福岡県弁護士会コラム(弁護士会blog)

転ばぬ先の杖

2016年11月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第28回) 「整骨院での施術について」(交通事故委員会)

会員 黒野 賢大(64期)

1 はじめに

この「転ばぬ先の杖」シリーズは、月報をご覧になった一般市民の方に、法的な取り扱いや弁護士の取り扱い業務を知っていただくためのコーナーとなっております。

今回は、交通事故委員会から交通事故の際の賠償問題について取り上げたいと思います。

2 交通事故の被害に遭われた方で、「整骨院に通院したいが、病院に許可をもらわないといけないのか」「整骨院への通院を保険会社から打ち切る旨の連絡が来たがどうしたらいいのか」といった内容の相談を弁護士が受ける場合があります。

そこで、被害者の整骨院への通院の際の施術について、実務上の取り扱いについて紹介したいと思います。

3 判例・実務上、整骨院での施術費が交通事故の賠償として認められるためには、原則として、医師の同意(施術についての指示を受けること)が必要とされています。

もっとも、医師の指示を受けなければ全く認められないものではなく、下記(1)から(5)の事情や、患者(被害者)側の事情(整形外科への通院の困難性、副作用回避、時間的拘束)等を考慮して適正な範囲で施術費が認められるものと考えられています。

  1. 施術の必要性 → 施術を行うことが必要な身体状況にあること。これは、各施術が許される受傷内容であることを前提に、従来の医療手段では治療目的を果たすことが期待できず、医療に代えてこれらの施術を行うことが適当である場合、又は、西洋医学的治療と東洋医学に基づく施術とを併施することにより治療効果が期待できる場合である必要があると考えられています。
  2. 施術の有効性 → 治療の効果(症状緩和の効果)があることが必要と考えられています。
  3. 施術内容の合理性 → 受傷の程度や症状の程度に応じたものであることが必要と考えられています。
  4. 施術期間の相当性 → 受傷の内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度などから施術を継続する期間が相当であると判断できなければなりません。
  5. 施術費の相当性 → 報酬金額が社会一般の水準と比較して妥当であることが必要だと考えられています。

4 上記のような取り扱いによれば、整骨院での施術についての医師の指示がない場合で、整骨院での施術内容に全く変化がなく、施術の効果が全くなく、1年間整骨院に通い続けた場合に施術費が賠償されないということは想像できると思いますし、一方で、事実上、整骨院の通院を保険会社が承諾して、数か月の通院であれば、それほど問題なく施術費全額を支払ってもらえることになると思います。

しかし、施術費がどの範囲で認められるかという点は、上記のように様々な事情をもとに判断されることになりますので、後から施術費の一部を賠償してもらえなかったということにならないように、早期の段階で専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

その他に、過失割合や慰謝料・休業損害の算定など、交通事故における賠償の法的問題は多岐にわたります。

早期に弁護士に相談することで、賠償にまつわる様々な悩みを弁護士に任せ、治療に集中できる環境づくりをするという意味でも、まず、お気軽に弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

5 福岡県弁護士会では、以下ように交通事故の法律相談を行っております。

交通事故無料電話相談:092(741)2270
(月・火:午後1時~午後3時30分、 水~金:午後1時~4時)
無料面接相談:お問い合わせ 092(741)3208

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2016年10月 1日

「転ばぬ先の杖」(第27回) 福岡入国管理局に弁護士を派遣する制度ができました

会員 丸山 明子(61期)

今年6月から、福岡入国管理局に収容されている外国人のために、弁護士を派遣して、相談を実施する制度の運用が始まりました。この制度は、福岡入管局に収容されている外国人が、弁護士の助言を必要とする時に、入管の職員に申し出れば、48時間以内(土日祝を除く)に弁護士が入管に出向き、無料で相談に応じるというものです。

入国管理局内の収容施設に収容される外国人は、退去強制事由に該当すると疑うに足る相当の理由があるとして、主任審査官という入国管理局の職員が発布する令状に基づき収容されており、電話などで連絡を取ったり、施設内で家族などと面会したりすることは可能ですが、施設外に出ることができません。その後の手続で退去強制令書が発布されれば、そのまま国外に退去させられてしまいます。

