福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2012年8月 7日

「マイナンバー法案」に反対する声明

声明

           「マイナンバー法案」に反対する声明

 今国会において、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(略称「マイナンバー法」)案が提出され、審議がされている。
 この法案は、全ての国民と外国人住民に対して、社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号を付けて、これらの分野の個人データ(納税情報、健康保険情報、年金情報等)を、情報ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(社会保障・税共通番号制度)を創設しようとするものである。
 共通番号が用いられる行政分野(年金、労働保険、健康保険、生活保護、介護保険、税務等)の情報は、私生活全般に及び、その中には、障害、病気、貧困、無資力などの極めてセンシティブな情報も含まれている。
 共通番号制度により、これらの情報が名寄せ・統合されると、収集・蓄積された個人の情報が次々と番号で特定され、連結されていくことで、その人物の行動全般を把握し、分析することが可能となり、プライバシー権を侵害するもので、国家による国民監視の道具として利用されるおそれがある。
 本法案では、共通番号の利用範囲については、「政令で定める公益上の必要があるとき」(17条11号)として、行政の判断で共通番号の利用範囲を無限定に拡大することができることとなっており、また、行政機関内での利用にとどまらず、金融機関などの民間分野で共通番号が広範に利用されることが予定されているため、不正アクセスや、本人になりすました犯罪が多発するおそれがある。
 国会議員会館や財務省、国内有数の企業がサイバー攻撃をうけている現在、情報漏洩のリスクは高まっているが、サイバー攻撃から完全に防御できるシステムはないため、個人の収入・資産情報が漏洩し、取り返しのつかない事態になるおそれもある。
 これらの点について、本法案は、「個人番号情報保護委員会」(31条)を設置し、同委員会に、共通番号等の適正な取扱いの確保、必要な指導、助言等を行わせることとしているが、同委員会は、委員長ほかわずか6名の組織であり、しかも委員の内3名は、非常勤であるなど(35条1項、2項)同委員会がどの程度機能するか、又、日本全国の関係機関の監視ができるのかどうかについても疑問があるし、前述のとおり情報漏洩のおそれを完全に除去することはできない。
 従って、「マイナンバー法案」の制定には強く反対する。


                   2012年(平成24年) 8月 7日
                   福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー