A 「私も今年は六十五歳。でも、まだまだ心身ともに若者の気持ちだわ。夫に先立たれて十年になるけど、二人の子どもも立派に成長し、今は私だけの一人住まい。三年前からお付き合いをしている資産家の彼(70)から、プロポーズされちゃったの。今さら再婚なんて考えてもいなかったのだけど…」
B 「あらそうだったの。おめでとう、いいじゃない。老いらくの恋。老後を豊かに生きるためにも、再婚できるパートナーが見つかれば最高だわね」
A 「ありがとう。だけど、彼からは、籍を入れずに同せいして夫婦同然の生活ができないかと言われているの。私はそれでもいいと考えているのだけど、籍を入れないと私の立場はどうなるのかしら」
B 「うーん。高齢者が再婚するとなると、近い将来の相続問題が絡んで、それぞれの子どもたちといさかいが起こったりしていやな思いをすることもあるわよね。彼はそのへんを考えて、あえて籍を入れずに同せい(内縁関係)すると提案したんでしょうね。」
A 「そうだったの。じゃあ彼の言うとおりにしようかしら」
B 「ちょっと待って。確かに内縁関係も次第に法的に保護されてきてはいるわ。例えば、内縁の妻も内縁の夫に対し、同居・協力・扶助、貞操などの義務を尽くすよう求めることができるし、内縁関係が解消された場合には夫婦が共同で作った財産を清算するよう求めることもできるわ。でもやっぱり、正式な婚姻関係にある妻の座に比べたら、及びもつかないわ。大きな違いは、彼が死亡した場合、あなたに相続権がないことよ。彼に相続人がいない場合に限って、特別縁故者として遺産の分与を受けられるだけよ。もし彼が痴ほうや寝たきりになった場合、彼の介護とかあなたに相当の負担がかかっても、法的にはあなたが保護されないことも考えられるわ。彼への返事はじっくり考えて、彼ともよくよく話し合ってからにしたら」
弁護士 羽田野節夫

