弁護士会会員によるコラム

月報記事

2002年5月号 月報

NHK「クローズアップ現代」放映される。 

池田耕一郎

1 はじめに

NHKで特集が組まれるという話が出たのが1年あまり前。前日弁連副会長春山九州男先生(平成12年度県弁会長)から指示を受け,子どもの権利委員会内でNHK対策チームを立ち上げたのが昨年10月。その後,委員が手分けして,扶助付添人の報告書として保管されていた珠玉の付添人活動事案から選りすぐり,事件を担当された先生方に委員が取材にうかがい,さらに,その取材結果を持ち寄り,委員会において議論を戦わせました。取材にご協力いただいた先生方,ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

2 番組の内容

番組では,福岡県弁護士会の迫田登紀子会員が担当した事例と大谷辰雄会員が担当した事例とが取り上げられました。

少年は,当初,自分の彼女に対し,「何でオレが逮捕されとーとかいな。」と書いた手紙を送っていましたが,審判直前には,自分の両親に対して,「悪い流れから抜け出せず,何度も同じ結果を招いた自分に腹が立っています。僕は,今,人生の途中で大きな岐路に直面しているようです。」と書いて送るようになりました。

少年は,少年院送致(短期処遇)となりましたが,迫田会員を,「自分自身が変わるためのきっかけになってくれた。」と語る少年の姿に,付添人活動が大きな形となって実を結ぶさまを目の当たりにしました。

また,大谷会員の担当した事例は,19歳の少年が,自動車を運転中,他のドライバーとけんかになり傷害で逮捕されたというもので,付添人の大谷会員との交流の中で,被害者の傷害の程度を知らされ,自らのわずかな収入の中から少しずつ被害弁償金を捻出して大谷会員に預ける姿があり,そこには付添人がいなければ実現しなかったであろう,真摯に「被害者」という存在を受け止めていく少年の姿が現れていました。

大谷会員が担当したもう一つの事例では,傷害,恐喝で逮捕された17歳の少年が,数ヶ月間の試験観察の過程で,大谷会員と対話をしていく中で,次第に心を開き,自分自身を見つめ直していく姿が描き出されていました。

少年事件に弁護士が関わるという事実だけから,「少年に甘くなるのではないか。」という反発が聞こえそうですが(実際に,番組内でもこの点が指摘されました。),番組では,弁護士付添人=少年に対する甘やかし,という図式ではなく,少年の改善・更生を図る上で,少年の処遇を決定する過程にさまざまな人々が関わっていくプロセスの重要性,付添人の存在によって少年の処遇に関する選択の幅が広がることの意味が的確に指摘されていました。これにより,付添人の存在意義が市民にわかりやすく伝わったのではないかと思います。実際,番組視聴者からのモニターリポートの結果にも,そのことが裏付けられています。

3 制作現場における真摯な取り組み

NHK福岡放送局の加治記者は,借り物の知識・理解ではなく,少年自身・事件そのものにぶつかっていこうとされました。ある日の未明,少年の保護者から加治記者の携帯電話に,少年が事件を起こしたとの一報が入ったのですが,これも,加治記者が,「一人の人間」として番組制作に取り組まれたことを象徴するエピソードといえましょう。藤吉記者は,全件付添人制度発足前から福岡県弁護士会の取り組みに注目されていた方で,今回の番組制作にあたっても,各方面にきめ細やかな対応をされました。さらに,黄木副部長の鋭い洞察と英断,ここぞというときの行動力,宮城ディレクターの編集のご苦労がなければ,番組は実現しなかったであろうという経緯を,春山九州男先生主催による番組「祝勝会」で感慨深く聞きました。

4 家裁,鑑別所の絶大なご協力

番組が成るにあたっては,川本隆前所長をはじめとする福岡家庭裁判所の方々,福岡少年鑑別所の方々に,福岡県弁護士会の取り組みをご理解いただき,実に積極的にご協力いただきました。心から感謝申し上げます。

その多大なご協力がなければこれだけ深い感銘を与える番組は成立しなかったでしょう。そのことは,番組内にちりばめられた貴重な映像をご覧いただけば,おわかりいただけるはずです。

5 結 語

付添人活動をしていく中で,ふと,「付添人は何のために存在するのだろう。」とか,「付添人は少年とどのように接していくべきなのだろう。」と,実に単純でありながら,難解な疑問にぶつかるときがありますが,この番組を観れば,目の前の霧が晴れていくような心持ちになるでしょう。

番組の中で,東京経済大学教授(元裁判官)の守屋克彦先生から,「全件付添人制度の試みは,ほぼ弁護士の手弁当で行われているが,福岡県弁護士会の積み重ねが将来の制度改正につながってくれれば,各弁護士の熱意も通じることになるのではないか。」とのお言葉がありました。

福岡県弁護士会での制度開始から1年を経て,全国でも少しずつ,制度を実施に移す単位会が出てきました(福岡県の制度よりも規模を縮小した形ではありますが。)。しかし,依然として,東京,大阪,名古屋など,多数の会員を抱える地域で,いまだ制度が実現されていない現実があります。

このような状況の中,今回の番組は,マスメディアを通じて世論に訴え,制度を全国に広め,ひいては,被疑者国公選と共に,「国公選付添人制度」を実現するため大きな意味をもつものでした。

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クリーンパーク臨海、和白干潟視察報告

武藤糾明

たいへんまじめかつ熱心な委員会として広く知られている公害環境委員会は、2001年度の活動の締めくくりとして、3月22日に、貝塚のクリーンパーク臨海と、和白干潟の視察を行いました(参加者は、堀、藤井、高橋(謙)、日野、吉野、長戸、黒木、武藤の各委員と、修習生)。

1 クリーンパーク臨海

今回訪れたクリーンパーク臨海は、貝塚の近く、博多湾に臨んだ地点に位置する2001年4月に稼働を開始したばかりの大型焼却施設を中心とする施設です。福岡市環境局施設部臨海工場の工場長である、真藤正明さんの御案内で施設を見学し、お話を伺いました。

福岡市及びその周辺地域の家庭から出る可燃ゴミは、4つの焼却施設で焼却処理されています。この施設はそのうちの一つで、24時間連続運転のストーカ炉で、1日300トンの焼却能力を持つ炉が3基という、巨大な焼却場です。

クリーンパークという名称は、焼却施設を中心として、リサイクルプラザや、焼却により発生する余熱を利用する施設(タラソ福岡)などの付帯施設を包括する構\想に基づくものだそうです。

搬入された可燃ゴミは、ゴミピットにいれられ、ゴミクレーンにより攪拌され、ゴミ質の均質化が図られます。その後、焼却炉のホッパに投入され、1時間ほど乾燥された後、焼却炉に入ります。ここでは、ストーカと呼ばれる、可燃ゴミを少しずつ前に押しやっていく装置により、燃焼を続けながら、可燃ゴミは焼却炉の下部にゆっくりと押されて行きます。燃焼ガスはボイラに入り、その熱は発電にも利用されながら、減温装置、バグフィルター、排ガス洗浄装置、再加熱器、触媒脱臭装置を通って煙突から排出されます。

焼却施設の見学については、小学4年生向けの内容とはいえ、施設の内容や、見学の順路を明らかにしてゆくハイテク技術を駆使したシステムにより、分かりやすく行われました。ただ、肝心の焼却炉や、その後の排ガスの処理システムについての見学がほとんどなかったのが残念でした。

ダイオキシン類の排出基準(0.1ng-TEQ/Nm3)を守る設計ということなので、ゴミ問題に重大な関心を持つ委員から次々に質問が出て、たいへん活発な質疑応答がなされました。

3基ある焼却炉ですが、炉ごとに1年に1回、1か月ないし1.5か月定期修理を行い、1年に半月は全炉を止めて点検を行うそうで、2基を常時運転させるというのが原則だということでした。

ゴミ質は、30%ないし40%が水分で、35%程度が紙ゴミ、15ないし20%がプラスチック、10ないし15%が生ゴミです。

一番難しいのがゴミの均質化で、水分が多かったり、プラスチックが少ないと、燃焼が不均質になり、ゴミ投入により燃焼温度が下がりすぎるそうです。クレーンによるゴミの攪拌により、焼却に適したゴミを「作る」のだ、という説明がなされました。

焼却炉の燃焼室の温度を850℃以上に保つための手段として、ストーカの下から吹き込む空気の量を調節したり、ストーカがゴミを送る速度を調節したりするということでした。

ボイラ出口の排ガス温度は300℃であり、エコノマイザの部位に来てようやく200℃になるということでした。

本件施設では、排ガス洗浄という処理過程(塩酸や硫黄酸化物などをとる湿式のシステム)が少し変わった処理ではないかと思います。

質疑の中で特におもしろいと思われるのは、以下のやりとりです(少しマニアックですが)。

  1. ガス化溶融炉を採用しなかったのはなぜですか?−実績がないからです。
  2. 立ち上げ、立ち下げ時は、850℃にしてからゴミを投入するなどの方法をとっているのですか?−いいえ。バーナーで400℃にしてからゴミを入れ始めます。すると徐々に温度が850℃に達していきます。立ち上げ、立ち下げ時の低温下はやむを得ないと考えています。

なお、T委員は、リサイクルプラザで販売していた古書をたくさん購入し、資源循環の取り組みを実践しておられました。

2 和白干潟

4600億円をかけて遂行されている人工島埋め立て事業では、異例にも知事の意見書として「環境に与える影響を懸念」する内容であったほど、和白干潟に対する大きな打撃が予想されています。

現地は、渡り鳥の2通りの渡りのルートが交差しているところで、極めて多様な生物が観察される貴重な干潟です。堀委員長の熱い説明と、双眼鏡の先のツクシガモ、オナガガモ、ミヤコドリなどを見ながら、これらの生物は、誰の利益のためにその生活環境を奪われるのだろうか、ということを考えざるを得ませんでした。

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2002年6月号 月報

福岡刑務所に行って来ました

あけぼのL/O 川越

『善良な市民』を自負する私がなぜ刑務所に???

