福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2005年10月21日

会 務 報 告

副会長日記

副会長  樋口 明男

一 執行部に入り早や四ヶ月が過ぎました。
  執行部会議で会務全般の情報に触れているとはいえ、自分の担当以外は手薄なので、私が直接に担当又は経験したことに限定して報告したいと思います。
二 心神喪失者医療観察法について
  全国的に入院施設の整備が進んでいないため日弁連は施行の延期を主張しましたが、政府は七月一五日施行を強行しました。
  執行部と付添人PTは六月一七日から七月二六日まで裁判所との協議会を四回開きました。その中で弁護士会としての意見を相当強く主張したつもりです。具体的な実務運用は今後の事件処理の中で固まっていきますが、常議員会や総会において議論を尽くして定めた当会の規程や規則の理念が実現されるよう監視していきたいと思っています。なお、国選付添人名簿への登載承諾者の数が少ないので、このままでは承諾者の先生に加重な負担がかかることが危惧されます。期限は設けておりませんので、名簿登載へのご理解とご協力をお願いいたします。
三 月報と会報について
  月報は広報委員会の先生方のご努力により発刊されています。担当副会長として編集会議に参加させて頂き、大変さが良く判りました。会員諸氏におかれては、編集担当者の先生から執筆を依頼された場合はご快諾いただきますようお願いします。
  並行的に、執行部は(月報とは別に)長年休刊状態にあった「会報」(最終刊行平成八年)を復活させたいと考えており、具体的な準備作業に入っています。本年度中に編集作業を終えて来年度執行部に引き継ぎたいと思っています。
四 メーリングリストについて
  執行部における情報伝達は概ねメーリングリストで行われています。これは九弁連や各委員会も同様です。現在のところ私は倒産・消費者・高齢者障害者等のメーリングリストに加わっていますが、会員間の情報交換や交流促進に極めて良い効果を発揮しているように思われます。
  交通事故被害救済委員会では従来メーリングリストがありませんでした。しかし、不法行為法以外に医療・福祉・工学等の専門知識が必要とされるこの分野こそメーリングリストが不可欠ではないかと考え、八月からの立ち上げを実現しました。委員に大いに活用され、被害救済の活動が更に活発化することを願っています。
五 釜山弁護士会との交流について
  七月一七日から一九日まで韓国の釜山弁護士会を訪問しました。釜山弁護士会の先生方の周到な準備により、警察署の取調室の見学・検察庁の訪問・裁判所の拘束適否審(勾留理由開示・勾留取消・保釈などが一体となった公開手続)の見学等を行い大変参考になりました。交流会においても心を尽くした歓迎を受け「国家間の関係は個人間の関係の積み重ねである」という単純な道理を再度確認しました。安武先生や大塚先生をはじめ、ご尽力いただいた全ての先生方に深遠なる感謝を表明させて頂きます。\n六 市民窓口と紛議調停について
  人体の臓器を「動脈系」と「静脈系」に分類するならば、後者にはガス交換を行う肺や尿を生成する腎臓などが含まれます。いずれも人体にとって有害なものを体外に排出する重要な臓器です。昔、腎臓が浸透圧(濃度の異なる二種類の溶液を半透膜で遮る時に生じる圧力)という単純な原理に基づいていることを学んで深い感銘を受けた記憶があります。
  会務にも「動脈系」と「静脈系」があるように思われます。市民や公共機関に対し積極的に働きかけを行うとともに会員に新鮮な情報を提供して弁護士会の活動を活発化させるのが前者です。会員に関する苦情や不祥事を処理し、場合によっては自治的な懲戒権を行使して弁護士の活動に対する社会の信頼を保持する働きが後者です。後者は前者に比べその存在が見えにくく、若手の先生方にとっては馴染みがない分野と思われますが、弁護士会の極めて重要な機能を担っています。生体において代謝機能\が損なわれれば生命を危うくするのと同様です。
  弁護士会の「静脈系」の制度は大ベテランの先生方の献身的なご努力により維持されていますが、私にはこれも浸透圧(弁護士会という半透膜において倫理性の異なる二主体間に生じる圧力)により営まれている制度であると感じられます。弁護士に非があれば内側に向かう力が生じますが、そうでない場合には外側への力が必要です。弁護士としての見識が問われる両者の見極めは本当に難しいものです。やはり年季が必要なのでしょう。

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