福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年3月18日

会長日記

会長日記

平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)

厳しい冬の合間に、時として天の恵みの如く快晴の日に降り注ぐ明るい日差しは何とも心を癒やしてくれます。皆様、新年を迎えられ心機一転今年に懸ける想いを強くされていることかと推察します。
本年度執行部も年が明けたことから次年度執行部へいかなる事項を引き継ぐのか、少し心が躍ると共に、本年度中にやり遂げなければならないことも多々あり、心を引き締めているところです。
さて、今回は司法修習生に対する給費制復活の動きについて一言させていただきます。ご存じのとおり、司法改革に伴う法曹養成制度の変革と併せ、プロセスとしての法科大学院構想が実現され、また、司法修習制度も大きな変貌を遂げております。司法修習の中身の充実はいかなる制度を構築するとしても強く要請されるところですが、修習期間中の給費が廃止となることも同時に決定されました。当時も修習生の修習生活に多大な影響を与えるところが予想されたことから強い反対論があったのですが、結局は一年実施が延期されたものの、平成23年度修習生、すなわち新65期修習生から貸与制が実施されることとなりました。しかしご存じのとおり、給費制から貸与制への変貌は法曹養成制度に看過すべからざる影響を与えております。この問題点を指摘する論点について今ここに繰り返すことは致しませんが、その中で従来あまり取り上げられていなかったボディブローのような極めて深刻な影響が生じておりますので、この点につき触れると共に、会員の皆様に今一度給費制の意義につきご理解頂き、できるかぎり復活に向けた運動にご支持を頂戴したいと考えております。
それは、法曹志願者の激減という国の統治制度を規律する三権分立の一翼を担う司法制度の人的裾野の後退というゆゆしき事態です。その理由として考えられるところは、昨今の司法試験合格者の急増に伴う弁護士の就職難、また、新規登録後の弁護士の経済的不安定さを背景に法曹に夢を持てない現状にありましょう。このような現状があるにも関わらず、法科大学院、司法修習期間中の費用の負担をしてまでも法曹を志願する理由が見いだしにくいと言う点も見逃すことはできません。法科大学院への入学者は平成16年の約6000人から昨年4月の入学者は約3000人へと減じております。本年はさらに減少するのではないかと案じられているところです。さらには、法学部自体への入学希望者も大きく減少していると指摘されております。原則として司法試験受験資格は法科大学院卒業者に与えられますが、年間100万円程度の学費は勿論のこと、勉学期間中の生活費の負担も大きいものがあります。その上、司法試験合格後法曹となるためには1年間の司法修習を終了する必要があり修習期間中の生活費の自弁は誠に過酷なものがあります。これら法科大学院勉学期間およびその後の司法修習期間中の生活費を合計すると数100万円から中には1000万円の借財を抱える法曹も出現しています。修習終了直後の段階で大きな借財を抱える法曹の存在は、これから司法制度の一翼を担う者として実に異常な事態です。これらの異常な実態の存在が広くマスコミに取り上げられる結果、法曹志願者が激減しているのです。せめて司法試験合格後の司法修習段階では生活費の憂いを持つことなく、法曹としての使命を十二分に自覚して勉学にいそしんで貰いたいと願うのは私だけではないと確信しております。修習後弁護士として高い報酬を得るような者に国の税金を投入することは国民の理解を得られないというのが、貸与制論者の反論のひとつですが、法曹の職務に関する一面的な見方という他なく司法制度自体に対する理解が十分であるとは思えません。
現在法曹養成制度検討会議、通称新フォーラムが昨年8月から始動し、今年3月には提言がまとめられる段取りになっております。給費制につきましては今月下旬に開催される第8回会合で議論されることとなっておりますが、ここで給費制復活に関する前向きな指摘がなされることなく先送りされ、貸与制を若干いじったような弥縫策が出されるだけとなった場合には前記しました、法曹志願者の激減、司法制度の脆弱化といった国民にとっても取り返しのつかない汚点を残すことになるのではないかと深く案じるところです。当会では、平成22年以来この給費制復活に向けた活動が力強く続けられておりますが、未だその実現には厳しいところがあります。当執行部としても、最大限力を注ぎたいと考えているところです。会員の皆様のご協力をお願いいたします。

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