答えは簡単。三月一二日の弁護士会主催の刑務所見学に無理言って参加させてもらったのです。なかなか貴重な経験をさせていただいたので、簡単に報告を。

総勢約二〇名(そのうち事務員さんは三名)が弁護士会館前より貸し切りバスに乗り込み、全員にお茶が配られいざ出発!目指すは宇美町の福岡刑務所。バスに揺られること四〇分。ようやく人里離れた山奥へと辿り着きました。

最初に通された会議室に鞄や携帯電話を置いて所内を見学。所長を先頭に炊事場(小学校の給食室みたい)、洗濯室、作業室(イメージは家庭科室と工作室か)、房(共同、単独それぞれ)、工場(広っ!)、グラウンド、講堂、医務室(手術室も完備。人工透析設備もあり)などの施設を回り、受刑者の暮らしっぷりを堪能した後にまた会議室へ。

そこで、受刑者の昼食を見学者全員で試食しました。献立は、さんまの塩焼き(一匹丸ごと!)に肉じゃが、小鉢に麦ご飯でした。お味は薄味・塩分控えめでした(濃い味好きには物足りない?)が、プラスチックの食器といい、なんとなく学食の定食みたいでした。弁護士は全体的にあまり箸が進んでいないようでしたが、悲しいかな、日頃自分が食べているものより美味しいかも、、、と思った私であります(親が読んだら間違いなく泣くな)。緻密にカロリー計算されたバランスの良い食事のおかげで、糖尿病や肥満といった現代病が治癒されていくとの話も(なんとも皮肉なお話・・・)。

印象に残ったのは、共同房でした。三畳の畳の部屋に便器(むきだしではなく、一応アクリル板でスペースを仕切られていました)・洗面台・たたまれた三人分の布団・文机・雑誌(意外にもピンク系OK!)などが所狭しと置かれ、そこはまるで小宇宙。果たしてこの空間で何を感じ、何を思うのか。う〜む・・・

率直に言うと、(所長の話も含めて)表面をさらりと見聞きした限りでは、思っていたよりきちんとした処遇でしたが、まさしく「『実態は知る人ぞ知る』なんだろうなあ。」(当事務所の女性事務員談)と思います。

罪と罰。受刑者の人権と刑事政策の調和。高齢化や不況といった社会情勢の変化に伴う待遇の見直し。な〜んて小難しい問題はさておき、単純に「悪いことはしちゃいけないのね。なんだかんだいってもシャバの空気はうまいぜ!」という感想と、刑務所の入り口にあった石碑に刻まれていた句を最後に引用して終わりにします。

ふるさとへ  更衣(ころもがえ)して   身もこころ

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「お道具箱」をミラクルにするには

久保井摂

強迫により叩く

私にとってパソコンとその周辺機器は「記憶装置」だ。何せ頭がおんぼろなので、メモしとかないと、貴重なお話も聞いた端からこぼれ落ちるままぽろぽろ失われてしまい、あとで再現しようとガンバッてみても空しいのみ。

なので、あちこちで強迫的にキーボードを叩いている(ホント、苦手な人には耐えられぬ音を立てていると思うのです。申し訳ない)。おかげさまで、速記的キーボードパンチャーとなってしまった。

コトハジメ?

いつ頃からこうなったんだろ。ん〜たぶん、我が師辻本育子に「書院ミニ」を持たされ、後に報告集を編むためパチパチと打った1994年の海外視察あたりからか。それから今日まで、記憶できない様々を記録するため、日夜キイを叩いている。

このテクがもっとも活躍したのは、ハンセン病違憲国賠訴訟でのこと。療養所に、最初はモバイルギア初代機を、次にはLet's note miniを、またTeliosをと持ち込んで(つまり次々に壊れたとです。今は判決直前に購入したLooxを使用)、原告の言葉を語るままに打ち込み、やがて咀嚼して陳述書にまとめた。

この訴訟は、色々な意味で画期的だったが、電子メールが活用された最初の集団事件のひとつだという評価もできる。とりわけ勝訴判決から控訴断念による確定までの二週間、ネット環境が果たした役割は大きかった。判決の直後、弁護団員は全国に散り、それぞれがモバイル機を手に、時々刻々と変化する情勢をにらみ(国会に待機する弁護団から「本日の仮処分」なる情勢報告メールが届き)、指示を受けて効率的に動いた。

日常における電脳

ええと、このエッセイ、どうも先駆的電脳実践者として何か書けということらしいのである。

確かに私は、比較的早い時期からパソコン利用してはいるけど、特に際だった使い方をしているわけではない。ものぐさなので、ソ\フトも適当に使うばかりで、きちんと勉強しようとか、マクロ使おうとかしてないし。だから、うちのパソはどれも本来なしうる能\力の万分の一にも満たぬ使い方しかされておらず、まこと気の毒である。「患者の権利法をつくる会」のニューズレターをつくったり、ホームページをアップしたり(それもクラリスホームページなどてふ淘汰されたソフトを使用している)、あとはほのぼのとイラストを描いたり、Gifアニメをつくってみたり。

で、例に漏れず夜中にぱちぱちとフリーセルに耽ってみたり。

ううむ、インターネット検索で情報取り込んで事件処理に利用するなんていう、当たり前のことをここに書いてみても仕方ないしなぁ。

つまりは、不器用すぎるので、このお道具箱に頼ってるってこと。

HP委員会なるもの

さて、HP委員会とやらが立ち上がり、メーリングリストも開設され、何だかお喋り倶楽部のようにざわめいている。お前も電脳に頼るひとりとして協力しなよと頭数に入れられてしまったが、難しいことを考えたり表に出たりするのは苦手なのだ(会務もさぼりっぱなしだし)。でも、弁護士会のホームページが充実して、会員のためにオイシイ情報や資料に簡単にアクセスできたり、痒いとこに手が届くようなリンク先に飛べたりするとウレシイのではある。そんなグラマラスで使いやすいホームページの完成を祈る私ではあるが、ここはひとつ、茶でも啜りつつ、みなみなさまの賑々しいやりとりを、うちのべりいちゃん(ブルーベリーiMacである)のモニター越しに見守ることとしよう。

みなさま、楽しいアイデアをよろしう。

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骨髄移植コーディネイトに立ち会いませんか?

佐藤 至

(以下は、月報平成10年3月号の記事です)

我が国において、非血縁者間の骨髄移植は、現在、既に約千四百例が骨髄バンクを通して実施されている。現在でも日に1件ずつの割合で全国各地の病院で実施されている。

骨髄移植に際して、ドナー(骨髄提供者)は全身麻酔で骨髄穿刺を受ける必要があり、このためわずかではあるが、事故あるいは数日の腰痛程度の後遺症が残る可能性がある。

またドナーの提供の自由は尊重されなければならないが、一定の時期以降に提供の意思を覆することは出来なくなる。このようなことをドナーに説明するためにコーディネイターがいるが、これらの人々から法律に詳しい人にも立ち会ってもらいたいという要望が高まった。そこで、コーディネイトに立ち会って頂ける弁護士を募集し、立会いの要領等について、2月6日午後2時からアクロス福岡において、講習を受けて頂いた訳だが、当初の予想を上回り、約20名の会員が出席された。特に北九州から数名の会員が参加されたことには、本当に感激した。

講習会は福島副会長の挨拶に始まり、月見会員の体験記で終了したが、途中、鋭い質問が相次ぎ、熱気ある講習会となった。

今後、弁護士保険に加入し、4月を目処に開始することになる予定で、いよいよ登録した会員諸兄に立ち会って頂くことになる。よろしくお願い致します。また多ければ多いほど日程調整が出来やすくなるので、未登録の会員のさらなる参加をお待ちしています。

この記事から約4年が経過しましたが、その後、次々とドナー登録及び移植がなされ、平成14年2月末現在でドナー登録約18万人、骨髄移植例約4000件を数えるまでに発展して来ました。その分、立ち会い弁護士の数も必要となって来ているのですが、残念なことにここ数年、福岡では殆ど立ち会い弁護士が増加していません。確かに立ち会っても支給されるのは実費程度であり、完全なボランティアですが、ときにはそのような活動も弁護士にとって必要なのではないでしょうか。また、この活動は、多くのボランティアにより支えられていますが、そのような方々と一緒に仕事をすることは、得難い体験です。さらに立ち会いを通して、ときには最新の医療現場の実情に触れられる場合もあります。

是非、多くの会員、特にこのようなシステムがあったことを知らない若手の会員にコーディネイトへの参加を申し込んで頂きたいと考えています。申\し込まれる会員が相当数おられるようでしたら、平成10年の発足のときと同じように講習会を開きたいと思います。数名程度でしたら、実際に行われる「コーディネイトへの立ち会い」に立ち会って頂き、要領を覚えて頂こうと考えています。

近日中に申込用紙を配布させて頂きますので、その際は、是非、多数お申\し込み頂きたくお願い致します。

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民事裁判の期間を半減

村井正昭

民訴法改正の動向
 (計画審理と証拠収集)

Q 司法改革審議会の答申で、民事裁判に要する期間を半減することが提起されていますが、そのためにどのような対策がとられようとしているのですか。

A 民訴法を改正して「計画審理」を導入しようとしています。

Q 計画審理とは、どういうことですか。

A 訴訟提起後、事案の概要が明らかになった時期において、両当事者と裁判所が協議して争点整理に要する期間、証拠調に要する期間を定め、裁判の終期を明らかにすることを義務づけるということです。

そして、協議が成立した場合には、予定した審理期間の進行を変更しなければならないような、新たな主張の追加や証拠の追加が制限されることになります。

Q 事案の内容が明らかになった時期とはどういうことですか。争点整理との関係は。

A 争点整理に要する期間についても、予め決めるということですから、一つの考え方として被告の主張が具体的になった時点が考えられます。

その結果、裁判所は当事者に対し、詳しい訴状、詳しい答弁書を今以上に要求してることになるでしょう。

Q 全ての民事事件に必要でしょうか。

A 最高裁は、通常事件は、現行法で十分と考えております。計画審理の対象は、複雑事件、専門事件に限定する方針です。

Q 早い時期に計画を樹て、新たな攻撃防御方法の提出を制限する以上、早期に証拠が出尽くすことが当然に必要となると思いますが、その手当は考えられていますか。

A 日弁連はかねてから、民事裁判における証拠開示の必要性を力説し、民訴法改正の際にも具体的な提言をしています。しかし、採用されたのは当事者照会制度の新設という、極めて、不十分なものだけでした。今回も計画審理導入のためには証拠開示に関する規定の整備は不可欠という立場です

最高裁は当時も今も、証拠開示について積極的です。要するに、裁判所の仕事量が増える制度はダメだという姿勢です。

Q 訴訟予告通知制度とか独立証拠調が導入されると言われていますが、どういうことですか。

A 訴訟予告通知制度とは、例えて言えば、原告の当事者照会制度を提訴前に導入するものと言えるでしょう。訴の提起を相手に予\告し、証拠の有無等を問合せ、提出を求めるという制度が予定されています。

独立証拠調はドイツ等例があるもので、提訴前に鑑定等を行うことができます。

ここで注意しなければいけないのは、独立証拠調が導入された目的です。

ドイツでは、提訴前の和解解決を促進し、訴提起を減少させることが目的だったと 言われています。

当事者の証拠収集方法の拡大が目的ではなかったのです。

Q 今回の改正ではどうですか。

A 前述したように、最高裁は、裁判所が関与する手続の新設には、極めて消極的です。 例えば、最高裁が挙げているのは検証の代りに、執行官による現地調査を新設する。

証人尋問の代りに、両当事者立会で作成する公証人面前調書を活用する。というもので、当然のことながら、裁判所は全く関与せず、何れも、費用は当事者 負担です。鑑定についても、裁判所が行うのは、鑑定人を推薦するだけです。

最近になって、やっと、調査・送付嘱託、は裁判所が関与してもよいと言い始めた ようです。

Q そんなことならば、さっさと提訴して、求釈明や調査・送付嘱託の申立、鑑定や検証の申\立をした方が良いのではないですか。

A 問題となるのは、提訴するか否か判断に迷う事例で、どれだけ活用できるかでしょ うが、被告知者側がどれだけ協力するかということが、制度の実効性を左右するこ とになるでしょう。

(専門委員の導入について)

Q 専門的な知見を要する事件について専門委員を導入することが提案されていますが、問題はどういうことですか。

A 対象となる事件としては、知的財産関係事件、医事関係事件、建築関係事件が考え られています。 知財事件については、かねてから、調査官制度の不透明性が指摘されており、訴訟 手続の中に明確に位置づけることが必要とされており、専門委員の導入について異 論はないようです。

建築紛争については、現在専門家調停委員を採用した付調停制度が、既に実施されています。建築紛争の場合、専門家(建築設計士が主流)について互換性があ ると言われ、訴訟手続の中で活用することに異論が少ないようです。

一番問題とされているのは、医事紛争です。

医事紛争の場合、患者と医療機関との間に互換性はなく、専門委員は全て医療機関 に属しています。そのためかねてから、鑑定の偏頗性が問題になっており、裁判 官が専門家の意見に安易に盲従しかねないという危険性が指摘されています。

このようなことから、日弁連では、医事紛争への専門委員の導入について、反対の 意見を表明しています。

Q とは言っても、導入を阻止することは困難ではないでしょうか。対策は考えていないのですか

A 対策ということではないですが、仮に導入するとしても、手続の透明性、公平・中立性を確保するための提言をしています。

1つは、専門委員の採用について、当事者の「意見を聴く」ということでは不十分であり、当事者の「同意」を要件とするという提案です。

2つは、専門委員の関与を争点整理段階までに限定し、証拠調以降に関与させず、裁判所の心証形成過程から排除することです。

3つは、専門委員が関与する場面は、裁判官、両当事者の3者が同席する場合に限 定するということです。 裁判所は、全手続に関与を認め、例えば証人尋問に立ち会い、専門委員の発問を 認めるとか、鑑定についても、専門委員に質問できるようにすることを求めていま す。

これでは弁護士が危惧する、心証形成過程のブラックボックス化、闇の鑑定を阻止できません。

Q 専門委員の確保はどうなりますか、或は、専門委員導入の是非を選任の当否を巡り空転することにもなりかねませんね。

A 調停委員と同様に、あらかじめ人員を確保しておくことが考えられますが、鑑定でさえ鑑定人の確保が困難なのに、実現可能なのか疑問です。

東京、大阪から呼ぶということが考えられますが、そうなるとTV会議の利用と かいうことになるでしょうし、当事者不在のまま期日外での意見聴取ということが 横行しかねません。

Q 鑑定についても問題はありませんか。

A 鑑定人が嫌がるのが、鑑定人尋問と言われています。

そこで、鑑定人「尋問」を改め、「質問」にし、発問の順序も、裁判官が最初に発 問するという改正が提案されています。

(簡裁の事物管轄について)

Q 簡裁の事物管轄について、訴額はどうなりますか。

A 未だ、具体的な提案はされていませんが、一部では「300万円」ということが言 われています。

Q 300万円となると、地方の場合、建物明渡事件等はほとんど簡裁の管轄になりますね。

A 不動産事件は、訴額に拘らず、地裁に提訴できるため、弁護士も余り問題にしてい ませんでしたが、司法書士に簡裁の代理権が付与されましたので、その影響は無視できないと思います。

前回の改正(90万円への引き上げ)から、物価スライドさせても、120〜130万円と言われています。

Q 簡裁は、サラ金・クレジット事件の増加によって、手一杯と言われているのに、大丈夫なのでしょうか。

A 前回の改正時とそこが大きく違います。

前回の改正時は、地裁の事件数と簡裁の事件数とでは、前者が多かったのですが、 現在は逆転しています。更に少額訴訟手続が導入されていることも考えておくべ きです。少額訴訟手続は、民訴法改正のヒット商品と評価されています。

そこでは、懇切丁寧な窓口事務、期日前準備、ベテラン裁判官による審理が必要と されています。このままの状態で、訴額のみ上げられ、簡裁がパンクすれば、少額 訴訟の粗雑化は不可避です。

そのことを見込んでか、最高裁は、少額「審判」を提案しています。要するに、訴訟から非訟へという考えです。

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2002年7月号 月報

岡山仲裁センター訪問記 犯罪被害者の支援に関する委員会

1 はじめに

5月17日岡山弁護士会に犯罪被害者支援委員会から、当地の仲裁センターを視察に行ってきました。本年度からADR委員会も正式に発足し、福岡でも仲裁センターを立ち上げようとの機運です。そこで、平成8年に全国9番目の弁護士会主宰のADRとして立ち上がり、特に犯罪被害者と加害者との間の仲裁で、成果を得ている岡山仲裁センターを当委員会でも視察に行ってきました。

既にADRプロジェクトチームが同センターに2回視察に行っていますが、今回は犯罪被害者の被害回復の方策の一つとしてのADRという視点で視察を行うことが目的です。

2 岡山県弁護士会

急な視察の申し出にも拘わらず、ご快諾いただき、吉原委員長、市丸担当副会長以下総勢7名で、会場の弁護士会館を訪れました。会館は増改築を行い間もないということで、200名は収容できるホールを備えた大変立派なものでした。岡山県弁からは、立ちあげから中心メンバーとして活躍し、現在日弁連の犯罪被害者委員会の委員長である高原先生他2名の先生方に急な申\し出にも拘わらず、お忙しい中参加していただき、当方からの質問に答えていただく形で、進行しました。

3 弁護士会のADRについて

まずは、弁護士会が行うADRについての一般的な質問にお答えいただきました。

主に立ち上げの経緯、他機関との連携、仲裁委員の確保の方策、仲裁手続の運用面など経験に則して具体的な話しを披露していただきました。

岡山仲裁センターは、全国の弁護士会の仲裁センターの中でも成功例と評価されています。成功の理由として、中弁連大会を契機に「相談から解決まで」を合言葉に、法律相談の質を高めるという視点で、一般会員の中からセンター設立の機運が盛り上がったこと、そのため、積極的にセンターを利用しようという気持ちを会員各自が持ったことが大きかったと仰っていました。解決方法も仲裁判断より和解を中心として行うこととし、資格も5年以上と若手を取り込めるようにし、仲裁委員の候補選出・配点の各段階で特に基準を設けることはしていないとのことです。仲裁の姿勢は、九州大学のレビン先生の指導・協力の下「傾聴と共感」をモットーに行っているとの事でした。

実際に仲裁委員を担当した先生からは、義務的側面がないとは言わないが、手続的制約無く紛争当事者の本当のニーズを探求すると言う意味で面白い、国選事件よりは積極的に行っているという感想も聞かれました。

他機関・他業種との連携については、建築士が積極的に関与してくれ、建築紛争など大変役に立っている一方、人材が少ない、協力的では無いといったことで、なかなか連携できていない業種もあると言うことです。相手方次第の面もあり難しい問題です。

4 犯罪被害者ADR

岡山仲裁センターの特色の一つは、犯罪被害者と加害者との仲裁を積極的に行っているところです。ただ、発足当初から目的として掲げていたわけではなく、会員からの事件の持込がきっかけです。

「傾聴と共感」をモットーに運営している機関としては、犯罪被害の場合は仲裁も被害者の心情の修復が大きな目的となり、被害者の心情に対する配慮が不可欠です。

しかし、刑事弁護人からの申立が主となることは当然予\想されるところです。実際、岡山でも犯罪被害に関する仲裁は設立以来10件程度ですが、被害者からの申立は1件のみであると報告がありました。刑事弁護の一環としてのみの仲裁では、被害感情をかえって逆なでし、2次被害を惹起するようなことにもなりかねません。

そのための方策としては、岡山仲裁センターでは犯罪被害に関する申立については、申\立段階で当事者双方に事前調査を行い、運営委員会で議論を行い、受理するかしないかを検討するとのことです。事前調査のポイントは、臨床心理士等カウンセラーの協力です。「傾聴と共感」に基づく1対1の面接は、カウンセラーの得意分野であり、特に事前準備段階では重要な役割を果たすとの見解でした。もっとも、実際に双方当事者の間で仲裁を進める役割は、経験的にも技術的にも弁護士でなければできないと仰っています。事件内容で受理しないことは無いが、事前調査の結果で、仲裁に適しない場合は受理しないこともあるとのことです。

そして、加害者に加害認識をもたせることが、犯罪被害の仲裁の場合の第一歩であり、その上で、仲裁人は、和解を成立させることを目的とするのではなく、対話をするその過程自体に意味があるのだと自覚することが大切であるとの言葉が印象的でした。

仲裁判断より和解を優先し、「傾聴と共感」に基づき仲裁を行うという基本姿勢が自然と犯罪被害の仲裁をも取り込むようになったという印象です。

5 最後に

運用面などで、ここには書ききれない多くの助言を頂き大変有益な視察でした。また、犯罪被害に関する仲裁については、多くの示唆を頂きました。

今回の視察では、岡山仲裁センターは、理念的にも運営的にも、運営委員の個性が強く現れて、それが会員の支持を受けよい方向に向かっているという印象を受けました。これから、当会でも、犯罪被害者の支援をも視野にADRを設立し、活動を定着させていくには、制度の構築と共にそれを支える理念と会員の支持が必要だということを強く認識させられました。

終了後は、桃太郎大通りの一角にある中華料理店にて懇親を深め、「福岡はすぐ、追いつき追い越しますよ」と怪気炎をあげ、実り多い視察のしめとなりました。

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岡山仲裁センター訪問報告

1 はじめに

平成13年12月18日、PT清水隆人委員長、塩田裕美子委員、そして私の3名で岡山仲裁センター(岡山弁護士会館内)を訪問。仲裁センター運営委員の方々から説明を受けた。以下はその概略であるが、統計的数字については、私が、仲裁統計年報(全国版)によって若干の補充をした部分があり、また、仲裁センター開設上の問題点については、岡山仲裁センター運営委員の意見を基本としつつ、私が福岡県弁護士会に引き直して述べた部分もある。

2 岡山仲裁センター実績
(1) 統計
平成 8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度
申立件数 15 92 80 153 190
応諾件数 8 71 63 102 125
応諾率(%) 53.3 77.2 80.8 71.3 75.8
受理事件対比解決率(%) 52.3 44.6 52.9 42.1
応諾事件対比解決率(%) 47.9 39.7 61.8 44.8
  • 受理事件対比解決率 (当該年度に受理したものの内、当該年度内に終結且つ成立したもの)
  • 応諾事件対比解決率 (当該年度に受理し且つ応諾があったものの内、当該年度内に終結且つ成立したもの)
(2) 紛争類型

交通事故、離婚、請負契約をめぐる紛争等が多い。(平成12年度仲裁統計年報(全国版)によると、岡山仲裁センターにおける交通事故事案の割合は受理事件中20%、解決事件中28.3%) [括弧内塩川]

(3) その他(平成12年度仲裁統計年報(全国版)による)

平成13年3月時で、全国に仲裁センター(示談あつせんセンター等を含む)は13箇所。二弁、大阪、新潟、東弁、広島、横浜、一弁、埼玉、岡山、名古屋、岡崎支部、岐阜、京都。[この部分塩川]

3 弁護士会のADRについて
(1) 「相談から解決まで」

法律相談を担当した弁護士が、その場で申立用紙に記入して申\立手続をできるようにしているので(仲裁センターマニュアル、仲裁ハンドブック等を配付)、市民の利便性が大きい。

(2) 期日

原則として、申立から2週間以内に第1回期日を入れ、以後、2週間に1回の割合で期日を設けるよう努力。理想型としては3回で具体的解決案に到達するのが目標。

(3) 職能団体の協力

仲裁に当たるのは弁護士であるが、より専門性を打ち出すため、不動産鑑定士、建築士、税理士、カウンセラー(命の電話スーパーバイザー、大学教授等)等の職能団体との間で協力体制を構\築している(協力の要否は仲裁人弁護士が判断)。なお、カウンセラーの協力は、親子関係事件、遺産分割事件等でも依頼する。

(4) 当事者の自主的解決

基本的に「説得」(解決の押し付け)をせず、当事者の自主的解決を目指している。

(5) 取扱事件

取扱事件の種類、及び、紛争の価額には制限なし。

(6) 法律相談前置主義

仲裁申立を行う前に、必ず弁護士による法律相談を受ける必要がある。これによって、仲裁センター取扱相当事案であるかどうか選別する。

(7) 夜間、土日祝日に期日を設けることもある(各弁護士の事務所にて)。
(8) 期日は基本的に当事者同席。但し、事案にってはタイミングを見計らうし、支払うべき金額をいくらにするかというレベルになったら個別に聞くこともある。
(9) 履行確保

解決に際し、履行の問題を残さないようにする。履行確保のため、即決和解を利用することもあるし、債務名義を取るため合意ができた内容を仲裁判断という形式にすることもある。

(10) 配点

配点は、運営委員の中から3人体制(1月交代)で配点を担当する。なお、仲裁センター発足当時、仲裁センター運営委員会は法律相談センター運営委員会の一部会だったが、現在は別個の組織となっている(但し、運営委員中2名は法律相談センター運営委員会委員が兼任)。なお、仲裁人は、法曹経験5年以上の者を宛てている。福岡県弁護士会の場合、天神センター職員が配点することも考えてよかろう[この行塩川]。

(11) 収支

開設1年目から黒字だった。

  1. 申立手数料 10,000円(申立人負担)
  2. 期日手数料 1期日毎に双方から5,000円
  3. 成立手数料 当事者双方で負担(原則折半)

    100万円以下の場合 8%

    100万円を超え300万円以下の場合 5%+3万円

    300万円を超え3000万円以下の場合 1%+15万円

    3000万円を超える場合 0.5%+30万円

  4. 仲裁人日当

    1期日2万円(開設当初は1万円だった)

    準備費用5000円

    成立報酬5万円(事案により運営委員会決定で増額可)

(12) 研修会

ロールプレイング方式等を導入。九州大学講師レビン小林久子氏の協力を得ている。2002年3月8日 17:30〜20:00研修あり。

4 仲裁センター開設上の留意点(今後の参考として)
  1. 仲裁センター立ち上げとその後の運営を円滑にするためには、仲裁センター開設に理解とやる気のある運営委員を最低でも10人程度確保することが必要であろう。他の弁護士会の運営状況を見ても、トップダウン方式では必ずしもうまく行かないようである。実際、仲裁センターの運営の中心となる人物がいないために十分にセンターの機能\を発揮できていないところがいくつか見受けられる。
  2. 比較的うまくいっている仲裁センターとして岡山と岡崎支部が挙げられるようだが、両センターとも交通事故事案の占める割合が多い(平成12年度統計によると岡山で20%、岡崎支部で24%)。これは、岡山・岡崎とも、紛セ等の紛争処理機関が近くにないことが大きく影響しているものと推測される。この点、福岡では紛セは福岡市にあるし、既に、天神センターその他で交通事故相談を扱っているので、仲裁センターのニーズがどの程度あるかについては慎重な検討が必要であろう[この段落塩川]。
  3. 弁護士持込事件をいかにして増やすかが成功の鍵であり、そのためには、準備の段階から、例えば月報等で仲裁センターの記事を載せる等の方法で、会員の理解を得ることも必要であろう。
  4. 一般市民へのアピールとしては、裁判所の調停と違って 1:期日が早く入ること 2:仲裁人は法律の専門家である弁護士であること 3:場合により、鑑定士、建築士等の専門委員の協力も得られること等の利点を知らしめる。
  5. 裁判所との協議
    1. 離婚事件の調停前置主義との関係で、仲裁センターを経た場合の扱いをどうするか。
    2. 即決和解申立手続の定型化・簡略化・管轄等
  6. 関係協力団体との協議
  7. 会計を特別会計にすべきか

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パソコンの使い方 

上鶴和貴

ホームページ委員会から,パソコンの使い方をコラムにしてくれと指令が出されました。私も,他の方に比べて特殊な使い方をしているわけではありませんが,使い方の例をご紹介させていただきます。

私が入ったころは,事務所にはいわゆるワープロしかなく,印刷などは非常に苦労したものでした。それが,ここ2年ほどで急激にIT化して,今では見違えるように便利になっています。

基本的なソフトとしては,ワープロ,表\計算,メール,インターネットブラウザあたりでしょうか。

表計算ソ\フトは,計算作業が多いものでは必須となっています。特に,破産・管財・再生等では重宝します。小計,合計額を計算するのも一発です。

他にも,印紙代を計算するもの,税額を計算するもの,利率・残元金・毎月の返済額から返済期間を計算するもの(或いはその逆),個人再生で可処分所得を計算するものなど,色んなものが作れます。

メールは,使える環境にないという事務所が意外にもかなりあるようです。しかし,速く,簡単に多くの人に情報を伝達することができ,電子データをそのままやりとりすることができるというメリットがありますので,今ではメールソフトを使えることは必須となってきているように思えます。

たとえば弁護士間での情報交換や,文書ファイル等の電子データのやりとりには便利なものです。最近では各種のメーリングリスト(消費者事件のCAMなど)ができて,様々な情報を得ることができます。ホームページ委員会も,メーリングリスト上で会議をしています。これはなかなか便利でした。

依頼者と文書ファイルをやりとりすることにより,事務処理を迅速におこなうこともできます。

インターネットそのものも,やはりこれからは基本と言えるでしょう。これから弁護士会のページもどんどん整備され,会員にとって有益な情報を提供していく予定です。

弁護士としてインターネットで何ができるのかといわれると,幅が広いため,いろんなことができますという答えになるのですが,私の場合たとえば,新聞記事の検索,企業情報の取得,インターネットタウンページによる調査など各種の調査に使っています。むろん,息抜きに関心のあるページを見て回るのも面白いものです。

当事務所では,最近話題のADSLにより常時接続となっているため,いつでもメール受信やインターネット閲覧ができます。費用も大してかかりませんので,おすすめと言えます。

他方で,最近はコンピュータウイルスが蔓延しています。恥ずかしながら,私も一度やられたことがあります。そういった面での対策も必要となってくるでしょう。

事務作業の多い多重債務事件では,パソコンの活躍する場は大きくなります。利息制限法の引き直し計算は,ほとんどの方が表\計算ソフトでやっていることでしょう。(お持ちでない方にも,HP上で配布予\定です。)

私の場合には,データベースソフトを用いて債権者一覧やラベルを作成しています。もともとは,事務員さんが債権者一覧とラベルとを別々に作成していたため,住所等のデータを二度入力しなければならなかったのを見て,その手間を省きたいということで作成したものです。

いろいろと改善し,主な業者のデータは読み仮名で検索してボタン一発でデータが入力され,それを債権者一覧やラベルなどの形式で印刷できるようにしてあります。

判例検索をおこなうとき,検索ソフトは非常に役立ちます。キーワード,条文等から簡単に判例を拾ってくることができます。私としては,検索ソ\フトを使わないことはもはや考えられません。

事件管理にもパソコンを使うことは有益と思われます。この事務所ではロータスノーツというソ\フトを使っています(私個人としてはあまり使い勝手が良くないと感じていますが)。他の事務所では,データベースソフトを使って管理をしているところもありました。

こういうものがあれば,どの弁護士がどういう事件を何件持っているかなどがすぐにわかります。弁護士は自分の事件数等を把握していないことが多いので,システムとしてはあった方がいいのでしょう。

以上,基本的な使い方ということでご紹介しました。使い込んでいけば,いろいろな使い方がさらに見えてくると思います。

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2002年9月号 月報

「裁判員制度」について考えるパネルディスカッション報告

黒木聖士

さる八月五日、弁護士会館三階ホールにて、福岡県弁護士会主催の「裁判員制度パネルディスカッション」が行われました。

パネリストは、日弁連司法制度改革実現本部事務局次長四ノ宮啓弁護士、日弁連刑事弁護センター副委員長美奈川成章会員、日本裁判官ネットワーク・福岡高等裁判所駒谷孝雄判事、九州大学法学部内田博文教授、県弁刑事弁護等委員会委員古賀康紀会員、コーディネーターは、春山九州男・大谷辰雄両会員という超豪華メンバーが勢揃いしたこともあって、当会会員はもとより当番弁護士を支える会など一般市民の方々を含め五〇名を越える参加者が集まり、酷暑の中、三時間以上にもわたる活発な議論が展開されました。

ところで、今回のシンポジウムは、司法制度改革審議会の意見書を踏まえて、司法改革推進本部事務局や各検討会において進められている司法「改革」が、従来、弁護士会が求めていた本来の司法改革の姿とは違う方向へ向かっているのではないかという危惧感を抱く会員ら(司法「改革」を考える会)が提案したものであるため、検討会の議論状況を踏まえつつも、現在の司法「改革」作業の抱える根本的な問題点を再度確認し、今後、どのように司法「改革」問題を考え、取り組んでいくべきかという趣旨を持ったものでした。誤解を恐れずに言えば、「絶望的な刑事司法」が、今回の「改革」によって、より「絶望的」にならないのかということだったのです。

藤井会長による開会の挨拶の後、コーディネーターからの世界的に前例のない「裁判員制度」とは一体どのような制度なのかという問題提起からパネルディスカッションが出発しました。

四ノ宮弁護士は、司法審は当初、刑事司法への市民参加は時期尚早と考えていたが、地方公聴会において次々と陪審制導入の意見が出されたため、市民参加をを検討することとなり、審議委員間の陪審説と参審説の激しい対立の中で「裁判員制度」という折衷案が提言され、重大な刑事事件から導入する、否認・自白を問わない、裁判員が量刑まで関与する、判決も書く等の骨格を基本にした上で、「裁判員制度・刑事司法制度改革検討会」において、具体的な制度設計が議論されているとの経過報告がなされました。

