福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2012年7月 9日

生活保護法の適用場面における弁護士による代理活動に対する制限的運用の中止を求める意見書

意見

生活保護法の適用場面における
弁護士による代理活動に対する制限的運用の中止を求める意見書


                          2012(平成24)年7月9日          
                                福岡県弁護士会


意見の趣旨

 生活保護法の適用場面に関して厚生労働省が推奨する運用は、審査請求などごく限られた場合を除き弁護士の代理活動を認めないというものであるが、生活保護は人命に直結する重要な権利であること、現場の運用において現に生じている多くの問題に対し弁護士の援助が必要であること、厚生労働省の推奨する運用には何ら合理的な根拠がないことからすれば、生活保護法の適用場面において弁護士による代理活動を排除する理由はまったくない。
したがって、当弁護士会は、厚生労働省及び地方自治体に対し、生活保護法の適用場面における、弁護士による代理活動を制限する現在の運用を直ちに中止するよう求めるものである。


意見の理由
1 はじめに
 厚生労働省は、『生活保護手帳 別冊問答集』問9-2〔代理人による保護の申請〕において「代理人による保護申請はなじまないと解される」という見解を示している。そして、実際の運用においては、申請の場面に限らず、審査請求及び訴訟の場面を除いた生活保護法のあらゆる適用場面において弁護士による代理活動が認められないことが多い。
しかしながら、以下に述べるとおり、生活保護法の適用場面における弁護士による代理活動を制限する運用は、合理的な根拠もなしに、市民の正当な権利行使を阻害する結果をもたらすものであって、到底容認できないものである。
2 生活保護受給権の重要性
 生活保護法の適用場面で問題となっているのは市民の生きる権利そのものである。生活保護は、市民の命を守る最後のセーフティネットとして、さまざまな場面で活用されなければならない。
生活保護受給権が市民の命に直結する重要な権利であることにかんがみれば、市民による権利行使が不当に阻害・制約されることがあってはならないことはいうまでもない。
3 弁護士による代理活動が必要であること
(1)現在の生活保護制度の運用実態は、保護を尽くすという姿にはほど遠いものである。むしろ、運用、市民の保護受給権が不当に侵害されているというべき状況が多々発生している。
(2)申請の場面(違法な水際作戦)への対応が必要であること
ア これまで、生活困窮者本人が福祉事務所へ生活保護の申請に行った場合、窓口の担当者が、申請に来た者に対し、「親族の扶養を受けなさい」、「家賃が高すぎるから生活保護は受けられない」、「自動車を保有しているから生活保護は受けられない」などと告げて、申請を受け付けないまま相談扱いにして追い返すという例が後を絶たなかった。福祉事務所が相談扱いとして申請を受け付けなかった事案には、本来であれば、直ちに保護を開始すべき事案も少なくなかった。
このような違法な、いわゆる「水際作戦」は、現在でも少なからず見受けられるものであり、当弁護士会にも、違法な水際作戦にあった生活困窮者から、多くの援助要請が寄せられている。
イ 当弁護士会では、代理人として生活保護申請に同行・同席する取り組みを強化しているところであり、この取り組みは現実に、違法な申請拒否を撤回させるという大きな成果を挙げている。
例えば、過去に年金担保融資を受けたことのある保護受給者が、特別な事情のため保護を辞退した上で再度の年金担保融資を受けた場合において、本人による生活保護の再開申請が拒否された後に、弁護士が福祉事務所に対し本人の現在の窮状を訴えて保護の必要性を詳細に説明するという支援を実施した結果、保護が再開されることになったという事例がある。また、自動車を保有又は利用しているということで申請を受け付けてもらえなかった相談者について、弁護士が福祉事務所に同行し、自動車の保有のみでは申請拒否の理由にならないことを福祉事務所に説明した上で改めて保護を申請したことで保護が開始された事例がある。
ウ また、すでに保護を受給している被保護者が保護の種類や金額の変更を求める変更申請の場面においても、弁護士の支援が必要である。
  例えば、当会の会員による支援の結果、本来支給されるべきであったにもかかわらず福祉事務所が拒否していた障害者世帯に対する家族介護料の支給が認められるようになった事例や、転居の必要性が認められるにもかかわらず福祉事務所が支給を拒否していた転居費用などの支給が認められるようになった事例が報告されている。
(3)申請以外の場面についても違法ないし不適切な言動への対応が必要であること
法律の専門家である弁護士による代理人としての活動が求められるのは、生活保護の申請の場面に限るものではない。当弁護士会所属の弁護士が担当した以下の事例は、いずれも、弁護士の関与がなければ、福祉事務所の一方的な主張に基づく保護の停廃止に対し、市民が泣き寝入りを強いられる可能性があった事案である。
ア 事例1-弁明手続への同席
