福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2011年5月10日

日本の殺人事件は一貫して減少傾向にある


前回と同じく浜井浩一教授の論文を紹介します。先日も集団登校中の児童の列にクレーン車が突っ込み大惨事が発生してしまいました。(な)

「1950年代の後半から、日本の殺人事件は一貫して減少傾向にあり、検挙率は95%前後で推移している。検挙率が高いのは、殺人の8割以上が顔見知りの間で、4割は家族間で起こるためでもある。最近、親が子どもを、子どもが親を殺す事件が多数報道されているが、これは、戦後一貫して日本の殺人事件の主要な特徴の一つでもあり、とくに珍しいことではない。なお、殺人の認知件数は、2009年に戦後最低を記録し、2010年にそれを更新している。殺人という観点から見れば、戦後、現在がもっとも安全な状態にある」

「客観的に見た場合、虐待を含めて殺害される子どもの数は減少傾向にあり、交通事故や水の事故で死亡する子どもの数は、その何十倍にも及ぶ。不審者対策として、交通量の多い街道沿いを進学路に指定した結果、よそ見運転の車が登校中の児童の列に突っ込む事故が起きたのでは本末転倒ともいえる。」

「殺人について見れば、1960年ぐらいから検挙人員(認知件数も同じ傾向)が下降傾向にあるが、その減少にもっとも貢献しているのは10~20代の若年層である。つまり、日本の殺人が減少しているのは、若年者による殺人が減少したからである。その半面、最近、この低下傾向が足踏み状態にあるが、これは60代の検挙人員がやや増加しているためである。こうした実態は、マスコミ等で喧伝されている少年非行の凶悪化・低年齢化とは正反対の現象といえる」

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