葉です。企業活動は営利を目的とするのは、当然です。しかし、企業活動の基本は、公に奉仕するという精神が大切であるとその会社は昔から考えてきたのです。明治時代に創業者が考えたこの会社の行動の基本指針は、今も普遍の光を放って輝いています。
6.座右の銘
我々弁護士の行動の指針は、弁護士法1条の「基本的人権の擁護と社会正義の実現」であることは言うまでもありません。
さて、私が個人的に行動の指針又は座右の銘としているものは、「積誠動人」という言葉です。私の修猷館高等学校時代の恩師小柳陽太郎先生から戴いた言葉です。これは、『誠を積んで人を動かす』とよみます。孟子の言葉、「至誠人をも動かす」と同じ意味です。金を積んで人を動かす方もおられますが、最後に人の心を動かすものは、誠心、誠意であると確信しています。私は、今後これらの言葉を行動の指針としつつ、皆様を始めとする関係者各位と連携しながら、福岡の県民、市民のために真に役立つ弁護士会活動を展開して参りたいと思います。どうか、本日御列席の皆様には、当会の活動をよく御理解のうえで、御支援、御協力を下さいますようにお願いいたします。
終わりに、本日は、粗酒粗肴ではありますが、本日の宴が、お互いの交流の契機となり、実り多いものになりますように祈念申し上げて、ごあいさつとさせて戴きます。
本日はどうもありがとうございます。
以上
(於ホテルオークラ福岡)
2006年07月18日
福岡県弁会長日記
会長 羽 田 野 節 夫
県内各地の相談センターの巡回と同センターの活性化策!
2月10日17:00県弁会長選挙当選証書を受領すると同時に肩の荷がずしりと重くなった感じがする。
緊張と重責感の連続に耐えながら健康に留意しつつ、この1年間を乗り切っていこうと心に誓う。
会長の任期は、4月1日から始まるが、事務引継ぎ等による準備期間からその仕事は始まる。2月中旬頃、ゴールが見えた前年度執行部各位は、すれ違い様の声かけに際し、心、晴れ晴れ、気持すっきり感が漂う。
当選証書を受け取るや、手始めに県内の主要な法律相談センターの実状調査を始めた。手始めに、宗像センター、博多駅前センター、いとしまセンターを訪問し、その後、飯塚部会管内の3地区(田川、直方、飯塚)の法律相談センターを巡り、北九州部会、筑後部会の順序で廻った。北九州と筑後各部会へは、作間功福岡部会長兼副会長予定者(当時)と共に巡った。
各地の法律相談センターを巡って判ったことは地方の施設の大半が稼働率が悪く、且つ、相談件数が軒なみ下がっていることである。この要因は、何か真剣に考える必要がある。私は、法律相談センターの拡充こそが来たる2007年問題(法曹大増員)の対策の解決の鍵だと認識しているからである。相談件数の落ち込み乃至は伸び悩みの原因は、他士業、 例えば司法書士会や行政書士による無料法律相談の実施(行政書士は非弁活動の疑いあり)等により有料相談を原則とする当会の法律相談センターが影響を受けていると思われる。
又、各センターの実施日を調査すると週に3〜4日とあって、施設を利用していない所謂遊休施設も見られる。今後、これらの法律相談センターの有効利用を考え、併せて、広報宣伝をしていく必要がある。特に、遊休時のセンター施設の有効利用促進策を会員の皆様で考えて欲しい。私は、この施設で毎週1回、消費者問題、高齢者・障害者問題、住宅紛争問題等につきミニコンサート風に有料(低額)のミニ法律セミナーを実施し、その後に無料相談会を実施しては如何かと考え、各委員会に検討をお願いしている。
事務引継ぎ会議
2月25日(土)新旧執行部の事務引継会議を実施。
分厚い会務引継書を新執行部は重い気持ちで受け取り、旧執行部は、重責感から解放される思いが心を晴ればれとさせるのであろう。心うきうきである。それにしても、多岐に渡る会務活動をよくもまあ系統立てて整理しているものよと感嘆しきりである。
近年の会務活動の広がりと中身の濃さはすさまじく、平成10年に福岡部会長兼副会長を勤めた経験がある私も戸惑うばかりである。とりわけ、平成10年当時は、部会長及び担当副会長としての仕事をこなしておけばよかったが、会長ともなると県弁全体と会務全般に気を配らねばならず、昨今の日弁連の活動の充実振りと併せ考えるとため息の連続である。引継ぎ会議の後、旧執行部の手厚いもてなしの懇親会の御接待を受け、良き伝統を有難く感じた。
大連律師協会訪問
2月26日〜2月28日、久し振りに厳冬(夜間温度−15℃、昼間−1〜2℃)の中国の大連市律師協会を訪問した。平成12年10月頃に当会を訪問し柳川の川下りを当会の吉村安先生と共に御案内した当時の律師協会の副会長であった王法瑞氏が、大連律師協会の会長となられていて、お会いして一目で判り、懐かしい思いがした。会長王氏の御挨拶の端々に、当時の訪問の様子が語られ国際交流の小さな成果がみられた。今後は、大連律師協会との交流をどのように充実させていくか、さらには、台湾の高尾市も当会との交流を希望しているようであり、如何に両立させるかが課題である。
愛知、横浜、当会との三会交流会
3月11日(土)〜3月12日(日)にかけて、名古屋市において、愛知県弁護士会主管の下で、三会交流会が開催された。この会には、新旧執行部が揃って参加し、旧執行部にとっては反省会となり、新執行部としては今後の課題と展望が見聞された。
特に印象に残ったのは、?会務活動の義務化?問題である。今後、大量に増員される見込みの会員の会務離れを如何に食い止めるか、その方策を両会共に検討中とのことである。会員が大量に増えると会員の顔も判別しがたくなり、会への帰属意識も低下し、会務離れも激しくなることが予想される。東京三会は、既に重要な会務について義務化をはかっているそうである。当会も、今後、いずれは考えなければならないであろう。
あいさつ廻り
3月27日〜4月4日まで実質10日間、福岡県や福岡市、北九州市、久留米市、大牟田市、その他の重要市町村、約160ヶ所にあいさつ廻りを実施した。
又、マスコミ各社も訪問した。当会の種々の活動に対して、深く理解されていること、又種々感謝されていることが体感できた。話題の中心は3年後に実施される裁判員制度である。
しかし、その中味は余り理解されていないので、広報宣伝の必要性とこの制度が有する問題点を市民に理解してもらう必要性を感じた。
第1回常議員会と福岡県弁の花見の宴
4月8日(土)午前10時より、羽田野執行部の第1回目の試練である第1回常議員会が開始。午後に予定される福岡県弁の花見の宴のために会議を早々に切り上げたがっていた執行部ではあったが、歴戦の兵ばかりの常議員も、そうはさせじと質問と意見が多発し、とりわけ、代用監獄法案に反対する会長声明については、文章の一部を撤回修正を余儀なくさせられるなど、前途多難なうちにも、好調なすべり出しである。
午後1時からの花見の宴は、桜は満開、天気は良し、弁当はうまい。総勢80人を超える会員に集まって戴き、平成18年度執行部としては幸運に恵まれ、上々の滑り出しである。
日弁連第1回理事会
4月14日(金)、同15日(土)の二日間、本田副会長と私の2人が上京し、日弁連会館にて、日弁連理事会が開催された。朝10時から夕方5時まで11時間、身柄を拘束された思いで大量に排出される莫大な資料を読まされ、質疑応答と意見を求められる。 私は、専ら
(1) 日本司法支援センターの取り扱う民事扶助事件について、司法書士会とどのように住み分けするのかを問うた。
そもそも、司法書士が有する訴訟代理権は、訴訟物140万円以下の簡易裁判所の代理権という限定的資格しかない。ましてや、家庭裁判所の代理権限がないにもかかわらず、司法書士が離婚、相続等の家事事件はもとより、高額の事件についても相談に乗っている。そして、無料相談と称して何でも相談をしている実態があり、果たしてこれでよいのか。事件を配転するについてその基準を早期に明確にすべきであると注文をつけた。
(2)スタッフ弁護士の地位と弁護士増員(2007年)問題
司法支援センターは、全国に弁護士を派遣できるようにスタッフ弁護士を雇用しようと考えている。そのスタッフ弁護士に対しては、所属会への入会金及び会費すら免除させようと考えている。又、スタッフ弁護士に対し所属会の会務活動をさせるのかさせないのかあいまいである。これでは、所属部会に帰属意識がなく、3年毎に転勤していくジプシー弁護士を養成することとなり、異質な弁護士集団を作りかねないとの懸念があると意見を述べた。私は、スタッフ弁護士は、弁護士が大量に増員されるまでのつなぎ役でしかありえないと考える。そうでないと、会員少数の地方単位会では、スタッフ弁護士が存在するから、国選も、民事扶助事件もスタッフ弁護士に委ねてしまい、一般会員は、国選事件離れが進みかねないし、スタッフ弁護士がいるばかりに、地方単位会が大量増員される新人の受け皿となりえない結果となりかねない。
今後は、スタッフ弁護士が地方に根付くように、地方単位会の会務活動を担わせるような配慮をすべきである。
おわりに。
理事会終了後、最高裁長官町田顕氏を迎えて日弁連会長副会長等役員就任披露パーティーがユーモアあふれる平山正剛会長のあいさつではじまり、なごやかに催された。
執行部を預かり2週間たらずで随分と鍛えられている。思わず出すため息を会員にさとられず、平然たる思いで会務に勤しみたい。会員の皆様が会務の一つでもよいから担当して御協力くださることを切望します。
福岡県弁会長日記
会 長 羽 田 野 節 夫
会長就任後4月16日から5月15日までの活動と思索について報告します。
1 部会集会について
福岡県弁護士会は、4つの部会に分かれ、各々の部会に自治制度があることは、全国的に珍しい制度です。先にFニュースでも紹介されたことです。明治時代、幕藩体制の名残がある中で出発した代言人組合が、昭和8年、旧弁護士法の制定と共に歴史的事情を考慮して4つの部会(福岡、小倉、久留米、飯塚)に引き継がれています。
4月中旬以降は、その部会集会のラッシュです。
(1)4月20日(木)作間部会長の招集に基づき福岡部会集会が開催され、参加者は僅か19人でした。昨年も同様でした。
部会集会の参加者が少ないこともあって、特に集会でもめることもなく平成17年度決算及び平成18年度予算が承認されました。参加者が少ないことに作間部会長は意気消沈。
(2)4月21日(金)飯塚部会集会。会員10名。私は、県弁の重要委員会(刑事弁護センター運営委員会)への出席のため部会集会には参加できず、その後の懇親会に小宮、作間両副会長と多川、古賀両事務局長と共に参加しました。中村博則部会長を中心に若い会員が力を発揮しています。
(3)4月27日(木)筑後部会集会。会員は木下隆一部会長以下48名。3月末に寺澤真由美会員が弁護士任官のため、名古屋地裁へ赴任し会員1名減。しかし、部会集会には、25名が参加し質疑応答もあって盛況でした。
集会後の懇親会には、事務職員全員と県弁執行部4名(私、作間、増永、多川)が参加し盛会でした。
(4)4月28日(金)北九州部会集会。午後1時から始まった執行部会議で、5月の常議員会と県弁の総会通知の内容確定に時間がかかり、北九州部会集会に少し遅れて参加しました。集会には、福田玄祥元会長や80を超えてなおお元気な岩成重義先生のお顔を久し振りに拝見しました。集会の参加者は50名と盛況で本庁昇格運動にも気合が入っていました。懇親会には、県弁執行部から4名(私、増永、作間、古賀(克))が参加し、事務職員も含め60名を越える人数となり壮感でした。懇親会の席上、県弁の委員会に北九州部会員の参加が少ないことについて、配川前部会長と話をした際、北九州部会員は、部会で独自に開催する県弁の委員会と別途県弁の委員会に参加することが二重の負担となる旨の話がありました。そうであれば、北九州部会独自の委員会の議事内容を県弁の委員会に議事録として提出し、県弁としての一体感と知識の共有化をはかって欲しいと願います。
2 福岡部会集会対策
それにしても、福岡部会を除く他の3部会は、いずれも、会員数に比して4〜5割の会員を集めているが、福岡部会はどうしてこんなに参加者が少ないのか。作間部会長と協議したところこんな実態が判りました。
4月20日福岡部会集会当日、県弁会館には部会集会の時間帯に他の委員会が同時開催されており、会館内には、約60人近くの会員が参集していました。委員会の日程は、前年度の委員会が4月の予定まで決めるが、部会集会は4月に入って決めることからダブルブッキング状態が起こっていたのです。そこで、今後は、来年の福岡部会集会は予め日程を固定しておき、その日の部会集会の時間帯の会館の使用は禁止する方策を来年のために執りました。これで、福岡部会の来年の集会には、人が多数参加できる状態にあります。来年、部会長に立候補を予定している方は平成19年4月20日を福岡部会集会の日と定めましたのでそのつもりでいてください。
3 常議員会の公開について
去る4月19日の常議員会において、常議員会は、県弁会員に対し原則公開とすることを可決承認しました。常議員会の議題については、既に、県弁会員に対し、Fニュース等のメールで事前配信されていましたが、議事内容について常議員会で意見の応酬を聞くためには、常議員会の議長に傍聴許可の事前承認手続きが必要でした。しかし、この手続きは煩わしく、これを県弁会員に限って包括承認し、原則として傍聴名簿に署名すれば会議を傍聴でき、資料も閲覧することが可能としました。勿論、会議自体を非公開とすべき議題については傍聴は許されません。早速、5月10日(水)に開かれた常議員においては、5名の会員が傍聴されました。少しでも福岡県弁活動の活性化につながれば幸いです。
4 どんたく参加について
去る5月3日午後4時頃、明治通りを「裁判員制度を支える司法ネットワーク福岡どんたく隊」がどんたくパレードに参加しました。参加者は、県弁の執行部を中心とした弁護士有志(15名)及び検察庁有志(絹川検事正を筆頭に約50名)、弁護士が家族や友人等で集めた約30人、そして市民団体が集めた約40人、そして西南学園高等学校のブラスバンド部員60人の総勢約200名。五月晴れの福博の町を川端から福岡市役所まで約1.5kmを約40分近くかけて練り歩きました。3年後に始まる裁判員制度に対し、市民が関心を寄せてもらうための広報宣伝活動と同制度の司法ネットワークを構築しようとの試みでした。パレードの影響かどうかは定かでありませんが、どんたく報道の後は、新聞各紙で「裁判員制度」の特集が組まれたようです。沿道の市民の注目を浴びてのパレードもいいものですよ!
5 4本の会長声明
執行部発足後、既に4本の会長声明を発しました。一つ目は、4月10日代用監獄を恒常化させる刑事未決拘禁法案反対に関する会長声明。
二つ目は、5月8日、共謀罪新設反対の会長声明。
三つ目、四つ目は、5月11日、「教育基本法の廃案と慎重審議を求める会長声明」及び「少年法改正反対の会長声明」。
いずれも、私と担当副会長が司法記者クラブに赴き、担当副会長が会長声明を読み上げるや会長のコメントを求められることが多く、その内容をよく理解する必要があり、少しも気が抜けません。会長声明後に個別にインタビューを受け、顔写真付きで全国版に掲載されるなどしたため、いよいよ身を引き締めなくてはと思っています。
6 司法支援センターその他
司法支援センターが4月に発足したものの、まだまだ不透明な部分があります。しかし、10月に発足する被疑者国選制を充分に対応するために当番弁護士名簿と被疑者国選弁護名簿を連携させるべきではないかと考えています。
会員各位には、是非従前通り当番弁護士名簿と国選弁護人名簿に御登載願えますように御協力の程を願います。
2006年08月04日
福岡県弁会長日記
会 長 羽田野 節 夫
5月24日(水) =定期総会で執行部原案承認=
会長職を拝命以来、2ヶ月を経過し、7月号の月報が発刊される頃には3ヶ月を経過することとなります。
執行部にとって5月に開催される定期総会は、執行部発足後最大の難関です。
去る5月24日(水)ホテルオークラ福岡で開催されました。本人出席は75名でしたが、例年の参加人数(約50名位)より多くの会員に御出席戴きありがとう存じます。
席上、執行部の最前列に座し、眼光鋭く資料を見詰める高木茂会員による手厳しい発言は、執行部を緊張させ且つ、会場の雰囲気を張り詰めたものにさせるに充分なものでした。高木会員の真剣な発言が、定期総会を格調高いものにして戴いたと執行部一同有難く思っています。会場も従来と異なり、地下鉄沿線のホテルとした工夫により、交通アクセスが容易で会員も出席し易かったのではないかと思っています。総会では、執行部原案が無事、満場一致で承認されました。
=川邊康晴様の記念講演
「業務に役立つ元気の出る話」=
今回の試みとして、会員にとって「業務に役立つ元気の出る話」をしてもらおうと、定期総会後、役員就任披露パーティーまでの約1時間を、アライアンス・パワー(企業・業務提携)を提唱する川邊康晴様による役員就任記念講演を実施しました。この内容の詳細は別稿に譲るとして、川邊講師の講演により、勇気を得た会員も多かったと思います。
会場には85名の会員が参加し、増永副会長をコーディネーターとして、進行されました。
=役員就任披露パーティー=
福岡高等裁判所長官龍岡資晃様や、福岡高等検察庁佐藤賢一様、福岡市長山崎広太郎様外福岡県弁護士会と関係の深い、各界各層の方々約160名、県弁会員124名の参加の下、盛大に恒例の役員就任披露パーティーを開催することができました。
主任・幹事の諸君や古賀業務事務局長の発案によるパワーポイントを使用しての会長のあいさつは、大概好評でした。
当日、ごあいさつした話の概要を月報に掲載しますので、参加されなかった会員には、私が内外に示したメッセージを御高覧下さい。
=5月26日(金) 岡山にて日弁連定期総会開催=
定期総会において、予算決算案が承認され、1つの宣言と3つの日弁連会長声明が可決承認されました。
弁護士による依頼者密告制度法案(ゲートキーパー問題)に対し、私は、日弁の会長声明は、警察庁に対する密告制度に反対しているが、申告の対象が金融庁に変わった場合はどう対応するのか、福岡県弁は、「警察庁は元より、いかなる国家機関に対しても密告することを反対する」との対応をしているが、日弁もそうすべきではないかと問い詰めました。
しかし、担当の松坂副会長は、「そんなことは全く想定していないし、想定できない」と紋切型の答弁であって失望感は否めません。
福岡県弁や、日弁連の定期総会が終了し、新執行部は定期総会で示した課題と私自身が示した所信表明の実現のために、そして、会員の皆様に去来する将来の不安を除去するために、いよいよ、本格的な活動を具体的に開始しています。
=6月3日、4日 執行部合宿=
6月3〜4日、執行部合宿を実施し、執行部一同は自らの足下を見直しています。
先ずは、司法支援センターにおける、刑事対応、民事対応、態勢の問題点を検討し、07年問題といわれる「会員の大幅増員問題」について、真剣に議論し、近々、その具体的な対策を提案する所存です。
2006年09月12日
福岡県弁会長日記〜6月中旬から7月中旬の会務活動
会 長 羽田野 節 夫
1.6月中旬より、第60期司法修習生を迎えて!
去る6月23日、第60期司法修習生(103人の修習生合同開始式が開催された。
従来60人位だった修習生がついに100人の大台を超えた。
福岡地裁簑田所長、福岡地検絹川検事正についで、福岡県弁会長として概略次のような話をした。
(1) 諸君のこれからの1年数ヶ月は、まさに実務修習という習いごとをする時期である。
習いごとと言えば、世阿弥が開いた「能」という芸能の世界で「守」「破」「離」という言葉がある。
・守は、型を守ること
・破は、型を破ること
・離は、型から離れて、独自の境地を作ること
今、諸君は、「守、破、離」の守の時を過していることとなる。
守の型を守るということは、我々法律の世界で言えば、基本となる原理原則をしっかりマスターすることである。そのためには、最初が肝心。人との接し方、礼儀作法が大切です。我々法曹、とりわけ弁護士は、人との信頼関係を構築して、初めて、有利不利を問わず全ての事実を明らかにしてもらえることとなる。初対面の方に、無礼、無作法に及んだり、尊大に振舞えば、依頼者との信頼関係が築けない。どうか礼儀を弁えることを肝に銘じて欲しい。
(2) 何事にも好奇心を持つことが大切。
昔、私共が学生時代に、「ベトナムに平和を市民連合」の代表者だった作家の小田実氏は、若い頃、「何でも見てやろう」という気持でいろんなことに好奇心をかきたて、それが肥やしになったとのことでした。
(3) 最後に、諸君は「何故法曹になりたいのか」という動機付け(モチベーション)を今一度考えなおして欲しい。そのモチベーションを高めて、高い志を持続させることが、諸君を大成させることとなる。
その後、7月7日、当会主催の修習開始式を経て、修習生歓迎会を開催したところ、総勢200人を超える会員らが集まり、盛況だったが、個々の修習生の顔が見えなくなる嫌いがある。
2.裁判員模擬裁判を傍聴!
(1) 7月1日(土)、福岡のロースクール生を対象とした裁判員模擬裁判が福岡高裁裁判官を中心として開かれた。なるべく多数の裁判員に関与させる趣旨で、裁判の合議体を三班作り、各々裁判長を高裁の刑事部総括が勤めた。事案は、これまでも何度か題材となった、スナック入口前の殺人未遂事件。橋山弁護人の活躍も空しく、三班とも有罪となった。終了後の座談会の席上、ロースクール生に対し「裁判員になれと言われたらなりたいですか?」との質問に15人中13人が「なりたくない」と答えたため、龍岡高裁長官はショックを受けたと感想を述べておられた。
(2) 7月4日(火)〜6日(木)と三庁合同の裁判員模擬裁判が新しい事件(共犯者による強盗傷害事件)によって実施された。弁護人役は3人。安武雄一郎会員と中原昌孝会員(新人)と裁判官による3人の弁護体制だった。
事案は、刑訴法321条1項2号書面の所謂、特信性が問題となる事案で、裁判員には少し難しかったと思われる。安武主任弁護人の無罪主張は、前掲書面が採用された時点で終えた。
終了後の座談会では、裁判員の服装が問題となり、裁判終了後、裁判員の顔が特定されないためにも裁判員用の何らかの法衣があった方が良いのではとの意見が出されていたのが印象的である。
3.健康がなにより!