生活保護受給中の障がいのある高齢夫婦が、処分価値のない自動車の廃棄処分を命じられたことに対し不服を申し立てた事案において、北九州市内の福祉事務所は、同夫婦から相談・依頼を受けた弁護士の存在を完全に無視し、かつ、代理人に話をしてほしいという同夫婦本人の意思をも無視した上で、同夫婦に対し直接「弁護士が保護を受けているのではない。あくまでも福祉事務所とあなたの問題である」、「保護開始前には福祉事務所の指導に従うと言いながら、保護が始まったら車は処分しないと言い、弁護士と話をしてくれなど筋違いも甚だしい」などと難詰して、自動車の処分指示を継続した。その後、処分指示にしたがわないことを理由とする保護停止処分に向けての弁明手続が開かれた際に、同夫婦および代理人弁護士が弁明手続への代理人弁護士の同席を求めたことに対し、福祉事務所は「生活保護には代理人は予定されていない」、「生活保護法は代理人を排除している」、「本人には補佐の必要性など認められない」などと強弁して弁護士の同席を拒否したまま保護停止処分を強行した。当該処分は、その後の処分取消訴訟において、裁判所によって取り消された。
イ 事例2-弁明手続への同席
既に、指導指示違反を理由に保護停止となっている世帯に対し、同じ違反を理由とする保護廃止処分に向けての弁明手続が開かれた事案において、北九州市内の福祉事務所は、生活保護法第62条5項を根拠に弁護士による代理を認めないとして代理人弁護士の同席を拒否した。
その後、福祉事務所、本人及び弁護士による話し合いの結果、弁護士の同席は認められることになったものの、福祉事務所と当事者の間における信頼関係は皆無の状態になっていた。この事案においては、以下のとおり、弁護士が介入して法的問題点を整理し、行政をして冷静かつ適正な弁明手続を実施させたという点でも成果があった。
福祉事務所は、別居中の本人の子が同一世帯員に当たるのではないかと疑い、本人に対する指示として、子が居住している住宅の賃貸人など当事者からすると極めて関係の薄い第三者に対する福祉事務所による事情聴取を許容するよう、本人に対し求めた。しかし、別居中の子は親の生活保護受給とは無関係であるため、本人は当該調査に反発した。そこで、同席した弁護士が、関係が極めて薄く、かつ当事者や生活保護受給要件とは無関係の子が難色を示している第三者への事情聴取をしなくても、それに代わる書面資料の提示で福祉事務所の疑問を解消することは可能であると指摘した。その後、事情聴取に代わる資料が提出されたことにより、指導指示に従ったことが確認され、保護停止が解除された。弁護士が同席することにより、福祉事務所の誤った、あるいは必要のない手続が回避された上、結果的にも保護停止を解除することができた(第1の成果)。
仮に、弁護士が弁明手続に同席しない状態で、福祉事務所の不当な要求に対し当事者がこれを拒否する意思表示をしたならば、福祉事務所はそもそも弁明手続の実体に入らなかったであろう。そしてその結果、当事者は指導指示に従った資料提出もできず、保護が廃止されることになりかねなかった。しかし、弁護士が弁明手続に同席したことで、保護廃止処分をも回避することができたのである(第2の成果)。
ウ 事例3-ケース記録の開示
重篤な病気で入院中の当事者本人に代わって、代理人弁護士が代理人名で、福岡市に対し生活保護のケース記録の開示請求をした事案において、福岡市は、代理人弁護士名での開示請求書を受け付けたにも関わらず、開示の段階において、開示は弁護士宛に実施してほしいと申し出ていた請求者本人の意思を無視し、「弁護士には開示できない。病院で本人に開示する」と主張して、病院での開示手続きを実施しようとした。もっとも、当事者本人が短時間の面会しか耐えられないほど一見して悪い容体であったため、実際には、途中から弁護士のみが開示の説明を受け、かつ、文書を受領した。
(4) 上記の例からもわかるとおり、弁護士による代理援助が必要な場面は、いわゆる「水際作戦」と呼ばれる生活保護申請時の不当な追い返しの場面に限られない。申請者に関する状況説明、保護開始決定に至るまでの交渉、保護受給中の指導・指示への対処、生活保護法第63条による費用返還請求への対応、同法第77条・第78条による費用徴収への対応、保護の停廃止への対処など、生活保護法の適用に関して弁護士による代理援助が必要な場面は枚挙にいとまがない。とりわけ不利益処分に関して実施される弁明の機会における弁護士による援助は、不利益処分の名宛人となるべき保護受給者の生存権保障の観点からも、非常に重要である。
生活保護法の適用場面においては、行政機関が違法不当な運用を行った場合、保護を申請しようとする者ないし保護受給中の者の生命が直接的に脅かされる状態に陥る危険性がある。かかる危険を除去するためにも、専門的知識に基づく主張の効果を本人に帰属させるべく、法律の専門家たる弁護士による代理活動が求められているといえよう。
人の命に直結する市民の生存権を守る活動をすること、それと同時に、違法不当な行政行為を防止することは、まさに弁護士法第1条に定められた弁護士の使命である。弁護士は、その使命を実現するための代理権限を弁護士法はじめさまざまな法律に基づいて付与されている。生活保護法の適用場面に関する法律事務も、弁護士の使命をまっとうするための代理行為にほかならないのであって、かかる弁護士の代理権限が合理的な根拠なく制限されてよいはずがない。

4 厚生労働省が推奨する「生活保護法の適用場面における弁護士による代理活動を認めない」という運用に合理的な根拠はないこと
しかるに、厚生労働省は、生活保護法の適用場面において、審査請求などごく限られた場合を除き、弁護士による代理活動を認めないという運用を推奨している。しかし、その取扱いは以下のとおり合理的な根拠がなく、生活保護法の適用場面において代理活動を制限する理由はない。
(1)「保護申請が代理になじまない」という厚生労働省の見解に合理的根拠がないことついて
ア 厚生労働省は、2009年版以降、『生活保護手帳 別冊問答集』において、「生活保護の申請が本人の意思に基づくものであることを原則とし、生活保護の申請をするかしないかの判断については代理人が判断すべきものではないとして、代理人による保護申請はなじまないものと解することができる」との見解を示している(同書・問9-2)。 
しかしながら、代理人によって保護の申請が行われるのは、本人が自らの意思に基づいて保護を申請するという決定を下し、代理人に申請についての委任をしている場合である。ゆえに、保護申請についての判断をしているのは本人にほかならない。そうである以上、本人が自ら選任した代理人による申請を否定する理由はまったくない。ましてや、上記の事例から明らかなとおり、生活保護法のあらゆる適用場面において、本人の権利実現のため法律専門家による支援が必要不可欠である。ゆえに、本人が自らの意思で選任した代理人による支援を否定する理由はまったくない。生存権保障の重要性に鑑みれば、保護受給者自身に対してなされなければ意味がないといえる生活指導などごく少数の場面を除き、原則として、生活保護法の適用場面において代理活動が広く認められなければならない。
イ 生活保護法第7条が保護申請権者の範囲を扶養義務者や同居の親族などに拡張しているのは、本人の意思のみでは保護申請を十分に行えない場合に、他の人の支援によって本人の申請行為を現実化させようという趣旨である。同条の趣旨は、本人の申請権の拡張にあるのであるから、同条は、本人の意思に基づく代理人による申請も排除していないことは明らかである。
ウ また、厚生労働省がいうところの「なじまない」という言葉の意味するところは、まったくもって不明確であり、厚生労働省の上記見解は、その法的な意味や根拠がいっさい不明である。
そもそも、生活保護法の適用場面では、これまで述べてきたとおり、代理人が本人の意思に基づき、本人のために行動すべき場面が数多く存在している。それにもかかわらず、厚生労働省が、きわめて不明確な内容の「なじまない」という概念を用いて、本人の意思に基づく本人の権利実現行為を阻害するとすれば、憲法及び法律に従うべき行政機関の行為としては極めて問題であるといわざるを得ない。
エ 審査請求や訴訟における代理活動を除く生活保護法のほぼすべての適用場面について代理活動には「なじまない」とする運用は、代理制度にあえて限定的な解釈を行った結果、市民の権利行使を不合理に阻害することとなっており、社会正義の実現の観点からは到底許されるものではなく、即刻改められなければならない。
(2)生活保護法第62条5項が代理人の選任を否定したものではないこと
ア 生活保護制度の運用の場面では、福祉事務所職員が、生活保護申請援助には代理が認められないと主張する際、その根拠について、「生活保護法第62条3項が『保護の実施機関は、被保護者が前2項の義務に違反したときには、保護の変更、停止又は廃止をすることができる』とし、同条第5項が『第3項の規定による処分については、行政手続法第3章(第12条及び第14条を除く)の規定は適用しない』とし、他方で、行政手続法第3章第16条には『前条第1項の通知を受けた者は、代理人を選任することができる』と規定されている。生活保護法が、行政手続法の『代理人を選任することができる』という条項を適用しないとしている以上、保護の変更、停止又は廃止の処分については、代理人を選任できないと解釈すべきである」と説明することがある。
