福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年7月18日

福岡拘置所小倉拘置支所現地建て替え等を求める要望書

要望書

                                平成25年7月18日


内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長 西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 馬場 恒嘉 殿


                          福岡県弁護士会
                          会 長 橋 本 千 尋
                          福岡県弁護士会北九州部会
                          部会長 荒 牧 啓 一


    福岡拘置所小倉拘置支所現地建て替え等を求める要望書


第1 要望の趣旨
1 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建て替えすべく,そのための事業費を来年度予算として計上すること
2 新小倉拘置支所を建築するにあたっては,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した建物にすること
3 新小倉拘置支所の設計にあたっては,当会と協議の場を設置すること
を強く要望する。


第2 要望の理由 
 1 要望の趣旨1について
 (1)平成21年6月,法務省は小倉刑務所跡地に小倉拘置支所を移転させる計画を断念し,それにより北九州矯正センター構想(以下,「本構想」という。)を撤回した。当会は,長年に亘り,小倉拘置支所の現地建て替えを強く要望してきたところ,ようやく,平成24年度予算で調査費が計上され,同年度補正予算で設計費が計上される等の一定の進展が見られたが,建て替えに必要な事業費は未だ予算化されていない。
 かかる状況を踏まえて,当会としては,以下に述べるとおり,小倉拘置支所を早急に建替える必要が存することに照らし,建て替えに必要な事業費を来年度予算として計上することを強く要望するものである。
 (2)小倉拘置支所は昭和35年に築造された建物で,既に築後50年以上経過しており,建物の老朽化が著しく,建物の各所で塀の倒壊や外壁の落下の危険が生じ,被収容者や,被収容者に面会に来る市民及び小倉拘置支所職員の生命・身体に危険な状態となっている。
 (3)また,小倉拘置支所は,昭和25年公布の旧耐震基準に基づいて建築された建築物であり,現在の耐震基準を満たしていない上,建物の駆体部分の老朽化も著しいため,地震等の自然災害により甚大な被害が生じる危険性が高いことから,早急に建物を建て替える必要がある。
 (4)さらに,被収容者の生活環境も劣悪な状況におかれている。具体的には,給水設備については,蛇口からは赤水が出る,トイレの水の流れが弱いために排泄物がなかなか流れない等,設備使用上の不具合が生じている。また,収容部屋についても,雨漏りが発生する部屋が多数存在する上,室内でダニが発生する,布団から虫が出る,カビが発生する等,衛生面における問題も極めて深刻である。
 平成25年5月24日に当会北九州部会の会員が小倉拘置支所を見学した際に内部の状況を確認したが,被収容者の劣悪な生活状況については一向に改善が見られなかった。
 このように,小倉拘置支所の建物の著しい老朽化の影響により,被収容者の生活環境は著しく劣悪な状況に置かれている。
 (5)以上より,当会としては,小倉拘置支所を早急に建て替える必要性が高いことから,小倉拘置支所を早急に現地で建て替えることを要望し,そのための事業費を来年度予算として計上することを強く要望する次第である。
 
2 要望の趣旨2について
 (1)未決拘禁者は,無罪推定の原則の適用を受け,刑事手続のために身体拘束される他は,一般市民と同様の立場にあることから,未決拘禁者には,拘置所内の生活においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。
 (2)しかし,上記のとおり,小倉拘置支所における未決拘禁者は,著しく劣悪な生活環境におかれていることから,小倉拘置支所の現状では,無罪推定を受ける未決拘禁者の基本的人権に十分な配慮がされているとは言えない。
 (3)そこで,小倉拘置支所の現地建替を行う際には,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築することを強く要望する。

3 要望の趣旨3について
 (1)拘置所側は,未決拘禁者の基本的人権を制約する立場にある以上,拘置所側の意見だけに基づいて新小倉拘置支所の設計を行っても,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築することは困難である。
 (2)これに対し,当会は,平成22年度の夏と冬にかけて,小倉拘置支所の未決拘禁者に対するアンケート調査を行い,未決拘禁者が著しく劣悪な生活環境下に置かれていることを明らかにしてきた。
 また,当会は,平成23年に,未決拘禁者の基本的人権への配慮という点で高い評価を受けている大韓民国のソウル拘置所を視察した実績もある。
 (3)そのため,小倉拘置支所の建替に際しては,未決拘禁者の人権の問題に恒常的に取り組んできた当会の関与を認める必要性は高い。
 平成24年7月に当会は小倉拘置支所に対して,建て替えについての当会との協議会の設置を要望したが,未だ実現に至っていない。
 そこで,当会は,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築するために,小倉拘置支所の建て替えに際しては,当会と協議の場を早急に設置することを再度要望する次第である。

                                       以上

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