福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2010年3月10日

ストリートビューに関する要請書

声明

要請書

福岡市長  殿
                    2010年(平成22年)3月10日
                      福岡県弁護士会 
                     会 長  池永 満

要請の趣旨
1 福岡市個人情報保護条例を改正し、市民の肖像などの情報が大量にインタ ーネット上に流出しない措置を講じて下さい。
2 それまでの間、個人情報保護審議会において、グーグル社のストリートビ  ューサービス等の多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検 索に関する調査を実施するとともに、事業者に対し、不適切な市民のプライ バシーの収集・利用を行わないよう指導、是正勧告等の必要な措置(福岡市 個人情報保護条例52条)をとって下さい。

要請の理由
 当会は、2008年12月、Google(グーグル)社の「Street View(ストリートビュー)」機能サービスに対し、プライバシー権保護の観点から、問題点の抜本的解決を早急に図るよう求め、それができない場合には、このような画像の収集及びサービスの提供を中止するよう強く求める会長声明を発しました。
 それは、東京、大阪など12都市について、グーグル社のホームページ上で、事前の同意なしに広範に撮影された何万という市民の肖像が、地図情報と連動する形で突然公開されたためです。
当会は、グーグル社の行為に対し、撮影の場面において、①都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、②高い位置からの撮影のため、撮影対象が家屋内にも及んでいること、③事前に公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、などの問題点を指摘しました。
しかしながら、グーグル社は、これらの問題点に対処することなく、2009年12月、福岡市全域を含む福岡県の市民のプライバシー情報を公開しました。
すでに全国約40の地方議会において、これらの行為に対する対処を求める意見書が採択されています。
日本弁護士連合会も、本年2月3日に、第三者機関を設置する条例の改正や、個人情報保護審議会によるそれまでの対処を自治体に求める意見書を関係機関に送付しました。
福岡市においても、市民のプライバシー権を保護する観点から、市民情報が密かに撮影され、住宅地など、公開する必要性の乏しい地域を世界中にさらす行為を繰り返されないよう、所要の条例の改正をなされるとともに、それまでの間、個人情報保護審議会において直ちに調査に着手し、プライバシー権保護のために必要な措置を講じられるよう求めます。

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2010年3月12日

会長日記

会長日記

福岡県弁護士会 会長日記
平成21年度 福岡県弁護士会会長  会 長 池 永   満(29期)

その10  <「新しき華」のかおりを窺いつつ、自らに号令かけて> 12月14日~1月14日 熱烈歓迎 ‘大連市律師協会代表団’ ご案内のとおり大連市律師協会代表団(張耀東会長ほか18名)が2月26日来福し、翌27日、当会との姉妹提携協定の調印式と歓迎レセプションがホテル・ニューオータニ(福岡市)で開催されます。 当会においては昨年12月14日に代表団歓迎実行委員会(実行委員長・清原雅彦会員、委員長代行・伊達健太郎国際委員会委員長、事務局長・冨山敦県弁総務事務局長)が活動を開始し、第1日目に代表団が訪問する北九州部会では独自の歓迎体制(中野昌治実行委員長)も整えており、会を挙げて歓迎したいと思います。 長い交流の歴史がある日本と中国、その中でも文化的・経済的・地政学的にも極めてゆかりの深い福岡県と大連市において活動する両弁護士会が、従前の断続的交流により培われた信頼関係を基礎とし、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という法律家としての共通目標を掲げた交流協定を調印して継続的・安定的交流へとステップを進めることは、社会的にも国際的にも意義深いものがあります。 歓迎行事への多数の参加を始め、今後における両会の交流の発展のために会員各位のお力添えを宜しくお願いいたします。     始まった新旧交代の時期 年末も押し迫った12月28日定年まで若干の期間を残して依願退官された仲家暢彦・前福岡地裁所長が弁護士会館に退官挨拶にこられました。仲家前所長には、裁判員裁判の実施準備や法曹三者による検証協議会の立ち上げのために、毎月開催された四庁会(地裁・家裁・地検・弁護士会)における意見交換のみならず互いに直接行き来する等して、フランクな協議の機会を設定していただき、最終的な合意を形成する上で大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。年が明けた1月7日新任の山口幸雄地裁所長の就任挨拶を受けました。山口所長からは、弁護士会との協力関係は裁判所にとっても一番重要なことであるという認識が表明されましたが、あわせて応接室に陳列している各国弁護士会からの記念品等を前にして、当会における国際交流の状況に関しても強い関心を示されていました。四庁会等でご一緒できる機会は3月までですが、裁判員裁判が本格化する時期でもあり、山口新所長と意見交換の機会が持てることを楽しみにしています。 また福岡高等検察庁においても、有田知徳・前検事長が退官され、三浦正晴・新検事長が着任されました。検事長の退任と就任の挨拶については前田豊九弁連理事長とともにお受けしましたが、有田前検事長からは福岡県弁護士会の活動に対する高い評価が、三浦新検事長からはこれから本格化する裁判員裁判に取り組む検察庁としての抱負等をお話しいただきました。  「市民のための司法改革」のバトンタッチ 当弁護士会においても、新年早々の1月6日、次年度役員の選挙が公示され、会長立候補者の所信が配布されました。その所信は、同時に進行している日弁連会長選挙候補者による政策表明に比べても、地に足の着いた論理と丁寧な語り口で「市民のための司法改革」を推進する立場を堅持してきた当会の基本方針の継承を鮮明に打ち出されておられ、候補者自身の会務に関する慧眼を十二分に窺い知ることのできるものでした。 仮に定数以内の立候補者であれば、立候補受付期間が終わる1月18日には次期執行部予定者の顔ぶれが確定し、次期執行部としての事実上の活動を開始することになります。 そこで、選挙公示日に先立つ1月5日、新年初めての執行部会議において、私たちは、次期執行部予定者が確定次第直ちに次期執行部としての会務方針策定や委員会構成等の検討作業に着手できるように、必要な情報提供の準備を行うとともに引継ぎマニュアルの作成作業を急ぐことを確認しました。 それとともに、現執行部や委員会が作業中の重点課題や常議員会で甲論乙駁の議論が進行している協議題については先送りするのではなく、可能な限りの手だてを尽くして会内合意の形成に努め、3月11日に予定している現執行部としては最後の臨時総会を目途に着地点を見いだし、次期執行部に引き継ぐ「宿題」を極力最小化するために、担当副会長を先頭に執行部が一丸となって努力することを決定しました。 どこまで首尾よく果たせるかは予断を許しませんが、自らにも号令をかけ、新旧ともに晴れやかな気持ちで「政権交代」を行えるようにがんばりますので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (1月14日記) 