イ しかし、上記の説明は、生活保護法及び行政手続法の法律構造、及びそれを踏まえた実情からすれば、以下のとおり誤ったものである。
  そもそも、生活保護法は一般的に代理人を排除する規定を置いていない。
  また、生活保護法が行政手続法第3章を適用除外としたのは、すでに生活保護法第62条4項において弁明の機会の付与が規定されており、行政手続法第3章に対応する一定の権利保護規定が既に存在しているからである。
  そして、生活保護法第62条4項の趣旨は、保護の変更や停止、廃止といった処分が、被保護者の生活の糧を奪う結果に直結する可能性のある極めて重要な処分であることから、被保護者からその生活状況等について十分な聞き取りを行ったうえで、実情に即した適切な判断がなされることを確保し、被保護者の生きる権利を保障する点にある。この趣旨にかんがみれば、生活保護法は、処分を行ううえで、被保護者について十分な情報収集及び意見聴取を行うことを予定しているといえる。
  これを現在の実情についてみれば、給付を受ける者として相対的に弱い立場にある被保護者は、行政職員に対し自己の置かれた状況について十分な説明をできないことが多々ある。ところが、これまで述べてきたように、行政機関は、被保護者や申請者からの十分な意見聴取を行っているとはいえないのが実情である。そして、その結果、生活状況等について自分一人で十分な説明ができない方々にとっては、生活保護法の予定する生きる権利の保障など絵に描いた餅でしかない状態が多くの場面で生じているのである。
  したがって、このような状況下において生活保護法第62条4項の趣旨を全うし、被保護者の生きる権利が保障されるためには、代理人による活動が必要不可欠であることはいうまでもない。
  よって、生活保護法62条5項の適用除外規定を代理人の排除の法的根拠と捉える説明はまったくの誤りである。
(3) 現行法上生活保護制度において弁護士の支援を受ける権利が保障されていると解釈すべきこと
重要な点であるため繰り返し述べるが、生活保護法の分野においては、行政機関が違法不当な運用を行った場合、保護を申請しようとする者ないし保護受給中の者の生命が脅かされる状況に陥る危険性がある。そして、上記3に掲げた例からも明らかなとおり、国民が適正に保護を受ける権利は生活保護制度のあらゆる場面で危険にさらされている。そのような危険を除去するため、専門知識に基づく主張の効果を本人に帰属させるべく、法律の専門家たる弁護士による代理活動が求められているといえよう。
この点、憲法第31条が、不利益処分において適正手続を受ける権利を保障している。そして、生活保護制度の運用においては、上記で述べたとおり、行政機関から便益を享受する国民と行政職員との間に知識や力の差があることから、国民が本来受けられるべき便益を適切に享受できず、生存が脅かされる危険性がある。すなわち、国民の生存権が保障されるためには、生活保護法のあらゆる適用場面において、専門家の適切な援助を受ける権利が保障されなければならないといえる。そして、専門家の適切な援助を受ける権利を保障されることが、同分野における適正手続の保障であるといえる(憲法第31、25条)。
人の命に直結する市民の生存権を守る活動をすること、それと同時に、違法不当な行政行為を防止することは、まさに弁護士法第1条に定められた弁護士の使命である。生活保護法の適用場面に関する法律事務も、弁護士の使命を全うするための代理行為にほかならないのであって、かかる弁護士の代理権限が合理的な根拠なく制限されてよいはずがない。
また、生活保護法の適用場面における行為が法律事務に該当する場面には、「審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を職務とする」と規定する弁護士法第3条が妥当する。同条にいう「法律事務」とは、法律に規定する事項に関連する事務全般を意味するものであって、生活保護法に関係するほとんどの事務がこれに該当することは明らかである。