これを受けて、美奈川会員より日弁連司法改革実現本部や刑事弁護センター、検討会のバックアップ会議についての報告がありました。

駒谷判事は、個人的見解との留保付きで、国家予算の一%に過ぎない「弱い司法」を強くするには国民参加は必要であるとしながらも、裁判とは簡単なものではなく、裁判員に裁判官と同じ評決権を付与した場合、会議に時間がかかり、「定員法」を改正して裁判官の大幅増を図らない限り、現在の裁判所の体制では「裁判員制度」は過重負担であるという現場からの問題点が示されました。

内田教授からは、まず議論のフィールド設定として、1.司法審の意見書の枠内で議論するのか、2.刑弁センターの提案している枠まで(少し)広げるのか、3.司法改革の根本的問題点、「そもそも論」まで枠を広げるのかという分析がなされた上で、1で議論をする場合であっても、(1)裁判員に対する適正手続保障の説明・捜査報道によって生じる裁判員の予断の排除、(2)裁判員の比率の圧倒的多数の確保、(3)新たな「準備手続」によって生じる裁判官と裁判員の情報格差への対処、(4)伝聞法則の厳格化(要約調書によって事実認定が悪化する危険性への対処)、(5)証拠能力・違法収集証拠排除法則の厳格化は、「裁判員制度」導入の最低限の条件であり、もし、かかる条件整備をせずに導入した場合には、現状よりも悪くなるのではないかとの指摘がなされました。

古賀会員は、刑事司法の改革には捜査手続の改革こそが必要であるが、「裁判員制度」によって公判手続だけを変えても、従来通り、供述調書の証拠能力が付与される以上、結局、捜査手続は何ら変わらない、そもそも司法審の「意見書」は、刑事司法改革の目的を迅速な国家刑罰権の実現と捉え、捜査を賛美しており、裁判の利用者である刑事被告人の権利保障を目的としていない、無辜の不処罰に対する反省もないなど問題点も多く、現在の刑事司法よりも悪くなる危険性があるという指摘がなされました。

各パネリストからの発言を踏まえ、コーディネーターより、「裁判員制度」で調書裁判の弊害は除去されるのかとの問題提起がなされ、四ノ宮弁護士からは、自白調書に影響を受けるのは裁判員より裁判官であり、弁護人は裁判員を直接説得できる点で有利であって、公判証言が中心となる以上、供述調書は少なくならざるを得ず、連日的開廷となる以上、証拠開示が進むであろうというメリットが提示されました。

しかし、古賀会員からは、楽観的ではないか、二三日間の代用監獄における身柄拘束・取調を前提とする限り、調書裁判の弊害の除去されないという疑問が出され、美奈川会員からも、自白調書が採用されれば調書に引きずられる危険があるため、捜査の可視化(取調状況の録音)や伝聞法則例外の廃止(弾劾証拠に限定)などが必要であって、それは刑事弁護センターとして「譲れない条件」であり、司法審の意見書が提案している「取調の書面による記録化」では不十分であるとの指摘がなされました。

その後、参加者からは、司法の民主化のためには市民参加に重要な意義があるとの会員の意見がだされる一方で、刑事司法の抜本的解決が必要ではないかとの一般市民からの意見も出されました。

以上が本パネルディスカッションの概要ですが、この企画を通じて、改めて「裁判員制度」の問題点が浮き彫りになったと思います。

私個人としては、司法の官僚化によって被告人の人権が侵害されたり、誤判が生じうるからこそ、その弊害を防止するために市民参加・司法の民主化が必要であるという視点を持たない司法審の基本的立場には重大な疑問をもっています。司法審の意見書が、被告人の人権保障、誤判防止という観点から刑事司法改革を議論していないため、刑事司法にとって最も重大な問題である捜査手続にメスを入れることができず、結局、「裁判員制度」に多くの問題点が生じているということです。司法審の意見書を踏まえつつも、必ずしもその枠内にとらわれることなく、本来あるべき刑事司法改革を常に議論していくべきことが、在野法曹としての弁護士会のあり方だと思います。官僚主導の刑事司法「改革」が、より絶望的な「改悪」にならないように、議論の動向を常に監視していかなければならないでしょう。

なお、ディスカッション終了後の利花苑での懇親会でも三〇名近い出席者が参加され、刑事司法改革について熱い議論が闘わされておりました。

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第二東京弁護士会 仲裁センター合宿参加記

大神昌憲

1 標記の合宿が、平成14年7月13,14日の両日、箱根湯本の「ホテルおくゆもと」にて開催され、当会からは、ADR委員会に所属する筆者と永田一志委員並びに犯罪被害者支援に関する委員会に所属する北村哲委員が参加しました。

2  初日は、弁護士以外の専門家が事件解決に関与した事例が2例紹介されました。

初めは第二東京弁護士会仲裁センターの事例で、夫婦間調整の事案にカウンセラーが関与したものでした。

この事案の家族構成は、50代の夫婦に、高3の長男、高1の長女、中1の二女というもので、専業主婦である妻が娘2人を連れて別居を強行し、会社人間である夫が復縁を希望して第二東京弁護士会仲裁センターに夫婦間調整の仲裁を申\し立てたというものでした。

妻が別居を強行した背景としては、妻が子どもを細かく管理していたため、長男が妻に反抗し、家庭内暴力を振るうに至った(不登校と成績悪化も)。ところが、夫は建築関係の会社に勤務する仕事一遍道の会社人間であったため、家庭内の問題にうまく対処できず、妻の悩みにうまく対応できなかったことにあるようでした。

夫から相談を受けた申立代理人の弁護士は、夫婦間のみならず、親子間の調整も必要だと考え、カウンセラーの役割に期待して、第二東京弁護士会仲裁センターに対する仲裁申\立を選択されたとのことでした。

この仲裁は、12回もの期日を重ねた甲斐なく取り下げで終了していますが(カウンセリングは13回)、申立人に対するカウンセリングを中心に、相手方や長男に対してもカウンセリングが実施され(取り下げ後も申\立人が4回カウンセリングを受けています)、親子間の調整は無事に図られた、また夫婦間についても関係修復のきざしを得ることができたとの報告を受けました。

なお、この事案でカウンセリングを行ったカウンセラーは、FPIC(社団法人家庭問題情報センター)という元家庭裁判所調査官の方々で構成されている団体に所属している方で、FPICは福岡市内にも相談室を展開しているとのことでした。

3 次は、名古屋弁護士会仲裁センターの事例で、建築紛争の事案に1級建築士が関与したものでした。

この事案の内容は、申立人が相手方工務店に既存建物の解体工事と移転先の新居の新築工事を発注したところ、申\立人は、相手方工務店の工事着手、進行の遅れ、工事代金の先行支払い、工事出来高の説明不足等の事情により相手方工務店に不信を抱くに至り、相手方工務店も申立人からの度々の仕様変更要求、解体材の使用を理由とする請負代金減額要求等から態度を硬化させ、双方は工事中止を合意、その結果、工事代金の精算問題と相手方工務店が保管中の旧建物解体材の処理問題が生じ、申\立人個人が名古屋弁護士会仲裁センターに仲裁の申立をしたというものでした(申\立日平成13年4月13日)。

仲裁センターは、まずは弁護士の仲裁人を選任しましたが、工事出来高の調査依頼が申立内容に含まれていたため、1級建築士を仲裁人に追加選任したとのことでした。

第1回の期日は、平成13年5月16日に実施されましたが、その翌日には1級建築士の仲裁人が現地調査に赴き、調査を実施した結果、新築工事の出来高は既払代金にまでは達していないこと、既存建物の解体状況は基礎部分が残存し完了とは評価できないとの判断が下されました。

相手方工務店は、申立人に対し、不足代金381万円及び解体材処理費用50万円合計431万円の請求をしていましたが、上記見解を基に説得を受け、申\立人が相手方工務店に200万円を支払うことで解決したとのことでした(解決は平成13年6月25日に実施された第5回期日)。

1級建築士の見解によると、申立人が相手方工務店に対し金員を支払う必要はないのですが、申\立人は早期に解決して新築中の建物を完成させたいという意向が強く、代理人弁護士が就いた後もその意向は変わらなかったとのことでした。

第1回期日から1か月余り、申立日からも2か月余りで解決というスピード解決の事例紹介でした。

4 2日目は、仲裁法やADR基本法の立法作業状況についての報告、討議、並びに各地の仲裁センターの取り組みについての報告を受けました。

ADR基本法について言えば、時効中断効と執行力を付与することに賛成の議論と反対の議論がなされていました。

賛成の根拠としては、ADRで審理中に時効が完成してしまうのは不都合であること、執行力が認められないと執行力を取得するために結局裁判所等を利用せざるを得ず簡易迅速な解決とは言えないこと等が挙げられていました。

反対の根拠としては、法的効果を付与するとなるとADRへ国家が規制を施すことになり私的で自律的な紛争解決というADRの理念、特徴を害することになること、ADRでは早期に執行の問題を残さず解決することが多いので時効中断効や執行力を付与する必要に乏しく、その必要があれば裁判所を利用すればよいこと等が挙げられていました。

5 1日目、2日目を通じて、特に第二東京弁護士会の萩原、波多野、原後の各先生方(失礼ながらかなりのご年輩です)が実に活発でユニークな議論を展開されていましたが、懇親会の席上、「二弁にはブラジルの3Rならぬ3Hがいる」との発言も出、一同爆笑した次第でした。

各地の参加者からは、「あの福岡県弁護士会にまだ仲裁センターがないとは知らなかった。何故ないの?」と聞かれる始末で、お尻を叩かれて帰ってきました。

各地先達のお話は、要は、我々弁護士が利用しやすい紛争解決機関を自ら持つことのすばらしさということに尽きると思います。

当会でも、年内に紛争解決センターを立ち上げるべく、当委員会で検討中ですが、会員の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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『ゲートキーパー』問題に関する緊急講演会

田村雅樹

1 去る7月29日午後6時から、福岡県弁護士会館3階ホールで「『ゲートキーパー』問題に関する緊急講演会」が開催されました。

当日は、講師として、この問題に関して、日弁連で一番詳しく、正確な情報を有しておられる「日弁連組織犯罪対策立法ワーキンググループ」事務局長吉峰康博弁護士をお招きして、質疑応答を含めて、約2時間講演していただきました。

2 ゲート・キーパー問題とは、国際組織犯罪対策としてのマネー・ロンダリング規制と密接な関連があり、従来的なマネー・ロンダリング規制のループホール(抜け穴)を塞ぐために、金融システムのゲート・キーパー(門番)ともいうべき弁護士、会計士等の専門職に対し、その顧客が「疑わしい取引」を行っていることを知ったときには報告義務を課そうとする問題です。

このような「疑わしい取引」の報告義務を弁護士に課すことは、弁護士が有する職務上の守秘義務との関係で重大な問題があり、弁護活動に深刻な影響を及ぼすものです。

3 しかし、国際的には、ゲート・キーパー問題について、無視できない動きがあります。

1999年10月にモスクワでG8各国の司法・内閣官僚が出席し、「国際組織犯罪対策G8閣僚級会合」が開かれ、ここで発表された「モスクワ・コミュニケ」では、弁護士、会計士といった国際金融システムの「門番(ゲート・キーパー)」によるマネー・ロンダリングへの種々の対処方法を検討するよう各国政府に求めています。

