福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2017年7月19日

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

声明

 まもなく福岡地方最低賃金審議会は,福岡労働局長に対し,本年度地域別最低賃金額改定についての答申を行う予定である。
 昨年,同審議会は,福岡県最低賃金の改正決定について,前年度比22円増額の765円とする答申を行った。しかし,あまりに低い増額幅で不当と言わざるを得ないものであった。すなわち,時給765円という水準は,1日8時間,月22日間働いたとしても,月収13万4640円,年収約162万円に止まるものである。この金額では,労働者がその賃金だけで自らの生活を維持していくことは容易ではなく,ましてや家計の主たる担い手となるのは困難である。また,いわゆるワーキングプアを解消して労働者の生活を安定させ,労働力の質的向上を図るためにも,最低賃金の引き上げは重要であるところ,かかる観点からも全く不十分な水準であった。
 福岡県の最低賃金は,昨年度の全国加重平均823円を下回り,最も高額な東京都の932円を167円も下回っていることは重大である。福岡県に限らず,都心部と地方の地域間格差は拡大傾向にあるところであり,地方の活性化のためにも,地方の最低賃金の大幅な引き上げによる格差の解消は喫緊の課題と位置付けられるべきである。
 加えて,政府が,2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年までに「全国平均1000円」にするという目標を明記していたことに照らせば,福岡県において,2020年までに1000円という目標を達成するためには,1年当たり少なくとも60円程度の引上げが必要であるのは明らかである。
 なお,最低賃金の引き上げに際して,地域の中小企業の経営に特別の不利益を与えないよう配慮することが必要なことは当然である。最低賃金の引き上げを誘導するための補助金制度等や中小企業の生産性向上のための施策ないし減税措置等,中小企業を対象とした制度も併せ検討されるべきである。
 また,福岡地方最低賃金審議会の審議内容は,現在,要旨の公表しかなされていないが,議事の透明性と公正の確保の点から,詳細な議事録,配布資料の公開を実現すべきことも指摘したい。例えば,鳥取地方最低賃金審議会においては,審議等の全面公開が実現しているがこれによる問題は生じておらず,その気になれば,その実現は可能なのである。
 以上,当会は,福岡地方最低賃金審議会に対し,今年度の答申に当たっては,最低賃金を大幅に引き上げるよう決定することを求めるとともに,同審議会の詳細な議事録等の公開を求めるものである。

2017年(平成29年)7月19日

福岡県弁護士会会長  作 間 功

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