福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2008年1月18日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                       会長 福島 康夫(30期)


1 年の初めにあたって
以前ならば執行部の実質の仕事は忘年会で終わりという感があったが,年々忙しくなっていき,今年は最後まで忙しそうである。自ら忙しくしているのではないかという声も聞こえそうであるが,断じてそうではないことをお断りしたい。
全国から公募した2007年の世相を表す漢字は「偽」ということである。昨年はミートホープの偽挽き肉,白い恋人,不二家,赤福,船場吉兆等大手や老舗の度重なる食品偽装問題,年金記録,政治資金を巡る偽装,橋梁の強度偽装等,ありとあらゆる偽装が発覚した。あまりに多いので鈍感になった感があるが,1年間の世相を表す漢字であることは認めざるを得ない。しかし,今年はマイナスイメージの漢字はもうたくさんである。
いよいよ裁判員制度のスタートまで1年となった。が国民の司法参加という観点から大きく司法制度が転換する要素を含んだ重要な制度であるが,取調の可視化が裁判員制度実施の上で必要不可欠である。裁判員になった市民が冤罪を生み出すことがないよう,制度を作っておかなければ市民の方に申し訳ない。また来年は被疑者国選制度が対象事件を10倍に拡大する。重大な制度開始まで残すところは1年。もし失敗でもすれば司法に対する市民の信頼は完全に失墜してしまう。失敗は許されない。今年は弁護士会にとって正念場である。


2 弁護士会館問題―大阪,広島との3会交流での感想
11月17日昨年オープンした大阪弁護士会館で大阪弁護士会,広島弁護士会との3会交流を行った。噂には聞いていたが,大阪弁護士会の執行部の先生方から会館の1階から最上階の14階まで案内していただいた。会館は敷地面積1500坪,建物は地上14階,地下2階建,延べ床面積5000坪。土地の取得費を含めた総費用78億円。2階には800人収容の大ホールを備え,規模の大きさに圧倒された。今や日弁連会館よりも豪華な会館であり,5月の日弁連定期総会はこの大阪弁護士会館で開催されることになっている。 1階の一部と地下(ただし採光が行き届いた半地下である)に法テラスが業務を行っており,親密な関係を保っている。また,市民に開かれた会館を象徴するように,オープン時には大阪フィルハーモニーが大ホールでコンサートを開き,2ヶ月に1回はロビーでクラシックコンサートが開催されている。会館のコンセプトは「市民に開かれた会館」「リーガルサービスの拠点」。建物は大阪の弁護士の夢が実現した,そういう感じの弁護士会館だった。大阪弁護士会は現在会員数が3000人を超えているが,将来,会員登録が5000人になっても大丈夫なようにレターケースを準備しているとのことである。一方,私たちの会館はおそらく弁護士会館の中で最も老朽化しているのではないか。今のところ平成25年には福岡県弁護士会は九大六本松跡地に移転し,新会館がオープンする予定となっている。当会の会員数は現在752名だから,大阪と比べること自体笑われそうであるが,大阪のように会館でコンサートができれば素晴らしいことである。各人が会館の夢を持ちあって,夢を実現したいものである。
ところで,昨年の会館問題は福岡市が設置した九大跡地利用計画策定委員会が利用計画をデザインして以降,表だった動きはなかった。移転時期は平成25年までになっており,今年は大きな動きがありそうである。
夢と言えば,当会が全国で初めて(待機制)当番弁護士制度を創設したのが1990年12月であった。被疑者国(公)選弁護士制度の夢を実現すべく当会は先頭を切って立ち上がった。資金はなかったが夢があった。今それが実現する一歩手前にきている。私も是非とも夢の実現のためにもう一頑張りをしたい。皆さんにももう一頑張りをお願いしたい。


