福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2011年8月 9日

「君が代」斉唱時に起立斉唱を強制しないよう求める会長声明

声明

1 本年7月14日,最高裁判所第一小法廷は,北九州市立学校の教職員らが,卒業式又は入学式における「君が代」斉唱の際に起立して歌うよう命じた校長の職務命令に反したとして課せられた懲戒処分をめぐる訴訟及び東京都における同種の訴訟の判決において,校長の職務命令は憲法19条に違反しないと判示した。
  これらは,本年5月30日以降,最高裁判所の各小法廷が言い渡してきた同種訴訟の判決における判断を踏襲したものである。
  一連の最高裁判決は,自らの歴史観や世界観との関係で,国旗及び国歌に対する敬意表明に応じ難いと考える者に対して起立・斉唱行為を求めることは,その者の思想及び良心の自由に対する「間接的な制約」となる面があるとしつつ,起立・斉唱行為は,「慣例上の儀礼的な所作」であり,かかる行為を命ずる職務命令は,その目的及び内容,制約の態様等に照らすと許容できるとしている。
2 しかしながら,「君が代」斉唱時の起立・斉唱行為は,「君が代」に対する敬意の表明と不可分であるから,単なる「慣例上の儀礼的所作」とは言えない。「君が代」を是とするか否かは,各個人にとって自己の信条や信仰に深くかかわる問題である。卒業式・入学式における「君が代」斉唱指導が教職員の職務上の義務であるとしても,教職員が自己の信条や信仰を理由として単に起立斉唱しないという行為に対して,懲戒処分という重大な制裁をもって臨むことは,憲法上保障された当該教職員の思想良心の自由ないし内面的信仰の自由の核心部分を直接的に侵害するのであり,憲法19条に違反すると言うべきである。
かかる観点から,当会は,今回の最高裁判決の当事者である北九州市立学校の教職員らの一部による人権救済申立てを受けて,2000年6月28日,北九州市教育委員会に対し,懲戒処分を再考し,以後,同様の懲戒処分をもって教職員に対して「君が代」斉唱時の起立を強制するという運用を改めるよう,警告を発している。
また,国旗及び国歌に関する法律が,国会審議の過程で,同法の制定によって国旗国歌を強制し,義務づけるものではないとの政府答弁がなされた上で可決成立したものであったことをも踏まえれば,上記最高裁判決の結論は容認できるものではない。
3 上記最高裁の各判決を通じては,宮川光治裁判官(第一小法廷),田原睦夫裁判官(第三小法廷)が反対意見を述べ,補足意見も7の多数に上った。このことは,最高裁内部の判断が,決して一様ではなかったことを示している。
殊に,宮川光治裁判官の反対意見が,「憲法は少数者の思想及び良心を多数者のそれと等しく尊重し,その思想及び良心の核心に反する行為を強制することは許容していないと考えられる」とし,厳格な違憲審査基準によって判断すべき旨を述べたことは重要である。
反対意見の外にも,多くの補足意見が,「君が代」の起立斉唱の強制について,慎重な配慮を求めている。
4 本年6月3日,「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことにみられるように,今後教育行政が教職員に対し学校行事等での「君が代」斉唱時における起立・斉唱を強制する動きが強まることが懸念されている。
  教育現場においては,「能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自立の精神を養う」(教育基本法2条)ことが肝要であり,そのためには教職員の自主性及び自由はきわめて尊重されなければならないものである。
  当会は,思想及び良心の自由の重要性をふまえ,教育行政に対し,教職員に対する「君が代」斉唱時の起立・斉唱を強制することがないよう,また,起立・斉唱をしない者への懲戒処分等の不利益取扱いを行うことがないよう,ここに改めて強く要請する。


                        2011年(平成23年)8月4日     
     
                         福岡県弁護士会            
                         会長  吉 村 敏 幸   

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2011年8月29日

福岡拘置所小倉拘置支所の現地立替え等を求める要望書

要望書

平成23年8月26日

内閣総理大臣  菅  直人 殿
法 務 大 臣  江田 五月 殿
法務省矯正局長  三浦  守 殿
法務省福岡矯正管区長 十川 学 殿
福岡県弁護士会
会 長  吉  村  敏  幸
福岡県弁護士会北九州部会
部会長  近  藤  正  隆