会務活動は、膨大な資料に眼を通す必要があり、勢い、読み残しを資料としてカバンに詰め込み、事務所と会館を往来する。資料が多くなるにつれカバンも大きくふくらみ重くなる。重いカバンを持って私の事務所から会館まで往復するのが苦痛となり、ついつい車で通勤することとなり、運動不足となる。夕方は、何かと、やれ歓迎会だ、懇親会だと宴会が重なり、ついつい度が過ぎて健康を害する悪循環を積み重ねる。
この原稿を書いている頃(7月10日夕方頃)、訃報を受け、衝撃が走った。日弁連事務次長の矢澤昌司弁護士(41期)が享年49歳の若さで、くも膜下出血で逝去された。あまりにも痛ましく悲しい知らせである。同氏は、木上勝征先生の下で勤務され、修習時代を含め5年間福岡にいたので、存知あげていただけに悲しみは大きい。今年5月26日岡山で開催された日弁連定期大会での活躍振りが眼に焼き付いている。また、6月上旬頃に御逝去された吉田保徳先生(享年66歳)も一人娘を残して旅立たれてさぞかし無念だったでしょう。
いずれにしても、健康のありがたさを思い知らされる。不健康のスパイラル生活を送っている私自身、矢澤先生や吉田先生の死を無駄にしてはならないと自覚する。 合掌
2007年06月11日
会長就任のご挨拶
会長 福 島 康 夫(30期)
1. 2007(平成19)年度の会長として当会の運営をになうことになりました。よろしくお願い致します。
3月26日から新執行部の挨拶回りをしています。その中で,私自身あらためて裁判員制度を成功させるためには取調べの可視化を実現しなければならないという実感を持ちました。
今のままの刑事裁判だと,裁判員の前で延々と取り調べ状況について警察官,検察官,被告人を尋問することになります。安価でビデオ装置を導入できるのに,無意味ともいえる審理を続けて長期間裁判員を拘束することは裁判員となって参加される市民の皆さんに対して失礼ではないかとさえ思うようになりました。検察庁はようやく自己の判断で都合のいい部分だけを録画することを試験的に実施し始めました。しかし,都合の良い部分だけの録画では冤罪はなくなりません。鹿児島の志布志事件や北方事件が良い例です。裁判員制度が実施される前に取調べの可視化を実現させましょう。
2. また昨年10月に法テラスが業務を開始し,半年が経過しました。一方では弁護の自主独立を保ちながら,他方で緊密な連携関係をどのように構築していくのか,具体的運用面も含めて早急に明確にする必要があります。法テラスが業務をしていても中心となって活動するのは私達弁護士であり,誰が助けてくれるわけでもありません。
全国に先駆けて当番弁護士制度を創設した当会としては被疑者国選弁護制度を何としてでも成功させなければなりません。皆さんの更なるご協力をお願い致します。
3. 今年から法曹の大量増員問題が始まります。今年は修習修了者が2500人にも達します。このような中で最もタイムリーなシンポが福岡で開催されることになっています。
来る6月22日(金)に「市民のための弁護士をめざしてーいま弁護士・弁護士会に求められるものー」というテーマでシーホークホテルで開催されます。
過去,日弁連のシンポには大きな歴史的な転換点となったシンポがありました。前回の1992(平成4)年の福岡での司法シンポは司法改革の大きな転換点となる歴史的なシンポになりました。今回の福岡での司法シンポも歴史的な転換点になるものと確信しています。今回のシンポが法曹の大量増員問題を見据えた問題提起です。
今回のシンポは弁護士の大量増員問題の基本的な認識を共通にするという意義を有しています。皆さんの司法シンポへの積極的な参加をお願い致します。
4. ところで,2006(平成18年)度,当会では多重債務者の救済は人権救済だという観点から法律相談センターにおける多重債務者の法律相談を無料化することを決定しました。そして,4月1日から福岡,飯塚で先行して無料化を実施することになりました(北九州,筑後は準備が出来次第追って実施するということになっています)。
多重 債務が原因での自殺者が年間8000人と言われており,今後ますます社会問 題化する様相を呈しています。私は2007年(平成19年)度は会をあげてこの多重債務者問題の解決にあたらなければならないと思います。なお,法律相談センターの財務状況については執行部として十分に注視していくことにしており,今後,逐次ご報告をしたいと思っています。
5 今年は選挙が目白押しの状況です。政治情勢がどうなっていくのか私達弁護士会の活動にも大きく影響があるかもしれません。この他にもたくさんの問題がありますが,会員の皆さんとの間でなるべく多くの情報の共有化を図ることが最も重要だと思っています。
全力を尽くしますので,よろしくお願い致します。
会長日記(4月)
会長 福 島 康 夫(30期)
第1回常議員会と花見
第1回常議員会と花見は4月の第1週目の土曜日とすることが慣例となっています。今年は第1週目の土曜日が4月7日です。 桜は3月20日頃が満開ではないかといわれていましたが,まさか前年度の3月末に常議員会と花見をすることもできず, 全く桜のない中での宴を覚悟していました。ところが,3月末から急激に寒くなり,満開の桜が1週間続いてくれ,予想外に絶好の天気の中で花見ができ幸運でした。 飲み干すコップの中に桜の花びらが入り,ゆったりとした雰囲気の中で桜の風情を感じました。
ところで,常議員会は第1回目から最重要案件2件付議しました。1件は多重債務者救済対策本部の設置の件であり,2件目は福岡高裁, 福岡地裁に対して裁判所の記録謄写の公募制導入を撤回するよう意見書を提出する件です。いずれも活発な議論の結果,原案どおり承認していただきました。
多重債務者救済対策本部の設置の件
昨年度の最後の常議員会で,県弁として相談センターにおける多重債務者の相談を無料化すること, 4月1日から福岡地区と飯塚地区で無料化を実施することが議決されました 本年度の執行部で検討しましたが, この問題は県弁全体で会をあげて取り組まなければならない問題だと考え,対策本部方式で解決にあたることにしました。 なお,無料化に伴う相談センター関連の財政については執行部として責任をもって逐一チエックすることにしています。
挨拶回りで消費生活センターの他多くの地方自治体の市長や商工会議所の会頭と懇談をし,その中で弁護士会がこの多重債務問題について解決にあたることを 話しますと喜んでいただき,広報等の協力を約束していただきました。今,多重債務問題は行政等もこれまでにない最大限の対策を立てようとしています。 今後,関係機関との懇談をして相互に連携する必要性を痛感した次第です。
多重債務者相談を無料化にするということは受任後の法的処理までも無料にするものでないことはいうまでもありませんが, 単に相談料が無料というだけで後の法的処理がいい加減では弁護士会への信頼が一挙に喪失してしまいます。法律の専門家である弁護士が責任をもって 法的処理をしなければ解決は不可能です。法テラスの法律扶助等も最大限駆使して解決にあたる必要があります。更なる研修も不可欠です。
第1回目の対策本部は4月13日に開催し,春山九州男会員を本部長代行に選任致しました。早速,合宿の日程が入り,今後は急ピッチで対策本部の活動が始まります。
今後多重債務問題は対策本部を中心として,消費者委員会,法律相談センター運営委員会,倒産業務等支援センター委員会, 弁護士業務委員会等関連委員会が連携して活動することになります。多重債務者救済問題について会員の皆様の結集をお願い致します。
記録謄写公募制問題
2つ目は福岡高裁,福岡地裁に対して裁判所の記録謄写の公募制導入を撤回するよう意見書を提出する件です。 福岡高裁は10月から福岡地家裁管内の謄写について公募性を導入する予定とのことであり,スーパー等で見かけるコインベンダー式にするということです。 しかし,もし,公募制が導入されることになると本庁,支部を問わず,弁護士若しくは事務員さんが自らコピーに行かなければなりませんが, 全く無駄な手間と労力を強いられることになります。訴訟記録の謄写は訴訟当事者の権利です。公募制の導入は迅速かつ確実な謄写を阻害するものです。 また,記録の秘密保持,改ざんの防止の問題や地域の実情を無視しているという点でも到底認めるわけにはいきません。 弁護士会として会をあげて取り組む必要があり,弁護士協同組合の立場とは別の立場から,公募性導入の撤回を求める意見書を提出することに致しました。
今後,予断を許さない状況ですので,逐次報告をしていくことにしています。
挨拶まわり
会長に就任して最初の仕事が恒例の挨拶回りです。挨拶回りでは限られた時間ではありますが,年度の初めに懇談する機会が与えられますので, その年の弁護士会の活動目標等理解していただくための絶好の機会です。
本年度は県知事選挙等の関係で挨拶まわりを2回に分けて行うことにしました。第1弾を3月26日から4月13日まで3週間をかけて行い,既に156ヵ所を訪問しました。 訪問先は裁判所,検察庁等の法曹関係,県警本部,福岡市,北九州市,久留米市,飯塚市等の地方自治体,マスコミ関係,各地の商工会議所, 各地の消費生活センター,企業,労働団体等です。県内全地域を訪問しました。訪問先は昨年よりも増え,第2弾の挨拶回りもあわせれば170ヵ所以上になると思われます。
本年度は特に[1]多重債務者の相談料の無料化の説明とこれに関連した多重債務問題についての懇談 [2]弁護士の大量増員を見据えた6月22日の司法シンポジウム 「市民のための弁護士をめざして― いま弁護士・弁護士会に求められるもの―」の案内 [3]裁判員制度,取調べの可視化についての懇談を中心に懇談をしていきました。
多重債務者問題は自治体,商工会議所,消費者生活センター等で特に懇談をしました。特に法科大学院等で司法シンポについて懇談をし, 今回のシンポが法曹の大量増員問題を見据えた問題提起であり,非常に重要なシンポであることを力説しました。マスコミ関係には裁判員制度, 特に取調べの可視化等について懇談をしました。訪問先で懇談した時間は短時間でしたが,いずれも次につながる有意義な懇談になったのではないかと思います。
挨拶回りは執行部の最初の仕事です。約160ヵ所の訪問先,しかも多忙な各界のトップと懇談する予約をとることは至難の業です。 当日の時間調整を含めマネージメントを担当した大神総務事務局長,徳永響業務事務局長本当にお疲れさまでした。ただし,まだ,まだ挨拶回りは続きます。
お わ り に
今年も前年度に引き続き会長日記を継続致します。その時々の弁護士会のタイムリーな話題を書き綴っていくことにしますので,一読頂ければ幸いです。1年間よろしくお願い致します。
2007年07月31日
福岡県弁護士会会長日記
会長 福 島 康 夫(30期)
1 日弁連第22回司法シンポジウム(6月22日)
今年の最大のイベントである日弁連第22回司法シンポジウムが福岡市のJALシーホークアンドリゾートホテルで開催された。当日の参加者は1243名。これまでのシンポジウムの中で最大規模の参加者になった。参加していただいた当会の会員の皆さんに大いに感謝したい。
当日の全体会の冒頭の平山正剛日弁連会長の挨拶の後で地元会を代表して私が挨拶に立つことになった。
ところで,私の挨拶の中に,多重債務者救済対策本部の春山本部長代行の強い勧めで多重債務のテレビCMを会場に流すことにした。「弁護士会は変わる,福岡県弁護士会は先頭きって大きく変わる」ということを視覚的にアピールしようとしたものである。
テレビCMは挨拶の途中と最後に流したがどうだったであろうか。会場の反応が心配であったが,何とか失敗はせずにすんだようである(なお,このCMは現在,当会のホームページでも動画で見ることができる。ご覧頂いていない方は是非とも参考にご覧頂きたい)。
今回のシンポジウムは「市民のための弁護士をめざして いま,弁護士,弁護士会に求められるもの」というテーマであり,法の支配を全国津々浦々に及ぼすために,是非とも議論をしておかなければならない問題である。さらに,今年から弁護士の大量増員が始まる中で,私達弁護士自身のアイデンティティーについて議論することは極めて重要である。
当日のシンポジウムでは,これまで紛争がなく弁護士なんて必要ないと思われていた地域が実は弁護士が着任して以降依頼が急増している報告がなされ,過疎地域のひまわり基金法律事務所の若い弁護士や法テラスのスタッフ弁護士の溌剌とした活躍ぶりが紹介された。偏在,過疎問題といえば,ともすれば空中戦といった感があったが,全国に活躍する若い弁護士の姿は感動的であり,エネルギーを注入された感じがした。
しかし,他方で弁護士数は増加しているにもかかわらず,それが偏在解消にはつながっていないことも明確になった。成り行き任せでは偏在問題は解消しないことが共通の認識となったと思う。
弁護士偏在問題は2009年に始まる被疑者国選弁護制度の対応態勢の確立と密接に関係しており,弁護士の大量増員問題とも密接に関係している。その意味で弁護士偏在問題対策はこの2年で目処をたてなければならない緊急課題である。
2 弁護士偏在問題解消のための経済的支援策の試行について
(7月12,13日)
7月12,13日の日弁連理事会において,弁護士偏在解消促進のための経済的支援策の試行に関する実施要綱が承認された。弁護士の偏在問題を早急に解消するためにあらゆる形で経済的支援をするというものであり,偏在問題の解消は際限のない弁護士増員要求に対する歯止めになるはずである。もし,本格的に実施するとすれば10億円を超える大事業となるが,これまで眠っていた特別会計を改組すれば会員からの新たな会費負担を求める必要はないという説明であった。今後,この経済的支援策の本格的実施をする場合日弁連臨時総会に付議されることになり詳細についても説明がなされることになると思う。経済的支援策は偏在問題解決のためのメニューの一つである。大きな構想だけに日弁連執行部の意気込みを感じた。
九弁連管内の偏在問題,当会の中での偏在問題について,大いに意見を交換して早急に対策を立てる必要がある。この1,2年の重要課題である。
3 あらためて2009年問題について思う
2009年には裁判員制度が実施され,被疑者国選弁護制度が10倍にまで拡大される。裁判員制度も被疑者国選弁護制度もどちらも刑事分野での司法制度改革に関する問題であるが,単に刑事の問題だけではなく,この問題は司法の将来,弁護士会の将来を左右する問題であると思う。裁判員制度が真の意味での市民のための司法になるかどうかはまだまだこれからの問題である。取調べの可視化を含め克服すべき課題は多い。
また,被疑者国選弁護制度は2009(平成21)年には対象事件は今の10倍以上,年間10万件にも達することになる。しかし,現在のように偏在問題が解消できない限りは被疑者国選弁護制度の対応は不可能である。偏在問題の解消は特に,被疑者国選弁護制度の対応態勢が確立できるかどうかという問題と密接に関係している。この被疑者国選弁護事件をやりとげることができて,初めて弁護士大量増員問題にも堂々と意見がいえることになると思う。
今,2009年に向けて全力をあげて準備をすることが最大かつ緊急の課題である。残すところ2年足らずである。精一杯行動するしかないが,やりがいもあると考えたい。これから2009年まで,日弁連全体にとってターニングポイントの年である。
4 情報の共有化のために工夫していること
本年度の会務執行方針の一つとして情報の共有化を掲げた。700名を超える大きな会となった当会としては,特に会員全員の情報の共有化が不可欠である。そこで,従来からの月報の他に,ホームページ(大石副会長担当)週1回発信のFニュース(吉岡副会長,徳永響業務事務局長担当)でなるべく多くの弁護士会の情報を頻繁に発信することにしている。
また,執行部内部でも情報の共有化を重要視し,このために執行部全員が工夫している。
執行部会議は毎週月曜日の午後2時から5時30分頃まで何十という議題について意見を交換し結論を出している。常議員会のある日は別途執行部会議を12時から午後3時迄している。毎月輪番制で副会長が司会をすることになっている。執行部会議の議事録は大神,徳永響両事務局長が1,2日のうちに作成している。 担当副会長,事務局長は担当の部門の情報について日常はメーリングリストを活用しどんな些細なことでも報告をし,日常的な細かい問題はメールの交換で解決を図っている(現在までのメールは1620通)。
対外的な折衝については執行部では複数で対応し慎重を期している。一見非効率ではあるが,複数で対応することによって折衝内容をより正確に分析することができると考えているためである。
常議員会は2ヵ月に3回の割合で午後3時から6時までの予定で開催している。川副常議員会議長の手際の良い進行のお蔭で,密度の濃い議論をしながらこれまでのところ時間厳守を励行している。
常議員会の内容は月報の他に毎回常議員会の直後にFニュースでメール配信をし,ホームページの会員のページに出しているので,チエックしていただきたい。
また,常議員会は日弁連の理事会の直後に開催するようにして,最新の日弁連の情報を常議員会に反映できるようにしている。日弁連理事会は2日間にわたる12時間以上のマラソン会議であるが,河辺副会長が常議員会で日弁連の動きについての簡にして要を得た報告をしている。月報に掲載しているので是非とも一読頂きたい。
2007年10月09日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 福 島 康 夫(30期)
自主事業に関する意見書提出(7月5日)
法律扶助協会が解散して、被疑者弁護援助制度、少年付添人援助制度、精神保健当番弁護士制度等法律扶助協会福岡県支部等各地で行ってきた9つの自主事業が10月から法テラスに委託されることになった。将来的には国の制度とするための方策である。これで国選少年付添人制度の実現に向けての第1段階が確保できたし、そのための財政基盤も安定的といえるところまできた。
当会では会員に対する報酬は従来どおり被疑者弁護援助制度の事件で1件7万円、少年付添人事件で1件10万円が支給されることになる。ただし、今後は財政的に安定し報酬減額の危険性はなくなったし、件数制限という事態もなくなった。
死刑、無期、短期2年以上の法定刑が対象であるが、国選付添人制度も11月から始まることになる。対象事件は福岡県内で年間40乃至50件程度と少ないが、今後国選付添人制度の対象事件が拡大する可能性を持っている。11月1日に浜松で開催される人権大会のシンポジウムの第2分科会では国選付添人制度がテーマとして意見交換がされることになっている。多数の参加を期待したい。
ところで、日弁連は3月になり、自主事業の方法について地方の意見を全く聞かないまま、いわば一方的に運用や書式を決めて実施するよう要請してきた。そのためにこれまでの当会の知恵とノウハウが全く生かされず、ギクシャクした4ヵ月であった。使い勝手の悪い運用は変えなければならない。当会はこれまでの当会が工夫をしてきた運用等を今後も継続するため、6月28日に日弁連に意見書を提出した。意見がとおらなければ当会の自主事業が発展できるかどうか疑問となる。その後、7月5日に私と斉藤副会長の2人で日弁連に赴き、日弁連の山田庸男担当副会長他3名の日弁連の自主事業に関する責任者と協議をした。短時間で日弁連執行部を説得しなければならない。私は真剣勝負という気持ちで臨んだ。当会としてはこれまで十数年以上にわたって工夫を重ねて育ててきた各自主事業のやり方を尊重するように要請をし、上から一方的に押しつけられた状態では会員には不満感が強いこと等を訴えた。当会が全国3600件の付添人事件の内の800件を付添人として受任し、全国8000件の内の1000件の被疑者弁護人援助制度事件を受任しているという実績も説明した。当日用意していた日弁連の最初の回答は殆ど全部がノーということであったが、福岡の意図や実情がわかったので再度検討するということであった。結局、協議の時間は1時間40分以上に及んだ。
更に、その後7月11日には補充の要望書を提出し、7月13日の日弁連理事会でも私が意見の趣旨を説明した。そして、8月25日の日弁連理事会で日弁連と法テラスの本部で検討した結果の説明がなされ、最終的には被疑者に負担させることがあるという条項をなくした書式を使用できる等基本的にはこれまでの福岡の方式を継続することができるようになった。
日弁連では事前の周到な準備なしに提案や発言をしても受け入れられないと思う。日弁連の内部で検討されている早い段階から、事前に県弁の意見を書面で提出し、更に口頭で説得するということをすれば、意見が採り入れられる可能性が十分にあることを実感した。今後は何よりも用意周到な準備が必要であると思った次第である。
2弁、札幌との3庁交流会(7月7日)
当会は国内、海外あわせて毎年4つの交流会に参加している。
2弁、札幌との3会交流会、大阪、広島との3会交流会、横浜、名古屋との三会交流会釜山地方弁護士会との交流会である。出席者はいずれも執行部、議題を決めて率直な意見交換をすることにしており、これまで開催したどの交流会も活発な意見を交換できた。
2弁、札幌との交流会は7月7日、札幌弁護士会館で開催された。一昨年までは2弁との交流だけであったが、昨年からは札幌を交えての3会交流となった。場所は札幌弁護士会会館。裁判所のすぐ近くに建つ自前の7階建ての立派な会館である(羨ましい!)。
今回の議題は多重債務問題、都市型公設事務所、拠点事務所等についてザックバランな意見交換をした。多重債務問題では当会のTVCMを見てもらった。釜山地方弁護士会との交流でもTVCMを活用したが、今年はありとあらゆる機会にこの多重債務TVCMを活用することにしている。
九弁連合宿(8月3日)
恒例の九弁連合宿を8月3日に当会の会館で実施した。参加者は九弁連の理事と主任約50名。
テーマは法曹人口問題と取り調べの可視化の2つに絞った。
法曹人口問題は今年の宮崎の九弁連大会のシンポジウムが弁護士過疎、偏在問題という関係から選んだテーマであり、講師は当会の永尾広久会員と前田豊会員。そして、宮崎の後藤好成会員から現在までのシンポジウムでの検討状況の報告がなされた。今回の法曹人口問題のテーマは九弁連大会のシンポジウムに反映される予定である。
取り調べの可視化の講師は鹿児島志布志事件の弁護人の野平康博九弁連理事と佐賀北方事件の一審の弁護人の浜田愃九弁連理事。九州の2つの代表的な冤罪事件の弁護人が九弁連の理事であるという点で全く偶然であり幸いであった。両事件とも裁判の審理期間は2年半から3年半に達しており、この大半が取り調べ状況の内容の審理であった。両弁護士は期せずしていずれの事件でも取り調べ状況を録画していたら起訴はされなかったはずであると話されていたのが印象的であり、生の事件を題材にして現実の裁判の問題点が明確になった。裁判員裁判で、市民の裁判員を巻き込んで今後も延々と長期間の審理をするのであろうか。裁判員裁判の実施は残すところ1年8ヵ月に迫っている。
本年度はシンポジウムが花盛り
当会の委員会活動は活発である。そのため5月からは対外的なシンポジウムの開催が目白押しの状態である。今後の予定を加えるとざっと次のとおりとなる。本年度はこれに6月22日に第22回司法シンポジウムが大々的に開催されており、シンポジウム花盛りの年である。シンポジウムの準備段階から関係していただいた会員各位の献身的な活動に感謝したい。
5〜6月 憲法市民連続講座
6月9日
クレジットシンポジウム「悪質商法とクレジットがもたらす深刻な消費者被害〜消費者が保護される安全なクレジット社会」
7月21日
人権擁護大会プレシンポジウム「監視カメラとまちづくり」
7月27日
民暴拡大協議会プレシンポジウム「企業内対象暴力〜21世紀の企業防衛のあり方」
8月25日
憲法シンポジウム「今なぜ、何が問題か?〜憲法改正問題を考える」
9月1日
取調べの可視化シンポジウム「密室からの叫び!〜取調べの全過程の録画実現を目指して〜」
9月15日
人権擁護大会プレシンポジウム「すべての非行少年に弁護士付添人を!非行少年の実態を踏まえて〜国選付添人の全面的な実現を目指して〜」
9〜10月 憲法市民連続講座
11月16日 民暴拡大協議会
これまで全部のシンポジウムに出席したが、いずれもレベルが高く短時間で要点を掴んだ内容であり、勉強になった。これまでは余り関係のなかった分野でシンポジウムに出席することは刺激的であり新鮮である。
会員の皆さんにも時間の許すかぎり出席することをお勧めしたい。必ずや有意義な時間を持つことができること間違いない。
シンポジウムの内容等については弁護士会ニュースや月報、ホームページ、Fニュース等でチェックして頂きたい。
2007年12月21日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 福 島 康 夫(30期)
国選付添人シンポジウム (9月15日・11月1日)
9月15日に日弁連人権擁護大会プレシンポジウムが天神ビルで多数の市民の参加を得て開催された。テーマは「すべての非行少年に弁護士付添人を!非行少年の実態をふまえて〜国選付添人の全面的実現をめざして〜」。当日は現役の中学校の先生、児童相談所の所長、家裁の現役調査官といった多士済々の皆さんがパネリストとなっていただき新鮮な話を聞かせていただいた。
本年11月1日から死刑、無期、短期2年以上の懲役・禁錮にあたる事件等一部の重罪事件についてであるが、少年国選付添人制度が実施されることになった。
大人には国選弁護人制度があるが、子どもの場合には無資力だから国費で弁護士を付けてくれと請求できる制度が作られていなかった。しかし、大人に弁護人がついて、子どもが放置されてよいはずがない。
今回の対象事件は極めて限定的であり、福岡県でせいぜい40乃至50件ということである。しかし、何はともあれ6年余りで国選付添人制度が実施されることになったという点で、先ずは全国で初めて実施した会として喜びたい。
そして、これまでガムシャラにやってきた子どもの権利委員会の活動と委員各位の精力的な活動に最大限の敬意を表する。
今年11月1日・2日の浜松での人権シンポジウムでは当番付添人制度の全国実施と全面的な国選付添人制度の実現に向けてをテーマにしたシンポジウムが開催される。
当会は2001(平成13)年2月、全国で初めて少年に対する当番付添人制度を実施し、少年鑑別所に収容された少年事件の全件について付添人になる全件付添人制度を創設した。日弁連のシンポジウムとして全国規模で福岡の全件付添人制度が大きく飛躍しようとしている。今、スタートラインに立つことができた。当番付添人制度を実施している単位会は32会とのことである。全国展開までもうすぐである。