5 生存権を守るための実践からの必要性
これまで、様々な弁護士が、生活困窮者の生命を守るため、生活保護申請、福祉事務所との交渉、不服審査請求、行政訴訟などを行ってきた。しかし、個々の弁護士の取り組みのみでは、潜在的に数多く存在する生活困窮者の生存を保障できないおそれがある。
そこで、日本弁護士連合会および当会は、潜在的に存在する多数の生活困窮者の生存を保障するため、法テラス委託援助事業の実施、生存権緊急対策本部の設置、当会における生活保護当番弁護士制度(生活保護支援システム)の発足など、様々な活動を行っている。特に当会が創設した生活保護支援システムについては、2009年3月の制度発足から2012年1月31日までの間に合計587件の相談が寄せられ、各事件に応じた成果を上げている。最近では、福祉事務所窓口の対応にも変化が見られるところであり、このことは生存権分野における市民の権利実現にとって、弁護士による支援がいかに重要な意味を持つかを端的に表している。
生活困窮者の生命を守るための法的支援が十分に果たされるようにするため、生活保護法の適用場面における弁護士による代理活動に対する制限的運用は直ちに中止されなければならない。

6 まとめ
 以上のように、生活保護法の適用場面における弁護士による代理活動は、市民の生命に直結する重要な権利の実現・擁護にとって必要不可欠のものといえる。その一方、同場面において弁護士による代理活動を拒む正当な理由は何ら存在しない。それにもかかわらず、厚生労働省が弁護士による代理活動を認めない運用を続けることは、弁護士による基本的人権の擁護活動を不当に阻害するものであると同時に、市民の正当な権利行使を不当に制限するものである。
したがって、当弁護士会は、厚生労働省及び生活保護の実施に直接の責任を負っている地方自治体に対し、弁護士の代理活動の趣旨を尊重し、生活保護法の適用場面のすべてにおいて、直ちに、かつ、公式に弁護士による代理活動への制限的運用を中止することを強く求めるものである。

                                      以 上

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2012年7月25日

貸金業法や利息制限法等の改悪の動きに強く反対する会長声明

声明


  貸金業法や利息制限法等の改悪の動きに強く反対する会長声明


 2006年(平成18年)12月に成立した「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成18年法律第115号)が,2010年(平成22年)6月18日に完全施行されてから2年が経過した。同法成立前は,生活の破たんや自殺など,多重債務問題が年々深刻さを増しており,43の都道府県議会と1136の市町村議会が決議を採択したことに見られるように,その解決を求める声が全国に広がっていた。同法は,このような国民の声を受けて,上限金利を引き下げるとともに,返済能力を超える借入れを防ぐ総量規制の仕組みを導入するなど,抜本的かつ総合的な対策を講じたものであった。
 そして,附則66条に基づいて内閣官房に「多重債務者対策本部」が設置され,セーフティネットの拡充強化,多重債務者に対する相談窓口の充実強化など,国全体をあげて,多重債務対策が進められてきた。当会も,法律相談センターでの多重債務相談を無料化し,自治体や関係機関との連携を強化するなど,多重債務問題の解決のために全力を挙げた取組みを続けてきた。
 これに対して,近時,与野党の一部国会議員の中に,「潜在的なヤミ金被害が広がっている。」などとして,法の見直しを目論む動きが見られる。具体的な案としても,総量規制を撤廃し,利息制限法等を改正して年利30%を上限とする変動金利制を導入することまでが提案されているような状況である。
 しかしながら,貸金業法等の成立,施行により,多重債務者対策は大きな成果を上げている。例えば,株式会社日本信用情報機構の統計によれば,5社以上の借入れを有する多重債務者が法改正前の約230万人から約45万人に減少している。同様に,個人破産申立件数も約17万人から約10万人に減少している。そして,警察庁の統計によれば,多重債務による自殺者も1973人から998人と半減している。
 さらに,ヤミ金に関しても,警察庁の統計によれば,検挙人員,検挙事件,被害人員,被害額の全てが減少傾向にあり,金融庁が把握する無登録業者に係る苦情件数,日本貸金業協会が把握するヤミ金被害の苦情照会件数,消費者センターへのヤミ金相談件数,弁護士会へのヤミ金相談の件数も軒並み減少している。ヤミ金被害が広がっているという指摘は客観的根拠を欠いていると言わざるを得ない。
 そのほか,一部国会議員は「貸金業法等が零細な中小企業の短期融資の需要を阻害している。」とも指摘するが,現行法は事業資金貸付を総量規制の例外とするなどの手立てを講じている。また,国は,緊急保証やセーフティネット貸付など多角的に中小企業支援策を講じている。零細な中小企業の資金需要に対して,以前のグレーゾーン金利と同様の高金利による貸付けを許していては,多重債務被害の再燃を来たすことが必至である。
 当会は,貸金業法等の成果を無にしかねない,総量規制や金利規制の緩和,撤廃に,強く反対するものである。


