福祉弁護士のワークシート

西日本新聞に連載された「福祉弁護士のワークシート」を同新聞社の了解を得て、転載したものです。

交通事故の賠償請求は(2002/7/25)

年金で暮らすOさん(70)が道路で車にはねられ、数日後に病院で亡くなってしまいました。Oさんの奥さんは加害者に対して賠償を請求しています。

まず、この場合に考えられる主な損害費目は、1:入院治療費 2:葬祭費 3:死亡による逸失利益 4:慰謝料です。損害額については、自賠責保険(いわゆる強制保険)の支払い基準が最低限の目安(「自賠責基準」)としてありますが、財団法人「日弁連交通事故相談センター」では、裁判になった事例を多数研究して、二年おきくらいに基準を発表しています。これを「青本」と言います。

2:について、自賠責基準では、六十万~百万円とされています。青本では、葬儀関係費(墓地・仏壇なども含む)として百三十万~百七十万円を提示しています。

3:についての基本的な計算方法は、年金収入額×(1-生活費割合)×(平均余命年数の二分の一の期間に対応するライプニッツ係数)ということになります。自賠責基準では、生活費割合は被扶養者があれば35%、なければ50%とされています。青本では、もう少し幅があります。

ライプニッツ係数とは、将来の何年か分の年金を今もらう計算をするため、年五分の利息が付くと仮定し、その利息分をあらかじめ差し引いたものです。最近の裁判例では五分の利率は高すぎるとして、さらに低い利率の控除も認められるようになっています。

4:について、自賠責基準では、死亡本人三百五十万円。遺族の場合は、請求者が一人なら五百五十万円、二人なら六百五十万円、三人以上なら七百五十万円、被扶養者があれば、さらに二百万円加算とされています。青本では、一家の支柱か否かなどによって、二千万~三千万円という幅のある設定をしています。

Oさんにも落ち度があれば、1~4の合計額に過失割合が掛けられ、そこから既払金が差し引かれます。事故に遭わないよう注意して、し過ぎることはありません。

弁護士 古賀美穂