日本では、退去強制事由に該当すると疑うに足ると判断された外国人は全件収容するという全件収容主義が取られているのですが、収容された外国人でも仮放免許可を受ければ、施設外で生活をしながら退去強制手続を受けることができるため、この仮放免許可の申請手続で弁護士の助言や代理が必要な場合が想定されます。仮放免許可が出される場合、300万円以下の保証金を納める必要がありますが、弁護士が身元保証となる場合や出頭義務の履行に協力を申し出る場合には、仮放免許可の判断にあたり積極要素として適正な評価がされるとともに、保証金の決定に当たっても最小限の額となるよう配慮されるようになっています。

また、退去強制事由自体を争う、退去強制事由に該当するとしても在留特別許可を取ることにより退去強制を免れる、難民としての認定を求めるという場合も想定されます。この場合、その後の退去強制手続で予定される違反審査、口頭審理、異議申立、訴訟等の手続において、弁護士の助言や代理人としての活動が必要な場合が想定されます。この他、一般的な民事や刑事の法律相談にも応じています。

中国や東南アジアからの観光客の増加に加え、外国人の創業を促進するため福岡市が国家戦略特区に指定されたことも相まって、福岡を訪れる、または滞在する外国人の数は年々増加しています。万が一のため、新たに始まったこの弁護士会の取り組みについて、身近な外国人の方にお知らせください。

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2016年9月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第26回) 両性の平等に関する委員会

会員 高城 智子(61期)

この「転ばぬ先の杖」シリーズは、月報をご覧になった一般市民の方向けに、弁護士相談の必要性をご紹介するコーナーです。

今回は両性の平等に関する委員会からですので、家族、特に夫婦に関することを書こうかと思いました。ただ、法律婚の夫婦の法律問題については、弁護士への相談の必要性は既に皆様ご存じではないかと思います。

そこで、今回は、事実婚の夫婦の法律問題について、ご紹介したいと思います。

1 そもそも、事実婚とは何でしょうか。法律婚とは何が違うのでしょうか。

事実婚の定義は、人や場面によって様々あるかと思いますが、今回は便宜上、「夫婦の間に婚姻意思があり、それに基づいた共同生活が行われているけれど、婚姻届を出していない夫婦」とします。婚姻届を出していないと言う点で法律婚と区別しています。また、夫婦の間に婚姻意思がある、と言う点で単なる同棲と区別しています。

なお、これとは別に、「内縁関係」と言う言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。これも、人や場面によっては「事実婚」と別の意味に用いられることもありますが、今回は便宜上、事実婚と同じ意味として、話を進めます。

2 では、事実婚と法律婚で、その効果に違いはあるのでしょうか。

(1) まず、法律婚であれば、夫婦で新たに戸籍を作るため姓は同一になります。しかし、事実婚の場合、戸籍は変わらず、姓も同一になりません。

(2) また、子どもが生まれた場合、法律婚の夫婦の子は、夫婦の戸籍に記載されますが、事実婚の夫婦の子は、母親の戸籍に記載されます。父親の名前は、当然には戸籍に記載されないため、父子関係を記載するためには父親から認知をしてもらう必要があります。

(3) 法律婚の場合、配偶者の不法行為(例えば暴力や不貞)により離婚せざるを得なくなれば、慰謝料が認められ得ます。この場合、裁判で問題となるのは、主に、不法行為があったか否かと、不法行為のために離婚せざるを得なくなったか否かでしょう。しかし事実婚の場合、上記2点以外に、そもそも事実婚であったか否かも問題となり得ます。戸籍で証明できる法律婚と異なり、事実婚には、それを客観的に直接証明する資料が乏しいからです。そして、事実婚であったか否かは、これまでの夫婦の生活内容、具体的には、結婚式や結納をしたか、共同生活の期間や内容、住民票の記載内容(同一住民票を作成、続柄欄に「夫・妻(未届)」の記載など)、親戚づきあい(冠婚葬祭への参加)の有無等を考慮して判断されます。

(4) 更に、大きな違いとして、相続権の有無があります。法律婚の夫婦であれば、他方が亡くなった場合、残された配偶者は相続人として、亡くなった方の財産を相続する権利があります。しかし、事実婚の場合は、残された配偶者に相続する権利はありません。

そのため、例えば、配偶者が不法行為(交通事故等)で亡くなった場合、法律婚の夫婦であれば、残された配偶者が、亡くなった配偶者から加害者への損害賠償請求権を相続して、請求する事ができます。

