福祉弁護士のワークシート

西日本新聞に連載された「福祉弁護士のワークシート」を同新聞社の了解を得て、転載したものです。

訪問販売(2002/1/31)

不要品を買ってしまった。

Sさんは、軽い痴ほう症状がある一人暮らしの女性です。そのSさんが訪問販売で必要のない高価な着物を買ってしまいました。たまたま、訪れた娘のTさんがそのことを知り、解約してお金が取り戻せないかと福岡県弁護士会の「あいゆう」(高齢者・障害者支援センター)に相談をしました。Tさんとしては次のような手だてを講じることができます。

  1. クーリング・オフ
  2. 指定商品(家電品、装身具、衣類、寝具、化粧品、なべ、仏具、墓石など日常生活で取引される五十五品目)を訪問販売で購入した場合は、契約の書類を受け取った日から八日以内は、無条件で契約の解除ができます(特定商取引に関する法律九条)。着物も、この期間内であれば契約を解除して代金を取り戻すことができます。

  3. 無効・取り消し
  4. 痴ほうの程度がひどく、意思能力がないのに契約を締結したということが証明できれば、契約の無効を主張することができます。意思能力がないとまでは言えなくても、痴ほう状態につけ込んで業者が強引に商品を買わせたのであれば、公序良俗に反した契約として無効になる可能性もあります(民法九十条)。Sさんが自宅に来たセールスマンに「いらないから、もう帰ってください」と言っているにもかかわらず、セールスマンが居座ったため、困ったSさんが契約してしまったような場合や事実に反する説明でだまされて契約したような場合は、契約を取り消すことができます(消費者契約法四条)。

  5. 法定後見などの利用
  6. トラブルを事前に避けるには、Sさんのために弁護士など信頼のおける相手と財産管理契約を交わしたり、家庭裁判所に法定後見を申し立てるなどしておくとよいでしょう。こうした方法でSさんの利益を守っていく必要があります。

弁護士 田中久敏