また、FATF(金融活動作業部会、1989年アルシュ・サミット宣言を受けて設立された政府間組織で、マネー・ロンダリングに関する包括的な検討等を行う作業部会)は、2003年6月には、これまでの40の勧告(マネー・ロンダリング対策のために法執行、刑事法制及び金融規制の各分野で各国が採るべき措置をまとめたもの)の改正案をとりまとめる予定で、その中で弁護士の「疑わしい取引」の報告義務についても結論を出す予\定です。

このような、国際的な流れをうけ、実際に各国で立法化が進んでいます。イギリス、スイスでは、すでに「疑わしい取引」に関する報告義務が課されていましたが、近年では2000年7月にカナダでも弁護士に「マネー・ロンダリングの疑いのある取引」に関する報告義務を課す内容の立法が成立し(ただし、カナダの弁護士会が憲法訴訟をして、法の執行が一時停止している)、2001年12月にはEUでも同様の取引について弁護士等の専門職に報告義務を課す内容のEU指令が採択され、今後EU各国はこれに従い立法化の義務を負います。

4 国際的に、弁護士に「疑わしい取引」についての報告義務を課す立法化が進んでいる中、日弁連は、2002年1月19日、ゲート・キーパー問題に対する意見を採択し、その中で、マネー・ロンダリング対策の必要性は認めつつも、法律で弁護士に対して疑わしい取引の報告義務を課すことに明確に反対しました。

今後は、FATFが前述した従来の40の勧告の改正のために、改正の方向を示した照会書に対する意見を8月末日締め切りで求めているほか、10月には日弁連など民間関連団体から直接意見聴取の機会を持つ予定となっています。日弁連の意見聴取は本件の帰趨を決める重要な会議となるもので、現在、この問題は、非常に緊迫した状況にあります。

5 ゲート・キーパー問題は、私選の刑事事件を受任して被疑者・被告人から弁護報酬を受け取ること、また依頼者の求めに応じて国際取引又は国際取引に関与し送金その他金銭のやりとりをすることも、そこに犯罪収益がかかわっていれば問題となりうる、という点で弁護士にとって意外に身近な問題です。

FATFは、弁護士に対して「顧客の確認」「疑わしい取引の報告」「報告したことを依頼者に内報することの禁止」を義務付けるだけでなく、処罰を科すことによって強制する立法を求めています。弁護士業務の基礎にある「依頼者からの秘密情報の取得とその共有」を根底から覆し、破壊し、弁護士業務が成立しないことになる極めて危険な法制が着々と準備されている状況です。

われわれ弁護士にとって、身近であり、かつ業務の根幹を揺るがしかねない重大な問題をはらむゲート・キーパー問題について、今回の講演会を契機に、福岡県弁護士会においても、各会員がしっかりとした認識を持ち,十分な議論をする必要があります。

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ADRの可能性について  〜レビン小林久子氏をお招きして〜

石橋英之

さる7月15日、福岡県弁護士会館にレビン小林久子氏をお招きし、ADRについての講演を行って頂きました。

レビン氏は、群馬県のご出身で、ニューヨーク大学院、ロングアイランド大学院をご卒業後、ニューヨーク州立ブルックリン調停センターにおいてボランティアとして調停活動に携わられた後、九州大学大学院法学研究院助教授の職に就いておられます。また、全国各地の弁護士会が設立しております仲裁センターの設立や運営等に重要な役割を果たしてこられ、特に岡山県弁護士会が行っている同席調停の指導者としても著名な方です。

当日は、台風の影響があったにもかかわらず、約40名の会員の方々に参加して頂いたうえ、講演終了後の熱心な質疑応答で大幅に終了時間が遅れるなど、司法改革の一つの柱とされているADRに対する会員の関心の高さが窺われました。

レビン氏の講演の内容を正確に紹介することは、筆者の能力を超えておりますので、その概要をご報告させて頂きます。

1 アメリカの紛争観

1920年代、紛争とは何かという問題提起に対し、ホールディングが、紛争や当事者の定義付けを行い、その後、フォン・ノイマンやジョン・ナッシュという経済学者らによって「ゲーム理論」(人は、ミニマムな出費によってマキシマムな結果を得ようとする)が提唱された。その後、カール・リーインやモートン・ドイシェという社会心理学者らによってフレイミング効果という考え方が提唱された。それは、紛争の過程においては、競争的部分だけではなく、協調的部分も存在するのであるから、紛争当事者が、紛争の最初に遡って経過を辿りながら、主体的に話し合いを行うことによって紛争解決の方法を見いだしていくというものであり、現在のアメリカの調停の理論的基礎となっている。

2 アメリカにおける裁判外紛争解決処理方法(ADR)の種類

アメリカにおけるADRとしては、仲裁、略式陪審審理(サマリー・ジューリー・トライアル)、ミニ・トライアル、オンブズマン、ファクト・ファインディング、早期中立評価、調停、交渉等がある。

当事者に対する拘束力については、仲裁が最も強く、以下、右に記載した順に拘束力が弱くなる。当事者の手続に対するコントロールについては、交渉が最も強く、以下、右に記載した順序とは逆に、仲裁が最も弱くなっている。ADRは協議の裁判に取って替わるものとしてではなく、紛争に応じた解決策としてとらえられている。

3 アメリカの調停

アメリカの調停センターが行っている調停は、ウイン−ウイン・リゾルーションという呼び方に具現されるように、紛争当事者が双方とも満足するような解決策を得ることを目的としている。

調停委員は、28時間の講義を受けたのちシニアの調停委員の下で10時間の訓練を受け、ソロでの実地試験をパスした者のみが資格を取得できる。

調停センターが行う調停はボランティアであり、調停委員の資格を取得した後も、年間最低6時間の講義と、調停の視察を受けなければならない。

調停の目的は、紛争を解決することではなく、当事者の紛争解決へ向けての話し合いによる関係修復が目的であり、紛争解決に向けたプロセスが重要である。そのため、同席調停が基本であり(刑事事件の加害者と被害者についても同席調停が行われているとのことである)、調停委員が当事者から個別に事情を聴くことがあるとしても極めて短時間である。調停委員は、当事者の話し合いがうまくいくようにコントロールするのであって、自らの意見を当事者に押しつけたりするようなことは絶対にない。

調停では、当事者が本音で話し合えるよう、調停の中で話し合われたことについては、調停委員に守秘義務が課されている。従って、たとえ調停委員が法廷に証人として呼ばれたとしても、調停委員は調停の内容について証言を拒否することができるし、証言することもない。また、裁判所から調停センターに送られてきたケースにおいても、調停の結果(成立したか否か)のみを報告すれば足り、調停の経過等についての報告義務は課せられていない。

他方、調停の結果合意が成立したとしても、あくまでも、私的な合意であり、日本の調停調書のような法的な執行力が付与されることはない。

4 まとめ

レビン氏の講演は、この他にもインターネット上の紛争解決機関である「クリックンセトル」や「オンライン紛争解決手続き・ODR」等多岐にわたっておりましたが、紙面の関係上割愛させて頂きます(アメリカ法はもちろんのこと、コンピューターも横文字も苦手な私にとっては、講演の内容を正確にお伝えできないというのが本音です。申し訳ありません。)

レビン氏の話を聞いて、アメリカの調停制度と日本の調停制度とは全く別のものであると判りましたし、紛争解決機関のあり方についても大変勉強になりました。

これまで弁護士として紛争解決の仕事に携わってきましたが、依頼者の紛争解決にあたっては、相手方と交渉を行い、交渉がまとまらなければ調停や訴訟で解決目指すという方法をとってきましたし、その結果、当事者間の関係が悪化するとしても、それは仕方のないことであると思っておりました。

ただ、当事者間の紛争解決といっても、紛争の解決を最終目的とするのではなく、紛争解決へ向けて、当事者が話し合いを行い、お互いの関係の修復を目指すというのも、極めて重要な紛争解決方法であると思いました。

紛争後も接触を余儀なくされる、家族や隣人あるいは職場での紛争においては、白黒つけることを目的とした解決機関ではなく、アメリカの調停制度のような関係修復を目的とした解決機関を利用できれば、結果的に妥当な解決に向かうのではないかと思いました。

現在、当委員会では、紛争解決センターの設立に向けて、岡山県弁護士会が実施しております同席調停を行うか否か等様々な検討を行っておりますが、単に裁判所の調停の機能不全を補完するものとしてではなく、独自の存在意義のあるものとして設立できればとの思いを新たに致しました。

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2002年10月号 月報

ネット中毒

事務局 江島真由美

私はネット中毒である。

日々の生活のかなりの部分はインターネットと共にある私だが、その中毒症状の中でも特に思い出深いものは次のようなものだ。

1.某ドラマの虜

3年前の4月、私は某テレビドラマの虜になった。それまで純朴な役が多かった某男性アイドルが冷血で復讐に燃える男をハードボイルドに演じており、私はすっかりイカレてしまった。通勤中も仕事中も食事中もその主人公のことで頭が一杯になってしまったのである。そのうち、「もっとコアでレアな情報が欲しい!」という深い深い欲求にかられるようになり、行き着いた先が「インターネット」であった。

これが、私がネットと出会ったきっかけである。私はボーナス2回払でパソコンを即購入し、プロバイダと契約、猛スピードでネットができる環境を整えた。

それから中毒になるまで時間はかからなかった。公式サイト、監督・ファンサイトに入り浸る。他のファンや監督らと深夜まで熱く意見交換する日々が続き、最終回を迎えた夜には、私は完全に燃え尽き、ただ呆然とパソコンの前に座るのみだった…。

2.母が病に

ドラマが終了して1ヶ月も経たない頃、母が入院することになった。

母の病はかなり厳しく難しいもので、かつ担当医師が高圧的で患者と家族を更なる不安に陥れるような物言いをする人物であったため、母と家族は絶望のどん底に突き落とされてしまった。

私は、ネットで母の病に関する情報を調べ始めた。そんな医師には聞きたいことも聞きづらかったし、自分でも出来うる限り情報を集めたかったからである。医療機関・機能性食品情報・患者やその家族などのサイトに毎日毎日アクセスした。情報は溢れるほど存在するので、どの情報が有用か、信憑性があるのかは自分で判断するしかない。しかし、こうすることで多少なりとも不安や疑問を解消していくことができたのである。特に患者やその家族のサイトでは、同じ境遇の人々と率直に悩みを語り合うことができ、どんなに救われたかしれない。

母は天国に召されてしまったが、この経験は貴重な財産になったと思っている。

3.私をW杯に連れてって!