しかし、事実婚の場合、相続権がありませんので、亡くなった配偶者から加害者への損害賠償請求権を相続することはできません。

ただ、ご自身の扶養請求権を侵害されたとして、損害賠償請求をすることは考えられますし、残された配偶者固有の慰謝料の請求も考えられます。実際、裁判でもこれらの請求が認められたケースがあります。また、加害者への請求とは別ですが、遺族年金の請求も考えられるでしょう。

この請求の可否の判断にあたっても、これまでの夫婦の生活内容や、残された配偶者の生活状況等を確認する必要があります。

3 以上のとおり、法律婚であれ事実婚であれ、法律問題は生じ得ますが、事実婚の場合、法律婚の夫婦の場合より、主張や立証が複雑になることがあります。しかし、事実婚であっても権利を行使できる場合がありますので、事実婚だからといって諦めることなく、何か気になることがありましたら、まずは弁護士に相談してみて下さい。

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2016年5月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第24回) 犯罪被害に遭ったときには・・・

犯罪被害者支援委員会委員長 藤井 大祐(57期)

1 ある相談電話

ある日、日本司法支援センター(法テラス)から一本の電話。「犯罪被害者の精通弁護士紹介ということで、傷害事件の被害について相談に乗って頂きたい」とのこと。

《法テラスは、犯罪被害者支援ダイヤル(0570−079714。http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/)として、犯罪被害にあわれた方(ご家族も)に対して、被害後の状況やニーズに応じて、さまざまな支援情報を提供しています。そして、事案の内容等によっては、犯罪被害者の支援に精通した弁護士の紹介も行い、弁護士費用等の援助制度((1)加害者への民事での損害賠償請求等について法テラスが費用立替する民事法律扶助、(2)刑事手続における加害者との対応等について法テラスが費用援助する犯罪被害者法律援助)等も準備しています。(http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/nagare/index.html)》

2 事案の内容

法テラスからの情報を元に早速、被害者の方と連絡を取ってお話を聞く。

事案は強盗致傷事件。相談に来られたのは被害者のお母様(被害者本人は未成年)で、加害者は20代の無職者。ナイフで斬りつけられるという凶悪な犯行態様であったが、不幸中の幸いにも後遺症等は残らなかったという事案。

起訴後、加害者の国選弁護人から被害者のお母様に対しては、加害者の親の捻出によるという、損害賠償金が提示されていた。

ところが、被害者のお母様としては、「加害者の刑が決まるまでは、受け取れない」として、損害賠償金の受け取りをいったん拒否し、そのまま裁判は進行。

加害者には、10年近くの懲役刑の判決が下され、一審判決で確定後、提示のあった損害賠償金を受け取りたいと、法テラスに相談されてきた次第・・・

3 手の平返し?

加害者本人は若く資力はない。では、加害者の親を訴えたところで、法的責任があるかというと、加害者本人は成人している以上、親の責任を認めさせるのはなかなか困難。

こんな説明をしつつ、一応、相談の延長ということで、加害者の国選弁護人に電話をしてみる。「いったん提示したんだし、払いませんか」と。

しばらくして回答。案の定「刑も確定したので、親御さんとしてはもう払えません」と。

4 「知らなかった」

被害者のお母様に上記報告の上、改めてお話し。

当時は、犯罪被害者の刑事裁判への参加制度も施行されたばかりであったが、参加手続は取られていなかった。被害者のお母様いわく、(今回の事件の刑事公判は全て傍聴されていたものの)そんな制度があるのは「知らなかった」、知っていれば「参加していた」とのこと。

《平成20年に施行された刑事裁判への被害者参加制度では、一定の犯罪類型について、法廷の中で検察官の横で審理を傍聴し、被告人への質問、情状証人への質問や事件についての被害者参加人としての意見を述べられるようになりました。また、この参加に弁護士の支援を受ける場合の費用援助も法テラスで受けられます(被害者参加人のための国選弁護制度 http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/trouble_ichiran/20081127_3.html)》

もっと早く弁護士なりに相談してくれれば、参加するか否かや、(賠償金受領による減刑の可能性は視野に入れつつも)相手方から提示のあった賠償金を受け取るか、判断するという選択の余地はあったのに・・・

