福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2012年2月20日

会長日記

会長日記

平成23年度 福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸(27期)

1.日比谷公園点描・心字池のカワセミ
今日も日弁会館まで日比谷公園の中を歩いています。
空は快晴、大勢の通勤者たちと足早に歩いていると、ふと、心字池にカワセミがいるという記事が数日前に写真付きで掲載されていたことを思い出し、しばらく目を凝らしますが、探しきれません。望遠レンズを構えた写真家も一人いました。
木立ちの中を歩くと、テニスコートでは早朝からすべての面が埋まっていて、練習やら試合やらをしています。一見してかなりの高齢者のダブルス試合を見ていると、ワンバウンドではなくてツーバウンドで返球していてゲームを続行しています。「なるほど。これはいい」。
樹々の下はカラスや鳥の糞がたくさん落ちているので、少し避けて歩きます。修習生のころの春に、噴水の横のベンチで眠ってしまったことを憶い出し、あれから40年にもなるかと思って、一気に老けてしまいました。

2.義捐金と絆の感動
昨年の漢字はきずな「絆」。(誰がこんなことを始めたのかしらん、と思います)
遅々として進まない復旧復興支援策を見るにつけ、絆が色あせて見えます。
我が福岡県弁護士会は昨年12月に、東弁の学資金募金に共催の形で当時の震災義捐金の残額422万円余を全額送金していました。口座はゼロになっていました。その後、新1年生は卒業まで学資募金が続かないために募金の継続をお願いしたところ、なんと今年に入り、1月中旬までに85万円余の義捐金が大勢の会員から入金されていました。
これはまさに、絆の感動です。これで高校1年生の学資期間の延長が可能となります。福岡の会員は凄いです。また、私たちのチラシや月報の記事にきちんと目を通していただいていることに感謝いたします。

3.新執行部の立候補
平成24年度の新執行部の方々の立候補が出揃ったようです。
今の会務は相当にハードであって、質・量ともに私が副会長をしていた平成7年とは、今昔の感があります。
日弁連は国の各行政分野の事案ごとに対応委員会が課題を検討する体制づくりをしていると聞いたことがあります。したがって、日弁連の本部と各種委員会は大変に大きな組織となっています。そこから各地の単位会や関連委員会あて意見照会がなされます。ですから、いわゆる人権族、業務族、消費者族等の○○族という専門家がいなければ充分対応できないことが多いのです(ただし逆に専門家は専門家であり過ぎるための弱点を抱える場合もあります)。
したがって、県弁会長、副会長、事務局長はこれら○○族がバランスよく構成されていれば申し分ありません。とはいっても、執行部は全くのボランティアであり、負担が重いので、なかなかなり手がいませんから、ぜいたくも言えません。不得手な分野や知識不足の部分は色々と勉強し、教えをいただきながら協力し合って乗り越えていかざるを得ません。しかし、同時に執行部が慣れ合いで重要なテーマについてあまり議論を尽くさないままに常議員会に議題を上程すると、疑問や意見が百出し、恥を露呈することになります。ですから、執行部会議の中で厳しい意見のやり取りは本来大いに歓迎されるところです。私たちは当初そのように臨んだのですが、毎回の執行部会議は議題が大変多くて充分ディスカッションの時間が取れなかったことが残念でした。次年度の会長、副会長、事務局長ら名前が挙がっている方々はいずれも熱心に会務をこなしてきておられた方たちばかりで、しかも論客揃いです。困難な議題が山積している中で、多くの会員の意見を取りまとめ、当会丸の誤りなき舵取りがなされることが期待されます。昨年、私の不徳の致すところで、副会長や事務局長のなり手がないために、いろいろと苦労したことを思い出しました。執行部の先生方には大変感謝しています。

4.君が代、日の丸訴訟事件の停職・減給処分について−自由な風を−
最高裁判所(第1小法廷・金築誠志裁判長)は平成24年1月16日、国歌の起立斉唱命令に従わず、東京都教育委員会から懲戒処分を受けた公立校の教員らが都に処分取消と損害賠償を求めた事件の上告審判決で、戒告処分は妥当とする一方、過去数回の不起立のみで停職・減給とするのは処分による不利益の大きさを考慮すると重すぎて違法との判断を初めて示し、停職1か月(61歳女性)、減給1か月・10分の1(61歳女性)の処分を取り消しました。
これについて弁護士出身の宮川光治裁判官は「不起立は不作為に過ぎず戒告でも重すぎる」との意見を述べ、行政官出身の桜井龍子裁判官は「都による加重処分の機械的適用は問題」との補足意見を述べたとの報道です。
昨年相次いだ君が代、日の丸訴訟事件においては、起立斉唱命令が「特定の思想を強要するものではない」として最判は合憲判断を示しており、その流れの中で大阪府議会は分限免職規定を含む条例案を準備しているとの報道があるだけに、私としては今後の流れに重大な関心を寄せていました。東京都では管理職が教員の口元に耳を寄せて、君が代斉唱の際にどの程度の声量を出しているのか、あるいは「口パク」だけではないか、などのけん責までしているとの報道を見るにつけ、思想統制の「いつか来た道」に危惧を抱いていました。ですから、やっとスタート台に立つことができたという思いと同時に、今後の司法に幾ばくかの期待を抱くことができて、嬉しく思いました。

5.当面の課題
1)インターネット上の情報流出について−再チェックを要請します。
  東弁の北千住パブリック法律事務所が作った弁護団情報がインターネットを通じて第三者に流出していた件について、日弁連から各会員あて再チェックおよび流出しないよう対策を講じていただきたい旨の要請がなされました。各会員および事務局の方々は点検をお願いします。
2)新年早々、福岡県選出の全国会議員あて、弁政連を通じて、①給費制実現の運動、②少年身柄事件全件国選付添人実現に向けての取り組みとして、平成24年2月4日福岡シンポ、平成24年3月10日北九州シンポへの参加および支援の要請、③東日本大震災等被災者に対する法的支援活動のため、法テラスの資力要件撤廃を求める特別措置法制定の取組みの要請、をお願いしました。そのほか、旧スパイ防止法と実質的に同視されるものとして秘密保全法も国会へ上程される恐れがあり、反対の運動に取り組む必要が出てきます。
  これらについても、皆様のご支援とご理解をお願いします。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー