会長日記

2016年6月15日

会 長 原 田 直 子(34期)

福岡県弁護士会のHPにおいでいただき、ありがとうございます。

6月11日憲法違反の安保法の廃止を求める市民集会へのご参加ありがとうございました。

6月11日は、選挙準備の影響か政党や労働組合関係の方の参加が少なく、残念でしたが、熱心な市民の皆様のご参加で、充実した集会とパレードが行われました。

集会では、西南大学の田村元彦先生から、憲法をめぐる状況のみならず、様々な分野で市民生活が脅かされ、「弱者はいつも分断されて、連帯した行動を取り組めないようにされている。安倍政権の憲法無視の政治をやめさせるには、市民に根付いた野党をつくっていく必要がある」などの指摘や、学生を中心とした若者の行動についての分かり易いお話があり、参加者は頷きながら熱心に聞き入っていました。

パレードには、ほとんどの皆さんが参加してくださり、中央市民センターから国体道路に出て天神の大通りを歩きました。土曜日の午後、沢山の市民が歩道から注目し、数か所で声援の拍手もいただきました。

弁護士会では、6月23日18時よりに北九州市立大学喜多方キャンパスA101教室において、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏をお招きして、安保法の廃止を求める講演会を行います。北九州の皆様、是非ご参加下さい。

婚姻禁止期間を短縮する民法改正が行われました。

婚姻禁止期間って、ご存知ですか。女性は、離婚または夫との死別後(「結婚終了後」といいます)、一定期間経過しないと次の結婚ができないという規定のことです(民法733条)。現在は6ヶ月ですが、これが100日に短縮されました。

もともと、我が国の民法では、結婚して200日以後~結婚終了後300日以内に生まれた子どもを、嫡出子として夫の子どもと推定しています(民法772条2項)。このように嫡出子とされた場合、父親とされた人が1年以内にこれを否定する訴え(嫡出否認の訴え)を起こさなければ、父親を否定されることはありません。生まれた子どもの父親を早期に確定させる子の福祉のための制度といわれてきました。

しかし、この法律を単純に考えると、前の結婚が終了して100日たてば、次の結婚をしても父親の推定は重ならないので、6か月も次の結婚を禁止する必要はありません。そこには、離婚や死別後にすぐ結婚するのは、倫理に反するという価値観があったと考えられます。

そうであれば、男性も同じはずですが、この婚姻禁止期間は女性のみに適用されています。男性は、離婚と同時に次の婚姻届けを出すことができ、現にそのような事例は沢山あります。このように、女性にのみ婚姻禁止期間を定めるのは、男女平等に反するとして、国連の女性差別撤廃委員会からは何度も是正の勧告を受けています。

この制度のため、長期間別居している間に別の男性との間に子どもが生まれても、出生届を出すと父親の欄には自動的に戸籍上の夫の名前が記載されるために、出生届を出さなかったり、実の父親とは違う人が、父の欄に記載されるという事態が見られました。父親の欄にすでに記載があると、本当のお父さんは認知もできません。

しかし、今回の改正は、やはり子どもの父親の確定という側面を重視し、禁止期間の短縮にとどめる改正でした。新たな結婚のときに、妊娠していないという証明を出せば、100日以内でも結婚できるようですが、仮に妊娠していても、現在では、DNA鑑定などで、親子関係の確定は簡単に行えますから、子どもの父親が決まらないという事態は回避できると思います。たとえ100日であっても、女性のみに婚姻禁止期間を定めるのは、合理的とは言えないでしょう。

他にもある不合理な男女差~婚姻年齢、夫婦同姓の強制

その他、国連では、日本の民法が夫婦同姓を強制し、選択的夫婦別姓を認めていないこと、婚姻年齢が男性は18歳、女性は16歳と差があることについても、女性差別であるとして是正を求めています。

選択的夫婦別姓とは、結婚した夫婦が、二人の選択で、同じ姓にしてもよいし、別の姓にしてもよいという制度です。生まれたときから使ってきた姓を変えたくない、社会生活上、あるいはキャリア形成に不利であるなど、理由は様々です。一般的には、結婚で97%の女性が夫の姓に変えているといわれていますが、それ自体が、嫁という言葉が表すように、女性が家に入る戦前の家族制度を引きずったものと考えられます。

弁護士会では、戸籍上姓が代わっても、従前の姓を職務上の氏名として届け使用することを認めています。いわゆる通称使用です。しかし、健康保険など公的な制度では戸籍上の姓が求められるため二つの姓を使い分ける不便さはぬぐえません。弁護士として使用している姓で来た郵便物を,郵便局に取りに行ったら、戸籍上の姓の身分証明書しかなかったなどという笑い話もあります。

夫婦の氏が違っていても、制度的不自由はありません。世界的にも、夫婦同姓しか認めていないのは、日本だけといわれています。お隣の韓国や中国は完全な別姓であることは皆さんもご存じでしょう。どちらかが姓を変えなければ結婚できないという制度自体を考え直し、それぞれの幸せな人生の選択ができるような制度になってほしいものです。

当会でも、このような民法の規定を改正するよう引き続き求めていきます。