当会の全件付添人制度は来年高校の現代社会の教科書に掲載されることになっている。
自主事業の法テラス委託 (10月1日)
10月1日から被疑者弁護人援助制度等9つの事業が法テラスに委託されることになった。
基本的に3月まで福岡で行ってきた方式が継続されることになるので、大きな問題はないと思うが、混乱のないことを期待したい。
被疑者弁護人援助制度、少年付添人援助制度、精神保健当番制度等事件は件数の面でも福岡が全国を引張っていることが明確に見える。例えば、被疑者弁護人援助制度は全国8000件中1000件が福岡、少年付添人制度は全国3600件中800件が福岡である。
今後皆さんの協力のもとこれらの事業が更に発展することを祈っている。
法テラスとの契約
法テラスとの間の国選弁護の契約、民事扶助の契約率が相変わらず低迷している。
特に、福岡部会の国選弁護の契約率が50%を切っており、現状は憂慮すべき状況である。そのため会員一人当たりの国選弁護の受任が早く回ってきて大変だとの声を聞く。契約者が少なければ多く担当しなければならなくなり、負担感が増す。
国選弁護も、民事の扶助事件も弁護士としての義務であるという考えが当会の伝統だった。2009(平成21)年の被疑者国選弁護事件が10倍に拡大するが、これをやりとげるためには契約が増大しなければならない。執行部として後半の最大の課題の一つである。会員の協力なしでは成り立たない制度である。ご協力を是非ともお願いしたい。
日弁連副会長選挙の規定 (9月28日)
次年度の日弁連副会長選挙が9月28日に実施された。立候補者として会員の皆さんに対してお礼と共に、この選挙でお騒がせをしたことに陳謝したい。
私自身は選挙期間中のわずかな時間ではあったが、会員の皆さんと話す機会を得て本当に参考になった。今後の糧とすることをお約束したい。
この最も忙しい時期に?とか、選挙制度についてもう少し工夫というものはなかったかとか、様々な意見を聞いた。実際に選挙をして選挙の規定についての疑問もあるし、実際の運用についても問題が明らかになった。皆さんの意見を聞いて選挙制度、選挙規定の抜本的見直しを含めて検討する必要がある。年度内に何とかメドを立てたい。
秋からの日程
私の秋からの日程は1ヵ月余りで6ヵ所、目まぐるしい出張であるが、反面楽しみでもある。
10月4日乃至6日
札幌(業革シンポ・中規模サミット)
10月23・24日 東京(日弁連理事会)
10月25乃至27日 宮崎(九弁連大会)
11月2・3日 浜松(人権大会)
11月7乃至9日 徳島(四国弁連大会)
11月17日
大阪(大阪、広島弁護士会との三会交流)
ここまで書いたら忘年会の日程が手帳に見えてきた。今年は福岡部会は12月5日に稚加栄に決まった。100名以上収容の料亭は余りない。茶話会幹事がようやく捜した料亭である(灯台もと暗し!)。各部会の忘年会も盛大に行われることを期待したい。なにしろ「顔の見える弁護士会」のための最大の大事な行事である。各部会の幹事さん大変だけどよろしくお願いしたい。
後半もよろしく
ようやく暑い暑い夏が終わり、秋になった。私達執行部の任期も残すところ半年になった。後半も精一杯頑張る所存である。
会員の皆さんの弁護士会への結集をお願いしたい。
残り半年のご協力をよろしくお願いしたい。
福岡県弁護士会会長日記
会 長 福 島 康 夫(30期)
臨時総会(10月2日)
10月2日の臨時総会の主たる議題は被疑者弁護人援助制度、少年保護事件付添人制度等9つの自主事業を法テラスに委託するにあたっての規程の整備であった。9つの自主事業を活発に行っており、当会がトップの利用件数である。少年保護付添人援助事件や精神保健当番弁護士等今後とも活発に活用し、国の制度にする必要がある。
新入会員歓迎会(10月2日)
臨時総会終了後、9月に当会に登録した39名の新入会員(現60期)に対する歓迎会を開催した。さすがに39名という人数は学校の1クラス分であり壮観である。これで現在の当会の会員数は741名となった。福岡部会549名(内女性会員77名)、北九州部会116名(内女性会員12名)、筑後部会59名(内女性会員8名)、飯塚部会17名(内女性会員0)。ちなみに九弁連は総数は1525名となり、佐賀57名、長崎94名、熊本158名、大分92名、宮崎74名、鹿児島97名、沖縄212名となっている。九弁連の他の会も新入会員の増加は著しいようである。この他にも委員会の主催で当番弁護士・当番付添人研修会、精神保健当番弁護士等研修会を催し、その後で懇親会をすることにしている。会の予算は全く使わず先輩が後輩におごるという伝統が受け継がれてきた。新入会員は急激に増加しているため新入会員に対して一部費用負担をお願いする話しもあったようであるが、これまでどおりとなったとのことである。互いに顔のわかる弁護士会であるためにもこの良き伝統だけは続けていければと思う。12月20日には新60期が当会に登録する。現段階で18名程度のようである。新入会員の皆さんは懇親会には特に全員参加して頂きたい。互いの顔のわかる弁護士会であるためにはやはり懇親会に出席することが一番である。紙面を借りてお願いする次第である。
当会の会員数が1000名に届くのは時間の問題である。大単位会には派閥があるが、福岡には派閥がない。それは素晴らしいことであるが、それだけに、今、互いの顔のわかる弁護士会であるための工夫がこれまで以上に必要となる。これまで以上に全部会の茶話会幹事の皆さんにも大いに奮闘をお願いしたい。
弁護士大量増員問題
本年度弁護士登録は2200人に達するとのことである。全国では現60期は1200名、12月に新60期が1000名近くが登録することになるようである。当初、就職できない修習生が現60期で100名程度になるのではないかと心配されたが、最終的には10名程度になるのではないかといわれている。しかし、それでも就職浪人が出るという事態は深刻なものになっている。
ところで、急激な弁護士増員は偏在問題の解消にはつながらないし、現につながっていない。偏在問題を解消することが急務となっている。1年半後の2009年被疑者国選弁護事件の対象事件が10倍に拡大するが、そのためにも偏在問題の解消が急務である。偏在問題解消のための弁護士を養成し、弁護士が帰っていける拠点事務所が必要となる。東北弁連は拠点事務所を設置することが正式に決定されている。聞くところによるとやまびこ基金法律事務所という名称だそうである。九弁連でも拠点事務所を設置すること、特に福岡で拠点事務所を作ることを早急に検討しなければならない。
魅力的なネーミングも必要である。北海道は「すずらん」、東北は「やまびこ」、九州は…?。
昨年、政府の規制改革・民間開放推進会議では合格者を1万2000人程度にすべしという意見が出たそうである。単に弁護士を安上がりに使おうという論に他ならないが、際限のない法曹人口増員論に歯止めをかけるためにも偏在問題の解消は急務である。
2010年には3000名体制になるとのことであるが、今後、本当に就職先があるのか、法曹の質が急激に低下しないか心配である。司法制度改革審議会は2020年に法曹人口を5万人にする計画を立てたが、改革審議会の意見書当時とは状況が一変した。現在の弁護士数は2万4000人を超えており、そればかりか140万円までの訴額の簡裁事件ができる認定司法書士は1万人を超えたということである。合計すれば現在既に3万4000人以上に達している。今後、弁護士と認定司法書士の数だけでも加速度的に増加していくことは確実であり、認定司法書士を加えると5万人に達するのも予想外に早いであろう。法曹の数の急激な増加によって質の急激な低下が心配である。もしそうなれば、利用者である市民が被害を被ることになる。
この問題はあくまでも市民のための司法の実現という観点からの検証であることを忘れてはならないと思う。偏在問題に一定程度のメドをつけて、本当に3000人体制がどうなのか、検証しなければならない。
鳩山法務大臣は週刊誌のインタビューで、合格者が3000人というのは多すぎる、1500人で十分だと話したということである。法曹の質の観点からの発言が出てきたということであろう。歓迎すべき重要な発言である。司法界にとって重大な問題である。
釜山地方弁護士会との交流会(10月19日)
当会は6月22日から24日まで釜山弁護士会を訪問して大歓迎を受けたが今度は釜山地方弁護士会からの訪問である。釜山地方弁護士会から金泰佑会長をはじめとして総勢36名の訪問団をお迎えした。金会長は私よりも若く(確か53歳だったと思う)、物腰が柔らかく紳士である。前回の訪問の際にいっぺんに親しくなった。訪問団は法テラスを見学した後、会館の3階で意見交換をした。今回のテーマはロースクール問題である。韓国では2009年3月からロースクールが開設されることになっており、既に47校の申請があり、その内の15乃至20校が認可される予定であり、初年度は1500名が法曹になることを予定しているとのことである。しかし、韓国の人口は4500万人程度で、日本の3分の1であり、1500人の合格というのは急激な増加という感がある。釜山地方弁護士会からは張俊棟副会長が説明をし、当会の牟田会員が日本のロースクールの現状と課題を説明した。釜山地方弁護士会の先生方は日本の制度にも詳しく、意見交換は予定時間がなければいつまでも続くかのように真剣味を帯びていた。時間が不足したのが残念である。韓国も日本と軌を一にして司法制度改革が進んでいる。相互に情報を交換し意見を交換することの重要性はますます高まっている。実務的な面でも今後の密接な交流の必要性を痛感した。
会議終了後は場所を「稚加栄」に移して懇親会を開催した。今年は当会が6月に訪問したが、その際の懇親会では韓国の伝統芸能である「パンソリ」で歓迎を受けた。当会としては今度は福岡に縁の深い日本の伝統芸能ということで日本舞踊の「黒田武士」に決め、日本舞踊の名手の山田敦生会員にお願いした。当日は乾杯の前に山田会員には花柳流の舞踊をご披露頂き大成功であった。山田会員には会を代表して大いに感謝申し上げたい。その後、当会の木梨吉茂会員と釜山弁護士会の黄会員の楽しい乾杯の挨拶の後、時間を忘れて親しく歓談をした。
来年は釜山弁護士会創立60周年ということである。来年はお祝いのために大挙して訪問する必要があろう。
国会議員要請行動(10月24日)
8月の理事会で国選弁護報酬の大幅アップを要求する件が承認された。ところが、法務省は来年度の国選弁護報酬を昨年100億円だったのを5億円減額して概算要求をしたことが判明した。最近わかったことは国選弁護報酬の法テラスの半年分の予算が30億円だったのが現実に支出した金員が20億円であったため、10億円予算が余ったということである。予算が余った原因は何なのか徹底的に調査をする必要がある。
ところで、国選弁護報酬は法テラスの事業になったことを契機に報酬基準が改定され、その結果基礎的な簡単な事件の報酬が大幅に値下げになってしまった。最大18%値下げになったということである。私も昨年簡裁の国選弁護事件で結構熱心に活動した結果手取り6万円程度でしかなく、余りの安さに腹立たしかった。全国の弁護士が不満を持っている。このままでは国選弁護のモチベーションが下がるばかりである。
10月24日には日弁連の執行部と理事の全員が手分けして各県選出の国会議員に対して国選弁護報酬の大幅増額の要請行動をした。国選弁護はボランテイアではやっていけないこと等現状を説明し、理解を求めた。反応は良かったと思う。何としてでも2009年の被疑者国選実施までに国選弁護報酬の大幅増額が必要である。
この国選弁護報酬問題を始めとして政治家に対して理解を求め、賛同を求めることが年々多くなっている。昨年はゲートキーパー問題や、貸金業者の上限金利引き下げ問題であった、現段階では国選弁護報酬問題、取調べの全過程の可視化問題が代表的であろう。司法書士会、行政書士会等他の会は政治連盟が活発に活動している。日本弁護士政治連盟(弁政連)は超党派で弁護士会の活動を支える組織である。国選弁護報酬問題、取調べの可視化問題その他多くの司法改革問題で特に政治連盟の活動が必要になっている。全国単位では弁政連があるが、これまで九州には支部がなかった。そこで、1月に弁政連の九州支部の創立総会をすることが計画中である。追って会員の皆さんに入会の勧誘がなされる予定ということだが、多数の参加をお願いしたい。
2008年01月18日
福岡県弁護士会会長日記
会長 福島康夫(30期)
1 九弁連大会
10月26日宮崎で九弁連大会が開催された。今回のシンポでは相変わらず弁護士の敷居が高いことが明らかになった。しかし,今回は宮崎の若手会員が中心となって宮崎県内の市民の方にアンケートを採るなどして,実証的な調査であった。特に今回衝撃的だったのが,えびの・小林西諸地区では自殺率が全国平均の2倍以上という異常な高さであり,その原因として医療と司法の過疎が大きいことが報告されていた。多重債務に一人苦しんで誰にも相談できずに自殺する人も多いということである。多重債務問題での自殺者は全国で年間8000人。まだまだ法の支配を社会の隅々にという理念は道半ばであるという感を強くした。過疎偏在解消が急務であることが小林の自殺率の高さが明らかにしている。
九弁連大会では世話係の宮崎の若手弁護士の姿が目立った。若手弁護士が急増しているとのことであり,宮崎県弁護士会は活気が出ていることが実感できた。いまブロックの活動範囲は格段に広くなっている。次回九弁連大会は10月24日に大分別府で開催されることが決まっている。多数の参加をお願いしたい。
2 テレビ会議システム
11月10日,担当の大石副会長からの光ファイバーが開通し,テレビ電話会議システムが設置できるめどが立ったとのメールが入った。これまで文化財保護の関係で,県弁の会館ではテレビ電話はできないということが定説だった。そのため天神センターにテレビ会議システムを設置しやむなく悪条件で日弁連の委員会をテレビ会議で行っていたが,ようやくこれでちゃんとしたテレビで会議ができることになった。日弁連の全国テレビ会議網設置をきっかけに念のため福岡高裁に問い合わせをしたところ,平田高裁事務局長をはじめとして高裁事務局から快くご協力をいただくことができた。感謝。
今回のテレビ会議システムで日弁連は勿論全国52単位会を結ぶことができ,委員会は勿論研修もテレビ会議でできるようになった。九弁連も多額の交通費が節約することができ,財政も楽になった。また部会もつなぐことができ,県弁の委員会活動が活発になるシステムが完成した。問題は最も重要な会員の熱い熱意である。せっかく設備がそろったのであるから,これまで以上に活発な会議ができるよう委員会活動の活性化を期待したい。
3 BBCニュースの可視化報道
10月29日,吉野正会員(法テラス福岡事務所長)から鹿児島の志布志事件がBBCニュースで紹介されているということで英文の記事をFAXしていただいた。99パーセントの有罪率,自白強要,代用監獄という問題点について鹿児島志布志事件を紹介しながら報道されていた。そして,鹿児島志布志事件の元被告人の方が今取調の可視化の運動をしているという報道がなされていた。BBCニュースで日本が報道されるのはせいぜい自然災害程度ということであり,極めて珍しい報道とのことである。当番弁護士発祥の地で,かなり以前から取調の可視化を実施しているイギリスにとって驚きであろう。この報道を日本政府は恥ずかしくないのであろうか。取調の可視化を裁判員制度実施前の来年,必ず実現しなければならない。決意を新たにした貴重な報道であった。
4 家裁の接見室の設置(11月13日)
福岡家庭裁判所には接見室がなく,付添人として当日の家裁追送致に対応できないという問題点があった。接見室の設置は接見交通権の重要性から当然のことであるが,これまで設置がなされないままとなっていた。接見室の設置問題を6月27日に開催された福岡家裁との協議会で提案していたが,このときははかばかしい回答が得られなかった。ところが,10月に入り,福岡家裁の裁判所の建物内に接見室を新設するという連絡を受けた。家裁内部ではあれこれ検討していただいていたことがわかった。そして,11月13日斉藤副会長,橋山子どもの権利委員会委員長並びに委員と一緒に新設予定の場所を視察した。当日は浜崎家裁所長自ら新設に案内していただいた。場所は審判廷の隣の合議室を改造して新設するとのことであり,絶好の場所である。これで更に充実した付添人活動が可能となった。家裁のご尽力に感謝した次第である。
5 対外広報PT設置
11月8日の常議員会で対外広報PTの設置の承認をしていただいた。現在,電話帳広告に約800万円,年1回発行している広報誌ウオークに90万円の予算支出をし,これまで対外広報はこれが慣例という様相を呈していた。しかし,今年度の多重債務者救済広報でテレビ,ラジオの宣伝を行い,これまでと同様に紙ベースの広報に頼っただけでいいのかじっくり検討する必要があると考えられた。多額の広報予算を使っているにもかかわらず広報効果が少ないというのでは広報の意味はない。来年の広報予算編成のためにもここで広報を抜本的に見直す必要があると考え設置した次第である。対外広報の問題は全国どこの会でも共通である。時代に乗り遅れない最先端の広報戦略ができたらすばらしい成果である。
6 ひまわりサーチ(弁護士情報提供制度)(11月1日)
11月1日から日弁連単位でホームページ上での情報提供制度が発足した。
市民の弁護士に関する情報を知りたいという要望に対応して発足した制度であるが,まだ始まったばかりである。市民のかたの中には最もその分野に精通した弁護士に依頼したいという欲求があるが,なかなか難しい問題である。弁護士会が精通弁護士の認定,専門職の認定をすることは困難であり,古くて新しい問題である。特に,当会は法律相談センターでの登録,登録弁護士の研修という点を重視しており一部の弁護士を専門弁護士として紹介するという制度は採っていない。その意味でこれまでの基本線に乗っ取った新たな制度をいうことになろう。当会では重点取り扱い項目を5項目設けることにする制度設計をした。使い勝手は今後考えながら改善するべきは改善することで考えることにしている。いずれにしても市民の期待に応えるためには会員各位の掲載の協力が必要である。
7 民暴拡大全国会議(11月16日)
11月16日ホテル日航福岡で民暴対策全国拡大協議会が開催された。当日,平山日弁連会長は6時の飛行機で来福された。先週は徳島での四国弁連大会で御一緒だったが1週間後に福岡の会議とは。70歳を過ぎておられるのにタフさにびっくりである。当日の参加が心配されたが全国各地から400人近くが参加をし,会場一杯な参加者があふれ盛況であった。田中九弁連理事長から6月の司法シンポに引き続いて今回の拡大協議会と年に2回も大きな会議をやって福岡はすごいですねとほめられた。最近の若手を中心にした活動が福岡の実力を上げていることを実感した。今回は企業対象暴力がテーマであり,実務的に非常に有益な会議であった。当会の今年度の全国規模の大会は無事に終了した。関係各位に感謝。
福岡県弁護士会会長日記
会長 福島 康夫(30期)
1 年の初めにあたって
以前ならば執行部の実質の仕事は忘年会で終わりという感があったが,年々忙しくなっていき,今年は最後まで忙しそうである。自ら忙しくしているのではないかという声も聞こえそうであるが,断じてそうではないことをお断りしたい。
全国から公募した2007年の世相を表す漢字は「偽」ということである。昨年はミートホープの偽挽き肉,白い恋人,不二家,赤福,船場吉兆等大手や老舗の度重なる食品偽装問題,年金記録,政治資金を巡る偽装,橋梁の強度偽装等,ありとあらゆる偽装が発覚した。あまりに多いので鈍感になった感があるが,1年間の世相を表す漢字であることは認めざるを得ない。しかし,今年はマイナスイメージの漢字はもうたくさんである。
いよいよ裁判員制度のスタートまで1年となった。が国民の司法参加という観点から大きく司法制度が転換する要素を含んだ重要な制度であるが,取調の可視化が裁判員制度実施の上で必要不可欠である。裁判員になった市民が冤罪を生み出すことがないよう,制度を作っておかなければ市民の方に申し訳ない。また来年は被疑者国選制度が対象事件を10倍に拡大する。重大な制度開始まで残すところは1年。もし失敗でもすれば司法に対する市民の信頼は完全に失墜してしまう。失敗は許されない。今年は弁護士会にとって正念場である。
2 弁護士会館問題―大阪,広島との3会交流での感想
11月17日昨年オープンした大阪弁護士会館で大阪弁護士会,広島弁護士会との3会交流を行った。噂には聞いていたが,大阪弁護士会の執行部の先生方から会館の1階から最上階の14階まで案内していただいた。会館は敷地面積1500坪,建物は地上14階,地下2階建,延べ床面積5000坪。土地の取得費を含めた総費用78億円。2階には800人収容の大ホールを備え,規模の大きさに圧倒された。今や日弁連会館よりも豪華な会館であり,5月の日弁連定期総会はこの大阪弁護士会館で開催されることになっている。 1階の一部と地下(ただし採光が行き届いた半地下である)に法テラスが業務を行っており,親密な関係を保っている。また,市民に開かれた会館を象徴するように,オープン時には大阪フィルハーモニーが大ホールでコンサートを開き,2ヶ月に1回はロビーでクラシックコンサートが開催されている。会館のコンセプトは「市民に開かれた会館」「リーガルサービスの拠点」。建物は大阪の弁護士の夢が実現した,そういう感じの弁護士会館だった。大阪弁護士会は現在会員数が3000人を超えているが,将来,会員登録が5000人になっても大丈夫なようにレターケースを準備しているとのことである。一方,私たちの会館はおそらく弁護士会館の中で最も老朽化しているのではないか。今のところ平成25年には福岡県弁護士会は九大六本松跡地に移転し,新会館がオープンする予定となっている。当会の会員数は現在752名だから,大阪と比べること自体笑われそうであるが,大阪のように会館でコンサートができれば素晴らしいことである。各人が会館の夢を持ちあって,夢を実現したいものである。
ところで,昨年の会館問題は福岡市が設置した九大跡地利用計画策定委員会が利用計画をデザインして以降,表だった動きはなかった。移転時期は平成25年までになっており,今年は大きな動きがありそうである。
夢と言えば,当会が全国で初めて(待機制)当番弁護士制度を創設したのが1990年12月であった。被疑者国(公)選弁護士制度の夢を実現すべく当会は先頭を切って立ち上がった。資金はなかったが夢があった。今それが実現する一歩手前にきている。私も是非とも夢の実現のためにもう一頑張りをしたい。皆さんにももう一頑張りをお願いしたい。
3 拠点事務所問題
12月6日日弁連臨時総会において弁護士偏在解消のための経済的支援策が承認された。
偏在問題の解消は「法の支配を社会の隅々に」という目的を実現するものであり,被疑者国選弁護対応体制の確立と密接に関係している。経済的支援策では各ブロックに拠点事務所が設置されブロックの偏在問題の解消を図ることが期待されている。そこで,九弁連は離島を抱え実質ゼロワン地域が16もあり,北海道,東北と同様に過疎偏在の地域である。
当会は11月7日の常議員会で拠点事務所問題検討プロジェクトチームを設置し,この問題を検討している。現在検討中の内容は次のとおりである。
(1) 指導弁護士の人材確保等の問題から福岡市内に拠点事務所を設置する。
(2) 拠点事務所の主体は九弁連とする。
(3) 福岡県弁護士会は技術的支援をする。
一番問題になる費用についてシュミレーションを策定すべく準備中である。この点を早急に詰める必要がある。プロジェクトチームの結論は2月には出る予定である。当会として,拠点事務所設置に向けて,早急に,かつ前向きな結論を出したい。
いずれにしても,北海道弁連は「すずらん基金法律事務所」を,東北弁連は「やまびこ基金法律事務所」を既に拠点事務所として設置している。日弁連の経済的支援策を契機として,九弁連において,過疎偏在問題解消のための拠点事務所設置が今後の緊急かつ重要課題である。
4 法律相談事業及び弁護士過疎対策に関する九州ブロック協議会イン石垣島(12月1日・2日)
石垣島は台湾の東にあり緯度は変わらない。気温は25度。さすがに暑い。
リゾート気分のルンルンの観光客を横目にしながら4時間の会議はもったいないが,仕方がない。会議では九州各地の偏在過疎問題が議題となった。福岡では柳川支部に弁護士がいないことが問題になった。柳川は全国に3カ所しかないゼロ地域ということで早急に解消するように迫られた。筑後部会からはゼロ地域の解消に向けて鋭意努力中とのことである。今年早々には朗報がくることを期待したい。
2日間の会議の後のわずかな時間を利用して星の砂で有名な竹富島を観光した。竹富島は石垣島からわずかに船で10分のところにあるが,海は青々と澄んでおり,ゆったりとした時間を感じさせる島だった。暑かったが,いっぺんに気に入ってしまった。島の人口は356人。猫51匹,犬29匹,水牛20頭,山羊24頭,牛400頭,ニワトリ10羽と正確に調査がなされていたのにはおかしかった。まさに顔の見える平和な島である。しばしの休息を楽しんだ。
5 日本弁護士政治連盟(弁政連)九州支部設立の件
近時,弁護士会の問題は政治家との折衝が多いということである。確かに以前は法曹三者での協議に任せるという慣習があったが,規制緩和の動き等の中で司法制度改革審議会が設立された前後頃から政府や国会で決めていくことばかりである。法曹人口問題しかりである。それだけに弁護士会の運動を支える超党派の弁護士政治連盟の必要性が高い。特に,司法書士会,行政書士会の総会,懇親会に出席すると,運動に支援をされている多くの政治家が出席されていた。司法書士会,行政書士会の政治力の強さ,それに比べて弁護士会の政治力のなさを実感することが度々であった。日本弁護士政治連盟本部は東京であり,今般九州支部が設立されることになった。弁護士会の運動を強化する意味で喜ばしい限りである。
ところで,2009年から被疑者国選弁護制度は現在の10倍に対象事件が拡大するが,現在のような低額報酬では私たち弁護士の犠牲も限界である。2009年には報酬改善をして適正な報酬でなければ国選弁護のモチベーションはあがらない。来年の予算審議の中で報酬の大幅増額を獲得しなければならないし,この機を逃せば国選弁護報酬を適正化することはできないのではないかと思える。さらには,また,現在,取調べの可視化問題は民主党が参議院に可視化法案を提出し,次年度の通常国会で本格的な審議がなされる可能性が高いとのことである。私たちの弁護士会の理想を追い求め,運動を結実させるためには,超党派の弁政連の活動は必須不可欠である。弁政連九州支部設立総会は1月19日午後5時からである。多くの会員の結集をお願いしたい。