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2010年3月29日

平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明

声明


1 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、高校無償化法案という)が衆議院で可決され、平成22年4月から施行される見通しである。
  高校無償化法案は、日本における高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって日本におけるすべての子どもたちの教育の機会均等に寄与することを目的とし(1条)、制度の対象となる「高等学校等」には、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学大臣が指定する」各種学校が含まれると規定する(2条1項)。しかしながら、朝鮮学校については政治的理由あるいは教育課程等の確認ができないなどの理由により、当面、高校無償化の対象とせず、本法2条1項の指定要件を第三者機関に検証させることとなる見込みである。

2 福岡県北九州市にある九州朝鮮中高級学校をはじめ、日本全国に10校ある朝鮮高級学校は2000人近くの生徒が学んでおり、それぞれ都道府県知事から各種学校としての認可を受け、確立されたカリキュラムにより安定した教育を長年にわたって実施している。そして、朝鮮学校の教育課程に関する情報は各種学校の認可を受ける際に必要に応じ提出され、現に日本の多くの大学が朝鮮高級学校の卒業生に対し「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として大学受験資格を認定し、実際に朝鮮高級学校の生徒は日本の国公私立大学に進学している。
  また、課外活動の分野でも、今年度の全国高校ラグビー選手権大会で大阪朝鮮高級学校ラグビー部が大阪府代表として全国3位の成績を上げる活躍だけでなく、全国高校サッカー選手権大会に複数の朝鮮高級学校が代表になるなど、朝鮮高級学校は日本社会から高等学校に準ずるものとして認知され、評価されている。

3 1998年2月及び2008年3月の日本弁護士連合会の勧告書が指摘しているように、憲法26条1項(教育を受ける権利)、同14条1項(平等権)、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約(A規約)などにより、朝鮮学校に通う外国籍の子どもにも学習権(普通教育を受ける権利及びマイノリティ教育を受ける権利)が保障されており、その保障に関しては平等原則に違反してはならない。
  したがって、日本の私立学校や他の外国人学校と区別して、朝鮮学校のみを高校無償化制度の対象から除外することは、朝鮮籍だけでなく韓国籍、中国籍及び日本籍の朝鮮学校に通う子どもたちの学習権を侵害し、合理的理由のない差別であって、平等原則に違反する重大な人権侵害であると言わざるを得ない。
 なお、朝鮮民主主義人民共和国と同様国交のない台湾系の中華学校については、高校無償化制度の対象となることが想定されているのであるから、本国と国交のないことは朝鮮学校を対象外とする合理的理由とはならない。

4 よって、当会は内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、朝鮮学校を高校無償化制度から排除せず、速やかに本法2条1項の指定をするように強く求めるものである。

                            2010年3月25日                      
                           福岡県弁護士会         
                           会長  池 永   満  