5 所感

犯罪被害の多くは、日常生活の中に突然訪れる。警察・検察の捜査等、普段全く経験しないことへの対応をしながら、日々の生活の維持に精一杯になる。

ただ、「転ばぬ先の杖」ということで、民間の支援団体への相談や、弁護士への相談も、被害に遭った早い段階で、行って頂ければと改めて思う。

《福岡県弁護士会でも、犯罪被害者を対象にした無料電話相談を行っています。匿名での相談も承っていますので、お気軽にご相談ください。福岡県弁護士会・犯罪被害者支援センターの無料電話相談=092(738)8363(毎週火曜と金曜の午後4時~7時)。

また、福岡でも民間の支援団体(http://fukuoka-vs.net/)が存在します。こちらにもご相談下さい。》

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2015年11月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第20回) 暴力団等反社会的勢力との関係遮断の方策について

民事介入暴力対策委員会委員 藏 健一郎(55期)

暴力団等の反社会的勢力に対する規制強化の一環として、各都道府県で続々と暴力団排除条例が制定されたことは周知のとおりです。条例の内容は各都道府県により様々ですが、多くの条例では、暴力団側だけでなく、一般事業者側の行為も規制の対象となっている点に注意が必要です。

例えば、福岡県暴力団排除条例では、一般事業者に対して、暴力団員等への利益供与を禁止する規定が設けられています。具体的には、同条例第15条において、一般事業者が暴力団員等に対し、(1)暴力団の威力を利用する目的で金品等の利益を供与すること、(2)行う事業に関し、暴力団の活動または運営に協力する目的で、相当の対償のない(取引の対価に見合わない)利益を供与すること、(3)行う事業に関し、暴力団等に対し、情を知って、暴力団の活動を助長し、または運営に資することとなる利益の供与をすること、等が禁止されており、(1)に違反した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が設けられ、(2)に違反した場合も、罰則規定はないものの、公安委員会の是正勧告の対象となるうえ、正当な理由なくこれに従わない場合には公表できることとされています。

暴力団側だけでなく、一般事業者側も規制、処罰の対象とされた理由は、暴力団側のみの取り締まりでは限界があり、活動資金のもとである事業者からの資金供給を絶つことが効果的という観点によるものです。しかしながら、裏返していうと、一般事業者が暴力団側の威力に屈して利益の供与(例えば、不当に高額な商品の購入)に及んだケースでも、単純に被害者として同情されるとは限らず、場合によっては勧告・公表の対象になるわけですので、一般事業者にとって非常に怖い一面もあります。

このように、現状では、暴力団等反社会的勢力と関係をもつこと自体が、事業存続にとって大きなリスク要因となってきているといえます。事業者の皆様方におかれては、このことを念頭におかれたうえ、(1)暴力団等反社会的勢力との関係を予め遮断するよう今まで以上に注意を払うとともに、(2)仮に取引先が暴力団等反社会的勢力であることが後日判明した場合は、速やかに取引を解消できる措置を予めとっておくことが必要と考えられます。

暴力団等との関係を事前に遮断するための方策としては、事業所内部における社員教育の徹底、不当要求責任者講習の受講の他、顧問弁護士制度等を活用し、日常的に外部の専門家と連携しておくことも有効です。また、何か問題が生じた場合は、早期に関係各機関(警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等)に相談することが重要です。

一方、事後的に取引先が暴力団等であることが判明した場合の方策としては、取引契約書にいわゆる暴力団排除条項を予め設けておくことが効果的です。取引契約書の中に、(1)暴力団等反社会的勢力との取引を予め拒絶する旨の規定や、(2)取引が開始された後に相手方が暴力団等反社会的勢力であることを知った場合は、契約を解除してその相手方を取引から排除できる旨の規定(これらの規定が暴力団排除条項と呼ばれます)を設けておけば、速やかな取引解消のための大きな武器となります(前述した福岡県暴力団排除条例でも、当該条項を導入することが事業者の努力義務として規定されています)。

具体的な暴力団排除条項の作成にあたっては、各業界団体で作成されているひな型を参考にされてもよいですし、弁護士に個別に相談頂ければ、事業内容や実情に応じた適切なアドバイスが可能ですので、気軽にご利用頂けたらと存じます。

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2015年10月 1日

「転ばぬ先の杖」(第19回)

会員(消費者委員会)藤 村 元 気(61期)