6 私たち執行部の任期は残すところ3ヶ月を切ってしまったが,新年を迎え心機一転全力で会務の舵取りをしたい。これまでの会員の皆さんのご理解とご支援に心から感謝すると共に,残った任期中のご支援をお願いしたい。
2008年02月27日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 福 島 康 夫(30期)
1 福岡県弁護士会の女性会員が今年ちょうど100人に達した。
私たちの大先輩の湯川久子会員が5月の日弁連定期総会で50年表彰を受けられ、12月の福岡部会の忘年会でお祝いをした。そして、ちょうど節目の50年の年に当会の女性会員がちょうど100人に達した。まずは新年早々おめでたい。湯川先生は九州の女性弁護士第1号であり、まさに日本の女性弁護士の先駆者である。登録されてからこれまでの50年の間には女性弁護士の先駆けとして多くのご苦労がおありになったと思うが、そんな気配は微塵も見せられない。私自身駆け出しの頃、法律扶助協会の審査委員会で長らく御指導頂いた。湯川先生はいつも素晴らしい姿勢である。これも「能」をされているためと思うが、いつまでも若々しく元気で頑張っていただきたい。
日弁連は昨年、男女共同推進参画本部を設置し、男女共同参画社会をめざす活動を始めた。福岡では759名中の100名であるので13%以上となった。現在、常議員30名の中で女性会員は内田常議員と安部常議員の2人だが、男女比から考えても、もっと女性会員が常議員になる必要がある。男女共同参画施策基本大綱では政府目標と同様に2020年までに弁護士会の役員にも30%以上を目指すことになっている。そして、日弁連理事会では私と河辺副会長と同じ机に並んでいる滋賀の元永会長が頑張ってよく発言している。40期の女性会員である。
ところで、現在新設予定の総務委員会に弁護士会の職員関係のセクハラ窓口を設けるべく、常議員会で審議中である。この問題の中心は主には執行部と職員間の関係でということになるが、今後設置しただけで開店休業になるはずである。そうでなければ大問題である。なお、両性の平等委員会では弁護士と事務所の事務員さん、弁護士と弁護士のセクハラ窓口設置を検討中とのことである。
2 互いに顔のわかる弁護士会であるために、茶話会幹事に感謝。
12月20日付けで新60期の17名の新入会員が当会に登録し、当会の会員は現在759名となった。今年4月時点から56名増加したことになる。互いに顔のわかる弁護士会であるための一層の工夫が必要である。会員限定の写真付き会員名簿は今年度以降も毎年発刊する必要がある。
そして、今年度特に茶話会幹事の活躍はめざましいものがあった。
福岡では4月の花見に始まり、納涼船、3庁のボーリング大会、秋のバーベキュー大会、新人弁護士歓迎会、忘年会、新年会と2ヶ月に1回以上の割合での催しである。知名代表幹事をはじめとする茶話会幹事の献身的な活動に大いに感謝したい。
互いの顔のわかる弁護士会であるために、また茶話会幹事の労苦に報いるためにも会員各位の参加を是非ともお願いしたい。特に、若手会員は先輩会員と知り合う絶好の機会である。大いに参加をして盛り上げていただきたい。
3 福岡地裁別館の新築
福岡地裁本庁に新館が建設されることになった。空き地は1カ所しかない。裁判所の西側の駐車場とテニスコートだった場所である。今年3月に着工し9月には完成予定とのことである。新館は2階建てで裁判員裁判用の合議法廷が2つ、単独の法廷が2つ増設されるということである。接見室も2つ設置の予定とのことである。接見室については昨年11月の1審協刑事部会で討議している。なお小倉支部は1つ法廷を増設するとのことである。この新館建築で裁判所の並々ならぬ決意を感じた。いよいよ、裁判員制度の開始まで秒読みとなった。
4 裁判員制度研修
1月12日から14日まで、早稲田大学法科大学院の模擬法廷を使用して、法廷弁護指導者養成プログラムの研修が開催された。当会から徳永響業務事務局長と甲木会員が参加した。裁判員裁判用の尋問技術、弁論技術をアメリカの全米法廷弁護協会所属の弁護士4名からまる3日間研修を受けるというものである。研修の模様はテレビでライブ放送がされたが、私も2日間県弁会館でテレビで見た。非常に参考になると思う。徳永業務事務局長と甲木会員が今後当会に新しい風を巻き起こすことを大いに期待したい。
弁護士会はこれまで裁判員裁判対策が遅れているのではないかといわれていたようであるが、これを契機に一挙に進んでいきたいものである。残すところ1年。待ったなしである。今回の研修は早稲田大学法科大学院の裁判員法廷を利用してなされたが、日弁連には模擬法廷がない。ところで、1月の日弁連理事会では大阪弁護士会館の中に日弁連の資金で裁判員用模擬法廷を設置することが承認された。この模擬法廷は西日本の拠点になる見込みである。
5 弁護士会の贖罪寄付が大幅減の危機
弁護士会の贖罪寄付が危機的な状況である。当会には例年1,000万円以上の贖罪寄付が寄せられていたが、今年度は全国で3億7,000万円以上の贖罪寄付が集められているにもかかわらず当会の贖罪寄付は全額で130万円程度でしかない。例年の10%程度の落ち込みの原因は全国で寄付を集めるようになったために、モティべーションが下がったのであろうか。弁護士会の贖罪寄付は被疑者弁護人援助制度、少年付添人援助制度の重要な財源であり、当会の財政にも直接関係している。なお、他に、法テラスの贖罪寄付の制度はあるが、弁護士会の財政、自主事業の財政に関係しているのは弁護士会の贖罪寄付である。法テラスの贖罪寄付制度は、自主事業の財源になっていないことを留意していただき、あえて付言する次第である。昨年までの当会の被疑者弁護人援助制度の事件はざっと年間1000件、少年付添人援助制度の事件はざっと年間800件。今年度はどちらもさらに増えそうである。このままでは自主事業の財源である弁護士会の贖罪寄付は逼迫し、財政は破綻してしまう。弁護士会の贖罪寄付の制度については裁判所、検察庁にも説明をし、理解を求めている。今年度は残り少ない、弁護士会の贖罪寄付が増加するよう会員各位のご理解をお願いしたい。
2008年04月30日
福岡県弁護士会会長日記
前会長 福 島 康 夫(30期)
1 北九州引野口事件無罪判決確定
ひどい話である。話してもいない代用監獄の同房者が殺人、非現住建造物放火の犯行状況を告白するのを聞いたと供述したばかりに起訴され、求刑は18年だったとの事である。結局、小倉支部で無罪判決が下され確定した。冤罪がまた明らかになった。被告人本人は取調で一貫して否認をしていたが、本人から犯行告白を聞いたという同房者の供述が重視されて起訴されてしまったのである。代用監獄は違法捜査の温床だという言葉が生きている。違法捜査を起こしやすい制度は制度自体を廃止しなければならない。それにしても、1審で無罪が確定した際、元被告人の片岸さんが、うれしいというよりも腹が立つといわれていたことが心に残る。取調べの全過程の録画、代用監獄の廃止、いずれも私たち弁護士が世間に訴えていかなければならないことを再確認した。
田邊弁護団長をはじめとする北九州部会の弁護団のご苦労と重圧はいかばかりであったろう。最大限の敬意を表したい。
2 九弁連のあさかぜ基金法律事務所設置
3月21日の臨時総会で九弁連が設置主体となる「あさかぜ基金法律事務所」を福岡市に設置すること、および当会が技術的支援をすることが決定された。執行部として最後の大きな審議案件となったが、臨時総会でこの「あさかぜ基金法律事務所」が暖かい目で迎えられたことにホッとしている。これで九弁連の過疎偏在問題は解決に向けて大きく動きだした。まさに九弁連は一つになったと思う。何としてでも成功させなければならない。次年度の執行部の大きな課題である。今後暖かい目でこの「あさかぜ基金法律事務所」が成功するよう絶大な支援をお願いしたい。
3 裁判員裁判に向けて
裁判員裁判の実施まで1年と迫ってきた。最近毎日のように無罪判決の新聞報道に接するが、たまたまとは思われない。その理由として最近、裁判官が緊張感をもって審理に臨んでいるということではないだろうか。私たちはこれまで一般の市民にわかってもらうために無罪推定の原則をどう説明したらよいか突き詰めて考えたことがあっただろうか。裁判員裁判は模擬裁判をしている中で裁判官、検察官、弁護士それぞれに刑事裁判の原点に立ち返らせる効果を与えていると思う。
4 研修の充実に向けて
重要な法律の改正が毎年毎年行われている。めまぐるしい速さで世の中が変わっている。改正されるたびに法律書を買うと事務所の本棚は大変である。かといって、古い法律書に頼って執務をして懲戒になればもっと大変である。法曹の質の問題は新人ばかりではない。経験者に対する研修も含んでいる。
ところで、昨年1月から新61期修習生83名が当会で修習中である。今度の修習生の特徴は修習期間が1年。全員法科大学院出身で即実務修習に入り前期修習がない。そのため、研修所の教官の方が巡回して起案講評等を行っている。各実務庁の修習期間は2ヶ月しかなく、これでは刑事弁護を最初から最後まで修習できないことになる。これで1年後に弁護士として刑事弁護を1人でさせることには不安があるのは私だけではないであろう。
2月の理事会で新人弁護士の研修の意味でベテラン弁護士が一緒に刑事弁護ができるようにするため複数選任の制度を作るべきではないかということが問題になった。現在の制度設計では研修のための複数選任制度は認められていないが、早急に検討すべき課題である。修習期間の短縮をカバーするためには修習内容の工夫は勿論新人弁護士時代のOn the job trainingしかない。修習委員会と研修委員会の一層の工夫をお願いしたい。
5 皆さんに感謝
この日記もいよいよ今回が最後である。前年度から引き継いで、毎月その時々の弁護士会の動きをお知らせしてきたが、最後まで続けて来れてホッとしている。原稿の締め切り日を過ぎてもまだ出せない私を、懲りずに督促していただいた広報委員会の委員各位にお詫びと共に感謝したい。
それにしても、この1年間は本当に目まぐるしかった。多重債務相談の無料化実施、これに伴うテレビ・ラジオの広報から始まり、会員の熱意と団結で様々な活動を行った。司法シンポ、民暴拡大協議会といった全国規模のシンポジウムが2つ、それ以外に7つのシンポを行った(憲法、消費者、人権、可視化、子ども、民暴 中小企業)。常議員会で決議した会長声明、意見書は50近くに達しようとしている。会員1人1人の皆さんの大いなる活動の成果である。当会の活動は衰えるところを知らないようである。
1年間、何とか任務を全うできたのも、会員の皆さんのご支援ご協力のお陰である。本当に感謝したい。
この福岡県弁護士会会長日記も次号から田邊次期会長にバトンタッチをすることになる。次年度もよろしくお願いしたい。
最後にあたって、私の最近の好きな言葉でこの日記を締めくくりたい。
「夢なくして計画なし。
計画なくして実行なし。
実行なくして成果なし。」
2008年05月29日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田 邉 宜 克(31期)
はじめに
当会の抱えている課題や活動内容を会員の皆さんにお知らせするため、本年度も会長日記を毎月執筆掲載することにしました。
本年度1年間、宜しくお願いいたします。
就任挨拶回り−どこを
正副会長及び事務局長4、5名で、3月24日から4月11日まで、3週間にわたって福岡県内160か所を「弁護士会役員就任挨拶」で回りました。訪問先は、県内の裁判所・検察庁・法務省連施設、関連専門職団体、県や福岡市・北九州市はもとより、西は二丈町、東は豊前市、南は大牟田市まで当会と関連のある自治体、マスコミ各社、九州電力その他の地域企業や商工会議所、連合等々の労働組合、福祉関連団体、各政党、大学・ロースクール、各地域の医師会等々です。また、折角訪問するのですから、自治体の首長・社長・総長等のトップの方とお話しすることを原則としました。
就任挨拶回り−何を
挨拶回りの目的は、各界の方々に弁護士会が多様な公益活動を行っていることを知っていただくことです。特に、弁護士会の市民サービス部門(法律相談センター・多重債務・交通事故・高齢者「あいゆう」等々)の活動をお知らせし、チケット制等制度の利用と、内外への広報方をお願いしました。
併せて、裁判員制度への理解を求め、かつ、取調の全過程可視化実現要求署名への協力をお願いしました。ほとんど全ての訪問先で可視化の署名協力を要請し、県警4課出身の方々が陣取っておられる暴追センターでも、びびりつつも趣旨をお話し、チラシと署名用紙を受けとっていただきましたし、自民党県本部でも賛意を表していただき、現在、訪問先からの署名が当会に届けられています。
また、高齢者虐待対応チーム制度についてもお話ししましたが、積極的な反応を得られた自治体もいくつかありました。
毎日続けて多くの方々と面談することは、大いに疲れることは事実ですが、各界のトップに直接お会いすること自体が弁護士会にとって一つの財産になるのだと思いました。
来年5月21日裁判員法施行決定
1年後に裁判員法が施行され、被疑者国選対象事件の範囲が10倍に拡大します。当会は、これまでの刑事弁護等委員会、裁判員制度実施本部の活動をより充実させていくとともに、拡大する被疑者国選の制度を担うに十分な国選弁護人を確保するため、新に国選弁護対応体制確立推進本部を設置し、一人でも多くの会員に被疑者国選名簿への登録をお願いする具体的取り組みを進めて行きます。
また、この制度実施を踏まえて、司法支援センターとの連携も更に深めて行く必要があり、北九州支部のみならず、法テラス福岡事務所本体へのスタッフ弁護士配点についても、会内での議論を深めていく時期に来ています。
更に、取調の全過程の可視化(録画の義務付)を求める署名を5月までに目標の1万名を超えて集める必要があります。無論、執行部や刑事弁護等委員会を中心に活動しますが、会員の皆さんが一人10名ずつ集めていただければ、それだけで7,500名になるのです。是非とも積極的にご協力下さるようお願いいたします。
拠点事務所の説明会&面接実施
4月12日に弁護士法人あさかぜ基金法律事務所の入所希望者に対する説明会を行い、同月19日に面接を行いました。いよいよ今年の秋の開設に向けて第一歩を踏み出したことになります。説明会では、八代ひまわりの長先生と法テラス壱岐の浦崎先生に仕事の実状・過疎地の弁護士のやり甲斐・問題点等を具体的にお話しいただき、地域に弁護士が常駐することの重要性を再認識しました。また、「法テラスのスタッフ弁護士の重要な役割は利用者の為に法テラス本部と戦うことである。」、「都市公設スタッフの役割は、国選や扶助事件の処理に止まらず、収益性を考えずに事件に取り組めることや公の組織であるが故の行政との連携の取りやすさ等、その特性を活かして自ら考え、模索し、作り出して行くことができる。」との浦崎先生のご発言は、とても重要だと思いました。
2008年06月30日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田 邉 宜 克(31期)
【スタッフ弁護士】
北九州部会が「法テラス」北九州支所にスタッフ弁護士の配置を希望することは、昨年度常議員会で、承認されています。被疑者国選弁護人制度の本格実施後の一人当たりの担当件数が、14件+αに上る実情からすれば、強い異論はないところでしょう。
他方、福岡部会では、昨年度中、福岡地方事務所本所のスタッフ弁護士配属については、特段の議論をしていませんでしたが、本年度早々に法テラス福岡から「本年度中に、北九州支所に一人、福岡本所に一人のスタッフ弁護士を配置することについて、法テラス本部から意向打診を受けているので、この点について県弁と協議したい。」との申し入れを受けました。
法テラスとしては、受入会が、スタッフ弁護士は、不要であって受け容れる意思はないと表明すれば、強制的に赴任させることはないものと思われます。
それでは、法テラス福岡は、何故スタッフ弁護士の配属を希望したのでしょうか。県弁執行部として、法テラス福岡との協議を開始していますが、その必要性について、概略以下のとおり説明を受けました。
(1)速やかに被疑者国選弁護人を選任する責務を負う法テラスは、被疑者国選弁護拡大後も、万が一にも穴を開けることは許されない。弁護士会、特に福岡部会の被疑者国選弁護人態勢では未だ十分であるとは考えていない。
(2)これまでの実践例からしても、筑豊地区の休日、特に共犯事案の配点については、現状でも正に綱渡りの感がある。また、被疑者弁護人として登録されている会員でも諸般の事情で受任を回避されたりすることが少なくなく、この1年半で数件担当した会員から20件近く担当した会員まで受任件数に幅があり、一定の会員の過大な負担で凌いでいる実情にある。単純に事件数を登録者数で割り出して「回る」「回らない」の議論をするのは実際的ではない。被疑者国選弁護拡大後に、万が一の事態を惹起しないためには、法テラス福岡本所へのスタッフ弁護士の配置は必須であると考えている。
(3)壱岐・対馬での国選対応についても、本所スタッフ弁護士に遊軍的に活動していただくことを予定している。
(4)所謂「国選扶助対応」のスタッフ弁護士であり、扶助事件以外の一般民事事件を受任することは予定していない(薬害・消費者等の集団訴訟受任の例外はあり得る)。従って、民業圧迫との懸念は杞憂である。
今後、法テラス福岡と協議を重ね、より詳細な内容を適宜会員にご報告し、意見集約の場を設けて、当会の意見を早急に明らかにしたいと思います。
なお、仮にスタッフ弁護士が配置されたとしても、担当しうる国選件数には当然ながら限界があり、より多くの会員の皆さんに被疑者国選名簿登録をしていただく必要性には、何ら変わりがありません。
【刑事贖罪寄付金のお願い】
従来、扶助協会の行っていた自主事業(刑事被疑者・少年付添・精神障害者等・外国人・難民・犯罪被害者等)は、日弁連及び単位会が承継し、法律援助事業として行っていますが(司法支援センターに運営を委託)、弁護士会の事業である以上その資金は、弁護士会が自前で用意しなければなりません。扶助協会時の自主事業資金と同様にその原資は、主として刑事贖罪寄付金です。
当会宛の贖罪寄付は、その半額を日弁連に納付して日弁連の法律援助事業資金に充てられ、残額は、法律援助事業の日弁連負担額に加算して支払う当会の所謂「上積」分(刑事被疑者・1万円、少年・原則2万円等)等の支払いに充てられます。
当会は、昨年度の全国の被疑者事件の11.2%、少年付添人事件の19.4%、これらに難民その他を含めた全事件数の13.7%の法律援助事件を行っています。これは、本当に全国に誇るべき実績です。
他方、この事業を支える贖罪寄付実績を見ると、昨年度全国で4億6,647万円の贖罪寄付がありましたが、当会の贖罪寄付額は253万円に止まり、なんと全国比0.53%に過ぎません。仮に事件数比の分担があるとすれば、当会の贖罪寄付案分額は、2,981万円になります。会の規模の大小があり、この案分額を当会が当然に分担すべきとは言えないでしょうが、扶助協会福岡支部には、平成17年度1,700万円、同18年度1,191万円の贖罪寄付があったことと比較すれば、余りにも少なすぎると言わざるを得ません。
また、現状では刑事被疑者(1万円×1000件)及び少年付添(2万円×800件+α)等の「上積」「横出し」分が、当会会計から支出されています。1年後に被疑者国選の本格実施が始まるとしても、このままでは少年付添の上積み分の負担は依然として残り、贖寄付金額が現状のままでは、その支出に対応する額の収入は確保できないことになります。
会員の皆さんは、扶助協会が解散した後の贖罪寄付は、扶助協会を承継した司法支援センターにと考えられたのかもしれません。
しかし、扶助協会の各種自主事業を引き継いだのは弁護士会であり、弁護士会がその事業遂行につき責任を全うする義務を負っているのは明らかです。
日弁連から最高裁・最高検に自主事業等弁護士会への贖罪寄付の目的・制度設計について説明し、情状面での考慮を依頼しており、当地の裁判所・検察庁もこのような公益的な目的に支出される弁護士会への贖罪寄付を量刑上斟酌すべきことは十分理解されているはずです。
ついては、会員の皆さんに、上述の事情をご理解いただき、贖罪寄付は、是非とも当会宛に納付していただくようお願いいたします。
なお、寄付手続きの詳細については、各部会事務局にお尋ね下さい。
2008年07月24日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田邉 宜克(31期)
【定期総会・就任披露宴】
5月22日に福岡県弁護士会の定期総会と役員就任披露宴が開かれた。総会では、予算決算等の審議事項と「より良い刑事裁判の実現を目指して」「あさかぜ基金法律事務所を成功させよう」との二つの宣言(当会HPに掲示)がいずれも承認可決され、就任披露宴も多数の招待者・会員のご参加を得て、盛会裡に終えることができた。
会員の皆さん及び就任披露宴にご出席いただいた方々に心から御礼申し上げます。
また、総会終了後の法テラス埼玉の本所スタッフ弁護士谷口太規氏の講演は、スタッフ弁護士の活動内容とその矜持を知ることができ、大変参考になった。同弁護士に講演内容を敷衍した文章を本号に寄稿していただいたので、是非ともご一読いただきたい。
【あさかぜ基金法律事務所】
5月16日に、あさかぜ基金法律事務所運営委員会に引き続き入所予定の3名の修習生の方との懇談会を行った。現行61期1名、新61期2名、合計3名の予定者に弁護士偏在地区での活動を志した動機や意欲を語っていただいたが、いずれも、あさかぜ基金法律事務所の第1期を委ねるにふさわしい方々で大変心強い思いであった。運営委員会や指導担当弁護士にだけ、その養成を担わせるのではなく、当会の責務として、会員全員に積極的なご協力ご支援をお願いしたい。
【奄美ひまわり事務所引継式】
5月24日に奄美ひまわり基金法律事務所の引継式が開催され、九弁連副理事長として出席した。後任として奄美に赴任した大窪弁護士は、東京の養成事務所を経て、紋別ひまわり事務所で3年間活躍された後、2,100kmの距離をものともせず奄美行きを決断した。彼は、弁護士がより求められている地域で働くことをモットーとし、多重債務ほかの需要に応えるほか、離島である奄美地区(周辺の奄美群島も)の被疑者国選弁護への対応が自らの責務であると語った。その披露宴には、北海道から沖縄まで、全国各地から、多くのひまわり事務所の仲間達が集まったが、意識が高く、熱意溢れる若者ばかりで、弁護士偏在地域を支えている人たちの心意気に感動した。
また、奄美ひまわり事務所は、鹿児島県弁護士会の支援委員会の大変なご苦労があって支えられていることも実感した。あさかぜ事務所から派遣される先の単位会との連携は、極めて重要である。
【柳川地区の零地区解消】
5月27日に同月初め柳川市で開業された三島正寛弁護士の事務所開設披露が行われた。所謂、零地区として、全国で最後に残ったのが、柳川と長浜であったが、三島弁護士の決断に引き続き、6月初めに長浜でも法律事務所が開設され、ついに零地域解消という日弁連の悲願が達成されたのである。日弁連の取組みのシンボリックな意味だけではなく、その地域に弁護士が常駐しているのと、いないのとでは、地域とのつながり、法的需要の掘り起こし、ひいては、その地域での権利の救済の面で、大きな違いがあることは明らかであって、三島弁護士は、何よりも柳川地域の住民に歓迎され、期待されている。今後、柳川地区の司法サービスの中核として活躍されることを願うや切である。
【当番弁護士負担金】
来年5月で当番弁護士負担金の期限が満了する。被疑者国選弁護が開始され、現在の被疑者援助事件の多くが国選となっても、当番弁護士や国選対象外の被疑者援助事件、なにより、少年事件全件付添の全国拡大を目指す付添人援助事業実施のために、同趣旨の負担金継続は必要不可欠であろう。そのために必要な負担金額を含め、会内で広く議論して行きたい。
2008年10月22日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田邉宜克 (31期)
【徳永賢一先生ご逝去】
6月19日の日弁連理事会中に、元会長徳永賢一先生ご逝去の報に接した。先生は、木曜会の創立メンバーとして会務運営民主化の先頭に立ち、上田国賠訴訟の弁護団の中心を担い、当番弁護士制度創設時の刑事弁護委員長として、当番弁護士出動第1号も務められた大先達であった。日弁連理事の重責は認識しつつも会長職を優先することとし、理事会を途中退席して福岡に戻り、翌20日の告別式に参列して弔辞を献じた。まさに巨星墜つの感あり。
心から徳永賢一先生のご冥福をお祈り申し上げます。
【東北弁連ブロック大会(7月4日)】
九弁連理事として、東北弁連ブロック大会に出席した。
この大会では、司法試験合格者数を年間3000人程度とする政策の変更を求める決議が提案された。審議会意見書が想定した法曹需要の増加の見通しがないこと、裁判官・検察官の増加を含む司法の基盤整備が十分に講じられないまま弁護士人口のみが急増するのは需要との間のアンバランスを生じさせていること、OJTの不足や過当競争により質の低下を招来すること、合格者数を2100人で凍結しても10年後には弁護士数は約4万人に達すること、過疎偏在問題は相当程度改善されていること等の理由から、合格者数を2100人で凍結し、法曹需要の増加・法曹の質の確保の視点から法曹人口のあり方を具体的に検証したうえで、適正な年間合格者数を決めるよう求めるものであった。他方、会場からは「本当に法曹需要はないのか、一般市民が弁護士に頼みたくても頼めない、弁護士が事件依頼を忙しい等で断っている実状にあるのではないか。」「中小企業の法的需要は調査でも相当程度存在しているではないか。」「法曹の質の低下は、未だ検証されていない。」「弁護士過疎問題が現に存在するのに、合格者数減少を打ち出すのでは市民の理解は得られない。既得権保護との非難を免れない。」「ロースクールの学生のことも考えるべきである。」等々の反対意見が出た。裁決は2:1で賛成多数であったが、もう少し、議論の時間が必要だったと思えた。本月報発行時には、既に、合格者数についての日弁連理事会の提言が発表されているはずである。当会でも、本格的に法曹人口についての議論を始めなければならない。
