会長日記

2014年7月

会 長 三 浦 邦 俊(37期)

1 弁護士会活動と政治との関わりについて

弁護士会は、社会制度に関して、種々の運動や、提言をおこなっています。今年の県弁護士会総会でも、司法修習生費用の給費制復活を強く求める決議と、集団的自衛権の行使を可能とする内閣の憲法解釈変更に反対する決議を賛成多数で採択しましたが、これらの問題は、他方で、優れて政治的な問題でもあるわけです。

前者は、法曹養成問題と言われる中で、最も緊急に改善してもらいたい、国民的にも、判りやすいと思われる点を取り上げたものですが、国会に目を向ければ、日弁連では、両院の議員を対象にした院内集会を開催する等して、国会議員にも働きかけて、早期の給費制の復活の実現に向けての活動がおこなわれています。

他方、後者の問題については、立憲主義に反するという1点において、法律家集団としての弁護士会の意見集約が実現出来たものと考えられますが、他方で、この問題の背景にあると思われる憲法改正問題に関しては、弁護士会内部でも、改憲派と護憲派に分かれることは、明らかなことであると思われます。

弁護士会が、集団的自衛権に関して、今年の県弁総会や、日弁連総会のような決議を出すことに関しては、政治的に一方に偏することで好ましくないとの意見もあるところですが、あるべき社会正義、社会制度の実現のための活動として、最近の弁護士会は、その活動のかなりの部分を衆参両院の国会議員に対するロビー活動に割いているものです。この点は、会員の皆様にはさることながら、世間一般には、余り知られていないようです。

2 国会議員の方々との接点・タイミングと場所

日弁連執行部は、重要な法案等の課題がある場合などには、国会議員の方々に資料などを持参して説明をおこなう活動を繰り返していると聞いています。霞ヶ関から永田町の議員会館までタクシーで行くので、以前は、日弁連の予算で、タクシー代が百何十万円だったものが、昨年の決算では交通費として七百数十万円が計上されているのは、その回数が増えたためであるとの説明がおこなわれていました。しかし、朝食会などの開催をお願いした場合を除けば、面談の時間は、5分、10分程度だということです。国会議員ともなると、分刻みのスケジュールで、この程度の時間しか取れないのだそうです。

この点、地元の国会議員の先生に対して、福岡で面談を申し込むとなると、帰福される金曜日の夜から月曜日の午前中が狙い目で、時間に関しては、調整が出来れば、1、2時間の面談も可能ですので、弁護士会の主張を十分にお伝えすることができます。

3 公明党議員との勉強会の開催

本年3月28日に、橋本執行部からのご案内で、公明党議員団との協議会、懇親会をおこなうので、弁護士会に午後5時に来所されたいとのご達しがあり、遠山清彦衆議院議員らと初めての面談をしました。その日の懇親会で、6月1日(日)に勉強会をし、懇親会を開催しようという話が、決まってしまいました。その後、時の流れるのは、早いもので、予定とおり、6月1日の午後4時から、中洲のIPホテルで勉強会を実施しました。テーマは、「集団的自衛権」と、「秘密保護法」でした。前者については、弁護士会側は、県弁総会、日弁総会で決議をした直後、公明党は、衆議院予算委員会で遠山先生自身が、安倍首相に代表質問を行われた翌々日という日程で、後者に関しても、濵地雅一衆議院議員は、秘密保護法の情報監視審査会に関する検討委員を務めており、弁護士会側は、前日に秘密保護法と共謀罪に関するシンポジウムを開催したばかりという状態でした。参加者は、公明党側は、国会議員2名、県議会から2名、福岡、北九州市議から各2名と県本部事務長の方の計9名、弁護士会側は、正副会長全員と弁政連から6名の12名でした。国会議員のお二人から、国会審議を踏まえての報告をおこなってもらって、弁護士側からの質疑という形式でおこないましたが、正に、ホットなテーマに関して、最前線の情報に接しながら討議が実現出来ました。双方とも、開催して良かった、面白かったと盛り上がった結果、秋にも、テーマを変えて実施することになりました。なお、濵地議員は、福岡県弁護士会会員で、修習61期です。ご当人から、就職活動で私の事務所を訪問して、寿司をご馳走になったと言われましたが、私にその記憶がすっかりありませんでした。

