福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2007年6月12日

クレジットシンポジウム・アピール

アピール

〜消費者が保護される安全なクレジット社会を目指して〜

一昨年,埼玉県富士見市で,認知症の高齢者姉妹に必要のないリフォーム工事を次々と契約させ,多額のクレジット債務を負わせた事件が発生し,マスコミでも大きく取り上げられた。また,九州においても,年金生活者などに高額の呉服や布団などを次々と購入させ,支払能力を無視したクレジット債務を負わせるという事件が多発している。
 さらに,福岡で発生した「たく美屋」事件などに見られるような空売り大量名義貸し事件も,相変わらず各地で発生している。
 最近では,暴力団が運営していた絵画レンタル詐欺商法にクレジット会社が与信していたという事件まで発生するに至った。
経済産業省(旧通産省)は,このようなクレジット被害を防止するため,クレジット会社に対して,加盟店管理を徹底するよう求める通達・指導を再三出してきたが,前述のようにクレジット被害は依然多発しており,その効果が上がっていないのが現状である。
このような悪質商法にクレジット会社が与信することで,クレジット会社が悪質商法を助長しているとみられるような事件が後を絶たない。その主な原因は,現行制度上,クレジット会社には悪質商法を行う販売店への与信を打ち切る積極的な動機が働かないことにある。すなわち,割賦販売法30条の4は,未払金債務については支払い拒絶の抗弁を認めるが,既払金については返還義務を課していないため,クレジット会社は販売店の悪質商法を察知しても,加盟店契約を維持したまま立替金の回収を続けることで損失を回避できる。したがって,与信を減らしはしても加盟店契約を直ちに打ち切ることをしないため,その後も消費者が被害に遭うのである。
 このような不適正な与信によるクレジット被害を防止するためには,クレジット会社に既払金返還を義務付け,「悪質商法への与信は損失を伴う」という効果を与えることにより与信の打ち切りを促す制度が必要である。
 過剰与信の防止においても,信用調査を徹底することを義務付け,過剰与信防止義務の違反には行政罰にとどまらず一定の請求権制限となる民事ルールを設けるなど,実効性を持つ制度が必要である。
 このような法整備をすることによって,消費者が安心して利用できるクレジット制度を構築し,クレジット社会の健全な発展を図ることができるものと確信する。
これらを踏まえ,私たちは,次のとおり決議する。

1.クレジット被害の根絶・消費者が保護される安全なクレジット社会の構築に向けて,一致団結して努力していく。

2.その方策として,国に対し,クレジット会社と販売店の共同責任(既払金返還を含む)規定を新設することを求める。

3.また,国に対し,過剰与信を禁止し,これに違反した場合には,クレジット会社の請求権の一部ないし全部を制限する民事的効果を定めた規定を設けることを求める。

平成19年6月9日

九州弁護士会連合会
 福岡県弁護士会
  クレジットシンポジウム参加者一同

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