なお、東北弁連では、大会終了後懇親会までの間の約90分に日弁連執行部と会員との意見交換会が実施されている。日弁会長・副会長が全員揃って、国選弁護・裁判員裁判・法テラスとスタッフ弁護士・法曹人口問題について説明し、会員と直接質疑応答するというもので、会員と日弁連の距離を近づける機会として有意義であった。
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田邉宜克 (31期)
【スタッフ弁護士と刑事弁護態勢】
7月29日に「スタッフ弁護士の配置」の件で、全員協議会を開催した。執行部8人以外の出席会員は11名と少数に止まった(積極的反対意見なし)。参加者が少数なのは、会員総体も積極的に反対しない意向であると捉えるべきか。
スタッフ弁護士についての議論は、当会の被疑者被告人国選対応態勢確立の重要性を再確認させる場でもあった。札幌弁護士会は、本年3月末に「被疑者国選対象事件の拡大及び裁判員裁判が一部の会員で担うべきものでないことを共通認識とし、会員の総力で09年態勢を確立する。現時点ではスタッフ弁護士を招聘しない。」との常議員会決議を挙げた。当会においても「被疑者国選対象事件の拡大及び裁判員裁判が一部の会員で担うべきものでないこと」は、当然に「共通認識」であるはずであり、「会員の総力で対応態勢を確立すべき」ことも同様である。筑豊地区や壱岐対馬等の被疑者国選選任の「万が一の場合」に備えた安全装置としてスタッフ弁護士が配置されても、弁護士としての上記基本姿勢に毫も影響はないはずであり、この機会に今一度、国選弁護の原点に帰って、我々弁護士の責務を自覚すべきであると思う。
筑豊地区のバックアップ体制を確実にするために少なくとも40名余の福岡部会員が必要であるとすれば、執筆日現在で福岡本庁事件に専念できる被疑者国選登録福岡部会員数は、240名を割り込む。当会は、「国選弁護拡大ニュース」を連続して発行し、未登録会員に個別に登録要請の手紙を差し上げ、更には、担当者が対象会員に電話や個別訪問をして登録をお願いするなど、被疑者・被告人国選弁護登録拡大運動に全力で取り組んでいるが、未だ充分ではない。一人でも多くの会員の登録を切にお願いする次第である。
【あさかぜ基金法律事務所】
9月からいよいよ、過疎地対応弁護士養成事務所である「あさかぜ基金法律事務所」が活動を開始する。九弁連の事業ではあるが、その運営は、実質的に当会の責務である。正副の指導担当弁護士が、被養成弁護士の指導にあたるが、当会会員全員で育て上げる気概を持つ必要がある。指導担当弁護士以外の会員からもお声かけいただき、被養成弁護士と共同して各種の事件を受任し、できるだけ多く事件処理を共にする中で「養成」することが一番である。
同様に、9月から新スキームで養成されるスタッフ弁護士が、当会に配属される。司法修習終了後、すぐに当会に登録し、あおぞら法律事務所で弁護士活動をスタートする。当地での1年余の養成期間を経て、過疎地に赴任することになるが、当会の一員として、会員が協力して育て上げることが求められている。
更に、法テラス福岡地方事務所や北九州支所のスタッフ弁護士も登録後1年余しか経ていない弁護士であることに変わりない。委員会活動を通じて、あるいは、国選事件や扶助の処理について多くの会員がアドバイスするなどして、合計3名のスタッフ弁護士を当会の仲間として、力を合わせて育て上げる意識が必要である。
多くの会員の理解とご協力をお願いしたい。
2008年11月10日
福岡県弁護士会会長日記
会長 田邉 宜克(31期)
【9月度新入会員】
9月に入会された会員の皆さんを心から歓迎いたします。
さて、この新入会員の中に今次の司法改革の申し子的な三人の会員がおられます。
佐藤哲也さんは、東京での養成期間を経て法テラス北九州にスタッフ弁護士として赴任されました。登録会員1人当たり年間14、5件といわれる北九州部会の拡大後の被疑者国選の一翼を担っていただくことになります。
上加世田嘉隆さん(現行61期)も法テラスに雇用されたスタッフ弁護士ですが、所謂新スキームでの養成事務所であるあおぞら法律事務所で、登録初年度から1年間活動された後、独り立ちしたスタッフ弁護士として他所へ赴任されます。
井口夏貴さん(現行61期)は、あさかぜ基金法律事務所で、登録初年度から1年半ほど弁護士としての経験を積まれた後に、九弁連管内の過疎地の法律事務所(ひまわり公設・法テラス4号・独立開業等)に赴任されます。
三人ともに、しっかりとした、そして、過疎地での弁護活動や刑事弁護に強い意欲を持った方ですが、弁護士経験零ないし1年の若い会員であることに変わりはありません。無論、法テラス、養成事務所、運営委員会・指導担当者がサポートしますが、会員の皆さんには更に進んで、当会の仲間として、委員会活動や事件処理を通じ、また、種々の機会に相談に乗り助言するなど、会員全体の力で育成していく積極的な意識を持っていただきたいと思います。
【新司法試験合格者発表】
9月11日に新司法試験合格者2065名が発表されました。例年、設定目標の下限付近の合格者数でしたが、これを下回ったことはなく(今年の司法試験管理委員会の設定目標下限は2100名)、かつ、受験者の蓄積もあって、合格率が33%と昨年より7%下がった点が、注目されました。また、法科大学院別の合格者数において首都圏集中、地方と首都圏の格差の問題も指摘されているところです。当然、法曹人口の問題にもリンクしますが、やはり、法科大学院の統廃合や定員整理の問題に要注意です。特に、福岡県内4校、九弁連管内7校の法科大学院については、私達に続く後輩達の養成問題として、真剣に考えていく必要があります。私は個人的には、全国的に、統廃合、少なくとも法科大学院の定員の削減は避けられないのではと思っています。合格者数上位を残して下位校を切り捨てるのか、そうなると九州はその影響を避け得ません。一律に一定率で減員するのか、地方を重視し中央の大規模校の定員整理を求めるべきではないか、今後、この問題が、どのような流れになるのか、弁護会としての意見を出すべき時期が来るものと思います。
【新検察審査会法の施行】
検察官が独占していた公訴権行使のあり方に民意をより直截に反映させるために、検察審査会法が改正され、裁判員制度と同様、平成21年5月21日に施行されます。この改正法では、弁護士の関与が制度的に予定されています。
審査会が起訴相当を議決した事案を検察官が再び不起訴処分にした場合に、審査会が再び起訴相当を議決したときは、起訴すべき法的拘束力が発生します。その起訴と公判維持は、「指定弁護士」が行います。また、審査会は、その審査を行うにあたって法律に関する専門的な知見を補うため「審査補助員」を委嘱することができるとされ、弁護士がその任にあたることになります。指定弁護士はさほどの件数はないでしょうが、補助審査員は、一定数の委嘱要請があると考えられ、弁護士会としては、適切な弁護士を推薦するため、研修や推薦名簿の要否等の検討が必要になります。犯罪被害者問題を含め、刑事司法のあらゆる面に弁護士の関与が求められる時代だということもできるでしょう。
2009年03月06日
福岡県弁護士会会長日記
福岡県弁護士会会長日記
会 長
田 邉 宜 克(31期)
新年明けましておめでとうございます。
私ども執行部も、会員の皆様のご協力を得て、無事新年を迎えることができ、残すところ3か月となりました。
最後まで職責を全うすべく、全力を傾注いたしますので、今後とも会員の皆様のご支援ご協力をお願いいたします。
さて、弁護士会の取り組むべき課題は、多岐にわたりますが、私ども執行部が年度内にと考えている課題を幾つかご紹介したいと思います。
【裁判員制度・被疑者国選の対応態勢】
北九州部会・筑後部会では、1人14、15件にもなろうかという負担を部会員が公平に分担する態勢をとられています。
福岡部会では50%の方々に被疑者国選登録をしていただきましたが、筑豊地区のバックアップ問題や裁判員制度のバックアップ問題もあり、なお、一部の会員に重い負担をお願いせざるを得ない状況にありますので、更なる国選登録を是非ともお願いいたします。
裁判員制度対象事件は、被疑者国選担当者に引き続きお願いすることになります。弁護士会の裁判員対応態勢も詰めの段階にあります。裁判員対応を含む刑事弁護の研修会等に積極的にご参加下さい。
【少年刑事援助事件の特別負担金】
昨年12月の日弁連臨時総会で、これまでの当番弁護士基金(月額4,200円)を平成21年6月以降、少年刑事事件基金に衣替えし、当番弁護士(付添人)・国選対象外の刑事被疑者援助事件・少年付添援助事件のために月額3,100円の負担を会員にお願いすることが決まりました。
当会は、これまで当会独自のリーガル基金負担金(月額5,000円)を主たる財源として、日弁連の基礎金額(刑事7万円、少年8万円)に刑事1万円、少年2万円を上積みしてお支払いしています。
今回の新基金で日弁連からは、被疑者援助8万円、少年付添援助10万円、即ち、従前の上積み額加算後と同額が支給されることになりますが、未だその支給額は低額であること、被疑者援助・少年付添援助事件を一層拡充すべきこと等を勘案し、平成21年6月以降も当会の上記上積支給を継続すべきではないか(刑事9万円、少年12万円)と考えています。具体的には、平成21年3月で期限の来るリーガル基金の継続という形で、会員の皆様にお諮りすることになります。
【対外広報・TV等CM】
本年度は、2,400万円余をTV・ラジオのCM(主として多重債務、今後、交通事故相談のCMも予定)に充て、各センターの手数料収入は、大幅増の昨年度を更に上回る見込みです。CMと相談数の相関関係も確認できており、次年度以降もTV・ラジオのCMを積極的に実施すべきだろうと考えています。本年度その方向性についてご検討いただき、次年度の予算審議という形で会員の皆様にお諮りすることになります。
【会館移転問題】
いよいよ九大六本松跡地への移転問題が具体的に動き出します。土地取得費、会館建設費、新会館の維持管理費等の負担を会員の皆様にお願いすることになりますが、会員の皆様のご理解を得るためにも、今後、可能な範囲で会館移転問題に関する具体的情報を提供して参りたいと思います。
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田 邉 宜 克(31期)
【会員数会820名へ】
新61期の新入会員54名を迎え、当会の会員数は、820名を超えました。
当会では、会員数が増える中で、委員会の諸活動、月報やオール・エフベン、HP等での会内広報、若手会員の刑事弁護や付添人研究会の実践等で、今何が問題で、誰がどんな活動をしているのか、どれほど頑張っているのか、の情報を会員に提供し、認識を共通にすることで、公平・平等に会員に公益活動を担っていただくことに繋げたいと考えて対応策を講じてきました。
今後、会員数が更に増えて行けば、会員間に「公益活動は、自分がやらなくても誰かがやってくれる」という意識が広がっていくことも十分考えられるところですが(東京や大阪の弁護士会では、既に会員の公益活動の義務を規定化しています)、ここ福岡では、会員の皆さんが、弁護士としての矜持を胸に、刑事被疑者弁護を始めとする公益活動を実践する中で、一丸となって取り組むという伝統は、今も息づいているはずです。
今年は、被疑者国選弁護の拡大、そして裁判員制度の実施を迎え、これを担いきれるか否かで、弁護士・弁護士会の鼎の軽重を問われることになります。
正に、弁護士会として踏ん張りどころですが、特に、この5年間で会員数の30%を占めるに至った新入会員の皆さんには、自分達こそが弁護士会を支えているという心意気をもって、刑事被疑者弁護を始めとする公益活動の実践に、積極的に取り組んでいただくようお願いいたします。
【民法(債権法)改正の動きについて】
現在、「民法(債権法)改正検討委員会」において、民法の債権編の抜本改正についての検討が進められています。先般来の日弁連のFAXニュースでも広報されましたが、この検討委員会では、本年1月から3月まで毎週全体会を開催し、3月末に議論を取り纏め、4月下旬にシンポジウムを開催し、4月下旬以降、速やかに法制審での審議が始まる可能性もあるとのことです(試案を発表し、各界の意見を聞くとしても、法制審を開始するまで1年を置くというのは現実的ではない、との関係委員の発言があります)。
この検討委員会は、学者主導の私的なものとの位置づけですが、法務省が実質的に関与し民法改正作業を視野にサポートして来たことは否定し難いところであり、重大な民法改正作業に、実務家たる弁護士がしっかりと反映させる、その為に弁護士会の意見を積極的に発信することが重要であり、次年度の重要な課題になっていくものと思います。
これまでの判例理論を民法の条文に取り入れるほか、私たちがこれまで学び理解してきた規定が大きく変わる可能性がありますので、是非とも、この動きを注視していただくようお願いしたいと思っています。
【ロースクールの定数削減】
中教審は、法科大学院教育の質の向上のための改善方策の中間まとめを発表しました。日弁連は、法科大学院の定数削減を打ち出した姿勢を評価するものの、単に、定数削減を求めるだけで具体的な数値を出さなければ、文科省の強い指導力が及ぶ地方の公立の小規模校の削減に止まり、全国の法科大学院全体の改革が実現できないままに終わることを危惧し、全国定員数を4000人程度に削減すべしとの意見書を採択しました。また、教員態勢や合格率にのみに準拠して、この改革を押し進めるならば、地方の小規模校のみが統廃合・定員縮小を求められることにもなり、地域に根ざす法曹を要請し、日本の隅々に法の支配を行き渡らせるとの司法改革の理想に逆行することになるので、地域的な適正配置に留意し、「大規模校の定員を100人程度削減すること」も合わせて求めることにしました。特に、7校の法科大学院を抱える九州沖縄地区では、この問題は深刻であり、重大な危機に瀕しているといっても過言ではありません。地域の弁護士会には、今こそ法科大学院を支えていくことが求められており、会員の皆さんにも強い関心を持っていただきたいと思います。
2009年04月07日
福岡県弁護士会会長日記
会 長 田 邉 宜 克(31期)
【被疑者国選弁護5月21日問題について】
本年度、国選弁護対応態勢確立推進本部を設置し、被疑者被告人国選弁護人の契約者の拡大に取り組みました。未契約会員に切々たる登録依頼の手紙をお送りし、本部委員に担当を割り付けて、「しつこい!」と言われてもめげずに繰り返し面談・電話で国選契約をお願いし、国選弁護の意義や重要性を再認識していただくため、登録会員の生の声を載せた「国選弁護拡大ニュース」を発行して行きました(読めば、ぐっと来るような「声」ばかりです。HPにアップしていますので、未読の方は是非お読み下さい)。その結果、相当数の会員に国選契約を締結していただくことができましたし、新規登録者への勧誘もあって、2月6日現在で福岡部会の被疑者国選弁護人契約者数も350人に達しました。
会員間の負担の平等化の為には、なお一層、契約者の増加を目指して活動を続けて行く必要があると感じています。
さて、本題の「5月21日問題」とは、ご存じの会員も多いとは思いますが、被疑者国選弁護人選任の告知は、5月21日以降に勾留された対象犯罪の被疑者だけではなく、この日以前から勾留されている対象犯罪の全被疑者、即ち、5月21日時点で勾留満期まで後1日2日しかない被疑者(5月初めに勾留のついた者)から、5月21日に勾留された者まで全てにしなければいけないと規定されていることを指します。
仮に、5月21日一日で一挙に「告知」がなされ、対象の被勾留者が被疑者国選弁護人の選任を求めたときには、速やかに被疑者国選弁護人を推薦することは困難と言わざるを得ないため、どのような対応をとるべきかが問題となっているのです。この混乱を回避するための方策は、4月末頃からの当番弁護士出動に当たり、被疑者国選弁護対象事件については、会員各位が、5月21日問題を意識して、被疑者にもこのことを丁寧に説明し、弁護士会の刑事被疑者援助制度を利用して、被疑者弁護人を積極的に受任していただくことに尽きます。途中で国選に切り替わることがあっても手続の問題で「人捜し」は不要になります。幸い当会の被疑者援助事件受任率は他会に比べ高いので、会員各位が意識を一段と高めることで、十分に対応が可能だと考えています。是非ともご協力下さい。
【国選付添人契約の拡大について】
これまでも、任意の国選付添人制度があり、被疑者援助事件として弁護人となった会員が、付添人援助の登録はしていても国選付添の契約をしていないと、家裁から国選付添人の選任を求められても当然には推薦できませんでした。同一の弁護士が、弁護人から引き続き付添人となることが、望ましいことに異論はないので、国選未登録の会員には、その都度、国選付添人への登録をお願いしたうえで国選付添人として推薦することが少なくなく、やむを得ない場合に、別の登録会員に国選付添人をお願いする対応でしたが、速やかな対応のために、事務局には、大変ご苦労をかけることにもなっていました。
昨年12月から犯罪被害者の審判傍聴制度が導入され、これが認められると必要的に国選付添人を選任すべきとなりましたので、この問題が一層顕在化することになります。被疑者援助を経て、家裁送致後、付添人援助となり、さらに同事件が被害者傍聴事件と決定されると途中から国選付添事件となるので、継続性の要請はより大きくなるのです。
当会では、国選付添人制度に対応する名簿搭載者の数は未だ十分とは言えず、法テラスが管理運営する付添人援助事業における付添人援助名簿と前記国選付添人名簿の登載者が一致していませんが(法テラス名簿には登載していても国選名簿には登載していない)、上記の問題を解決するには、これを一致させることが求められています。多くの会員の皆さんが付添人の国選名簿に登録していただければ、会員間の負担も平等になり、国選名簿登録者だけに「重い事件」が回ることもなくなるのですから、従前の負担感と大差はないはずです。国選付添人契約に是非ともご協力下さい。
2009年05月15日
福岡県弁護士会会長日記
福岡県弁護士会会長日記
平成20年度 会長 田 邉 宜 克(31期)
【はじめに】 本年度1年間、何とか大過なく執行部としての責務を果たすことができました。 退任のご挨拶は次号で申し述べますが、若手会員からベテラン会員まで、広くしっかりと当会の活動を支えていただいていることを改めて実感した1年でした。皆さん本当に有難うございました。 【法曹人口と隣接士業】 今年初めの司法書士議員連盟総会では、司法書士業務の法律相談権の確立を目指すことが確認されたとのことです。司法書士は140万円を超える法律相談はできませんが、市民の紛争予防の為には法律相談が重要であり、裁判を前提とした金額制限をなくすべきだという主張です。司法書士は全国の市町村にいる市民に身近な存在であるが、弁護士は、全国の市町村にいるわけではない、市民の司法アクセスを確保する観点から、弁護士に法律業務を独占させることは問題だとの司法書士会の意見に賛同する有力な国会議員も少なくないと聞いています。 この関係で、法曹人口、特に弁護士人口の増加に反対する意見の中には、弁護士は従来通りの弁護士業務をやっていれば良く、現実の司法ニーズとの隙間は、既に十数万人いる隣接士業の取扱い業務・権限の拡大によって埋めて行けば良いとする考えがあることに注意を払う必要があります。この論に乗るならば、その流れは、やがて弁護士の法律業務独占の廃止に行き着く危険性をも秘めています。 弁護士人口、法曹人口を考える場合に、司法書士等の隣接士業をどう考えるかは悩ましいところですが、法曹とは、公益性、専門性を兼ね備えたプロフェッションであると意義づけて隣接士業数は法曹にカウントしないとの立場に立ち、この法曹が十分な数存在して、司法ニーズを満たすことが司法改革の目的であると考えれば、プロフェッションたる弁護士こそが法律業務を担当することに理があります。司法改革が目指すのは、この意味での法曹の増加であり、隣接士業の権限拡大は法曹が十分な数に達するまでの過渡的な措置と解し、将来的にはその見直しを求めることにも繋がります。 法曹人口5万人は到達点か通過点か、どこまで行くべきか、議論が分かれるところですが、少なくとも隣接士業の権限拡大の主張、強力に展開される運動に説得力をもって対処するには、「法曹の質を維持しつつ、市民が必要とする法曹の数を確保する」ことを目指す司法改革の旗を堅持し、弁護士過疎偏在の解消に一層積極的に対応し、弁護士が社会の社会の隅々まで司法サービスを及ぼしているという「立法事実」を実際に積み上げる必要があることだけは間違いがないと思います。 【セクシャルハラスメントの防止に関する規則施行】 4月1日以降、当会会員から当会の活動または会員の職務に関連してセクシュアルハラスメントを受けた者(事務所職員・修習生・依頼者等)は、当会のセクハラ相談員に相談または苦情の申立ができることになります。この相談を受けて必要な場合には、調査委員会を設置し、事情聴取などの調査を行ったうえで、会長から当該会員に対して、助言・指導・勧告などの適切な措置をすることができるとされています。 この規定に基づき具体的な防止に関する指針も定められています。詳細は、この指針をお読みいただく必要がありますが、例えば、セクハラになり得る言動で職場外で起きやすい例として「カラオケでデュエットを強要すること」が上げられています。あのとき、銀恋(古い!)を一緒に歌ってもらったけど、内心は嫌なのに仕方ないと思われていたら、セクハラ相談の対象になったかもと思うとドキッとしてしまいます。 男女共同参画社会の実現が求められ、弁護士会もその取り組みを強め、私達も依頼者のセクハラの相談に乗り、顧問会社で講演したりしていますが、いざ、自分達の言動となるとその認識の甘さ、自覚不足に忸怩たる思いを抱く方も少なくないと思います。この規則施行は、会員の皆さんが、普段の生活レベルからこの問題を見直してみる良い機会です。まずは隗から始めよです。
2009年06月19日
福岡県弁護士会会長日記
福岡県弁護士会会長日記
その1 予定者から会長就任10日間まで
平成21年度 会 長
池 永 満(29期)
はじめに
月報原稿〆切の関係上、「会長就任挨拶」を掲載していただいているはずの4月号月報も未だ手にしていないのに、早くも5月号掲載予定の原稿を提出しなければならないということで、何を、どのように書くべきものか、いささか戸惑いがあります。(ちなみに、この原稿の締切日は4月10日)
しかし、せっかく貴重な紙面を使わせていただけるのですから、会員の皆さんがこの記事を読まれる段階では事態が進行し時期遅れになっているかも知れませんが、これから1年、皆さんの協力をいただきながら円滑な会務運営をすすめていくためにも、会長としての日々の行動や思いを率直に語らせていただく形で「会長日記」を綴っていきたいと思います。
重点課題の設定作業と役員就任挨拶回り日程の調整
私が会長立候補を決断した直後に田邉前会長から聞いたことは、3月下旬から4月中旬にかけて行われる役員就任挨拶回りが大変過重であり、5月の県弁総会にむけて弁護士会としての基本方針の策定や予算組み等に十分な時間と力を割くことが出来なかったということでした。
そこで私たちは無投票当選確定直後の2月9日(月曜日)から毎週1回正副会長予定者による定例会議(4月からは執行部会議に移行)を行うこととし、前執行部からの引継を受けての合宿(2月28日)や各委員会委員長や次期予定者からの重点課題等に関する意見聴取等の集約を進めて、4月4日の第1回常議員会には重点課題に関する執行部の「所信表明」を提出することができました。
また、重点課題の具体化を検討していただくための関連委員会協議会や担当委員会の対応体制強化等について協議する日程を確保するために、就任挨拶回り日程を大胆に調整し、法科大学院や北九州司法記者クラブなど今年度新たに追加した6団体を加えても前年度から半減(約180を90に)させることにしました。削減の基準としては、・県レベルのものを基本とし、市区レベルのものについては拠点に限り、それ以外は各部会での挨拶回りをお願いする。・就任挨拶目的に限定し、提携業務等の依頼については担当副会長において別途そのための訪問等を行うことにする、というものです。
ゆとりを持った訪問日程にしたため、相手方にあわせて当方で検討中の重点課題について紹介することが出来、相手方からも弁護士会活動に対する多様な意見をお聞きできて良かったと思います。まだ後1日分の日程が残っていますが、それほど疲労感もなく就任挨拶回りを終えることが出来そうです。但し、就任挨拶では失礼した相手方に対する今後のフォローについては忘れないようにしたいと思います。
なお、就任挨拶回りに併行して、弁護士会館や地域における弁護士会の顔である相談センター職員との懇親会を設定し、また各地の相談センターも全て訪問することにしました。そこで浮かび上がった設備上の課題等の改善に関して相談センター運営委員会や各部会での検討依頼を行いました。
委員委嘱を巡る苦行の遂行
私は立候補にあたり、多重会務を解消し「全員野球の弁護士会」をつくりたいと所信を表明しました。
その所信を実行するために、委員委嘱に関しては本人希望と委員長推薦を基本とするが多重会務になる場合には本人希望を優先して調整すること、仮に希望を出さない場合でも1つ以上の委嘱はおこなうこと、従って多くの会員の皆さんに希望調査票を提出していただくために前執行部に無理なお願いをして第2次希望調査表の配布を行ってもらい、その際には希望調査の対象委員会も可能な限り拡大いたしました。
そうした方針に関しては、前執行部が招集して2月16日に開催された委員長会議においても表明し、委員会が必要な人材については是非本人から希望調査票が提出されるよう手配いただきたいとお願いしました。
委員長会議においては、委員会の必要な人材については委嘱してほしいと言う委員長としては当然の意見も多く出されましたが、会員数が急速に拡大している今こそ多重会務を解消するチャンスだとか、それが実現すれば画期的なことだと思うとして、私の方針の成否を見守ろうとする意見も出されました。私はこの声に勇気百倍の思いでした。多重会務をなくす努力は過去の執行部においても何度か試みられましたが、年々委員会の縦割りが進行し執行部自身が新たに発生した課題に対応するために新委員会やPTを立ち上げざるを得ないということから多重会務者をみずから生み出していくという悪循環から脱出する試みは、挫折の歴史でもありました。
