福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2004年2月24日

消費者保護基本法改正についての会長声明

声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊

 平成16年(2004年)2月24日

 1968年消費者保護基本法が制定されたが、その後、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の構造的格差が一層拡大し、消費者被害が増大した。本通常国会で、自民党の議員提案により、消費者保護基本法の大幅な改正案が上程される見込である。そこで当会は、自由民主党要綱案(以下「要綱案」という)がそのまま法案化される可能\性に鑑み、以下のとおり、意見を表明する。\n
  消費者保護基本法には、消費者と事業者との間に経済力、交渉力等の構造的格差が厳然と存在することに鑑み、消費者政策の基本理念が、「消費者の権利擁護」であることを明確に定めるべきである。\nこれに対し要綱案は、消費者政策の理念として、「消費者の自立支援」を強調しているが、「消費者の権利」を二次的・補完的なものとして消費者保護政策の縮小・後退を容認するもので、強く反対する。
  消費者には、公正な取引条件・取引方法の提供を受ける権利及び消費者団体を組織して行動する権利があることを明確にすべきである。
要綱案はこの点に触れていない。しかし、公正な取引条件と取引方法の提供がなければ消費者は適切な選択ができない。また、個々の消費者が自らの権利を行使したり、その意見を消費者政策に反映させることは極めて困難であるので、団体訴権を実現する上でも、消費者団体を組織し行動する権利をも明確にする必要がある。
  消費者に「責務」を負わせることは消費者政策の理念に反するので、現行法どおり「消費者の役割」とすべきである。
これに対し、要綱案は、「国及び地方公共団体の責務」「事業者の責務」と並列的に、「消費者の責務」を規定するが、消費者に対し、事業者と対等な「責務」を負わせることは、消費者政策の基本理念であるべき消費者の権利擁護と明らかに矛盾する。要綱案は、行政及び事業者の法的責務を軽減し、消費者政策の後退を容認することになりかねないものであり強く反対する。
  国及び都道府県の苦情処理・紛争解決機能の強化を積極的に位置づけるべきである。\n要綱案は、苦情処理体制として、市町村は苦情の処理のあっせん等に努めなければならないとした上、都道府県は、市町村(特別区を含む)との連携を図りつつ、主として、高度の専門性又は広域の見地への配慮を必要とする苦情の処理のあっせん等を行うものとしている。ところが、国については、直接、苦情処理のあっせん等をすることを予定していない。しかし、広域的な消費者被害への対応や事業者規制権限への連携を強化するためには、国及び都道府県の苦情処理の機能\を拡充することこそが必要である。

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