私は数年来の「中田英寿マニア」である。彼の「nakata.net」にアクセスすることが最低限の日課だ。そんな私は今年のサッカーW杯に開幕前からスブスブとはまりこんだ。だが彼だけを観ていたわけではない。悲観的評価も多かった今回のW杯だが、私は(ミーハーにだけど)存在そのものに酔った。ああ字数が足りない、詳しく書けないのが口惜しいが、とにかく再びネット三昧となってしまったのである。これに深夜のスポーツ番組までチェックをするものだから、決勝終了後カフーがカーンに歩みよっていくのを見てジーンときていた眼の下には、寝不足で青黒くなったクマができていた…。

W杯をきっかけに私は単なる中田マニアからワールドサッカーマニア(初心者だけど)へと変貌を遂げた。現在「お気に入り」には関連サイトがずらりと並ぶ。毎晩「nakata.net」とこれらのサイトをチェックしないともはや眠れない体質となってしまったようである。

皆さんはどんなネット生活を送られているだろうか。私などよりかなり進行した中毒の方もおられるだろう。当会のHPもそんな中毒者が出るくらい充実して面白いものになれば、HP担当職員として本望だなあ、とつれづれ考えている次第である。

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法律事務所のIT化について

田中雅敏

私の事務所は、私が入った当初から、全員にパソコン端末がありLANがつながっていると言う状況でしたし、私自身、小学校のころ、富士通のFM−7というコンピュータを買ってもらい、パソ\コンと慣れ親しんでいた(「オタク」ではなかった、と思いたい)ため、仕事にパソコンを使うと言うのは、当然の流れだったように思います。

それでも、やはり、ここ10年程度のコンピュータを取り巻く環境の変化とインフラ整備の速度の速さには目を見張るものがあります。

事務所内での連絡はすべてメールで行いますので、簡単に保存することもできます。

また、作成した文書などは、保存しておき、後日類似の事件がおきたときに検索して探し出し、書式の雛形として使用することもできます。

依頼者との文書のやり取りなども、メールで行えば、時間や量を気にせずいつでも送付することができます。依頼者から来た文書に手直しをして、それを修正案として、直ちに返送することもできます。

最近では、内容証明郵便もインターネットを使って事務所にいながらにして出すことができるようになりましたので、夜中に事務員が中央郵便局までダッシュするということも少なくなりました。

これら以外にも、「計算機」としての本来(?)の用途である、利息制限法引きなおし計算、破産や管財事件処理の際の各種の表の作成などは、データを入力して一発計算ができ、修正も簡単というのは、本当にありがたいと感じる瞬間です。

それらにもまして、情報収集のツールとしてのパソコンの威力は計り知れないものがあると思います。

最近では、各種会社情報、各種統計情報などがインターネットで簡単に検索できますし、中古車の値段から、土地の路線価、過去の新聞記事、官報記載情報の検索、各種行政庁の通達の確認などもインターネットですべてできますし、最新の判例や、判例時報、判例タイムズなどに掲載されない知的財産関係の最新判例なども、最高裁判所のホームページで簡単に調べることができます。

まさに、事務所にいながらにして一次調査はほとんどできると言っても過言ではない状態だと思います。

さて、このように便利になる一方のITではありますが、便利さは常に危険と隣り合わせであることも忘れてはなりません。

IT化の危険性の代表例は、コンピュータウイルスでしょう。これに感染することにより、パソ\コンの動きが止まったり、大切なデータが消えたり、最悪の場合パソコンが壊れたりという事態を招きます。

また、最近では、感染したパソコンが、自動的に自分のパソ\コン内のアドレス帳に記載されているアドレスに無差別にウイルスを再送信してしまう機能を持ったウイルスも発見されているようです。

こうなると、自分が被害者であると同時に、加害者にもなってしまうことになります。

このようなウイルスに対しては、ウイルス対策ソフトを導入するとか、欠陥システムであるとも言われるマイクロソ\フト社の製品を使わないと言った対応をとるのが一般的なようです。

もうひとつ、弁護士事務所として考えておかなければならないことは、悪意の攻撃からどうやって身を守るかと言うことでしょう。

弁護士に対しては、相手方や、依頼者などから、逆恨みを理由とする嫌がらせがなされることが皆無ではありません。

その中で、ちょっとコンピュータの知識のあるものであれば、いろいろな嫌がらせをすることができます。コンピュータウイルスを送りつけるなどは当然として、メール爆弾を送る(大容量のメールで受信し始めるとコンピュータの動きが止まってしまう)とか、パスワードを解析して弁護士本人になりすましてメールを送信し、他人を誹謗中傷するとか、クレジットカードの番号を調べて、インターネットの高額アダルトサイトに登録するというようなことも考えられるでしょう。

さらに、進んで、常時接続しているようなところに対しては、インターネット経由でLANの中に入り込み、データを抹消、改ざんするとか、データを盗み出すと言うようなことも理論上は十分に可能\です。

もうひとつ心配なのは、盗聴ならぬ、メールの「盗み見」です。

メールは、インターネットといういわば準公共の空間を使って転送されるため、知識と機会があれば、他人間でやり取りされるメールを盗み見ることは十分可能\です。警察などの捜査機関がこれを行うことも十分に考えられますし、民事事件の関係者からもこのようなことが行われないという確証はありません。

こうして考えてみると、現在のIT化は、利便性が優先され、セキュリティの面は立ち遅れていると言わざるを得ないものだろうと思います。

これらに対する対応策として、技術的な方策はいくつもありますが、結局のところ、万全のものはありません。

残念ながら、もっとも確実な対策は、本当に重要なデータの取り扱いや通信は、インターネットなどとは無関係に行うしかないのが現状でしょう。

そういう意味では、弁護士事務所のIT化は事務の効率化からいえば非常に重要とはいえますが、一方で、本当に大事なものはパソコンやインターネットから隔離するという「セキュリティ」もまた、常に同時に意識しておかなければならないと思います。

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釜山地方弁護士会交流記

山内良輝

平成14年9月8日から10日までの3日間,当会の執行部と国際委員会の代表団が大韓民国釜山市を訪問しました。当会と釜山地方弁護士会との間では,毎年,相互に公式交流が行われており,本訪問もかかる公式交流の一環として行われました。当会執行部からは,藤井克巳会長,山本一行担当副会長ら7名,当会国際委員会からは,大塚芳典委員長,安武雄一郎副委員長ら4名,そして公式交流会の報告者を務める前田豊会員という総勢12名(ほかに日本側通訳1名が同行)が参加しました。

訪問初日,当訪問団は,午後1時50分発の大韓航空機で福岡空港を出発し,午後2時50分に釜山空港に到着しました。福岡と釜山との距離は,福岡と鹿児島との距離とほぼ同じであり,実際の飛行時間は,対馬海峡(韓国では大韓海峡と呼ばれているそうです)を一跨ぎのわずか3〜40分にすぎません。夕方,釜山のリゾートホテルで夕食会が開かれ,全面ガラス張りの壁を通して日本海(韓国では東海と呼ばれているそうです)の絶景を一望できる会食場で,美味しいカルビを頂きました。

2日目の午前中は,国連記念公園と釜山市立博物館を見学しました。記念公園は,朝鮮戦争で戦死した国連軍兵士を慰霊するものであり,市立博物館は,主に日韓関係史にまつわる文物を展示したものです。記念公園では,アメリカ・カナダなど国連軍参加国の国旗が掲揚され,国旗の下に多数の戦没者の墓石が建てられている一方,朝鮮特需に沸いていた日本の国旗と墓石は一つもなかったのが印象的でした。また,市立博物館では,朝鮮半島の文明の黎明期や,数世紀にわたる半島諸国と日本との親交期の展示品ばかりでなく,豊臣秀吉の朝鮮出征や日帝38年に関する展示品も数多くありました。午後になり,釜山地方法院で刑事法廷を傍聴しましたが,検察官が裁判官と同じように法服を着ている点や,被告人が片手錠のまま傍聴席に着座して審理を受ける点などで日本の法廷との違いが見られました。

そして,午後4時10分から午後5時30分までの2時間20分にわたり,本訪問の目的である公式交流会が釜山地方弁護士会館で開かれ,当訪問団12名と孫済ト会長ら韓国側14名との間で意見交換が行われました。今回の公式交流の議題は,「最新の日本司法改革事情」です。前田会員が,過去の司法改革の経緯を踏まえて,今回の司法制度改革審議会の意見書とこれに基づく国の司法制度改革推進計画を説明し,さらに国の方針の問題点と日弁連の取組み等を説明しました。これを受けて韓国側から質問や意見が相次ぎましたが,韓国でも,日本とは背景事情が異なりますが,つい最近までロースクール問題の可否が議論されていたことがあり,もっぱらロースクール問題に関心があるようでした。公式交流会の終了後,繁華街の韓定食料亭で懇親会が開かれ,酒を酌み交わしつつ楽しい時間を過ごしました。夜も更けて懇親会がお開きとなり,当訪問団はホテルに帰るバスに乗り込み,韓国側との間でお互い手を振って別れを惜しみましたが,よく見ると,南谷洋至会員と成瀬裕会員が韓国側の一群に混じり,にこやかに手を振って当訪問団のバスを見送っているではありませんか。どうやら,両会員は,独自に韓国側と懇親を深める意気込みのようです。

3日目,ある会員(名前は申しますまい)がパスポートをホテルに置き忘れるという椿事もありましたが,「昨日の記憶がない。」という二会員(名前は申\しますまい)も顔を揃えて全員が無事に帰国しました。

「近くて遠い国」・・・韓国はこのような言葉で語られます。私は初めて韓国を訪問し,短い旅程の間にも,海峡と海の名称問題や記念公園と市立博物館の見学を通じて,日韓の緊張関係を意識せざるを得ないような事実を垣間見ました。しかし,釜山地方弁護士会が誠意をもって当訪問団を歓待してくださったことには感謝の気持ちで一杯ですし,このような前向きの関係が継続していることをたいへん誇らしく思いました。今年10月の九弁連大会には釜山地方弁護士会の代表団が参加します。次はわれわれの番です。

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付添人マニュアル」発刊される!+NHK出版「非行少年と弁護士たちの挑戦」発刊へ

池田耕一郎

1 「付添人マニュアル」発刊

子どもの権利委員会の研修・広報担当としてご報告いたします!!

ついに,福岡県弁護士会子どもの権利委員会が総力を結集して編集した「少年事件付添人マニュアル〜少年のパートナーとして」が日本評論社より発刊されました。

思えば,このマニュアルの企画ができたのが,県弁春山執行部時代の平成12年のことでした。以来,2年を超える歳月を経て,ついに完成へとこぎ着けたのです。

編集長・古賀克重委員におかれては,よくぞ重責を果たされたものと敬服いたします。

この「付添人マニュアル」は,時系列に沿って付添人活動をQ&A形式で説明するほか,「共犯事件」,「共同危険行為」,「シンナー」,「ぐ犯」など,事件類型ごとのマニュアル,すぐに使える書式集,少年法改正のポイントなどふんだんに織り込まれ,かなり欲張った内容になっています。これまでの付添人活動に関するマニュアルと比較し,実際の活動に直ちに役立つ,より実務的なものを目指しています。おそらく,今後しばらくは本書を超えるマニュアルは現れないでしょう。

福岡県弁護士会会員の皆様には,日頃,当番付添人制度へのご理解・ご協力を賜っていることに対する感謝の意を込めて,特別に無料配布させていただきました(定価は,税別2000円です。)。会員の皆様の付添人活動の一助にしていただければ幸いです。なお,本書は福岡県弁護士協同組合をはじめとする各弁護士協同組合において購入可能です。修習生,他の地域の弁護士にも購入をお勧めくださいますようお願いします。

これを読めば,付添人活動をやりたくてやりたくてたまらなくなること,間違いなし!