予定者会議でも数度にわたり議論を重ね、今年度においては新たな課題が発生しても安易に新委員会やPTは立ち上げず、既存の委員会や関連委員会の協議により対応すること、むしろ委員会の統廃合を進めて力の結集をはかること等を組織的な重点課題の一つとして取り組むことを確認した上で、前述の委嘱方針にもとづいて相島業務事務局長の大変な作業に依拠しながら委員委嘱作業を進めました。
変化をもたらそうとする以上は色んなリアクションが予想される中で、会長として最終責任を取るためにも私自身がこの作業に全面的に関わることにしました。その副産物と言っては何ですが、それぞれの委員会活動を支えている構造とその特徴や力持ちの配置状況などが会務から遠ざかっていた私の頭にもよく入り、また多重会務の会員とも直接話をすることが出来ました。各部会による県弁委員会に対するスタンスの違いもわかりました。この作業も明日あさっての週末で基本的に完了します。この作業を通じて得たデータや執行部としての認識、出された色んなご意見等を含めて委員長会議や機構財務委員会等にも資料提供し、数年後には1,000名規模になろうとしている公法人としての弁護士会活動における継続性の担保の仕方や委員会活動における世代交替や活性化、委員会の統廃合などをテーマにした会内議論を本格的に進めていきたいと思います。
2009年08月04日
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
その2 疾風怒濤(?)の1ヶ月4月10日〜5月9日
平成21年度 会 長
池 永 満(29期)
はじめに
4月の前半は朝から夕刻まで就任挨拶回りに出かけ、夕刻からは60に及ぶ県弁委員会の第1回委員会に出席して挨拶や重点課題に関する説明やお願いをする日々が続きました。後半の半月も夕刻以降の時間は第1回委員会出席を続けましたが、その余は5月の定期総会提出予定議案の事前承認を求める5月常議員会にむけて議案の頭出しを行う必要があった4月22日常議員会、21日から28日にかけて開催された各部会集会、30日の午前・午後に開催した第1回委員長会議や夜小倉で開催した北九州部会執行部との協議会等への出席や準備が続きました。
歴代執行部経験者が語る「一番忙しい仕込みの時期」を過ごしたことになりますが、ピンチヒッター的な気分が残っていた私にとって、この1ヶ月は会長として過ごす向う1年間の心構えや立ち位置を確立せざるを得ない日々ともなりました。
とりわけ飯塚、北九州、筑後と続いた各部会集会では夜の部も含め多くの会員から心温まる歓待を受けました。また今年度執行部の初めての試みだと思いますが会全体の重点課題のうちテーマを絞って意見交換を行う場として年度当初に設定された委員長会議や北九州部会執行部との協議会でも、従前の実践をふまえて極めて具体的で建設的な意見をいただきました。
個人的にもどうせ貴重な時間を費やすのであれば、せっかくの機会でもあり、多くの会員の協力をいただきながら、当面の課題に対応するに止まらず、弁護士会の懸案事項の一つか二つくらいは解決の目途をつけておきたい〜そんな思いも強まったのです。
画期を刻む刑事弁護体制の強化を
この日記が掲載される頃には既に裁判員裁判対象事件の起訴も始まっています。対象事件数は福岡で年間120件前後、北九州で年間4〜50件くらいと推計されていますから、既にそれぞれ数件程度が公判前整理手続に入っているかも知れません。弁護士会としては審理が始まる8月頃までには新たに発足した「裁判員本部」を中心として検証の体制を整える予定です。検証作業により得られるデータは、運用改善や3年後の制度見直しに役立てるだけでなく、全ての会員にとって初めての経験となる裁判員裁判の弁護人活動を改善するためにも役立てる必要があります。そのために当該弁護人から得られるデータのみならず、傍聴席の視点からもデータを得るために、モニター・システムを創設する準備を進めていますので、ご協力をお願いします。
同時に被疑者国選弁護人制度の抜本的拡大も始まっています。先日の法曹合同歓迎会での挨拶で、対象事件数が福岡県全体では4,000件を超える見通しであり相当の力仕事だと話したところ、裁判官や弁護士から数字が大きすぎるのではないかと問われました。私の言い方はむしろ控えめであり2006年と2007年のデータをもとにした日弁連推計では、福岡本庁2,047、小倉・行橋小計1,289、筑後小計532、筑豊小計507、県合計4,375件とされています。選任率も被疑者援助の時より相当高まることが予測されます。これを福岡1名、北九州2名の法テラス・スタッフ弁護士の助勢があるとしても基本的には4月1日現在県弁合計で516名の被疑者国選登録弁護士が対応することになります。限られた期間において集中的な活動が要請される被疑者段階の弁護人活動の質が、その後の事件の行方を左右することを考えれば、複数弁護人がついて集中審理を行う裁判員裁判が全開状態になる今秋以降においても、365日、逮捕勾留直後から被疑者の国選弁護人選任権の保障に万遺漏なく対応できる体制を確立するために、あらゆる方策を尽くすことが弁護士会の責務であり、当番弁護士制度を発足させて今日の被疑者国選制度確立を主導した当会の矜持でもあると思います。
「貧困は国家の大病」
未曾有の社会・経済情勢の中で、生存権を擁護し支援する緊急対策を実行することが、当会はもとより日弁連全体の課題となっています。
河上肇は『貧乏物語』において、「貧困は国家の大病」と喝破していますが、衝撃的なのは20世紀当初における英米独仏における貧富の格差に関するデータです。人口の65%を占める最貧民層が保有する冨の分量は全体の2%前後にすぎず、人口の2%にすぎない最富者が保有する冨は国全体の6〜70%に及んでいたのです。なんと言う格差でしょうか。
そうした中で英国では学校児童に対する食事供給条例を制定し(1906年)、貧乏な老人の保護のために養老年金条例が制定される(1908年)など、大きな政策転換も始まっていますが、養老年金の財源として富者に重い増税案を提案した時の大蔵大臣ロイドジョージ氏は4時間半におよぶ議会演説をこう結んだと紹介されています。「諸君、これは一つの戦争予算である。貧乏というものに対して許しておくべからざる戦いを起こすに必要な資金を調達せんがための予算である。私はわれわれが生きているうちに、社会が一大進歩を遂げて、貧乏と不幸、及び、これを伴うて生ずるところの人間の堕落ということが、かって森に住んでいた狼のごとく、全くかの国の人民から追い去られてしまうというがごとき、喜ばしき時節を迎うるに至らんことを、望みかつ信ぜざらんとするもあたわざるものである。」
貧困は国家の病気であり、貧困との闘いを「国家の戦争」としてとらえる思想は最近の日本ではほとんどかき消されてきたように思います。ところで現実はどうなのでしょうか。OECD(2004年レポート)が、21世紀に入ったOECD諸国における「貧困率」を発表しています。ここでは国民の可処分所得の中位数の50%以下の所得しか稼いでいない人を貧困者としてその人口比率を出していますが、先進国中貧困率の第1位はアメリカ(17.1%)で、第2位が日本(15.3%)とされています。OECD諸国の貧困率の平均は10.3%ですが、貧富の格差のない経済大国と言われてきた日本がいつの間にか「貧困大国」になっていたというのも驚きです。(以上のデータは橘木・浦川『日本の貧困研究』東京大学出版会)
私たちは日本国憲法の保障する基本的人権の思想にたって、現在の社会構造を抜本的に立て直すための取り組みを始める必要があると思います。もとより弁護士・弁護士会にやれることには限りがありますし、社会福祉的な対応に関する第一義的な責任を有しているのは行政であることはいうまでもありません。また弁護士が業務的に対応できる範囲は一層限られています。
しかしリーガルサービスに対するアクセス障害を取り除きながら、行政に対する給付請求権の行使を支援することを始めとして、様々な支援活動を組織し、セーフティネットの再構築を促進するコーディネーターの役割を果たすことはできると思います。この点では司法制度改革の柱の一つであった民事法律扶助の抜本的拡充をになう組織として誕生した日本司法支援センター(法テラス)やスタッフ弁護士の活動と、弁護士会における緊急対策本部等の活動との連携を抜本的に強化することも必要になっていると思います。今年度執行部は以上のような問題意識にもとづき、法テラス福岡事務所との協議を始めています。
陣地を整えて2ヶ月目に歩を進めます。
この1ヶ月、会務に関する書類に目を通し決済する作業にもだいぶ慣れてきましたが、率直に言ってその量の多さには辟易します。日弁連理事会等のために数日会館に出ないと私の机上は書類の山になります。ですから福岡にいる日は毎日弁護士会館に足を運びます。そのため弁護士会から離れている私の法律事務所との車での往復が煩わしくなりましたので、裁判所裏手にあるマンションの一室を確保しました。この原稿も赤坂オフィスで夜を徹して(?)書いてます。明後日(5月11日)には司法記者クラブの皆さんとの定例懇親会(月1回)も開きます。
ところで5月の連休に、昨年末以来できなかった登山を妻とともに決行しました。好天気に恵まれ清々しい気持ちになりました。これから向かう5月21日裁判員裁判と被疑者国選拡大の開始、25日定期総会という山行でもアクシデントに見舞われないで登頂し、皆さんと一緒に清々しく新たなスタートを切れれば良いがと願っています。 (5月9日記)
2009年09月25日
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
その3 <峠越えから稜線歩きへ> 5月10日〜6月11日
平成21年度 会 長 池 永 満(29期)
はじめに
5月13日常議員会で定期総会議案が承認され、5月21日裁判員裁判と被疑者国選拡大のスタートと25日定期総会における宣言・決議を含む全議案の採択と役員就任披露宴の開催という、本年度執行部にとって最初の峠をなんとか無事に通過しました。
お力添えをいただいた全ての会員の皆様に深く感謝いたします!
全会一致の会長声明
この数年、当会はもとより日弁連を始めとする全国の弁護士会執行部と裁判員実施本部や被疑者国選対応本部、刑事弁護等委員会など関連委員会と多くの会員が、「裁判革命?その歴史的大改革を乗り切るために〜」(『月刊大阪弁護士会』の表紙見出し)という意気込みで「その日のために」準備がすすめられてきました。
巡り合わせとはいえ、そうした作業に何の寄与もしてこなかった私が、歴史的な刑事司法改革が全面実施される日に弁護士会の代表者として立ち会うことになりました。
裁判員制度については、消極的賛成論から粉砕論まで含め、会の内外で多様な意見が闘わされてきたことは百も承知ですが、弁護士会としては、法制度として実施される以上は、多くの会員が全力でこれに取り組むことを支援しながら、裁判員裁判における審理の長所を発展させるとともに、問題点の改善や制度改革を求めていく以外にありません。
できれば様々な意見の相違を乗り越えて共通認識をつくり、弁護士会として主体的なスタートを切りたい。そんな希望を胸に秘め、4月当初から数度の関連委員会での検討をお願いした後、2回の常議員会における激しい議論をへて会長声明案が練り上げられ(と言うより切りきざまれというべきか)、遂に出席常議員全員一致の賛成により採択された会長声明を、5月21日の裁判所長・検事正・弁護士会長の三者による共同記者会見において発表することができました。今期執行部としても第1号となる会長声明において弁護士会としての裁判員裁判に臨む統一した姿勢を明確にアピールすることが出来たことは本当にうれしいことでした。
なお2番目の会長声明は、消費者庁関連法の成立を歓迎するもので、こちらの方は日弁連としても20年来の悲願を実現したものであるために、6月4日の常議員会で何らの異論もなく満場一致採択されました。
動き出した2つの重点課題
今年度の重点課題に関連して、5月25日の定期総会において『すべての人が尊厳をもって生きる権利の実現を目指す宣言』が採択され、弁護士会における推進部隊として「生存権の擁護と支援のための緊急対策本部」が立ち上がり活動を開始しました。これは、日弁連定期総会(5月29日)が採択した『人間らしい労働と生活を保障するセーフティネットの構築をめざす宣言』と連動するもので、野田部副会長は、役員就任披露パーティでプレゼンテーションを行ったのにひきつづき日弁連定期総会でも当会の取り組みを紹介しつつ積極的に宣言案に賛成する発言をされました。
また総会は『福岡県弁護士会における人権救済機能の抜本的拡充に向けた決議』を採択しました。これを受けて人権擁護委員会は、未処理案件に対する特別調査体制を確立するとともに、国際委員会の協力も得て、多様な分野における人権侵害申立に的確に対応しうる機能を持った「人権救済センター」(仮称)の創設を視野に入れた調査検討作業に着手しています。
日弁連は今秋の人権大会で採択予定の『新しい人権のための行動宣言2009』のとりまとめ作業に入っていますが、当会の動きは「行動宣言」を担うにふさわしい実践的なシステムを創造していく上でも貢献になると思います。
前執行部からの宿題にも着手します
前執行部からの引き継ぎ事項の中に「福岡地域司法計画(第2次)」の取り扱いがあります。当会は2002年11月に第1次計画を公表していますが、第2次計画案は2008年2月に提出されたもので(当会ホームページの会員ページにアップされていますので、是非ダウンロードしてお読みください)、第1次計画から5年間の取り組みを総括するとともに、司法改革の現状と課題を点検しつつ、これからの取り組み方を提起したものです。
「地域司法計画」は言うまでもなく、地域の隅々まで公正かつ透明な法的ルールに基づく紛争解決の仕組みを整備していくうえでの、当会としての社会に対する提案であり、かつ、その一端を担おうとする弁護士・弁護士会としての決意の表明でもあります。
しかしプランを提示するだけでは画餅に終わりますし、かえって弁護士会の社会的評価を損ねる結果にもなりかねません。第2次案自体も「第1次の反省にたち、計画倒れに終わらせることのないよう、これから毎年の当会の活動における羅針盤にしながら、より具体的な年次計画を立て、実行に移すものと位置づけられなければならない」「(そのためには)執行部直属の恒常的な組織を設け、計画の進捗状況を確認し、当会内外の意見を集めてこれを整理し、新たな実行課題を発信し続けていく必要がある」と記しています。
第2次案が示している課題は全面的であり、すべてに着手するのは今期執行部の力に余りますが、その中には既に今年度の重点課題として取り組んでいる事項も少なくありません。
また、今期の執行部は発足直後から、県下20カ所に展開している法律相談所の拡充強化策の検討を進めていますし、さらに被疑者国選対応体制の整備に止まらず民事法律扶助のアクセスポイントの拡充や生存権支援活動における共同など、新たな視点からの日本司法センター(法テラス)との連携強化やスタッフ弁護士の位置づけの見直し等に関して、法テラス福岡事務所との協議を継続していますが、これらの問題も地域司法計画の重要な柱を構成しています。
こうした問題への取り組みを強化することを含めて、この機会に1年以上前に提起されている第2次計画案をたなざらしにすることなく推進していく体制づくりに関して、執行部としての提案を行い、会内における検討を開始したいと思います。
力まずに中盤戦に入ります
5月25日の定期総会を終えた週末の5月30日、31日の両日、NPO法人患者の権利オンブズマンの10周年記念事業<ボランティア全国交流集会、国際シンポ、記念レセプション等>が開催されました。患者の権利オンブズマン理事長として自らが主導的に企画し、1年半くらい前から取り組みを始め、海外から三名のゲストを招くという超ビックな企画に、まるでお客さんのような気分で臨むことになるとは夢にも思いませんでした。
大成功のうちに終わったことについても、うれしいというよりも複雑な気持ちなのです。これだけは自分がいなければと考えてきていたのに、いなければいないで、ちゃんと他のボランティアの方達が力を出してくれるということです。弁護士会だって同じことかも知れません。
いずれにしても総会を終えて、ほっと一息つき気分的にゆとりがでてきた感じです。会館での毎日の文書決済も苦になりません。単に慣れてきただけなのかも知れませんが。また、執行部の面々はもとよりですが、着々と作業を進めておられる職員の横顔や会館に出入りする弁護士の活動ぶりを身近にすると、今更ながら頼もしい限りです。6月に入ってから事務所でも時々事件の打合せに同席して、お客さんと言葉を交わす時間的余裕がでてきました。平常心で中盤戦に歩を進めたいと思うこのごろです。
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
その4 <凛として鎮座する「天賦人権」> 6月12日〜7月13日
平成21年度 会 長 池 永 満(29期)
友、遠方より来たり
6月12日、九州大学で開催された家族法学会に参加した機会にということで、韓国の李点任弁護士が私の事務所に立ち寄りました。李さんと知りあったのは今から15年前に遡ります。
私が副会長だった1994年度の定期交流として福岡を訪問していた釜山地方弁護士会一同の歓迎会が稚加榮で開催されました。そのとき私と妻が対席に座って言葉を交わしたのが若き李弁護士と奥さんでした。以来、定期交流の機会を利用して相互に自宅を訪問するなど、家族ぐるみの交流と文通が始まったのです。その仲を取り持ってくれているのが弁護士会の定期交流における専任通訳とも言うべき本村さんで、今回の李さんの来訪も本村さんを通じて連絡をいただきました。
その後の経過は本年度の釜山地方弁護士会との定期交流のところで述べることにいたします。
熱烈歓迎の中で市民モニター制度が発足
ところで5月21日に裁判員制度がスタートして今日までに1ヶ月半が経過し、既に福岡本庁では10件の裁判員裁判対象事件が起訴されていますが、何故か小倉支部には1件も起訴されていません。福岡本庁では7月中旬以降次々に公判前整理手続の期日が入っていますので、9月上旬頃には第1号事件の公判審理が開催されることになりそうです。
当会としては、そうした日程をにらみながら、裁判所や検察庁との協議も含め、裁判員裁判の検証を如何に進めるかという検討と準備作業を5月に新しく発足させた「裁判員本部」を中心に進めてきました。
一言で裁判員裁判を「検証する」と言っても、そう簡単ではありません。そもそも法曹三者のすべてにとって未知の制度であるために想定外の事態が発生することも不可避であり、問題が発生する都度、現場での運用改善努力が求められることは言うまでもありません。しかし全て出たとこ勝負というわけにもいきません。事件を担当した弁護人から得られる情報とつきあわせることにより、裁判員裁判における弁護人の活動改善にも役立ち、かつ、新しい制度の問題状況を把握しつつ運用改善や制度改革を促進する契機になるような検証の方策はないのだろうか? そうした熱い議論の中で「市民モニター制度」が考案されました。
市民が参加する裁判員裁判の審理では、いわゆる「調書裁判」を排して公判中心の直接証拠主義に基づく運営がなされる必要があることには異論がないところでしょう。検察側の主張が公判廷に提出された直接証拠等により合理的な疑いを残さない程度に立証されているか否かが裁判員に判断できなければなりません。とすれば傍聴席に座った市民により裁判員裁判の審理の実情をモニターしてもらい、現実の検察の主張立証や弁護人の主張反証が市民に理解できるものになっているか否か等をつぶさにチェックしてもらう意義は決して小さくありません。
この構想は西日本新聞により1面トップで報道され(5月20日)、6月15日には説明会開催の記者レクが行われました。その翌日から市民の問い合わせが殺到し、6月29日の説明会には140名を超える市民が詰めかけました。説明会の様子は、<「第7の裁判員」制度点検/福岡で全国初「市民モニター」/弁護士会公募 120人登録/立証や量刑 傍聴し意見>という大見出しが躍る7段記事でも紹介されました。(日経新聞7月4日夕刊)
長期にわたり裁判員裁判を巡る国民的な議論が継続してきたなかで、裁判員候補者に選ばれなかった人を含め、自分の目で裁判の実情を見つめてみたいという多くの市民から熱烈に歓迎されて市民モニター制度が発足することは、弁護士会における検証作業に一つの基軸を据えることになったと思います。
熱烈歓迎をいただいた釜山地方弁護士会の皆さんありがとう
1990年3月に当会と釜山地方弁護士会との姉妹提携協定がなされて以来、今日まで20年に及ぶ国際交流が継続しています。今年度執行部においては、これからの20年を見据え成熟した交流方式に発展させるために事前に釜山側との協議を行いました。その結果、釜山会の役員任期は2年なので不都合はないけれども当会の役員が1年任期であることが考慮されて毎年の相互訪問をしてきた方式を改め、今後は隔年の相互訪問として企画の充実化を図ること、但し韓国の習慣により20周年となる来年については双方で記念行事を行うこと等、新しい交流方式について合意しました。
新たな方式の第1回目となる今年度の定期交流として7月10〜12日の3日間19名の訪問団で釜山を訪ねましたが、釜山地方弁護士会の慎鏞道会長、金泰佑国際委員長を始め釜山会の皆さんからいただいた心のこもった熱烈歓迎にはただただ感動するだけでした。こうした歓迎をいただく背景には、これも姉妹提携以来20年という長期にわたる国際交流を継続するなかで、大塚先生や安武先生を始めとする当会国際委員会の諸先生方が中心となり地道な努力を続けてこられ、釜山会との間で人間的にも厚い信頼関係が構築されてきた賜物であり、この場を借りて感謝の意を表したいと思います。
定期交流の模様は別途報告がありますので、私は李さんとの再会について書いておきます。李弁護士は、私がエセックスに遊学したのと入れ替わりにアメリカに留学され、帰国後は釜山にある東亜大学で民事法の教授に就任していますが、兼業禁止のため弁護士は休業しており、釜山地方弁護士会との交流会にも出られないとのことでした。そこで、自由行動日の7月11日、私たち夫婦がそろって本村さんとともに李弁護士の新居(2〜3年前に豪華マンションに移転)を訪問することにし、奥さんや外交官をめざすという娘さんにも10数年ぶりに再会し旧交を温めることができました。これもまた感謝です。
大韓民国「国家人権委員会」の活動に触れて
ところで、5月の定期総会が採択した『福岡県弁護士会における人権救済機能の抜本的拡充に向けた決議』にもとづく調査活動の一環として、釜山地方弁護士会のお世話により、韓国の「国家人権委員会/釜山地域人権事務所」を訪問することができました。訪問日の7月12日は日曜日であったにもかかわらず、李所長を含む3名の所員が予定の時間を超えて対応してくれました。プレゼンテーションに使われた日本語のパワーポイントとそこに盛り込まれたデータも、私たちのために独自に準備されたものでした。
その内容も極めて興味深いことばかりでした。国家人権委員会についてはホームページ(www.humanrights.go.kr)で組織と活動の概要を知ることもできますし、釜山地域人権事務所への訪問記録の詳細は、別途当会国際委員会から調査報告として出されると思いますので、ここでは簡単に触れておきます。
国家人権委員会は、国連総会が1993年に確認した「パリ原則」に基づいて、いわゆる政府から独立した人権機構として2001年法律により制定されたもので、独立機構(立法・行政・司法のどこにも属しない)、人権に関する総合的機構(人権の保護・向上に関するすべての分野を担当する)、準司法機構(人権侵害・差別行為に対する調査および救済)、準国際機構(国内における国際人権規範の実行)という4つの性格を有しています。
委員会は、大統領推薦4名、大法院長推薦4名(全員弁護士)、立法院(与野党)推薦3名の計11名から構成されており、そのもとに常任委員会、侵害救済委員会や差別是正委員会等の委員会と事務所が設けられ、事務所には政策教育局や調査局等があり、総員164名で構成されています(昨年までは210名いたが新政権の構造改革のために減員させられたそうです)。
国家人権委員会の活動概況は、2001年11月26日から2009年6月30日までの7年7ヶ月分で、陳情、相談、案内、民願を含む総計で246,552件(1年平均約32,000件)の多数に及んでおり、そのうち調査を行った案件(陳情)は15.5%の38,306件です。調査案件は90日で結論を出すことが原則であり、その内訳は、「人権侵害」の訴えが30,275件(79%)、「差別」の訴えが6,229件(16%)、その他が1,798件(4.7%)となっています。
人権侵害の訴えの対象は、拘禁施設42.8%、警察・検察26.8%、多数人保護施設7.7%、地方自治体4.9%であり、刑事拘禁施設や捜査機関で約7割を占めています。これに対して「差別」の訴えについては、株式会社17.8%、教育機関13.5%、地方自治体12.4%、公共機関7.1%の順であり、民間における差別事象(セクハラを含む)が上位を占めており、陳情の中でも差別の訴えが増加傾向にあるとのことです。
調査事件中、人権委員会が勧告を行うに至った事件の割合は7〜9%ですが、勧告の前に事実上解決する事案もあり、また勧告したケースの95%は相手方から受入れられているとのことです。人権委員会の勧告には強制力はありませんし、調査においても強制調査はできませんが、陳情等がなくても拘禁施設等にも自由に立ち入って調査を行ったり、関係者を事務所に呼び出して調査する権限があり(地域事務所内にも取調室がありました)、調査に応じなかった者には過料の制裁があります。
李所長は、政権との関係での困難な局面に関する私の質問に対して明快に答えました。「国家人権委員会が三権に属さず、国家権力による人権侵害を監視・是正させる役割を持っていることからしても、政権との緊張関係は必然であり、仲良く済ませるわけにはいかないこと。人員の削減がなされても、自分たちは同じ課題を同じ方法で活動することができていること。政権との緊張関係が報道されることにより、逆に国民の国家人権委員会に対する理解が深まっているという側面もあり、人権委員会に対する相談や陳情の内容も多様な人権分野に広がりつつある」と。
ミーティングが終わった後、広い事務所の中を案内してもらいましたが、人権を啓発するユニークなポスターが多数展示されているなかで、部屋中央の壁沿いに、ひときわ大きな額縁の中で「天賦人権」の文字が凛として鎮座しているのが目にとまりました。