                           2012年(平成24年)7月18日
                                 福岡県弁護士会
                              会 長 古 賀 和 孝


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2012年7月30日

会長日記

会長日記

平成24年度福岡県弁護士会 会長 古 賀 和 孝(38期)


 原稿締め切りにまだ間に合うということで、最初に記させていただきます。本年6月7日、当会春田久美子会員の法教育懸賞論文受賞を祝う会が多数の参加者を集めて催されました。この賞は法教育推進協議会、日本司法支援センター、社団法人商事法務研究会の共催で、法教育普及のための方策を研究した論文に対して与えられるものですが、春田会員は2年連続の受賞であり、しかも今回は法教育推進協議会賞という最高ランクの受賞です。ここのところ当会を取り巻く停滞した雰囲気を払拭し、元気づけるお祝い事といって良く、久しぶりに心躍りました。今後なお一層のご活躍を祈念し、また、当会の対外的評価の向上に寄与していただけるものと期待しております。
 さて、樹木の枝一杯に茂っている濃淡それぞれの葉が美しいこの季節、当会緒方研一会員が受傷されたとの第一報が入ったのは5月22日午前のことです。直ぐに、安否を確認するため種々情報収集に努めるものの、なかなか正確な情報に接することができません。当日、ご本人の安否確認ができたことからまずは安堵しましたが、会長声明を発するには事実関係がはっきりしないので当初は会長談話を発表することとし、なお情報収集に努めることとしました。被疑者は事件相手方として自ら代理人を選任した上で和解解決となった事件の相手方であり、刃物を持って殺傷行為に及んでいるとの情報を確認できたことから、5月29日法治国家にあっては紛争の解決のため暴力を持ってする一切の行為に断固反対するとの会長声明を発しました。
 過年度横浜弁護士会で発生した事件相手方による殺人事件はもとより、当会においても過去会員等に対する暴力行為が発生しています。弁護士業務を行う上では、否応なく相手方が存在することがあります。弁護士、弁護士会は断固このような卑劣な暴力に対しては一切屈服することなく戦って行かなければなりません。不穏な動きがあるときには是非とも所管委員会若しくは執行部に一報いただき、万全を期すよう心がけてください。会員各位におかれましても日常の警備にぬかりなきよう、既に配布済のマニュアルを再読していただければと存じます。
 翌5月23日は定期総会が開催され、その後の懇親会では当会の直面する課題、活動方針につきご挨拶させていただきました。福岡高裁長官から、裁判員裁判を例にとり、市民参加、市民目線を意識した司法制度の在り方について、また、九州経済産業局長からは、ダイナミックに変動する社会、経済情勢の中にあって活躍を期待される弁護士、弁護士会の目指すべき方向性のお話をいただきました。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としつつ、時代の流れに無関心であってはならず、過去の成功体験に安住せず、国民、社会から求められるところを誠実に受け止め、前向きに進んでいく必要があると再確認した次第です。5月10日、元会員が詐欺容疑で逮捕されるという前代未聞の事件が発生しましたが、毀損された信用を回復する処方箋も、ここにあると確信しています。

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