福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年11月26日

衆議院選挙無効訴訟に関する最高裁判決についての会長声明

声明

2013年(平成25年)11月20日、最高裁判所は、昨年12月16日に施行された衆議院議員総選挙についての選挙無効訴訟において、「本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」としながら、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえ」ないとして、「本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない」とする判決を言い渡した。 この最高裁判決の原審は、全国14の高等裁判所と支部に提訴されていた16件の訴訟である。16件のうち14件の高裁判決が違憲とし、うち2件は選挙無効をも言い渡した。本年3月18日の福岡高裁判決は、議員定数のいわゆる「0増5減」について、「十分なものといえないことは明らかである」としていた。 これに先立ち、最高裁判所は、2011年(平成23年)3月23日、2009年(平成21年)の衆議院総選挙について、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた」、「投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある」と判決していた。   この2011年(平成23年)の判決から2012年(平成24年)の衆議院総選挙までには1年9か月が経過しており、国会が是正措置を講ずるための時間は十分にあった。ところが、国会は、議員定数を「0増5減」し、その適用は次回の総選挙からとすることを定めたにとどまった。人口比例部分とは別に各都道府県に議員定数1を配分する1人別枠方式については、根拠規定こそ廃止されたものの、同方式を前提とする定数配分は抜本的に見直されることもなく、 2012年(平成24年)の総選挙時はもとより、現在もまだ維持されている。 そのため、2012年(平成24年)総選挙は2009年(平成21年)の総選挙と同様の選挙区割りで施行され、投票価値の最大格差が拡大し、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」がより深刻化していた。 このような国会の怠慢ともいうべき事実経過を踏まえれば、最高裁判所は今回の判決において、2011年(平成23年)3月23日の判決よりも踏み込んだ違憲判断を示すべきであったにもかかわらず、立法裁量を過度に尊重した不十分な判断にとどまった。 そもそも、議員1人あたりの選挙人の人数が均等であるべきという投票価値の平等は、法の下の平等(憲法14条1項)、選挙人資格の平等(憲法44条)を定める憲法の要請である。このような投票価値の平等が侵害されたときには、「国権の最高機関」(憲法41条)である国会は国民の意思を的確に反映することができず、議会制民主主義ひいては国民主権がゆがめられてしまう。   これを正すことは、唯一、違憲立法審査権(憲法81条)を有する裁判所にしかなし得ない。今回の最高裁判決は、このような裁判所の職責を果たしたものとは認められない。   今回の最高裁判決によって、投票価値の平等を実現すべき国会の取組の停滞が許されるはずもない。 当会は、裁判所に対して積極的に憲法保障の機関としての職責を果たすことを求めるとともに、国会に対し速やかに衆議院議員総選挙における投票価値の平等を実現するための抜本的措置をとることを改めて強く求める。

2013年(平成25年)11月26日
福岡県弁護士会
     会長  橋 本 千 尋

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