福岡拘置所小倉拘置支所現地建替え等を求める要望書

第1 要望の趣旨
 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建替えすべく早急に予算措置を講じること,及び,新小倉拘置支所を建築するにあたっては,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した設計にすることを強く要望する。

第2 要望の理由 
 1.当会は、平成7年2月に小倉刑務所跡地に医療刑務所・小倉少年鑑別所(現福岡少年鑑別所小倉支所)・小倉拘置支所の3施設を移転させるという「北九州矯正センター構想」(以下、「本構想」という)が発表されて以来、本構想に一貫して反対し、本構想の撤回および小倉拘置支所の現地建替えを強く求めてきた。
   その結果,平成21年6月に,当会の主張の通り,本構想に基づく小倉拘置支所の小倉刑務所跡地への移転が断念されたことにより,小倉拘置支所の建替えの方法としては,現地での建替えの方法に絞られた。
 2.かかる状況を踏まえて,当会としては,以下に述べる通り,他の拘置所よりも優先して,小倉拘置支所を早急に建替える必要性が存することを強く主張するものである。
 3.すなわち,小倉拘置支所は1960(昭和35年)に築造された建物で,既に築後50年を経過している。この建物は,旧耐震基準のもと建築されている上,これまで補修・改修工事もほとんど行われておらず,外壁の落下に備えて建物のほぼ全体にネットが張られていることなど,建物外部の老朽化が相当に進んでいることは明らかである。
4.また,小倉拘置支所の建物内部においても老朽化は顕著である。
昨年度の夏・冬に,当会で小倉拘置支所の被収容者に対するアンケート調査を行った(別添の資料ご参照)。同アンケート調査結果によれば,被収容者のうち65%が収容部屋の壁・床・天井に,ひびや,コンクリートが欠けたりはがれたりしている箇所がある,という回答をしている。収容部屋以外の箇所でも,全体の50%近くの被収容者がひび・コンクリートが欠けたりはがれたりしている部分があると回答している。
実際,小倉拘置支所の見学を行った際には,雨漏りのため天井が腐ってしまった部分が多く見られ,使用不能となっている部屋も存在した。
また,蛇口から赤水が出るなどの給水設備の老朽化,収容部屋でダニが出たり,トイレの水の流れが弱いため排泄物がなかなか流れないなどの衛生面で問題があるとの回答もあった。さらに,収容部屋の廊下側にトイレがあり,職員や他の被収容者に見られているというプライバシー権の侵害を訴える回答もあった。そして,夏の暑さや冬の寒さの厳しさを訴える回答も多数あり,冷暖房施設がないことにより被収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることが判明した。
このように,現在の小倉拘置支所の建物は外部・内部とも老朽化が顕著であり,未決収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることから,建替の必要性は極めて高い状況にある。
5.御承知のとおり,本年3月11日に東日本大震災が起こり,東北地方は未曾有の被害を受けた。小倉拘置支所の建物は,東日本大震災ほどの巨大地震でなくとも,地震による倒壊の危険を常に孕んでいる。被収容者,拘置支所職員及び面会に来た一般市民の生命・身体の安全を守るために,早急に建替えを行うべきである。
6.そこで,当会としては,改めて,小倉拘置支所を早急に現地で建て替えることを要望し,そのために必要な予算措置を早期に講じるよう強く要望する。
7.また,拘置所に収容された未決収容者には,「無罪推定の原則」があり,その基本的人権は最大限尊重されるべきである。
  しかし,実際は一般人との面会,通信手段が相当制限されており,テレビの視聴もできないなど,未決収容者の収容状況は,既決収容者と比較しても劣後した扱いとも言えるもので,現在の拘置所では,無罪推定を受ける未決収容者の基本的人権に十分な配慮がなされていない。
8.そこで,小倉拘置支所の現地建替えを行う際には,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築することを強く要望するものである。

第3 添付資料  ・小倉拘置支所の現地建替えに関する被疑者・被告人アンケート分析論  文(夏・冬)
                              

以上

小倉拘置所の現地立替に関する被疑者・被告人アンケート.pdf

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