1 私は現在、消費者委員会に所属していますが、電話や訪問により勧誘を受けて断りきれずに契約をしてしまったという問題にしばしば触れます。中には、一人暮らしの高齢者の方からのご相談で、お金も払ってしまったのだけれど、買った商品は言われていたような良いものではなかったので、契約をキャンセルしたいということを希望されるというようなものもあります。

もちろん、事業者の勧誘行為に不実の告知等があれば、法律上、契約を取り消すことができる可能性があります。ケースによっては、取消しを待たずとも、契約自体を無効にできるものもあるかもしれません。

しかし、この勧誘をしたのが悪質業者であればあるほど、支払った代金を取り戻すことは困難になります。悪質業者は、自らの販売方法が法に触れることを知りながら売っているわけですから、そもそも名前や所在を明確にしていなかったり、また、一定の量が売れて苦情が出始めると行方をくらませたりして、回収を困難にしてしまいます。

勧誘されても、その都度きちんと断ることができればいいかもしれませんが、突然勧誘を受けることで慌ててしまい、言葉巧みに契約を締結させられてしまう例は後を絶ちません。そうだとすると、現状、市民の方々にとっては、そもそもこのような勧誘に巻き込まれないことが望ましい、ということになろうかと思います。しかし、どうすれば勧誘に巻き込まれないようにできるのでしょうか。これはとても悩ましい問題です。

2 そこで、今、特定商取引法に「事前拒否者への勧誘を禁止する制度」を導入しようということが提案されています。

「Do-Not-Call制度」、「Do-Not-Knock制度」という二つの制度を合わせたものを「事前拒否者への勧誘を禁止する制度」と呼んでいます(日弁連「特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書」2015年(平成27年)7月17日参照)が、これは、海外でも比較的広く導入されているもので、どちらも、電話勧誘や訪問販売による勧誘を受けたくない消費者が、事前に登録などをすることによって、それらの勧誘を受けたくないという意思を示すことができるようにしておき、事業者は、そのような勧誘を拒否している消費者に対して、電話勧誘や訪問販売による勧誘をできないようにする、というものです。さらに、「Do-Not-Knock制度」においては、登録をすること以外にも、「訪問販売お断り」というようなステッカーを貼っていれば、そのような家への訪問販売を禁止するという制度も検討されています。

消費者の中には、欲しい物は自分で調べて買うから、勧誘は一切受けたくない、という方もおられると思います。そのような方は、予め電話勧誘や訪問販売勧誘を受けたくないということを登録などしておけば、個別に事業者とやり取りをせずに済むことになります。

3 もちろん、この制度については、登録した情報が適切に管理されるか(登録した情報が却って悪用されてしまうことになると本末転倒になってしまいます。)などといった課題もあります。

そこで、制度の導入にあたっては、リスクをいかに管理するのかということについても十分に検討される必要がありますが、「その都度その都度断るのは大変。」という思いを抱いておられる方や、「きちんと断れないかもしれない。」と心配される方にとっては、この制度が導入されれば、とても有益な「転ばぬ先の杖」になるのではないかと思います。

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2015年9月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第18回) 「交通事故に遭ったら早期に弁護士に相談を。」

会 員 宮 田 卓 弥(55期)

私の所属する事務所は、交通事故の案件を比較的多く扱っています。

この「転ばぬ先の杖」のコラムとして、交通事故の弁護士への相談を取り上げたいと思います。

交通事故は、日常生活の中でどんな方にも起こる可能性のある事ですが、ひとたび事故に遭うとその後の人生を左右するような事態にもなりかねません。その中でも、私がご相談を受ける中で感じることが多い、交通事故に遭った場合の早期相談の重要性について述べたいと思います。

1 交通事故発生件数の多さ

福岡県は他県に比べて交通事故が多く、平成25年には、4万3678件発生しています。この件数は、全国でワースト3位であり、福岡での交通事故の多さを物語っています。

実際に私たち弁護士が受ける相談においても、福岡県内での死亡事故、介護を要するような重大事故も多く、被害者救済の重要性を痛感しています。

2 早期相談のすすめ

私たち弁護士による交通事故被害者の救済という活動を行っていく中で、特に重要だと感じることがあります。

それは、交通事故直後のできるだけ早い時期に、弁護士に相談・依頼をすることです。

交通事故の被害に遭うのは、ほとんどの方が人生に一度のことです。突然の事故の後に、ご本人だけでなくご家族の方々も心身共に余裕のない状態で、警察、病院及び保険会社等様々な対応を求められます。何の知識もない状態では、どこに相談し、どんな対応をすればいいのか分からないというのが事故に遭われた多くの方の実情です。