2009年10月29日
会長日記
福岡県弁護士会会長日記 その5 <スポーツと色んな交流、そしてお盆> 7月14日~8月16日
平成21年度 会 長 池 永 満(29期)
可愛い優勝杯をこの手に 8月の月報で浅野秀樹会員が意気高く報告済のことですが、7月14日に開催された三庁対抗ボーリング大会では3度目の正直で当会チームが初の優勝杯を手にすることができました。練習ボールで2度もストライクをきめて出鼻をくじこうとする安倍高裁長官の戦術とプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、多少の年の差に光明を見いだしての持久戦の結果、なんとか鼻の差での逆転を果たすという私闘(?)の後で飲み干したビールの味は格別で、その後に授与された団体優勝を飾る可愛い優勝杯(アルミ製?)もそれなりに重く感じられたから不思議なものです。 画期的優勝をもたらした当会の参加者の御奮闘に感謝! 今大会を準備いただいた検察庁の皆さんと、来年こそは(御自身はいないが)必ず雪辱を果たすと宣言された浜崎家裁所長の無権代理的宣誓が肩の荷に重くのしかかっているでしょう裁判所の皆さん、ご苦労様でした。 全国的課題になっている新人弁護士研修制度の新たな構築 7月31日、恒例の九弁連夏季司法合宿が福岡市で開催されましたが、テーマは、新人弁護士研修のあり方と裁判員裁判の検証でした。新人弁護士研修のテーマでは高裁の森野裁判官が講師として裁判官から見た弁護士像について忌憚のないご意見を披露されました。続いて私が新人研修制度の構築を県弁護士会として検討している問題意識と背景、10名前後の単位で部会毎に展開する新人研修システムのイメージ、既に指導担当弁護士制度を含む新人研修制度を発足させている京都弁護士会の会則等について紹介しました。 8月9日、札幌で開かれた三会(第二東京弁護士会、札幌弁護士会、当会)交流会でも、同様のテーマが取り上げられました。 とりわけ、この三年、毎年3~400名が登録したため、現在の会員数約3,600名の3分の1が3年以内の登録者となったという二弁における苦労は大変なものです。二弁では既に「新人サポートセンター」を設立して登録3年未満の会員を対象に事件処理や業務上の悩みをサポートするためのメーリングリストを運営していますが(現在の登録数は約210名程度)、これに加えてサポートメンバーにのみ公開される「個別相談用メールアドレス」も設定して、約10名の50期台のサポート弁護士グループによる個別相談も実施するとのことです。新規登録後直ちに若しくは短期間で独立開業する弁護士に対し「OJTにより基本的かつ最低限必要な弁護士業務の処理の仕方及び弁護士倫理のあり方等を習得させる方法」についての具体的な提言を各委員会に意見照会し、10月中に集約して新制度をたちあげることも予定しています。 その理由として、従来であれば経験を積んだ経営者弁護士又は先輩弁護士等から実務上必要な最低限度の知識やルールまた弁護士倫理を習得してきたが、近時これが困難になっており、これらを習得する機会のないままに弁護士業務に従事するものが増加する場合には、「依頼者とのつきあい方、事情聴取・情報収集の方法、事実関係の整理・分析の仕方、問題点の所在の見極め方、問題解決の手法、弁護士報酬の決定方法等につき、未熟さから間違った判断を行ってしまう者が出てしまうことが危惧され、依頼者へ迷惑をかけ新規登録弁護士本人が窮地に立たされるだけでなく、ひいては弁護士全体に対する社会からの信頼も保持できなくなる恐れもなしとしない」と述べられています。 昨年1年間で50名を超える新人が登録して500名を超える会員数になったという札幌弁護士会では、司法修習生就職問題対応プロジェクトチームの基本方針の中に「即時又は早期独立弁護士に対し、弁護士としての最低限の力量を身につけるための、法曹倫理を含めた研修、業務スキルの指導及び人的スタッフ・物的設備の提供等々についてのあり方を検討する」ことが位置づけられています。具体的な研修内容としては、従前のオリエンテーション的な新規登録弁護士研修の後で、一定の実務経験を経た者に対するフォローアップ研修を制度化しています。フォローアップ研修としては法律相談と刑事弁護があり、講師用のマニュアルも作成されており、その内容は極めて実践的で興味深いものです。 当会においては、研修委員会の中に設置された新人研修問題PT(座長・石渡一史会員)において、あるべき新人研修の内容やシステムについて火急の検討作業をしていただいており、9月には答申を得て全会的な議論を進め、可能であれば新62期登録者から実施していきたいと考えています。 解散~交流~納涼船~政治連盟~お盆 ボーリング優勝で始まったこの一か月は台風の前の静けさとも言うべき社会的・政治的状況の中で、弁護士会的には多様な行事が目白押しでした。7月21日、ようやく衆議院が解散された翌22日は台北駐福岡経済文化弁事所との交流会、29日は新62期司法修習生との交流会、30日は恒例の納涼船(私は、小学生の頃に同道したことがある娘と、その二人の子ども、つまり孫達を連れて久しぶりに楽しみました。茶話会の皆さんに感謝!)、31日は前述の九弁連合宿、8月1日は人権大会消費者問題プレシンポ(約150名の参加で大成功、消費者委員会等関係者の皆様ご苦労様でした!)、5日は福岡のマスコミ報道責任者卓話会、9~10日は前述の三会交流会、10日夜は司法記者との月例交流会、そして11日と12日は、日本弁護士政治連盟が推薦している衆議院選挙立候補予定者のうちアポイントが取れた5名の事務所回りをしました。(私は「弁政連九州支部理事」を拝命しております。) 弁護士会としては、総選挙の公示を目前に控えたこの機会を生かして、司法制度や市民の基本的人権と社会生活に関連して4月以降に出した総会の決議や宣言、会長声明等を整理して全政党とその候補者に対して政策化と実現方を要請する文書を作成し郵送を含めて配布することにしました。 そこで5月定期総会の宣言・決議と4月から8月6日の常議員会までに採択された会長声明で対外的にアピールすることに意味のあるものを並べてみたらなんと9本にもなっていました。 1、司法制度に関連するもの ・ 司法修習生の修習資金貸与制実施の延期に関する決議 ・ (裁判員制度開始・被疑者国選対象事件拡充に際しての)会長声明 ・ 死刑執行に関する会長声明 2、国民の基本的人権や社会生活に関係するもの ・ すべての人が尊厳をもって生きる権利の実現をめざす宣言 ・ 海賊対処法に反対する会長声明 ・ 消費者庁関連法成立に関する会長声明 ・ 生活保護「母子加算」制度の復活を求める会長声明 ・ 法令なしに警察の監視カメラを設置することに反対する声明 ・ 消費者庁長官及び消費者委員会委員人事に関する会長声明 会長声明等の多さは、委員会活動を基礎として弁護士会の活動が社会の各分野に広がっていることの反映でもありますが、それだけに弁護士会が行う社会的発言に伴う責任もまた重大さを増していることについて自覚せざるを得ません。そんなことを考えつつ、帰省してきた孫達とともに充実した(つまり休みのない)お盆をすごしたのでした。(8月16日記)
2010年01月19日
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永 満(29期)
No453 その6
<多事争論、そして実りの秋へ> 8月17日~9月15日
<裁判員裁判の公判始まる> 遂に裁判員裁判の公判が始まりました。第1号事件(9月9日~11日)第2号事件(15日~18日)にむけた検証体制を議論する中で市民モニターに加えて弁護士モニターも配置することを決定したことに伴い2席以上の傍聴席を確実に確保するために、裁判員本部のみならず福岡市内の会員弁護士と事務職員の皆さん、市民モニターに登録されている皆さんにも傍聴整理券確保のために協力をいただきました。おかげで連日の法廷の全てを、2名のモニターはもとより執行部や裁判員本部の弁護士等も傍聴でき、やはり模擬裁判とは異なる緊張感あふれた裁判員裁判の公判をリアルに体感することができました。感謝、感謝です。 とりわけ市民モニターの視点は裁判員裁判の検証を進めるにあたり有効性が高いということでマスコミをはじめ各方面から注目されており、他の弁護士会においても設置する動きが始まっています。
<動き出した地域司法計画> 7月号月報で報告しました「福岡地域司法計画(第2次案)」(2008年2月作成)の取り扱いについては、第2回委員長会議(7月29日)における意見交換を踏まえた上で、8月27日の常議員会において、弁護士数や相談センターの活動状況等に関する最新データを補充するとともに第2次案作成後に進展した制度改革や弁護士会の取組みを紹介する内容の「前文」を付した上で第2次案本文はそのままの形で確定し公表することが承認され、9月1日付で会員各位や関係機関等に送付されました。 常議員会は同時に「福岡地域司法計画推進室」の設置規則を制定しました。推進室(室長・牟田哲朗会員)の眼目は、第2次地域司法計画の内容について、関連委員会に対し担当分野の課題を計画的に推進するための「年次計画案(計画の補正や新規追加を含む)」の提出を求めるとともに、担当委員会がない分野(例えば弁護士過疎対策等)に関しては自ら年次計画を作成し、これらを集約して執行部に提案し、「福岡地域司法計画」の進行状況を検証しつつ着実に推進していくための活動を行うところにあります。 現在日弁連のもとで全国の単位会や地方弁連における第2次地域司法計画の集約作業が進められていますが、これを検証・推進する体制を確立したのは当会が全国で初めてのようです。 地域司法計画の推進に関連して既に具体的な取組みも始まっています。一つは相談センターの充実です。天神相談センターについては、相談時におけるプライバシーの保護やゆとりのある相談室や事務室、或いはADR室や待合室の配置等を実現するための移転拡充計画が準備されています。また北九州部会においては、従前会議室を都度借用して相談活動を行っていた豊前市において、通常日は毎日相談担当弁護士を配置する「豊前相談センター」を新設します。これらは各部会集会における議決を経て10月末の県弁臨時総会に必要な補正予算案が提出される予定です。 また地域司法計画を推進する上では、民事法律扶助のアクセスポイントの拡大(契約弁護士事務所における直接受任を推進するための広報活動)をはじめ弁護士会と法テラスとの連携強化も重要な課題になっています。とりわけ法テラス・スタッフ弁護士との関係では、従前の国選対応に関する補完協力に止まらず、弁護士会が推進している生存権支援活動、或いは労働、社会福祉分野等における多面的な人権救済活動において連携した活動を強化する必要があります。 この点で、法テラスの今年度におけるスタッフ配置計画案(福岡事務所にプラス1名、北九州事務所にプラス2名)を検討するため全員協議会を開催しました(8月26日)。北九州では既に部会集会で承認されていましたが、福岡においては従前全員協議会で協議して回答していたため、これを踏襲したものですが、スタッフ増員についての反対意見はなく、今後はいちいち全員協議会を開催することなく、基本的には県弁執行部と法テラスとの間の協議により対応すべきであるとの意見が大勢でした。 執行部としては前述したように法テラスとの総合的な連携強化という観点に立って、既に飯塚部会の要請として法テラスに提出されている平成22年度における筑豊地区(特に田川)へのスタッフ弁護士の配置等について協議を始めています。
<大連市律師協会との安定した友好交流へ> 大連市律師協会との交流のため9月1日から4日まで中華人民共和国の大連市を訪問しました。当会と大連市律師協会との交流は10数年の歴史がありますが、釜山地方弁護士会とのように正式な姉妹提携がなされていないため、その時々の執行部の判断で断続的なものになっており、今回は3年ぶりの訪問でした。 実は以前、大連市律師協会から両会の交流を促進するために『合作交流意向協議書』の締結が提案されたことがあります。それは、両会の相互交流に加えて、双方が1年程度滞在する数名の留学生を受入れ、その滞在費を受入側が負担するというような重厚な内容を含むものでした。当会としては、そのような財政負担力もありませんでしたし、緩やかではあっても息の長い友好交流関係を樹立することが適切であると判断して、当時、既に姉妹提携を結んでいた釜山方式を提案しました。これに対して「貴会が提案された意見は、両会の交流を進めるために有益であり、ふさわしいものだと当会も考えます。貴会と釜山弁護士会が署名した『交流に関する合意書』のモデルを参考にして当会と貴会の提携合意書に署名することに同意します。具体的な事柄については、当会が派遣する代表団が訪日した際に改めて協議させていただきたいと思います」との返事が寄せられました。1999年4月29日付のものです。 つまり当会が提案した釜山方式による姉妹提携につき相手方も同意され、大連側の訪日団との間で協定調印の実務作業に入ることが予定されていました。ところがその後に行われた大連市律師協会の役員人事異動のために代表団の訪日が延期され、双方の執行部も交替する中で、協定書調印にむけた実務作業が進められないまま今日に至ったというわけです。 今回、大連市律師協会との協議会において、「日本における外国研修生の法的位置」や「日本企業が中国に投資するに際しての中国法上の留意事項」などあらかじめ設定されていたテーマに関する意見交換を終えた後、今後の交流の進め方に関する協議が行われました。その際、当方からは前述の経過を確認的に紹介したうえで、これからの10年にむけて、より安定した交流関係を促進するために、10年前に両会で合意されている協定書の調印にむけた実務作業を進めることについて双方で検討してはどうかと提案しました。もちろん私としては相手方のお国柄を考え、「ご返事は、今日ではなく後日連絡いただければ結構です」と付加えることを忘れませんでした。 これに対して大連市律師協会の張燿東会長は即座に応えました。「当方の事情で調印作業が進まなかったことをお詫びする。私としては今直ぐにでも調印したい気持ちである。9月末に開催する役員会で検討するので協定書のモデル案を送って欲しい」。その日の夜、当方が主催したお礼の宴席で、張会長は更に「私は戦時中でも日記を習慣にするような方がいる几帳面な日本民族を尊敬しています」「できれば来年の2月頃にでも福岡を訪問して協定書の調印をしたい」と申し出られました。 幼少時を大連で過ごされたことのある清原雅彦先生(今回の視察団長)は、大連側の迅速かつ心温まる対応に大きく感動され、何度も杯をかわしながら得意のハーモニカを披露されました。この10数年、一貫して大連側とのパイプ役をされてこられた大塚芳典先生も感慨無量の様でした。 今回の訪問に出かける前の執行部会議では、今後の交流の進め方について議題になる場合には前述のような提案を行うことについての話はしていたものの、相手方から即答されることを想定していなかった私は、帰国の道すがら伊達健太郎国際委員長や服部弘昭北九州部会長始め視察団の面々と対応方針を協議し、帰国直後の執行部会議(7日)と常議員会(9日)において経過を説明して、とりあえず9月末の大連会の役員会に間に合うよう協定書のモデル案として釜山との合意書の中文訳を送付することについて了承をいただいたのです。突然の上程であり手続上問題があることは承知しつつ、対外関係を重視して了承をいただいた常議員会の皆さんに感謝、感謝です。 この月報が発行される10月中には大連側からの回答があり、両会の安定した友好交流にむけて新しい局面が展開していくかもしれません。
<日弁連60周年に「日本の立ち位置」を考える> 日弁連60周年記念式典が東京で開催されました。偶然ではありますが、この日は「9・11」の8周年記念日でした。「日弁連は、こんな日に記念式典をやるなんてすごいですね」と言いながら記念講演をされた寺島実朗さん(財団法人日本総合研究所会長)のテーマは「世界の構造転換と日本の立ち位置」。豊富なデータを示しながらの講演で、極めて示唆に富むものでした。 まず驚いたのは、9・11以来、アメリカが引き起こしたイラク戦争等による米軍戦死者は丁度8年後の本年9月10日までに5、161名(アフガンでの死者822名を含む)に達し、累積戦費の額は実に7,119億ドル(現在でも月60億ドル以上の消耗)。昨年来のアメリカ経済崩壊の原因には良く語られるサブプライム問題のみではなく「巨大な浪費として経済の根幹を消耗させているイラク戦争」があるということです。 日本の貿易構造も大きな変化を。米国との貿易総額の比重は27.4%(90年)、18.6%(04年)、17.5%(06年)、16.1%(07年)、13.9%(08年)、13.6%(09年上半期)と年々逓減。これに対して、対中貿易比重は3.5%(90年)から20.5%(09年上半期)へと大きな伸びを示しており、今やアメリカを抜いています。その背景には、もちろん中国自身の経済成長があります。中国のGDP世界ランキングは1990年10位から2007年3位、2010年には日本を抜いて2位になる見込み。「陸の中国」(中国本土)に「海の中国」(香港・台湾・シンガポール)を加えた「大中華圏」では、2008年GDP(5.1兆ドル)で日本(4.9兆ドル)を凌駕しているそうです。 そうした中で国際的物流にも大きな変化が。2008年世界港湾ランキング(コンテナ取扱量)は、1位シンガポール、2位上海、3位香港、4位深_、5位釜山と並んでおり、福岡とも関係の深い釜山のハブ化が注目されています。私は知りませんでしたが、最近のアメリカから中国へのコンテナの大半は、九州の南方からではなく津軽海峡を通過して日本海を経由し釜山や中国の港湾に入っているそうです。そのため、日本では太平洋側港湾が空洞化し、日本海側が港湾への物流シフトが始まっており、「日本海物流時代」とも言うべき変化が起こっているとのこと。 こうした「構造転換」を前にして、寺島氏は最後に、「太平洋の先のアメリカを通してしか世界を考えられない風潮を改める必要がある」「戦後60数年が経過してもなお外国の軍事基地があることは普通ではない」「偏狭なナショナリズムではなく普通の状態の国家にするための努力をしなければ、日本は世界の人々から尊敬されない」(ドイツではベルリンの壁が崩壊後、米軍基地の撤去に関する話し合いが進められたそうです)と結びました。
<新政権の発足と弁護士会> 明日(9月16日)、日本に新しい政権が誕生します。私たちも、ようやく選挙で与党政権を退陣させるという貴重な政治体験をしました。連立政権合意文書には、「生活保護母子加算の復活」や「労働者派遣法の抜本改正」など当会の総会や常議員会で採択された会長声明等の内容が取り入れられているにとどまらず、最終節の「憲法」は「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と結ばれています。 弁護士会としても、司法制度の改善や基本的人権を擁護し社会正義を実現するという責務に照らして一層活発に社会的提言を行うとともに、それらをストレートに実現させるための政治への働きかけを行うことにやりがいを感じる時代が到来したのかも知れません。もちろん相当な力仕事であることは覚悟の上で。 (9月15日記)
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永 満(29期)
No454 その7
<新しい息吹き、天高く想い膨れ、語り合う我ら> 9月16日~10月14日
新しい息吹きを感じる季節 9月16日、新政権の誕生とともに、法テラス・スタッフ弁護士として養成する弁護士(旧62期)が私の事務所に着任しました。会務のためほとんど仕事をしていない私だけでは鍛えることができませんので、事務所の若手弁護士を指導担当弁護士として共同で事件処理をし、12月には新たに入所予定の三名の新人弁護士(新62期)をライバルとして切磋琢磨しながら、期間は1年と短いですが可能な限り色んな経験を積んでもらい、勇躍して過疎地に赴任できるよう支援したいと思います。 9月18日は福岡修習新62期生の合同送別会。2日目の日弁連理事会を午前中だけで早退して帰福し参加しました。みんな無事2回試験を終え、笑顔で福岡に帰ってきて下さいとエールを送る。昨年は1年間で70名を超える登録がありましたが、今年は何名が福岡県弁護士会に登録し、私たち法曹の仲間として新たな1歩を切り開くことになるのか。 10月2日、NPO法人九州アドボカシーセンター(理事長/馬奈木昭雄弁護士)の合格祝賀会が開催されました。アドボカシーセンターは地域で人権のために活動する弁護士をめざすロースクール生に生きた事件から学ぶための「人権セミナー」や「自主ゼミ」の機会を無償で提供するため、法科大学院発足とともにスタートしたNPO法人です。県下四大学のロースクール学生が研究生として登録していますが、新60期1名、新61期2名、新62期4名、そして今年9月に合格発表があった新63期は8名と、倍々ゲームで合格者を出しています。所属大学も違いますのでセンターとしては特段の受験指導等はしていませんが、人権セミナー等に参加することにより、どのような法律家をめざすのかという自分自身のモチベーションを形成し維持することが勉強への励みを生み出す力になっているのではないかと思われます。 弁護士会としては、こうした法曹をめざす新しい力を積極的に受入れて、彼らが地域社会の隅々で「社会生活上の医師」として活動していけるような仕組みを編み出し、多様な受け皿作りに努力する必要があるでしょう。 あれもこれものシルバーウイーク 9月の大型連休が、5月の「ゴールデンウイーク」とともに「シルバーウイーク」とよばれて、私を誘い出そうと微笑みかけていることに気付いたのは直前のことです。実は私の手帳では9月19日から27日までは早くも4月から斜線が引かれており一切の日程を入れず封印されていました。弁護士会としての「人権救済システム等の海外調査」を予定したものです。 しかし、そのもくろみが頓挫したため、突然ぽっかりと大型連休が私の眼前に開かれたのです。そのために雑然と、あれもこれも風に、しかし楽しい日々となりました。 最初の2日は2~3の原稿書きと墓参りをしたあと、前期執行部からの引継書をチェックして今期執行部として後半戦における取りこぼしがないように検討するための執行部合宿の準備。 真ん中の連休(2泊3日)は山登り。長男夫婦とそれぞれの両親、あわせて三組6名の一行で久しぶりに久住山に遊んだ後、私たち夫婦だけで熊本県菊池の八方ヶ岳へ。もっとも狙いは山よりも付近の温泉三昧でした。 そして最後の数日は、中華人民共和国成立60周年祝賀会(9月25日)、適格消費者団体設立総会(9月26日)、そして、会務のため面会の間隔が開きがちになっている成年被後見人やその家族のお見舞いの病院巡り(9月27日)、執行部合宿と台北福岡事務所との懇親会(9月28日)と、いささかバテ気味で締めたのです。 「核兵器廃絶」を後押しするノーベル平和賞 オバマ大統領にノーベル平和賞が授与されました。まだ実績があるわけではないけれど、「核爆弾を投下した唯一の国としての道義的責任」を明言した上で「核兵器のない世界」をめざすことを誓い、国連等においても行動を開始しているオバマ氏に対する大きなエールであり、オスロの授賞式への参加も良い意味で強いプレッシャーとなるでしょう。ノーベル賞の中で唯一スウエーデンではなくノルウエー国会が授賞主体になっている平和賞については、たまに首を傾げたくなるものもありましたが、今回は実にすばらしい政治判断をしたノルウエー・ノーベル委員会に拍手を送りたいところです。 その後、日本では東京落選決定を待っていたかのように、2020年に平和の祭典オリンピックを広島・長崎に招致する呼びかけが発せられ、「核兵器廃絶」にむけた想いも大きく膨らみつつあります。オバマ氏には近日中の広島・長崎訪問も期待したいところです。「自分の生きている時代には実現しないかもしれない」というような弱気を捨てて、速やかに「核兵器廃絶」を直接の議題とする国際交渉を始める力仕事の先頭に立つ決意を固めてもらうためにも。 和気あいあいに学び合う3会交流 大阪弁護士会、広島弁護士会、当会による定例の3会交流会が10月11日当会の会館ホールで開催されました。この組み合わせの3会交流は10年前後の歴史がありますが、個別の交流はそれより前から続いています。私は今から15年前、国武格先生(故人)が会長のときの副会長でしたが、当時急速に拡大しつつあった当番弁護士等の活動を支えるためにリーガルサービス基金を確立する必要があり、国武会長は破産管財人報酬からの負担金徴収の導入を決断され自ら多額の負担金を拠出されましたが、その方法は大阪弁護士会から学んだものでした。またマスコミ担当副会長であった私は、当時有料で宣伝していた当番弁護士の広告に代えて無料でかつより効果的な広報はないものかと考えていた時、広島弁護士会が当番弁護士名簿を断続的に地元新聞の記事として掲載させていることを知り、早速現物を取り寄せ福岡の司法記者クラブ加盟各紙に働きかけ、「今週の当番弁護士」欄を設けて広報してもらえるようになりました。このように、大阪会や広島会から多くのことを学んできた感謝の思いは、相手方においても共通であり、執行部が代わっても引き継がれています。今回も裁判員裁判の検証や市民窓口の運営、委員会活動活性化の方途等、全ての協議題で互いに学び合い、共鳴し合うことが多くあり、稚加榮で開催した懇親会、更に2次会まで和気あいあいの議論に花を咲かせました。 民主党議員との懇談会 既に参議院では2回可決されている取調べ過程の全面可視化法案。新政権で法務大臣に就任した弁護士の千葉景子さんは、最初の記者会見でも、日弁連への就任挨拶でも、第一に「捜査の可視化」を進めると明言しています。そうした情勢を受けて、日弁連は、臨時国会開会前に与野党を問わず全ての国会議員に対する緊急の要請活動を展開することとしました。 福岡県弁護士会も執行部が手分けして、全ての議員に要請活動を行うとともに(私は10月10日自民党の武田議員と山本議員を訪問しました)、民主党については日本弁護士政治連盟(弁政連)九州支部を通じて懇談会を申し入れることにし10月12日開催されました。懇談会には松本龍衆議院議員(民主党福岡県総支部連合代表)をはじめ県内選出の8名の議員本人と4名の議員代理(秘書)の方々に出席いただき、弁護士会からも県弁護士会、九弁連、弁政連九州支部の執行部からそれぞれ数名、合計14名が参加しました。予定の2時間びっしり使って、可視化法案の展望にとどまらず、法曹養成問題や司法改革の現状認識、新政権における政策決定のあり方など幅広く率直な意見交換をすることができました。 今回は初顔合わせで互いに集団山見せのようなものですので、今後具体的な課題毎に必要な協議の機会を設定することになりますが、松本議員も強調していましたが、国会での立法作業などを念頭に置けば政権党である民主党とだけの協議で事態が打開できるものでもありません。政治に対する働きかけは、先月号で予測したとおり、なかなかの力仕事になるように思われます。ということで、弁政連九州支部では今後自民党や公明党等との懇談会も検討されています。 (10月14日記)
