福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2010年3月31日

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

声明

 当会は国に対し、できる限り速やかに、国選付添人制度の対象を拡大し、観護措置決定を受けたすべての少年に弁護士付添人を選任できるよう法改正を求めるものです。


                    記

1 弁護士は、少年審判手続において付添人という立場で、少年に対し必要な法的援助を行い裁判所の事実認定や処分決定が適正に行われるよう活動しています。
  それによって冤罪から少年を守るとともに、非行に至った少年に付き添い、少年に反省を促し、保護者や学校、職場との環境調整、被害弁償などの活動を通し、少年の更生に多くの成果をあげてきました。
2 しかし、実際に弁護士付添人が選任される例は少なく、弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容され審判を受ける少年の約40%、審判を受ける少年全体では約8.5%に過ぎませんでした(2008年度)。成人の刑事裁判では、約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比べると、未成熟な少年に対する法的援助は極めて不十分な状況にありました。このような状況が生じている大きな原因には、少年審判における国選付添人制度の範囲が殺人や強盗などの重大事件に限定されていることがあります。
3 さらに、平成21年5月21日からは、被疑者段階の国選弁護制度の対象が窃盗や傷害などの事件にまで拡大されましたが、これにより、少年の場合には、捜査の段階では国選弁護人が選任されたにもかかわらず、家庭裁判所の審判になると国選付添人が選任されないという事態が生じうる状況となっており、制度上の矛盾は一層明らかです。
4 福岡県弁護士会は、2001年2月、全国に先駆け「全件付添人制度」を発足させました。この制度は、観護措置を受け、付添人の選任を希望する少年については、すべて弁護士会の責任において、弁護士付添人を選任するという制度です。そして、この制度は全国に広がり、多くの少年に、その更生を手助けする弁護士付添人が選任される方向へ発展してきました。
5 不幸にして非行に至った少年たちも、わが国の未来を担う少年たちです。こうした少年を社会から排除するのではなく、自力で社会生活を送ることのできるように成長を手助けする役割は、本来、国の責務です。そのためには、観護措置決定を受け身柄を拘束された、すべての少年たちに国が弁護士付添人を選任する制度が必要です。
  よって、上記のとおり速やかな法改正を求めるものです。

                     2010(平成22)年3月25日

                        福岡県弁護士会
                        会長 池 永 満

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