会長日記

2015年1月

会 長 三 浦 邦 俊(37期)

新年明けましておめでとうございます。

昨年は、当会も、日弁連も、街頭宣伝活動を繰り返した年でした。秘密保護法の廃止を求める運動や、集団的自衛権容認の閣議決定撤回を求める運動は、これからも続きます。弁護士会は、引き続き直接民主主義の運動を続けることになりますので、会員諸氏の引き続いてのご協力をお願いしたいと存じます。

日弁連法律サービス展開本部

さて、弁護士会内に目を向けると、昨年は、日弁連でも、当会でも、弁護士の職域拡大策が、会員サポートという側面で、特に、注目された年でした。日弁連では、年間4,500万円超の予算を組んで、新たに法律サービス展開本部を設置し、自治体等連携センター、ひまわりキャリアサポートセンター、国際業務推進センターという3つのセンターを組織して、弁護士の職域拡大を図る活動をしています。以下では、この活動を紹介しながら、現状の問題点を幾つか述べたいと思います。なお、法律サービス展開本部の規則上は、高齢者障害者に対するサービス拡大も、福祉分野として、国、地方公共団体への活動に含まれるという関係にあります。

自治体等連携センター

昨年の10月までの集計で、法曹有資格者(すなわち、弁護士登録をしていない方を含む趣旨です。)で、都道府県の職員となっていらっしゃる方は、13都道府県で22名だそうです。福岡県にはいません。市町村レベルでは、49市町村で、58名在籍で、県内では、福岡市2名、北九州市1名、古賀市1名、糸島市1名の方がいらっしゃいます。

これに国家公務員の人を加えても、120名弱くらいの人しか、公務員に応募していないというのが、現状です。せっかく、任期付公務員の募集があっても、応募がなかったケースもあって、再募集をかけている自治体もあるということで、制度としては、まだまだ定着していないと評価されます。連携センターの活動としても、地方公共団体に対する法曹有資格者採用に関するアンケート調査の実施、任期付公務員の経験交流会を開催するなどの活動をおこなっている状態で、活動としても、これからという印象でした。

昨年の12月6日(土)午後1時30分から、全九州の法曹有資格者の経験交流会が、当会の会館で開催されました。どんな方が公務員に応募しているのかというと、行政の仕事に興味があったことが志望の動機という方もあれば、弁護士業務に疲れて定時に帰ることに憧れて応募したという方もありました。色んな部署の職員から相談を受けるが、法的にはこうなるという答えを言うのでなく、職員の人に考えてもらうように仕向けることで、頼りにされるようになってきていると思う、行政の現場では、例規集が幅を利かせており、法律による行政の原則が守られてない、職員各人が考えることが大事だと思うが、法的な思考方法は役に立つことを実感している。最初は、採用した方も、採用された方も、法曹有資格者にどのようなことをさせるのが良いかという点がわからなかったと思う。採用された方からもこれをしたいと要望を出すことが大事。顧問弁護士との打ち合せや、裁判所提出書面の素案作りなど訴訟案件に絡むかは、自治体によって、異なる取り扱いがされているようで、希望すれば、取り扱わせてもらうことには、それほど障害はないとの意見が大勢を占めました。また、自治体住民の相談を受けている方はおらず、行政内外での人脈の広がりは、一弁護士として活動されているときよりも、遥かに、広くなると感じられました。

役員就任の挨拶まわりの際には、何もわからず、前任の橋本会員の指導のもとに、訪問先の自治体の組長さんに、任期付公務員の採用をお願いしますと言いまくったわけですが、その後、これに手を挙げる会員が案外少ないことに気がつきました。しかし、先駆者として採用された方は、それなりにパイオニアとしての価値がある上、行政事務に精通することは、仮に、通常の弁護士に戻るにしても、専門性を獲得するというメリット、一定の人脈が獲得できるというメリットがあるのではないでしょうか。先日、国税審判所の福岡の所長さんが、会館に国税審判所の任期付職員に弁護士を採用したいとパンフレットを持参されました。これなどは、税務の専門家になれる確率が高いはずで、早速、オールエフ弁に載せましたが、応募があったか定かではありません。今の若い人は、背中を押さないとなかなか応募してくれませんので、福岡でも宜しくお願いしますというご挨拶を審判所の所長さんから受けましたので、紙面を借りてご報告しますと共に、本当にどなたか手を挙げて頂ければと思います。また、県内でも、任期付公務員の採用を検討している自治体は複数あると思いますので、手を挙げたい会員がありましたならば、執行部までご一報ください。

