福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2007年7月31日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                         会長 福 島 康 夫(30期)

1 日弁連第22回司法シンポジウム(6月22日)
 今年の最大のイベントである日弁連第22回司法シンポジウムが福岡市のJALシーホークアンドリゾートホテルで開催された。当日の参加者は1243名。これまでのシンポジウムの中で最大規模の参加者になった。参加していただいた当会の会員の皆さんに大いに感謝したい。
 当日の全体会の冒頭の平山正剛日弁連会長の挨拶の後で地元会を代表して私が挨拶に立つことになった。
 ところで,私の挨拶の中に,多重債務者救済対策本部の春山本部長代行の強い勧めで多重債務のテレビCMを会場に流すことにした。「弁護士会は変わる,福岡県弁護士会は先頭きって大きく変わる」ということを視覚的にアピールしようとしたものである。
 テレビCMは挨拶の途中と最後に流したがどうだったであろうか。会場の反応が心配であったが,何とか失敗はせずにすんだようである(なお,このCMは現在,当会のホームページでも動画で見ることができる。ご覧頂いていない方は是非とも参考にご覧頂きたい)。
 今回のシンポジウムは「市民のための弁護士をめざして いま,弁護士,弁護士会に求められるもの」というテーマであり,法の支配を全国津々浦々に及ぼすために,是非とも議論をしておかなければならない問題である。さらに,今年から弁護士の大量増員が始まる中で,私達弁護士自身のアイデンティティーについて議論することは極めて重要である。
 当日のシンポジウムでは,これまで紛争がなく弁護士なんて必要ないと思われていた地域が実は弁護士が着任して以降依頼が急増している報告がなされ,過疎地域のひまわり基金法律事務所の若い弁護士や法テラスのスタッフ弁護士の溌剌とした活躍ぶりが紹介された。偏在,過疎問題といえば,ともすれば空中戦といった感があったが,全国に活躍する若い弁護士の姿は感動的であり,エネルギーを注入された感じがした。
 しかし,他方で弁護士数は増加しているにもかかわらず,それが偏在解消にはつながっていないことも明確になった。成り行き任せでは偏在問題は解消しないことが共通の認識となったと思う。
 弁護士偏在問題は2009年に始まる被疑者国選弁護制度の対応態勢の確立と密接に関係しており,弁護士の大量増員問題とも密接に関係している。その意味で弁護士偏在問題対策はこの2年で目処をたてなければならない緊急課題である。


2 弁護士偏在問題解消のための経済的支援策の試行について
    (7月12,13日)

 7月12,13日の日弁連理事会において,弁護士偏在解消促進のための経済的支援策の試行に関する実施要綱が承認された。弁護士の偏在問題を早急に解消するためにあらゆる形で経済的支援をするというものであり,偏在問題の解消は際限のない弁護士増員要求に対する歯止めになるはずである。もし,本格的に実施するとすれば10億円を超える大事業となるが,これまで眠っていた特別会計を改組すれば会員からの新たな会費負担を求める必要はないという説明であった。今後,この経済的支援策の本格的実施をする場合日弁連臨時総会に付議されることになり詳細についても説明がなされることになると思う。経済的支援策は偏在問題解決のためのメニューの一つである。大きな構想だけに日弁連執行部の意気込みを感じた。
 九弁連管内の偏在問題,当会の中での偏在問題について,大いに意見を交換して早急に対策を立てる必要がある。この1,2年の重要課題である。


3 あらためて2009年問題について思う
 2009年には裁判員制度が実施され,被疑者国選弁護制度が10倍にまで拡大される。裁判員制度も被疑者国選弁護制度もどちらも刑事分野での司法制度改革に関する問題であるが,単に刑事の問題だけではなく,この問題は司法の将来,弁護士会の将来を左右する問題であると思う。裁判員制度が真の意味での市民のための司法になるかどうかはまだまだこれからの問題である。取調べの可視化を含め克服すべき課題は多い。
 また,被疑者国選弁護制度は2009(平成21)年には対象事件は今の10倍以上,年間10万件にも達することになる。しかし,現在のように偏在問題が解消できない限りは被疑者国選弁護制度の対応は不可能である。偏在問題の解消は特に,被疑者国選弁護制度の対応態勢が確立できるかどうかという問題と密接に関係している。この被疑者国選弁護事件をやりとげることができて,初めて弁護士大量増員問題にも堂々と意見がいえることになると思う。
 今,2009年に向けて全力をあげて準備をすることが最大かつ緊急の課題である。残すところ2年足らずである。精一杯行動するしかないが,やりがいもあると考えたい。これから2009年まで,日弁連全体にとってターニングポイントの年である。


4 情報の共有化のために工夫していること
 本年度の会務執行方針の一つとして情報の共有化を掲げた。700名を超える大きな会となった当会としては,特に会員全員の情報の共有化が不可欠である。そこで,従来からの月報の他に,ホームページ(大石副会長担当)週1回発信のFニュース(吉岡副会長,徳永響業務事務局長担当)でなるべく多くの弁護士会の情報を頻繁に発信することにしている。
 また,執行部内部でも情報の共有化を重要視し,このために執行部全員が工夫している。
 執行部会議は毎週月曜日の午後2時から5時30分頃まで何十という議題について意見を交換し結論を出している。常議員会のある日は別途執行部会議を12時から午後3時迄している。毎月輪番制で副会長が司会をすることになっている。執行部会議の議事録は大神,徳永響両事務局長が1,2日のうちに作成している。 担当副会長,事務局長は担当の部門の情報について日常はメーリングリストを活用しどんな些細なことでも報告をし,日常的な細かい問題はメールの交換で解決を図っている(現在までのメールは1620通)。
 対外的な折衝については執行部では複数で対応し慎重を期している。一見非効率ではあるが,複数で対応することによって折衝内容をより正確に分析することができると考えているためである。
 常議員会は2ヵ月に3回の割合で午後3時から6時までの予定で開催している。川副常議員会議長の手際の良い進行のお蔭で,密度の濃い議論をしながらこれまでのところ時間厳守を励行している。
常議員会の内容は月報の他に毎回常議員会の直後にFニュースでメール配信をし,ホームページの会員のページに出しているので,チエックしていただきたい。
 また,常議員会は日弁連の理事会の直後に開催するようにして,最新の日弁連の情報を常議員会に反映できるようにしている。日弁連理事会は2日間にわたる12時間以上のマラソン会議であるが,河辺副会長が常議員会で日弁連の動きについての簡にして要を得た報告をしている。月報に掲載しているので是非とも一読頂きたい。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー