福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2017年3月10日

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の期限延長を求める会長声明

声明

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(以下「本法」という。)が、2017年(平成29年)8月7日の期限到来を迎える。
 本法は、2002年(平成14年)8月7日に施行され、2012年(平成24年)8月7日に5年間、施行期間が延長された。その後2015年(平成27年)4月からは生活困窮者自立支援法(以下「新法」という。)が施行されている。
本法はホームレスの支援について国の責務を認めた画期的な法律であり、これにより緊急支援、就労施策、住宅施策などを含めた総合的支援施策の実施が可能となった。
これに基づき、民間団体と行政による官民一体の体制作りが各地でなされ、一定の成果があがった。2003年に実施された最初のホームレス実態調査では、全国で25,296名の路上生活者が確認されたが、その後の全国の取り組みにより、2016年1月時点で6235名に減少したとの報告がある。本法施行以後、路上生活者が減少しているということは言える。
当会も、関係機関と連携し、同法に基づく支援事業として、福岡市就労自立支援施設や抱樸館福岡(ホームレス支援のための一時宿泊施設)での巡回相談を行うほか、北九州市勝山公園での炊き出し時の法律相談の実施、会員の寄付を募りNPO法人抱樸に物資援助を行うなど様々なホームレス支援に取り組んでいる。
ところで、本法に基づいて実施されてきた①ホームレス総合相談推進事業、②ホームレス緊急一時宿泊事業、③ホームレス自立支援事業等は、新法の施行により①については新法の自立相談支援事業に、②及び③については新法の一時生活支援事業に財源の位置づけが移行して実施されている。これまでのホームレス自立支援法の下に実施されてきたホームレス対策事業は、新法の生活困窮者自立支援において実施することとなる。
しかしながら新法には「ホームレスに関する問題の解決」を目的と明記する規定が存在せず、また国と地方自治体に基本方針・実施計画の策定を義務づけ、国にホームレスの実態に関する全国調査の実施を義務づける規定が全く存在しない。本法が上記期限到来によって失効することにより、ホームレス支援が国の責務であることが曖昧になる危険がある。また上記計画策定や実態調査が行われなくなる恐れは大きくなる。
 また、路上生活者の人の数は減少したとはいえ、未だ全国で6000人以上の路上生活者が確認されており(民間団体の調査によれば、それ以上の路上生活者が確認されている)、ホームレス問題はなくなっていない。ホームレス問題の解決を国の責務とする本法の必要性は全く失われていないことは明らかである。本法の上記施行期限の到来によってホームレス問題の解決の施策に関する根拠法がなくなる事態があってはならない。
 よって当会は、本法の施行期限を一定期間延長したうえで、その期限内にホームレス問題の解決を恒久法に位置づける方策を検討し必要な法改正を行うことを求める。
                  

                     2017年(平成29年)3月9日
                             福岡県弁護士会
                             会長  原田直子

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