3 拠点事務所問題
12月6日日弁連臨時総会において弁護士偏在解消のための経済的支援策が承認された。
偏在問題の解消は「法の支配を社会の隅々に」という目的を実現するものであり,被疑者国選弁護対応体制の確立と密接に関係している。経済的支援策では各ブロックに拠点事務所が設置されブロックの偏在問題の解消を図ることが期待されている。そこで,九弁連は離島を抱え実質ゼロワン地域が16もあり,北海道,東北と同様に過疎偏在の地域である。
当会は11月7日の常議員会で拠点事務所問題検討プロジェクトチームを設置し,この問題を検討している。現在検討中の内容は次のとおりである。
(1) 指導弁護士の人材確保等の問題から福岡市内に拠点事務所を設置する。
(2) 拠点事務所の主体は九弁連とする。
(3) 福岡県弁護士会は技術的支援をする。
一番問題になる費用についてシュミレーションを策定すべく準備中である。この点を早急に詰める必要がある。プロジェクトチームの結論は2月には出る予定である。当会として,拠点事務所設置に向けて,早急に,かつ前向きな結論を出したい。
いずれにしても,北海道弁連は「すずらん基金法律事務所」を,東北弁連は「やまびこ基金法律事務所」を既に拠点事務所として設置している。日弁連の経済的支援策を契機として,九弁連において,過疎偏在問題解消のための拠点事務所設置が今後の緊急かつ重要課題である。


4 法律相談事業及び弁護士過疎対策に関する九州ブロック協議会イン石垣島(12月1日・2日)
石垣島は台湾の東にあり緯度は変わらない。気温は25度。さすがに暑い。
リゾート気分のルンルンの観光客を横目にしながら4時間の会議はもったいないが,仕方がない。会議では九州各地の偏在過疎問題が議題となった。福岡では柳川支部に弁護士がいないことが問題になった。柳川は全国に3カ所しかないゼロ地域ということで早急に解消するように迫られた。筑後部会からはゼロ地域の解消に向けて鋭意努力中とのことである。今年早々には朗報がくることを期待したい。
2日間の会議の後のわずかな時間を利用して星の砂で有名な竹富島を観光した。竹富島は石垣島からわずかに船で10分のところにあるが,海は青々と澄んでおり,ゆったりとした時間を感じさせる島だった。暑かったが,いっぺんに気に入ってしまった。島の人口は356人。猫51匹,犬29匹,水牛20頭,山羊24頭,牛400頭,ニワトリ10羽と正確に調査がなされていたのにはおかしかった。まさに顔の見える平和な島である。しばしの休息を楽しんだ。


5 日本弁護士政治連盟(弁政連)九州支部設立の件
近時,弁護士会の問題は政治家との折衝が多いということである。確かに以前は法曹三者での協議に任せるという慣習があったが,規制緩和の動き等の中で司法制度改革審議会が設立された前後頃から政府や国会で決めていくことばかりである。法曹人口問題しかりである。それだけに弁護士会の運動を支える超党派の弁護士政治連盟の必要性が高い。特に,司法書士会,行政書士会の総会,懇親会に出席すると,運動に支援をされている多くの政治家が出席されていた。司法書士会,行政書士会の政治力の強さ,それに比べて弁護士会の政治力のなさを実感することが度々であった。日本弁護士政治連盟本部は東京であり,今般九州支部が設立されることになった。弁護士会の運動を強化する意味で喜ばしい限りである。
ところで,2009年から被疑者国選弁護制度は現在の10倍に対象事件が拡大するが,現在のような低額報酬では私たち弁護士の犠牲も限界である。2009年には報酬改善をして適正な報酬でなければ国選弁護のモチベーションはあがらない。来年の予算審議の中で報酬の大幅増額を獲得しなければならないし,この機を逃せば国選弁護報酬を適正化することはできないのではないかと思える。さらには,また,現在,取調べの可視化問題は民主党が参議院に可視化法案を提出し,次年度の通常国会で本格的な審議がなされる可能性が高いとのことである。私たちの弁護士会の理想を追い求め,運動を結実させるためには,超党派の弁政連の活動は必須不可欠である。弁政連九州支部設立総会は1月19日午後5時からである。多くの会員の結集をお願いしたい。


6 私たち執行部の任期は残すところ3ヶ月を切ってしまったが,新年を迎え心機一転全力で会務の舵取りをしたい。これまでの会員の皆さんのご理解とご支援に心から感謝すると共に,残った任期中のご支援をお願いしたい。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー