福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2015年12月17日

少年法の成人年齢引下げ問題に関する意見(法務省の意見募集に関して)

意見

第1 意見の趣旨
 1 少年法第2条1項の定める「成人」の年齢を現行の20歳から引き下げるべきではない。
 2 若年者に対する刑事法制の在り方について検討を行うときも,少年法の成人年齢の引下げ問題とは切り離し,別途議論すべきである。

第2 意見の理由
1 公職選挙法の改正に伴い,少年法第2条1項が定める「成人」年齢について,これを引き下げるべきか否かの議論がある。
しかし,当会の本年6月25日付「少年法適用対象年齢引下げに反対する会長声明」で詳しく指摘したとおり,法律の適用対象年齢は,各法律の立法趣旨に照らして個別具体的に検討すべきであり,少年法の適用対象年齢についても,18歳・19歳の少年は未成熟であり,再犯防止策としては刑罰を科すよりも保護処分に付する方が適切であるとの立法趣旨に照らし,そして,子ども・若者の成長発達ないし最善の利益と犯罪予防などの社会全体の利益を実現する観点から,個別具体的に検討すべきである。そして,現行少年法の手続と教育的な処遇や環境調整等は再犯防止に効果を挙げるなど,有効に機能しているため,現行少年法が適用対象年齢を旧少年法(大正14年制定)の18歳未満から20歳未満へと引き上げた趣旨について,現時点においてこれを変更すべき合理的な理由は存在しない。適用対象年齢の引下げは,18歳・19歳の少年がこれまで受けることができた教育的な働きかけや環境の調整という機会を奪うこととなり,その結果,少年の立ち直り・更生の機会を奪い,再犯の可能性を高める結果を引き起こしかねず,少年にとっても社会にとっても不利益な結果となりかねない。
よって,少年法の「成人」年齢は引き下げるべきでない。

2 この点,自由民主党の政務調査会が本年9月17日に取りまとめた「成人年齢に関する提言」は,少年法の「成人」年齢について,「国法上の統一性や分かりやすさといった観点から,少年法の適用対象年齢についても,満18歳未満に引き下げるのが適当である」とする。
しかし,上記提言も,国民年金の支払義務や児童福祉法に定める児童自立生活援助事業における対象年齢などの諸法令については適用年齢引下げの対象外とし,飲酒・喫煙や公営ギャンブルについては適用年齢引下げの是非を引き続き検討するとしているように,やはり,法律の適用年齢は,各法律の立法趣旨に照らして個別具体的に検討すべきものである。上記提言の「国法上の統一性や分かりやすさ」との観点は,少年法の適用年齢を変更する根拠としては極めて薄弱であり,不十分であるといわざるを得ない。
そして,上記提言も認めるとおり,罪を犯した者の社会復帰や再犯防止という点で,現行少年法の保護処分が果たしている機能には大きなものがある以上,少年法の適用対象年齢を引き下げる必要はない。

3 法務省は,上記提言を受け,「若年者に対する刑事法制の在り方全般に関する意見募集」を行っているが,当会としては,以上の理由から,少年法の「成人」年齢の引下げについて,改めて強く反対する意見を表明するものである。
また,若年者に対する刑事法制の在り方については,本来,少年法の「成人」年齢引下げ問題とは別の,20歳以上の若年成人に関する検討課題である。従って,若年者に対する刑事法制の在り方について検討する場合であっても,それと少年法の「成人」年齢の引下げの是非とを関連付けて議論すべきではなく,両者は切り離して議論されるべきである。
                                   以 上


                    2015年(平成27年)12月17日
                    福岡県弁護士会  
                    会 長  斉  藤  芳  朗 

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2015年12月18日

死刑執行に関する会長声明

声明

1 本日、2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。2015年(平成27年)6月に続くわずか半年の間の執行であることに加え、そのうちの1名は裁判員裁判による死刑確定者として初めて執行されたものであり、社会に与える影響も小さくない。
 現法務大臣のもとでは初めての執行ではあるものの、現政権の死刑に対する姿勢も踏まえれば、さらなる執行がなされることへの懸念はより一層高まっている。
2 死刑をとりまく問題状況について、従前から当会が指摘している点に何ら変わりはない。すなわち、死刑事件について、4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件)、えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。また、2014年(平成26年)3月には、死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始と死刑および拘置の執行停止も決定され、現在もなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされたばかりである。
  なにより、死刑は、かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、罪を犯した人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという問題点を含んでいる。のみならず、死刑判決が誤判であった場合にこれが執行されてしまうと取り返しがつかない。かかる刑罰は、いかなる執行方法によったとしても、残虐性を否定することができない。
 それゆえ、死刑の廃止は国際的にも大きな潮流となっている。
このような問題を看過して次々と死刑を執行する姿勢には大きな疑義を挟まざるを得ない。
3 日本弁護士連合会も、上記のような死刑の問題状況を踏まえ、2014年(平成26年)11月に、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、有識者会議の設置や死刑に関連する情報の公開などを具体的に求め、全国民的議論が尽くされるまでの間、全ての死刑の執行を停止することに加え、死刑えん罪事件を未然に防ぐため、全面的証拠開示制度の整備や再鑑定を受ける権利の確立などを要請した。 
4 当会は、政府に対して、今回の死刑執行について強く抗議の意志を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。


                   2015年(平成27年)12月18日
                   福岡県弁護士会会長  斉 藤 芳 朗

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