福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2007年7月18日

裁判員模擬裁判についてのある感想

 裁判所・検察庁と弁護士会が共催した裁判員についての模擬裁判が先日(7月初め)に行われました。そのとき傍聴していたあるベテラン弁護士の感想を紹介します。大変考えさせられる内容です。これらを一つひとつ克服していかなければいけないように思いました。(な)
1 裁判員は,事前に行われた裁判長による説示について,ほとんどといっていいほど,忘れ去っているし,後の評議等の場において,裁判官によって,意識の喚起等がなされていない。
2 裁判官だけでなく,裁判員も,論告や弁論を聞いていない(頭に残っていない)!。
3 公判前整理手続を経た裁判官とこれを経験していない裁判員とで,情報量に差がある。
4 立証がなされていない範囲の事項(空白部分)について,裁判員は,よく言えば自由に,悪く言えば勝手に事実を推測して心証を形成している。
5 争点以外の事実については,公判での立証が簡単になされることから,それが重要な事実であっても,裁判員の心証に大きく影響を及ぼさない。
6 違法性の問題や情状等,価値判断が影響しそうな事項について,裁判員は,その個人的経験に基づき自由に,あるいは,勝手に評価を加える傾向がある。
 また,裁判官以上に,合理的に判断する人間を前提として評価する傾向がある。
7 証拠能力の問題と信用性の判断とは別場面であることが,裁判員にとって,理解がなかなか困難である。
8 評議において,裁判長のリードの方法等が裁判員の議論に大きく影響を与える。

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