なお、これとは別になりますが、近時、弁護士による包括外部監査の評価があがっています。福岡市の包括外部監査人の牟田哲朗会員の活躍を御存じの方も多いと思います。

ひまわりキャリアサポートセンター

この活動は、企業内弁護士の採用活動と経験交流会が活動の中心です。日弁連3万5000名の会員のうち、本年3月の集計で、全国で、1100名を超える方が企業内弁護士となっています。特に、60期の方が、80名企業内弁護士となって以来、61期119名、62期121名、63期105名、65期111名、66期99名で、60期代の企業内弁護士は、773名となっています。この人数の多くが、東京に集中しており、大阪で70名、当会では、企業内弁護士の数は、現在、3名になると思います。昨年4月の挨拶まわりのときに、企業関係者の方には、企業内弁護士の採用をお願いしました。九州電力には、弁護士登録をしていない法曹有資格者が3名いるとの情報に接しました。企業の規模を問わず、企業の競争力強化、グローバル化等に対応するためには、企業内弁護士の採用のニーズは必ずあることは疑いなく、全国的には、このための広報活動や、情報提供をする活動がおこなわれていますが、福岡で、どのように取り組んでいくかはかなり問題であると思われます。やはり田舎では、企業内弁護士を採用しようとする企業も少ない上、他方で、企業内弁護士になろうとする会員も少ないわけです。

国際業務推進センター

日弁連では、弁護士の国際業務を質、量ともに拡大しようとネットワークを構築し、人材を育成する活動、国内外のニーズに関する調査、研究活動をおこなうと共に、国際業務に関する広報活動を展開するとしています。福岡は、外国から投資を促すための経済特区にも指定されたわけで、地理的にも、アジアに目を向ければ、業務拡大が図れることは、確実であろうと思われます。当会でも、中小企業の海外支援PTの会員の方や、国際委員会の委員の方が、海外業務を取り扱うようになっていますが、まだまだ一般の会員へ広がってはいない状態です。言葉の問題を乗り越えれば、渉外事件の契約書作成は、難解な法律問題に関するヤヤコシイ準備書面を作成するより、遥かにやさしいはずです。福岡でも、海外展開支援弁護士に登録する方が一人でも多くならないかと思う次第です。必要な語学研修、専門研修を企画する必要があると思います。本年度執行部としては、12月2日に大阪の中国法の外国法事務弁護士を招いて講演会を開いてもらいました。中国民法は、日本民法に似ていると聞いただけでも、少しやる気が出た会員の方がいらっしゃったのではないかと思います。

ひまわりあんしん事業、虐待対応専門チーム派遣、地域包括支援センターへの弁護士派遣の活動について

法律サービス展開本部のメニューの一つとして、福祉分野での弁護士派遣業務、アウトリーチ活動の積極的展開という点があります。派遣対象者は、従来は、権利の主体である高齢者、障害者であったものですが、これらの権利主体は、自らが権利の侵害を受けていることに気がつかない、声を上げないという傾向にあることから、これらの権利主体の支援者に対して、弁護士が施設等に出向いて、これらの支援者とのネットワーク作りを進めなければ、高齢化社会に対応できないと指摘されて、久しいものです。

当会では、高齢者障害者委員会、「あいゆう」の活動として、これを県内167の地域包括センターに広げたいという計画があります。しかし、当面、会員の誰かが、先兵となって地域のケア会議等に幾度も出席しないとネットワークつくりが出来ない、ネットワークを作ること自体もハードワークであるという問題があって、このネットワーク作りの活動に対して、幾らかでも手当を支給する方法などで、サポート出来ないかという点を検討しています。常議員会の承認を得られれば、実行したいと思っていますが、実現出来れば、全国初の試みになると思われます。ひまわりキャリアサポートセンターや、国際業務推進センターについては、地方会では取組がむずかしいと感じられる会員にも、アウトリーチ活動の展開に関しては、積極的に取り組んで頂けるのではないかと思っています。