会長日記

2014年6月

会 長 三 浦 邦 俊(37期)

挨拶まわり続編

5月に入っても、挨拶回りが残っています。挨拶回りの主たる目的は、弁護士及び弁護士会活動のPRですが、他方で、たくさんのトップの方との面談は、貴重なご意見を伺うことが出来るまたとない機会となっています。

弁護士会、弁護士として耳の痛い話

何人かの方から、「弁護士さんは、敷居が高いですね。」というお話を頂戴しました。どういう趣旨ですかとお話を伺うと、どうも何か相談するにしても、先に相談料、お金のことを言われて、何でもお金がかかるというイメージがあるようです。実際は、福岡県弁護士会で実施している相談の6割は無料相談となっていることや、知り合いからの簡単な相談などはチャージしないことや、具体的な依頼となった場合には相談料分は着手金に内入れすることなどを説明し、さらには、弁護士会としても、個々の弁護士が一般の市民の方や中小の事業主の方などと携帯電話の番号を交換しあって、気軽に相談できるような関係を目指しているとの説明をして、漸く納得してもらったという場面もありました。弁護士の方は、明朗会計、判り易さのつもりで、従来から30分、5,000円(税別)と説明していたものですが、これを高いと感じる向きもあるというご指摘であるとも理解された話で、弁護士会としてもキャッチコピーを考えるべき時かとも思われました。他方で、法律相談には医療保険制度のようなものがないのであるから、一律5,000円というのは市民感覚からは高いのかもしれないとも思った次第です。弁護士としては、今後、良く考えるべき点だと思いました。

弁護士の費用と委任契約

さらに付け加えると、弁護士と依頼者の方との関係は、委任契約であることが浸透していないのかもしれないとも思いました。事件の着手金、報酬金が、一般的にはなんとなく高いというイメージがあるのかもしれません。しかし、この点は具体的事件の依頼となる場合は委任契約ですので、現在では、弁護士側から報酬規程を添付した見積書が出て、高いか、安いか、妥当かという意見を言ってもらって、委任契約書を締結することになっていますとの説明をすると安心して頂けました。この点も、当会のホームページ上では今一つはっきりしない感じで、HP委員会で検討してもらいたいと思った次第です。

弁護士会の人権擁護活動と公益活動について

「弁護士は、基本的人権の擁護と、社会正義の実現を使命としています。」という点については、「福岡県弁護士会の人権擁護活動」を手渡しながら、これも時代と共に少しずつ進歩していますと説明しながら、自然と法律事務所や相談所で相談者を待っていればよかった時代から、弁護士が救済の必要な人のもとに出向かなければならない時代になっていますと話をしている自分に気がつきました。従来の弁護士会の人権擁護活動は、人権救済申立を待って調査を開始するというスタイルでした。ところが、お年寄りや子供たちの中には、「助けて!」という声すら出せない、自分の権利が害されているという認識すらない場合があって、救済の必要性、緊急性が高いというケースがあります。団塊の世代が要介護の時期を迎えるまで数年しかないというのが時代認識で、これに対して弁護士がどう向き合うのかが問われていると感じます。翻ると、弁護士が出向かなければ権利救済に結びつかない、出向けば何とか救済につながるという事案は、福祉の分野に限らず、少なくないと思われます。法テラスから要請があっているだけでも、保護観察所、刑務所、拘置所などの刑事施設、福祉事務所、出入国管理事務所などでの出張相談があります。人権侵害事案であるとすれば、弁護士会として出向かないという選択はないと思いますし、思わぬ業務開拓につながるかもしれないと思います。

法教育の話

地方公共団体を訪問した時には、行政の長の方々に意識して法教育の活動の話をしてみました。案外、法教育の活動が知られていないことにびっくりしました。子供がルール作りを学ぶことは、自分の頭で考える訓練となって、人材育成の格好の手段となると思われることや、弁護士会の予算で法教育の講師派遣をしていることなどをさっそくお話ししてきました。

新しい時代と弁護士業務

挨拶まわりをしながら肌で感じたことの一つに、九州、福岡においても、確実に国際化の波が来ていることがありました。企業だけではなく、行政や業界団体などあらゆる組織が、海外との関係を重視していく方向にあります。弁護士業界においても、最早、渉外事件は、東京、大阪だけの事件ではなく、九州においても中小企業の海外進出のサポートをする体制が整ってきています。裁判の件数が増えていない一方で、弁護士の数が増加しているので、相対的に事件が減ったという声を聞きますが、時代の変化に応じて、海外展開や、中小企業支援、行政との連携など新たな分野に積極的に取り組む必要があることは疑いないと思います。色々な分野に出ていって、誰でも気軽に弁護士に相談できるような体制を作っていかなければ、時代に取り残されると思います。