しかしながら、事故後に警察、病院及び保険会社等へ適切な対応を行うことが、その後受取ることが出来る補償内容に大きく影響します。弁護士が早期に介入することにより、事故に遭われた皆様の悩みをお聞きし、関係各所に適切な対応を行うことが可能となります。

また、後遺症が発生しそうな重大な交通事故の場合には、症状固定の前に、弁護士への早期の相談が特に重要だと考えています。

なぜならば、交通事故によって後遺症が残りそうな場合には、交通事故の直後に適切な治療を受けていることや、後遺障害診断書の内容が適切かどうかによって、被害に遭われた被害者の方の実際の後遺症に見合う後遺障害等級が認定されないおそれがあるからです。適切な後遺障害等級の認定を受けるか否かによって、金額にして数千万円の賠償金の違いが出てしまう場合があります。適切で十分な補償を受けることは、ご本人やご家族が抱えて行くかもしれない負担を少しでも軽減できると思われます。

早期に弁護士に相談することで、症状固定の前の段階から、後遺障害の認定における対応や、その後の生活のことまで見据えたアドバイスをすることが可能なのです。

3 弁護士費用について

弁護士費用についてご心配される方も大変多いです。ご相談のタイミングが遅くなることの原因の一つではないかと考えています。

交通事故による怪我で就業が出来なくなっておられる方にも、早くご相談いただきたいのですが、ご本人の収入が絶たれていることにより費用の面で、躊躇されることも無理はないと思います。

しかしながら、交通事故の場合、法律相談料が無料であったり、弁護士費用を後払いにしてもらえる場合も多くあります。

さらに、ご自身又はご家族の自動車保険に「弁護士費用等補償特約」がついていれば、弁護士に依頼した場合の着手金や報酬金が、通常300万円までは、保険会社が支払ってくれます。つまり、弁護士費用が300万円の金額の範囲内であれば、弁護士費用を自己負担なく弁護士に依頼し、示談交渉や裁判を進めることができます。

このように、交通事故の相談に関しては費用の面でもご心配いただくことが少なくなってきていますので、お早めに弁護士にご相談いただく事をお勧めします。

4 弁護士の探し方

弁護士会の相談センターで相談する方法がありますが、最近では、インターネット検索で弁護士を探される方も多くいらっしゃいます。
交通事故に遭われた方が、情報収集にパソコンやスマホを使用される方も増えてきていると感じています。弁護士をお探しの方は、そのような情報発信を参考にされて、弁護士を探されてみるのも一つの方法ではないかと思います。

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2015年8月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第17回) 困ったときの生活保護

生存権の擁護と支援のための緊急対策本部 事務局長 城 戸 美保子(60期)

ある日、事務所に一人の男性が借金のご相談にみえました。見るからに思い詰めた様子です。

聴き取りにより、自営業のため多額の借金があり妻が連帯保証していること、スーパーの乱立で売上は減少の一途をたどっていること、毎月の返済額が売上を大きく上回っていること、買掛金の滞納のため現金でしか仕入れできなくなったこと、現金で仕入れたものを売って生活費を工面していること、家賃滞納のため明け渡しを迫られていることなどがわかりました。男性の語り口から商売への思い入れと返済への強い気持ちを感じました。しかし、これ以上経費を切り詰めようがないとのこと。そこで、売上回復の見込みがないのであれば廃業した方がいいこと、就職しても返済は無理なので破産したほうがいいこと、就職し収入が得られるまでは生活保護を利用できること、自宅の明け渡しを迫られていることを保護課に伝えれば引越費用などを出してもらえること、保護課に対応してもらえなかった場合は弁護士が同行申請すること、弁護士費用は国の立替払制度を利用できるので心配しなくていいことなどを説明しました。

男性は、野宿しなくてよいこと、返済や生活費に頭を悩ませる必要がないことなどが分かり、安心されたご様子でした。

後で分かったことですが、男性はこの日活路が見いだせない場合は自殺しかないと思い詰めていたそうです。自分のアドバイスで自殺を食い止められたことを知り、生活保護の知識を持っていたことに感謝せずにはいられませんでした。

後日、ご夫婦で事務所に来られた際、すでに生活保護を申請したことを確認し、改めて破産手続等について説明しました。

その後、離婚したいとの妻からの電話を受けたため、事務所にお越しいただきました。話しを聞くと、連帯保証に対する誤解などから、夫のせいで破産させられるというお気持ちを持っていることがわかりました。そこで、離婚は当事者の自由なので破産申立代理人がとやかくいえる筋合いではないと断った上で、連帯保証契約を理由に返済義務が生じるため離婚によって破産を免れるわけではないこと、離婚すると保護費が減ること、返済を希望するのであれば保護は受けられないこと、返済を希望するのであれば直ちに就職活動を始めた方がいいことなどをアドバイスしました。その上で、よく考えた上で最終的に離婚するかどうか連絡して欲しいと伝えました。なお、離婚の決意が変わらない場合、先に夫の破産の相談を受けているため、利益相反の観点から、今後の破産や離婚の相談は別の弁護士にしてもらう必要があると付け加えました。

後日、妻から電話がかかってきて、就職活動を始めてみたが面接すら受けさせてもらえないこと、離婚を希望したのは連帯保証債務を誤解していたことが大きいので、離婚を思い直したと伝えられました。

その後、破産手続開始申立準備中に多少のすったもんだはありましたが、そのつど辛抱強く説得を続け、申立を行い、無事、破産手続開始決定及び免責許可決定を受けました。

今回、男性を自殺から救え、離婚危機も回避できたのは、日頃から、代理人弁護士として、債務整理や生活保護や離婚事件を受任し、活動していたおかげだと思います。

自殺や虐待や一家心中のニュースを聞く度に、「弁護士に相談してくれさえいれば、救えたかもしれないのに。。。」と思わずにはいられません。福岡県弁護士会も数多くの無料法律相談のメニューを持っています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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2015年7月号 月報

「転ばぬ先の杖」(第16回)

会 員 中 野 俊 徳(56期)

1 はじめに

一般市民の皆様に弁護士の必要性を考えていただくためのリレーコラム「転ばぬ先の杖」ですが、今回の執筆は筑豊部会から私が担当させていただくこととなりました。

日頃、主に個人の方を相手に法律相談・依頼を受けている中で、「もっと早く弁護士にご相談いただいていれば」「弁護士に依頼されていればもっとうまく話が進むのに」と感じることは多く、今回は相続の場面をテーマに、そのような話をさせていただきます。

2 遺言書の作成

法律的なトラブルはいったん発生してしまうと、放置していても自然に収まることは少なく、問題が複雑化・拡大してしまうものです。

例えば、子ども達の間で親の面倒を誰が見るのかという問題があった場合、親と一緒に(あるいは親のすぐ近くに)住み、親の財産の管理を手伝いながら親の面倒を日常的に見た子と、親から遠く離れた場所に住み、金銭的な援助はしつつも、親の財産の詳細を知らないままの子との間では、親が亡くなった後の相続のトラブルに複雑化・拡大しやすいものです。

親から離れて暮らしている子は親と一緒に住んでいる子が親の財産を使い込んでいるのではないかと不信感を持つことが多く、親と一緒に住んでいる子は親の世話というお金に換えられない苦労を負わされた自分が遺産を多く相続するのは当然だと思うことが多いからです。

最近、そうしたトラブルが自分の死後に発生することを心配して、遺言書の作成を考えられている方が増えているように思います。

しかし、遺言書はその作り方次第ではトラブルを防止できず、かえってトラブルを拡大してしまうこともあります。

例えば、いつも自分の世話をしてくれる子に遺産の全部を渡すという内容の遺言書を残した場合、それでも残りの子には遺留分という遺産の一部を受け取る権利がありますから、その遺言書がトラブルを防止する役割を果たすとは限りませんし、遺言で遺産をもらえなかった子から恨まれることにもなりかねず、感情的にもトラブルが拡大してしまいます。

その他にも、遺言書はその作成方法が厳格に規定されていたり、記載の仕方によっては無効になったり、記載内容をどのように解釈するべきかでかえって相続人の間でトラブルの元になったりしますので、遺言書の作成をお考えになった際には、ぜひ弁護士にご相談いただきたいと思います。