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永 満(29期)
No455 その8<九弁連大会やイベントの狭間、手探りで匍匐前進> 10月15日~11月12日
九弁連大会へのご奮闘とご協力に感謝!! 福岡市では18年ぶりの開催となった九弁連大会(10月23日)。 羽田野節夫九弁連大会実行委員長をはじめとする実行委員会の皆さんの長期にわたる用意周到な準備と「九弁連はひとつ」の合い言葉にふさわしい九弁連関係者の一致協力した取り組みのおかげで、シンポ、大会、懇親会、スポーツ交流や公式観光等、全てのイベントが充実した内容で大成功に終わりました。日弁連宮_誠会長を始め多くの参加者から開催県としての当会の底力をみせつけるものであったと大きな賞賛もいただきました。 関係各位のご努力に、感謝、感謝です。 今回の日記期間は、九弁連大会のみならず、各種のイベントが目白押しで、あさかぜ基金法律事務所の1期生井口夏貴弁護士を所長として送り出す「対馬ひまわり基金法律事務所」の引き継ぎ式(対馬、10月28日)、法曹三者協議としては10月7日の一審強民事部会に続く「一審強刑事部会」の開催(10月30日)、日弁連における最大のイベントである「第52回人権大会」も和歌山で開催されました(11月5~6日)。 私的には「患者の権利宣言25周年記念集会」(名古屋、10月31日)、憲法フェスタ(11月3日)、中学卒業48周年記念同窓会(11月7日)等にも顔を出し、日頃のご無沙汰を詫びつつ旧交を温める機会をもつことができました。 来年2月、大連市律師協会との交流協定調印へ 前回月報の会長日記で予測していたとおり、大連市律師協会との交流が新たな局面を迎えることとなりました。大連市律師協会から10月17日付けで当会が送付したモデル案(釜山地方弁護士会との合意書)とほとんど同一内容が記述された中国文の合意書案を添えた回答が寄せられたことを受け、10月29日の常議員会において全会一致で同会との相互交流に関する合意書を調印することが承認されました。 合意書調印のため来年の2月26日から28日までの間、大連市律師協会の張耀東会長をはじめとする代表団が福岡を訪問される予定です。詳細日程や合意書調印後の具体的な交流の進め方等については、これから国際委員会を中心として実務的協議を行うことになりますが、当会としては代表団の歓迎実行委員会(委員長・清原雅彦会員)を組織し、20年前に実施した釜山地方弁護士会との調印式の事績も参考にしながら、会をあげて歓迎に向けた準備を進めていきたいと思います。 臨時総会で補正予算を承認~福岡、北九州で相談センター拡充へ 各部会集会の議をへて10月15日の常議員会で議決した天神弁護士センター会計と北九州法律相談センター会計の補正予算案は、10月29日に開催された臨時総会において、ほぼ満場一致の賛成で承認されました。これにより、本年4月以降、野田部副会長と法律相談センター運営委員会を中心に取り組まれてきた天神弁護士センターのリニューアル大作戦は実行段階に入り、今後レイアウトの最終的な詰めを行った上で、遅くとも来年1月中には移転場所における業務開始を目指して作業が開始されます。私は来年2月に訪問される大連市律師協会代表団にも市民に対するリーガルサービスの拠点である新天神センターを是非視察してもらいたいと考えています。 北九州部会が立ち上げる豊前相談センターは、従前は月に1回の土曜日しか行っていなかった法律相談を、月曜から金曜日まで毎日実施する常設相談所として新規に開設するものであり、弁護士過疎地域である豊前地区において当面の赤字は覚悟しても市民に対する継続的なリーガルサービスを展開する拠点を創出するという画期的な試みです。 私は会長就任時に県下20カ所の相談センターを訪問させてもらいました。その際の印象から、サテライト相談所を市民がいつでも駆け込める頼りがいのあるものにするためには連日相談にのれる対応体制を作ることが不可欠ではないかと考えており、豊前相談センターの今後の推移と成果を注目したいと思います。 新人研修制度の検討開始~新人研修PTの答申を受けて 本年度執行部が重点課題としている新しい「新人研修制度」の構築を検討するため研修委員会内に設置された新人研修PT(座長・石渡一史会員)による答申が2回にわたり提出されました。(答申は執行部に対するもので、これから執行部案を作る際のたたき台としての性格を持つものですが、執行部としては早期に多角的な検討をすすめるためにも、そのまま関連委員会や常議員会に情報提供する取り扱いにしており、第1回答申は9月30日の、第2回答申は11月12日の常議員会でそれぞれ報告しています)。 新人研修PTの最初の答申は、新規登録弁護士に対して現に実施している倫理研修、会務研修、各種相談担当登録研修等に加えて、長期的視野に立って登録から1年間にわたり弁護士業務の基礎や基本を修得できるような新人研修プログラムのメニューのたたき台を網羅的に示したものです。 第2回目の答申は、新人研修制度を実施していく仕組みを構築するための研修規則や細則の改正案を内容とするものですが、登録から1年間にわたり一人一人の新人弁護士に対して会長が「主任指導弁護士」を選任して新人研修を促進することや、主任指導弁護士の選任手続きなどの会長事務を新人が所属する部会の部会長に委託することができる規定を設けることにより、新人研修を各部会中心に行う体制を作ること等が付加された主な点になっています。なお主任指導弁護士は新人が所属する事務所の先輩を選任することを原則としています。 執行部としては、2つの答申に加えて、新人研修制度を実施するために必要となる講師等に対する謝礼や経費をまかなうための財源をどう確保するか(そのために必要な規則改正等があればその改正案を含む)に関しての提案をまとめた上で、プログラム、仕組み、財源という3点セットを含む新人研修制度に関する総合的な執行部としての提案(たたき台)を取りまとめた上で、早ければ11月下旬の常議員会に提出して会内合意を形成するための本格的な議論を始める予定です。 リーガルサービス活動等の実情調査と有償化の検討を開始 現在、県弁の各委員会が関与して実施されている市民や団体に対するリーガルサービス活動(法律相談や講師活動等)は極めて多面的になっており、多くの会員が熱心に取り組んでおります。日弁連からの依頼等により臨時的に実施する相談活動等も急増しています。 ただ法律相談の場合でも、面談相談の場合には担当する会員に対する日当が支払われているものが大半ですが、逆に電話相談(ホットライン等)においては支払われていないものが大半です。出張しての講師活動等においても相手方から支払われるものもありますが、無償で実施されているものも見受けられます。 執行部としては、市民や団体等に対するリーガルサービス活動をいっそう活性化させるとともに、会務負担の公平性の観点や若手会員の参加を促進するためにも、リーガルサービス活動に従事する会員に対しては原則として日当を支払うシステムを確立することが必要ではないかと考え、そうしたシステムを実施する場合の予算規模や支払い基準、留意すべき事項等を検討するために、各委員会の委員長に対し実情照会を行いました。 あわせて、第3者に対するリーガルサービス活動のカテゴリーには該当しないけれども、仮にリーガルサービス活動に対して原則的に日当支払いが行われることとなった場合には、それに準じて有償化を検討すべき会務活動等の存否についても照会をしています。執行部としては現段階において会務活動一般について有償化する方針は持っておりませんが、既に大阪弁護士会等においては人権調査活動等に対する日当支払いが実施されていることなど他会の動向を考慮すれば、この際、会務負担の公平性等の観点もふまえて総合的な検討を進めるために、委員会活動の実情を正確に把握したいと考えています。 この照会結果については、第3回委員長会議(12月1日)における意見交換や常議員会等における検討を行った上で、可能な限り早期に、この問題に対応するシステムを確立したいと考えています。 あれやこれや、執行部としては来年3月の任期までに残された時間をにらみつつ、手探りで着地点を求めながら匍匐前進(?)を続けていますので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (11月12日記)
2010年02月16日
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永 満(29期)
その9
<「こうあるべき世界を目指し」つつ、新年を展望する>
11月13日〜12月13日
新年あけましておめでとうございます。
自身が「2つの戦争のただ中にある国の軍最高司令官という事実」の中で、「戦争を平和に置き換える努力についての難問」を弁明しつつも、「核なき世界」を求める努力を放棄しないことを鮮明にしたオバマ大統領は、昨年12月10日、オスロでのノーベル平和賞受賞演説をこう結んでいます。
「ガンジーやキング牧師のような人々がとった非暴力は、いかなる状況でも現実的で可能なことだとはいえなかったかもしれない。しかし、彼らが説いた愛——人間の進歩に関する彼らの根源的な確信、それこそが、常に我々を導く北極星であるべきなのだ」「我々には出来る。なぜなら、それこそが人間の進歩の物語であるからだ。それこそが全世界の希望だ。この挑戦のとき、それこそが、この地球で我々がやらなければならない仕事なのだ」
今、マスコミの多くが普天間基地の移転問題で「北極星」を設定しないままに「早期決着」を求めていますが、日本防衛ではなく海外への殴り込みを目的とし、沖縄県民に対する暴行凌虐やヘリコプターを大学に墜落させるなど危険きわまりない普天間基地の米海兵隊は、沖縄から即時無条件に撤退させるという視点こそ「1丁目1番地」ではないのでしょうか。今から42年前の1968年6月2日、在学中の九州大学にベトナム帰りのファントムが墜落し、全学と県民挙げての怒りと運動の中で板付基地撤去を実現した経験を持っている私には特にそう思えるのです。
2010年は日米安保改定から50年。折しも九弁連大会(10月22日)が沖縄で環境問題を主テーマとして開催されます(福岡での九弁連大会には沖縄弁護士会から80名を超える参加をいただきました。福岡からも沖縄大会に大挙して参加しましょう)。戦後60年余が経過したにもかかわらず、沖縄を始め首都東京を含む全土に外国軍隊が駐留し続けている日本。世界では軍事同盟は縮小の一途をたどり、非軍事の平和条約機構が急速に拡大しています。その中心となりつつある「東南アジア平和機構」(TAC)は「外圧に拠らずに国家として存在する権利」「締約国相互での内政不干渉」「紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇または行使の放棄」など日本国憲法9条と同様の平和主義理念を掲げています。日本は2004年にTACに加入しており、2009年には域外のEUとアメリカの加入も承認され、今や、東南アジアを中心として地球を一周する帯のように27カ国・組織による巨大な平和友好地帯が出現しているのです。
そうした激動する国際情勢の中で、いつまでも軍事同盟中心の日米関係で良いのか、鳩山政権は何を道標として、アジアにおける日本の信頼を高め、対米交渉を進めるのかについても、交渉相手のオバマ大統領にならって理想を掲げた挑戦を続けて欲しいものです。
先輩法曹と若手が一堂に会した忘年会
ところでオバマ受賞演説の日は、ちょうど福岡部会の忘年会の日でもありました。2009年に米寿と喜寿を迎えられた9名、在職50年と40年の表彰を受けられた7名の先輩法曹がおられますが、忘年会の冒頭に行う恒例の表彰式には、米寿を迎えられた司法修習1期、法曹経験50年を超える松村利智先生、弁護士在職40年の九弁連表彰を受けられた司法修習21期の半田萬、大原圭次郎、髙木茂の各先生が出席いただきました。記念品贈呈の後に、皆さんから語られた簡潔の中にも含蓄があるお話とあふれる気概にふれて、参加者一同笑いと元気をいただきました。
引き続く懇親交流会も楽しい福引きをはさみながら、先輩、同僚、若手が隔てなく互いの労をねぎらい、新年に向けた弁護士業務や弁護士会活動の展望を語りながら、激励し合い、杯を交わすという福岡らしい忘年会の姿が再現され、個人的にも晴れ晴れとした「望年会」となりました。
私たちの任期も余すところ3ヶ月です。やりかかっている作業課題を確実に結実させ、次期執行部に過大な宿題を引き継がないようにがんばるつもりですので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
新63期の受け入れ準備と実務修習の開始
昨年11月14日、新63期生の実務修習開始を前にして、5年目になる福岡県弁護士会主催の合同事務所説明会が開催され、過去最高の110名を超える修習予定者が全国各地から参加したことは、月報12月号で伊藤功示会員(司法修習生就職問題及び新規登録弁護士支援対策室長)が既に報告しているとおりです。参加いただいた14事務所と情報提供いただいた7事務所に感謝しますとともに、次年度に向けて参加事務所の拡大についても会員の皆様の積極的な協力をお願いいたします。
福岡を修習地とする新63期生82名については、11月25〜26の両日、弁護士会主催の事前研修を行い、27日から司法修習が開始されました。司法修習委員会や多くの指導担当弁護士の会員各位には、ご苦労をおかけしますが、修習生の進路に関する助言や支援を含めて、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。
なお、新62期の新規登録(12月17日付け)は54名を予定しており、全員が登録されれば福岡県弁護士会の会員数は880名となります。
裁判員裁判検証・運営協議会始まる
昨年12月1日、裁判所・検察庁・弁護士会の法曹三者による「裁判員裁判検証・運営協議会」が正式にスタートしました。これに先立って、常議員会は11月の2回にわたる審議をへて、「裁判員裁判検証・運営協議会設置要綱」を採択しました。
裁判員裁判は、日本の刑事司法にとって歴史的な改革の実行であり、法曹三者にとっても全く新しい経験ですから、従前の議論や想定の範囲を超えて色んな問題や解決すべき課題が生起するであろうことは言うまでもありません。裁判員法自身も付則において3年後の制度見直しを予定しています。
従って、実際に裁判員裁判に取り組んでいる現場において都度の検証を行いながら、必要な制度の改善や改革を提言し実施していく必要があります。問題によっては、制度改革を待つまでもなく、法曹三者がそれぞれの立場から運用を改善することにより、裁判員裁判の充実を図ることが出来ることも少なくないでしょう。そうした意味において、法曹三者が具体的な経験を通して都度の検証活動を行う意義は極めて大きいと思います。設置要綱を文書で確認して公式に協議会を立ち上げたのは九弁連管内では始めてですが、全国的にもモデル的な役割を果たすことが期待されています。
弁護士会としては、この協議会に協議員を出す関連委員会を、裁判員本部、刑事弁護等委員会、子どもの権利委員会、犯罪被害者支援委員会等とすることや協議の内容と結果を会員に周知する方法等に関して、常議員会申し合わせ事項も採択していますが、実際に裁判員裁判の弁護人として活動された会員の皆さんが、積極的に協議題等を提起していただき、裁判員裁判の運用改善や制度改革につながるようご協力いただければ幸いです。
また、この協議会では、裁判所からは最高裁が集約している裁判員に対するアンケート調査の結果が都度報告されるとともに、弁護士会が実施している市民モニターによるアンケート結果の内容についても随時情報提供して協議の参考に供することにしています。
なお、設置要綱や申し合わせ事項については、全文を本月報に掲載していますが、設置要綱第6項において、「協議の結果、各庁会の意見が一致したものについても、個々の訴訟活動、弁護活動、訴訟行為等を制約するものではない」ことが確認されていますので、念のために申し添えます。
多重会務の解消とリーガルサービス活動
の強化に向けて
昨年12月1日、第3回委員長会議を開催しました。
テーマの一つは、本年度執行部が採用した「多重会務の解消と全員野球による委員会活動の活性化」を目的とする委員委嘱方針等の検証でした。会員自身の希望を基本として1会員につき2〜3委員会の委嘱を原則としましたが、その後の委員会からの追加委嘱希望との調整もあり、上限5委員会に達している会員も相当数残っています。データ的には、委員会への出席会員数も出席率も共に昨年度より向上している委員会が多数に昇っており、多重会務の解消についても一定の成果はあげていますが、幾つかの委員会からは、委員会推薦で対外的な業務に従事していた会員が上限に達していたために委員に追加委嘱されなかったために善後策で困難があったこと等も報告されました。但し、そのことによって委員会活動自体に具体的な支障が起こったとの報告はなく、多重会務の解消に向けての取り組みは継続的に実施されなければ元の木阿弥になりかねない性質のものだから、少なくとも3年は継続したうえで検証することが大切であるとの意見も出されました。
現執行部としては意見交換の結果を次期執行部にお伝えし、委嘱方針を策定する上での参考に供したいと思います。
第2のテーマは、委員会が関与して実施されている第三者に対するリーガルサービス活動(面談や電話による法律相談、学校や団体に出向いての講師活動等)については、原則として担当会員に対して日当を支払うことにしたいという執行部方針に関する意見交換を行うものでした。
執行部が、そうした方針を検討している背景としては、面談による法律相談では原則として担当者に対する日当が支払われているのに、11月30日に行ったハローワークにおけるワンストップサービスなどのように日弁連等の要請で全国的、臨時的に取り組まれる出張相談等の場合には全く支払いがないものもあること、逆に電話相談では多くの場合支払いはなされていないが、一部には日当が支払われているものもあること、外部団体における講師活動等では、相手方からの支払いがあることも多く、原則として担当者に対する日当支払いがなされているものが多いが、相手方の予算措置が困難な(学校や団体での)講師活動等には支払いがないものもある等、担当者に対する手当の仕方にアンバランスが生じていることがあります。
そうしたアンバランスを解消したいとする執行部方針については、多くの委員長から概ね賛成の意見が出される中で、担当者に日当支払いを行って相談活動を行うのであれば相談後に受任に至った場合には負担金の納入を求めるべきであり、そのためには相談記録等の作成による事件管理を行うことが不可欠であること、日当支払いをすることにより委員会が適宜実施しているホットライン等の活動が自由に出来なくなるのは良くないとする意見等も出されました。
また、法律相談や講師活動など直接的なリーガルサービス活動ではないが、一部の会員に過度な負担を強いている会務、例えば人権擁護委員会の調査活動等に対する手当を同時に行うべきであるという意見も出されました。
執行部としては、上記の意見交換をふまえて、以下のような方針を固めました。
即ち、直接的なリーガルサービス活動にたいしては、前述のとおり既に原則として担当者に対する日当等の支払いが行われていますが、その出所は法律相談センター特別会計やリーガルサービス基金特別会計、或いは県弁一般会計等まちまちであり、その支払い基準についても必ずしも統一されていないので整理する必要があること、日当支払いを行う場合には、その支払額や、支払いの対象とする活動を認定する基準や手続を定めるとともに、委員会が実施を予定しているリーガルサービス活動で、事件管理システムを確立した上で担当者に対する日当支払いを行うことを希望する活動の規模をあらかじめ集約して予算規模のシミュレーションを行うなど、年間予算を策定するための作業が不可欠であること、従前のリーガルサービス活動のカテゴリーに含まれていなかった、つまり日当等の支払いを想定していなかった会務の一部に対する支払いを行うとすれば、出所となる会計規定等の改正やその財源を確保するための機構財務の改革も行う必要があること等、いくつかの検討課題をふまえた執行部案を作成した上で、新年明け可及的速やかに常議員会に提起して3月までに新たなルールの策定につき会内合意を得て、次年度からの全面実施をすすめたいと考えております。
なお今年度においては、11月以降2010年3月までの間、担当者に対する日当支払いを行うことについて委員会からの事前の要請があり、執行部において支払いが相当であると判断されるリーガルサービス活動に対しては、執行部の責任において県弁一般会計の特別活動費から支払いを行うこととし、既に執行を始めました。支払いの基準は、法律相談活動については現在支払われている相談活動日当の最低額と同額の時給計算とし、講師活動については現在実施されている講師料の最低保証額と同額とします。
これらの措置が、委員会が主催するリーガルサービス活動の一層の活性化と、多少なりとも担当会員の活動に対する支援になればと考えています。
(12月13日記)
2010年03月12日
会長日記
福岡県弁護士会 会長日記
平成21年度 福岡県弁護士会会長 会 長 池 永 満(29期)
その10 <「新しき華」のかおりを窺いつつ、自らに号令かけて> 12月14日~1月14日 熱烈歓迎 ‘大連市律師協会代表団’ ご案内のとおり大連市律師協会代表団(張耀東会長ほか18名)が2月26日来福し、翌27日、当会との姉妹提携協定の調印式と歓迎レセプションがホテル・ニューオータニ(福岡市)で開催されます。 当会においては昨年12月14日に代表団歓迎実行委員会(実行委員長・清原雅彦会員、委員長代行・伊達健太郎国際委員会委員長、事務局長・冨山敦県弁総務事務局長)が活動を開始し、第1日目に代表団が訪問する北九州部会では独自の歓迎体制(中野昌治実行委員長)も整えており、会を挙げて歓迎したいと思います。 長い交流の歴史がある日本と中国、その中でも文化的・経済的・地政学的にも極めてゆかりの深い福岡県と大連市において活動する両弁護士会が、従前の断続的交流により培われた信頼関係を基礎とし、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という法律家としての共通目標を掲げた交流協定を調印して継続的・安定的交流へとステップを進めることは、社会的にも国際的にも意義深いものがあります。 歓迎行事への多数の参加を始め、今後における両会の交流の発展のために会員各位のお力添えを宜しくお願いいたします。 始まった新旧交代の時期 年末も押し迫った12月28日定年まで若干の期間を残して依願退官された仲家暢彦・前福岡地裁所長が弁護士会館に退官挨拶にこられました。仲家前所長には、裁判員裁判の実施準備や法曹三者による検証協議会の立ち上げのために、毎月開催された四庁会(地裁・家裁・地検・弁護士会)における意見交換のみならず互いに直接行き来する等して、フランクな協議の機会を設定していただき、最終的な合意を形成する上で大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。年が明けた1月7日新任の山口幸雄地裁所長の就任挨拶を受けました。山口所長からは、弁護士会との協力関係は裁判所にとっても一番重要なことであるという認識が表明されましたが、あわせて応接室に陳列している各国弁護士会からの記念品等を前にして、当会における国際交流の状況に関しても強い関心を示されていました。四庁会等でご一緒できる機会は3月までですが、裁判員裁判が本格化する時期でもあり、山口新所長と意見交換の機会が持てることを楽しみにしています。 また福岡高等検察庁においても、有田知徳・前検事長が退官され、三浦正晴・新検事長が着任されました。検事長の退任と就任の挨拶については前田豊九弁連理事長とともにお受けしましたが、有田前検事長からは福岡県弁護士会の活動に対する高い評価が、三浦新検事長からはこれから本格化する裁判員裁判に取り組む検察庁としての抱負等をお話しいただきました。 「市民のための司法改革」のバトンタッチ 当弁護士会においても、新年早々の1月6日、次年度役員の選挙が公示され、会長立候補者の所信が配布されました。その所信は、同時に進行している日弁連会長選挙候補者による政策表明に比べても、地に足の着いた論理と丁寧な語り口で「市民のための司法改革」を推進する立場を堅持してきた当会の基本方針の継承を鮮明に打ち出されておられ、候補者自身の会務に関する慧眼を十二分に窺い知ることのできるものでした。 仮に定数以内の立候補者であれば、立候補受付期間が終わる1月18日には次期執行部予定者の顔ぶれが確定し、次期執行部としての事実上の活動を開始することになります。 そこで、選挙公示日に先立つ1月5日、新年初めての執行部会議において、私たちは、次期執行部予定者が確定次第直ちに次期執行部としての会務方針策定や委員会構成等の検討作業に着手できるように、必要な情報提供の準備を行うとともに引継ぎマニュアルの作成作業を急ぐことを確認しました。 それとともに、現執行部や委員会が作業中の重点課題や常議員会で甲論乙駁の議論が進行している協議題については先送りするのではなく、可能な限りの手だてを尽くして会内合意の形成に努め、3月11日に予定している現執行部としては最後の臨時総会を目途に着地点を見いだし、次期執行部に引き継ぐ「宿題」を極力最小化するために、担当副会長を先頭に執行部が一丸となって努力することを決定しました。 どこまで首尾よく果たせるかは予断を許しませんが、自らにも号令をかけ、新旧ともに晴れやかな気持ちで「政権交代」を行えるようにがんばりますので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (1月14日記)