4 その他の政党との取組について

弁護士会の役員就任披露パーティーにも、国会議員の秘書方に多数参加して頂きましたが、他の士業団体などの定期総会後の懇親会の場では、県内の国会議員や、地方議会の議員の方と直接お会いする機会がありました。これらの議員の方々に対して、弁護士会と勉強会は出来ませんかと水を向けると、異口同音に、是非お願いしたいとの有り難いお答えを頂きました。このため、執行部としても、政治連盟と協働して、自由民主党などの他の政党との間でも、県単位での勉強会を企画してみたいと考えております。この点に関しては、異論もあろうかと思いますが、弁護士会の委員会活動が、国政や、県政、市政に反映していくことが社会のためになるとの思いでおこなうもので、世のため人のためという思いは、議員の方々と共通であると思われます。議員の方々が、勉強会に関して前向きな姿勢を示される点は、弁護士との議論を通じて、より良いものを作ろうとする意気込みが感じられるもので、弁護士側も、それなりの準備を怠るわけにはいかないものです。先の公明党との勉強会に先立っては、秘密保護法に関する本を一冊読破して臨みました。

他方で、執行部としては、若い会員の方にも、このような勉強会に参加して頂きたいと思っています。弁護士政治連盟に加入して頂ければ、若手会員でも、参加可能です。弁政連への加入については、上田英友会員が事務局長ですので、詳細は、上田英友会員宛、ご連絡頂ければと思います。

他団体の総会後の懇親会、披露パーティーなどに出席しますと、秘書等の代理ではなく、議員本人が出席されている場面に遭遇します。司法書士会の総会は、国会議員の出席を得やすくするためなのか、土曜日の午後開催で、懇親会は、午後6時からでしたし、他の士業団体のいずれの会合でも、来賓の議員の方々は、ご登壇を頂いて、ご挨拶か、紹介をおこなうというパターンでした。出席者、来賓名簿の配布をして終わりの弁護士会としては、検討を要する点であると思った次第です。

他方、県内の国会議員の方を中心とするとしても、全部で十数人の方がいらっしゃるので、どのような進め方、取り組みをするのかという点は、今後の検討課題です。

5 法制審議会の決定と日弁連の委員の対応に関する方針決定

日弁連の理事会は、全国53の単位会からの理事80数名で構成されています。理事会は、日弁連の総会の決定事項とされている以外の重要事項を決定する機関です。法制審議会は、法務省の審議会で、民事、刑事その他の法務に関する事項の調査、審議をおこなうものですが、法制審議会での採決を経た法案については、国会の審議でも、その内容が尊重されて、法制審の採択した法案が、そのままの内容で成立する運用というのがこれまでの慣例のようです。
6月19、20日の日弁連理事会においては、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会における日弁連選出の委員の対応に関して、日弁連理事会での採決がおこなわれる情勢ですが、法制審議会における議論については、純粋に理論的な話で決着がつくようなものではないようで、政治的判断による妥協もしなければ、何らの成果を獲得できない側面があることも否めないようです。6月6日付で出された日弁連執行部の基本方針案は、このような考えに立ったものであると理解し、急遽、6月11日の常議員会で、この点に関する賛否をお諮りしたところ、日弁連執行部方針を指示することについて、賛成多数で可決承認をして頂きました。一定の妥協もやむなしとする点で、従来の弁護士会の意思決定とは趣を異にするものですが、選択としては、正しいと思います。この記事が月報に掲載される頃には、更なる進展があっていると思われますので、適宜、お知らせしたいと思います。