3 遺産分割の話し合い

相続人の間で遺産分割を話し合う場面においても、弁護士にご相談ご依頼いただいたほうが、自分の権利を守れたり、話がスムーズに進むということが多いように思います。

遺産分割と言っても、今残っている遺産を法定の相続分(相続割合)に従って分ければ済むという単純な話ばかりではありません。

例えば、亡くなった方が生前に多額の贈与をしている場合、それがいつ誰に対してどのような目的でなされたものか、によって、遺産分割に影響を与える話になりうるのです。

遺産分割は、そのような意味で、単に遺された財産を分けるという話ではなく、亡くなった方と相続人らとの間の長い期間における家族関係の財産的な清算という意味合いもあり、そうした長い期間の膨大な事実の整理と、それぞれの事実の法的な意味の確認をするうえで、弁護士にご相談ご依頼される意味はとても大きいと思います。

4 インターネットの情報

インターネットが発達し続けている現在、インターネットで調べるだけで様々な情報を極めて低廉な費用で入手することが可能であり、最近では法律相談に来る前に、弁護士の多くも知らないような細かな情報を確認してきている相談者の方も珍しくありません。

しかし、インターネットの情報は正確性・信頼性が必ずしもあるとは言えず、また、特定の事案にしか該当しない断片的な情報であることも多いので、インターネットで得た情報を信じるのはかえって危険な場合もあることに注意しましょう。

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2015年5月 1日

「転ばぬ先の杖」(第14回) 「相続放棄という制度もあります。」

会 員 吉 武 みゆき(59期)

1 はじめに

この「転ばぬ先の杖」シリーズは、月報をご覧になられた一般市民の方向けに弁護士相談の必要性を紹介するコーナーです。

今回は、日頃法律相談を受けていて意外に知られていないと感じる、相続放棄の制度についてご説明します。なお、条文や判例を示しての説明を好まれる方もおられますので、簡単に触れています。

2 相続放棄とは

相続では、通常+の財産だけではなく−の財産も相続します。+の財産も−の財産もひっくるめて相続自体がなかったようにする方法が相続放棄です。

3 手続

相続放棄をするには、被相続人が亡くなったことを知り、かつ自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する必要があります(民法938条、民法915条1項本文)。

家庭裁判所に行けば相続放棄のための所定の用紙をもらえますし(最高裁判所のHPからダウンロードすることもできます。)、戸籍等必要な添付書類も教えてくれます。遠方の役所から多数の戸籍の取り寄せが必要になって間に合わなければとりあえず事情を説明の上申述書を先に3ヶ月以内に提出し、後日添付書類を提出することもできます。

家庭裁判所は調査の上、要件を欠くことが明白でなければ相続放棄の申述を受理します。

4 申述期間の伸長

+の財産が多いのか−の財産が多いのか、遺産があるのかないのかさえ不明で、相続放棄するべきかどうかわからず、遺産調査が必要なこともあります。また、事故や過労死の場合など相続人が亡くなった責任を第三者に追求できる可能性があり相続放棄するかどうか慎重に検討すべき場合もあります。

このような場合には家庭裁判所に申立てをして、原則3ヶ月とされる熟慮期間を伸長することができます(民法915条1項但書)。調査に時間を要することが判明した場合にはその旨家庭裁判所に申立てをして再度期間を伸長してもらえることもあります。

5 熟慮期間の起算点の繰り下げ

遺産はないと思っていて何も手続をせず熟慮期間である3ヶ月を経過した後に、督促状が届いて多額の借金(多額の遅延損害金がついていることもあります。)を抱えていたことがわかったという場合、相続放棄ができないと諦めてしまうのは早計です。

最高裁判所は、熟慮期間の起算点について「相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時またはこれを通常認識しうべき時から起算するべきである。」と述べています(最高裁判所昭和59年4月27日判決)。

先の事例でも、熟慮期間の起算点を遅らせて督促状が届いた時とみることができれば、まだ熟慮期間である3ヶ月以内の要件を満たすとして相続放棄が認められる可能性があります。

起算点の繰り下げは個別事情が考慮されますので、見通しについて事前に弁護士と相談してみてもよいでしょう。

6 弁護士への相談

相続人になった場合ひとまず弁護士に相談に行き、一緒に問題点を整理してみられてはいかがでしょうか。

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