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2010年3月30日

国籍を調停委員・司法委員の選任要件としないことを求める声明

声明

福岡県 弁護士会
会 長  池 永  満

当会は、最高裁判所に対し、調停委員・司法委員の選任について、日本国籍を要件とするとの取扱いを速やかに変更することを強く求め、福岡地方裁判所、福岡家庭裁判所及び福岡簡易裁判所に対し、当会が日本国籍を有しない者を調停委員・司法委員として推薦した場合、法律や規則の定める要件を満たす者であれば最高裁判所へ上申することを求める。
かねてより、最高裁は、調停委員につき「公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする」ものと位置づけ、「その就任のためには日本国籍が必要である」との見解を表明してきた。しかし、当会は、この見解には、到底承服することはできない。
本年度においても、東京地方裁判所、大阪家庭裁判所、神戸家庭裁判所及び仙台家庭裁判所より、弁護士会員の調停委員への任命推薦の最高裁判所への上申を拒否されており、東京弁護士会、第二東京弁護士会、大阪弁護士会、兵庫県弁護士会及び仙台弁護士会から抗議の各会長声明が出されている。昨年3月にはそれまでの経緯を踏まえて日本弁護士連合会においても同趣旨の意見が表明されている。
調停委員・司法委員の役割は、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を基に当事者間の合意を斡旋して裁判手続きに至る前に紛争の解決を図るというものであり、職務の性質上当事者の権利を制約することは想定されておらず、その職務が公権力の行使に当たるものとは言い難い。調停調書には確定判決と同一の効力があるとされるが、調停調書はそもそも当事者の合意に基づくものであり、外国籍の仲裁人が当事者の意思に関わらず下した仲裁判断が日本において確定判決と同一の効力を有することと比較しても、外国籍の調停委員の任命を拒絶する理由とはならない。破産管財人や相続財産管理人などの公的側面を有する職務については外国籍の弁護士等の就任が認められていることなどに照らしても外国籍の調停委員を排除する理由とはならない。調停委員会による事件関係者の呼び出しや調停前の措置などに対する違反には過料の制裁の定めがあるが、これらは調停制度の実効性を確保するためのものにすぎないし、過料の制裁は裁判所が決定するものなのである。
また、簡易裁判所や家庭裁判所における紛争が国際化、多様化している現在、外国人を含む多くの市民の健全な良識と感覚を司法に反映させることは紛争解決を容易にするものであり、日本国籍を有しないことのみを理由として調停委員・司法委員への任命を拒否することには合理性はないし、多民族・多文化共生社会形成という観点からもそれが望まれる。またそれらへの就任が国民主権原理に反するとは到底考えられない。
日本国憲法が保障する基本的人権は権利の性質上日本国民のみを対象としているものを除き、日本国に在留する外国人に対しても等しく及ぶべきものであることからすると、法令に根拠のない基準を創設し、当該公務員の具体的な職務内容を問題とすることなく、日本国籍の有無で差別的取り扱いをすることは、国籍を理由とする不合理な差別であり、憲法14条に違反するというべきであり、職業選択の自由(憲法22条)を侵害すると言え、外国人を調停委員・司法委員から排除することは不当である。また、特別永住者について、このことはなおさらである。
よって、上記のとおり、国籍を調停委員・司法委員の選任要件としないことを求める。

以 上

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2010年3月31日

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

声明

 当会は国に対し、できる限り速やかに、国選付添人制度の対象を拡大し、観護措置決定を受けたすべての少年に弁護士付添人を選任できるよう法改正を求めるものです。


                    記

1 弁護士は、少年審判手続において付添人という立場で、少年に対し必要な法的援助を行い裁判所の事実認定や処分決定が適正に行われるよう活動しています。
  それによって冤罪から少年を守るとともに、非行に至った少年に付き添い、少年に反省を促し、保護者や学校、職場との環境調整、被害弁償などの活動を通し、少年の更生に多くの成果をあげてきました。
2 しかし、実際に弁護士付添人が選任される例は少なく、弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容され審判を受ける少年の約40%、審判を受ける少年全体では約8.5%に過ぎませんでした(2008年度)。成人の刑事裁判では、約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比べると、未成熟な少年に対する法的援助は極めて不十分な状況にありました。このような状況が生じている大きな原因には、少年審判における国選付添人制度の範囲が殺人や強盗などの重大事件に限定されていることがあります。
3 さらに、平成21年5月21日からは、被疑者段階の国選弁護制度の対象が窃盗や傷害などの事件にまで拡大されましたが、これにより、少年の場合には、捜査の段階では国選弁護人が選任されたにもかかわらず、家庭裁判所の審判になると国選付添人が選任されないという事態が生じうる状況となっており、制度上の矛盾は一層明らかです。
4 福岡県弁護士会は、2001年2月、全国に先駆け「全件付添人制度」を発足させました。この制度は、観護措置を受け、付添人の選任を希望する少年については、すべて弁護士会の責任において、弁護士付添人を選任するという制度です。そして、この制度は全国に広がり、多くの少年に、その更生を手助けする弁護士付添人が選任される方向へ発展してきました。
5 不幸にして非行に至った少年たちも、わが国の未来を担う少年たちです。こうした少年を社会から排除するのではなく、自力で社会生活を送ることのできるように成長を手助けする役割は、本来、国の責務です。そのためには、観護措置決定を受け身柄を拘束された、すべての少年たちに国が弁護士付添人を選任する制度が必要です。
  よって、上記のとおり速やかな法改正を求めるものです。

                     2010(平成22)年3月25日

                        福岡県弁護士会
                        会長 池 永 満

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