2 NHK出版「非行少年と弁護士たちの挑戦」発刊へ

さらに,本年11月には,一般市民向けに福岡県弁護士会子どもの権利委員会編著・「非行少年と弁護士たちの挑戦」と題する書籍が,NHK出版より発刊されます。

この刊行物は新書版サイズで,編集者の言葉を借りれば,「書斎で読むのではなく,お茶の間で気楽に読める本」を目指すことになります。コンセプトは,子を持つお父さん,お母さん,そして,子ども自身を読者対象として,少年事件・少年審判とは何か,「付添人」は,その過程においていかなる役割を果たすのかをわかりやすく伝えるというものです。制作にあたっては,当会会員から心に残る付添人活動の実例を広く募集すると共に,注目される付添人活動の事例については,委員会のほうから付添人をされた会員に執筆をお願いするなどして,珠玉の論稿を集めることができました。本書は,それら実例に基づくドキュメンタリー部分のほか,大谷辰雄委員長の(徹夜に近い)執筆による少年事件原因論,全件付添人制度の意義及び国選付添人制度実現に向けての取組みに関する論稿を総論部分として収め,2部構成となっています。本年11月の発刊を目標として,本書編集担当の森裕美子委員を中心に鋭意編集作業を進めています。

本書の出版によって,当会が進めてきた全件付添人制度がより広く市民に認知され,念願の「国選付添人制度」実現へと大きく近づくことを祈っています。

本書が,福岡のみならず,全国の書店の店頭に山積みされ,ベストセラーになることを楽しみにお待ちください。

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福岡県弁護士会紛争解決センター設立へ

石橋英之

平成一四年八月二八日の常議員会で福岡県弁護士会紛争解決センター規則等が承認されました。

これに基づき、福岡県弁護士会紛争解決センター運営委員会(以下、運営委員会といいます。)が設立され、運営委員会による仲裁人候補者名簿の作成等を経て、本年12月初旬には、福岡部会、北九州部会、久留米部会、飯塚部会の各法律相談センターに「福岡県弁護士会紛争解決センター」(以下、紛争解決センターといいます。)を開設して運営を開始したいと考えております。

制度の詳細や手続等については、別途、手引きを作成のうえ、会員各位に配付する予定としておりますが、以下、簡単に制度の概要等をご説明致します。

1 制度の意義

当会が福岡県下一二ヶ所で開設している法律相談センターの相談業務と紛争解決センターを連携することにより、「相談から解決まで」をモットーに市民へのより充実したリーガルサービスが提供できるようにしたいと考えております。

また、当会では、簡易裁判所が廃止された地域等にも法律相談センターが開設されておりますので、当該地域に紛争解決センターを開設することにより、簡易裁判所に替わる紛争解決機関としての役割を果たせればと考えております。

2 解決の方法

紛争解決センターが行うのは、紛争解決へ向けての和解のあっせんと、当事者が仲裁合意をした場合に行う仲裁判断です。

手続は、和解あっせん手続として開始され(原則として3回の期日を予定しております。)、和解が成立すれば和解契約書が作成されます。

但し、和解契約書自体は債務名義となりませんので、債務名義が必要な場合は、形式的に仲裁判断書を作成することもできるようにしております。

和解あっせん手続として開始された後、当事者が和解ではなく仲裁による解決を希望した場合には、仲裁手続に移行し、仲裁人による仲裁判断がなされることとなります。

また、仲裁手続に移行した後も、和解が可能であると仲裁人が判断した場合には、和解を勧試することができるようになっております。

なお、仲裁判断書は債務名義となりますが、強制執行を行うには、別途、執行判決を得る必要がありますので、この点ご留意頂きますようお願い致します。

3 申立の対象となる事件

事案の種類や紛争の価格の多寡等に関係なく、原則として、どのような事件でも受け付けることとしております。

但し、仲裁判断によって解決することができない事件がありますので(例、離婚事件、認知事件、境界確定事件等)、その場合は、和解あっせん手続のみを行うことはできますが、仲裁手続への手続の移行はできませんので、ご注意下さい。

これまで他会の仲裁センターの視察等を行ってきましたが、法律的な構成が難しく訴状を作成するのが難しいと思われるような事件や、立証が難しいと思われるような事件について、仲裁センターを利用して解決することができたとの意見が多数ありました。

また、名古屋では、少年らによる集団暴行事件の賠償問題を仲裁センターで解決することができたとのことですので、刑事事件の被害者と加害者の示談交渉の場としても活用できるのではないかと考えております。

更に、後に述べますように、建築士等の専門職の方々に専門委員として協力して頂く予定にしておりますので、専門的な知識を要する紛争についても対応できるのではないかと考えております。

4 費用

申立ての際に、申\立人から申立手数料として一万円を納付してもらいます。

期日手数料については、他の仲裁センターでは当事者双方から徴収するところもありますが、期日手数料の負担を理由に相手方が期日に出席しないという事態が生じないよう、期日手数料は徴収しないことと致しました。

最終的に和解が成立するか、仲裁判断がなされた場合には、成立手数料として、原則として、解決額に応じて計算した成功手数料(例、300万円の場合の成立手数料は18万円となります。)を紛争当事者双方に半額ずつ納付してもらうことにしております。

なお、和解あっせんが不調に終わった場合には、原則として、申立手数料以外の費用はかかりません。

5 仲裁人・専門員

紛争解決センターの和解あっせん及び仲裁を担当する仲裁人は、原則として、弁護士経験5年以上の弁護士の中から選任された仲裁人候補者の中から、紛争解決センターが選任することとしております。但し、当事者が合意すれば、当事者が選任した仲裁人が手続を主宰することとなります。

仲裁人の公正さの確保等のため、当事者と利害関係がある場合の解任の手続や守秘義務の規定等を置いております。

専門的知識を要する事件については、仲裁人だけで対応することは困難であろうと思われますので、そのような事案に対応するため、仲裁人を補佐する専門委員制度を設けております。

他会の仲裁センターでは、税理士、建築士、土地家屋調査士等の専門職の方々の協力を得て、的確な解決が図れているとのことですし、名古屋では、カウンセラーや医師にも専門委員として協力してもらっているとのことでした。

専門委員として様々な専門職の方々に協力して頂けることが、当紛争解決センターの成功への1つの課題であると考えておりますし、各種専門職の方々のご協力が得られれば、いわゆるワンストップ型のリーガルサービスの提供が可能となるのではないかと考えております。

6 その他

現行の法制度では、紛争解決センターへの申立は消滅時効の中断事由とはなりませんので、消滅時効が迫っているような事案については、何らかの時効中断の手続をとることが別途必要になりますので、ご注意下さい。

7 最後に。会員各位へのお願い

平成一三年度版の仲裁統計年報によれば、平成一三年度の全国の仲裁センターへの申立件数は九三〇件、解決に至った件数は三六九件(旧受事件・七七件、新受事件・二九二件)となっております。

しかし、司法制度改革の流れの中で、ADRが紛争解決機関として重要な役割を担わなければならないことは明らかですし、隣接他業士や各種業界団体にもADR設立の動きが具体化してきていることも事実です。

このような状況の中で、弁護士会以外で設立されるADRにおいて、不適切な解決がなされないよう監視していくことも弁護士・弁護士会の重要な役割ですが、何よりも、弁護士会が運営しているADRが、市民の紛争解決機関としての役割を十分に果たし、手軽で信頼できる機関として市民に認識されることが重要ではないかと考えております。

紛争解決センターが成功するか否かは、仲裁人候補者にいかに優秀な弁護士を揃えることができるか、また、会員の弁護士がこの制度をいかに有効に活用するかにかかっていると思います。会員各位のご協力を心よりお願い致します。

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2002年11月号 月報

事務所内での情報の共有化

植松 功

「IT」とは一体何のことだろうか。

Information Technologyの頭文字をとったものらしいことは何となく知っているが、そのまま訳して「情報技術」と言ってみても、何かよく分からない。

仕方ないので、インターネットで調べてみたら、「入手、収集可能な情報資源を積極的に活用して、ビジネスを有利に展開するためのしくみ。それを実現するために使用可能\なさまざまな情報技術のこと。」とある。

「ビジネスを有利に展開する」というのは何か「競争」とか「利益」とかを連想させ、ちょっといやらしいが、なるほど「入手、収集可能な情報資源を積極的に活用できるシステム」というと、弁護士業務にも大いに関係ありそうである。

情報資源はいろんなところにある。

最も身近なのは、事務所内での情報だ。僕のところは弁護士が五人いるが、それぞれが毎日毎日カチャカチャとキーボードを叩いていて、その作成文書量は大変なものとなっている。そして、それらは調査し、悩み、苦労した末に完成したものも少なくないはずで、貴重なノウハウとなっているに違いない。

これを共有の財産とし、簡単に検索できれば、それはまさに「情報資源の積極的な活用」である。

そこで、わが事務所ではLANを組んで、共有化を図っているのであるが、「LANを組んで、共有化すればいいというものではない」という事態に陥っている。インフラは整備されているが、肝心の活用ができていないといってもいい。

なぜ、そういうことになっているかというと、ファイル名とフォルダの作り方にルールがなかったためだ。

ある者は、継続事件と終了事件というフォルダを作り、事件が終了したときにファイルを継続事件から終了事件のフォルダに移すときの感慨に耽っているし、またある者は依頼者を几帳面に五十音順に並べてフォルダを作り、マ行の依頼者が少ないとどうでもいいことに感心したりしている。

ファイル名に至っては、フォルダに当事者名をつけているためか、「訴状」とか「仮処分申立書」とか「契約書」だけで、他人にはその中身はさっぱり分からない。

もちろん、検索して、それらしきものに当たりをつけて、中を見るということはできないではない。しかし、何と言ってもルールがないため、検索もかなり抽象的に単語を設定しなくてはならず、妙な虫眼鏡みたいなアニメーションがひたすらグルグル回っていて、とても時間がかかるし、そのようにして抽出されたファイルも膨大で、とてもじゃないが面倒で中を見る気になれない。

さらに困るのは、独自のルールで文書等を保存して数年が経過してしまうと、「何とかしなければ」と思っても、あまりにファイルが多すぎて手をつけられず、「何ともできない」ということである。かといって、「過去のものはともかく今後はこのルールで」という訳にもいかない。そんなことをしてしまうと、己の使い勝手が悪くなって、急ぎのときなどは逆上するのは必至だからだ。

そういう訳で、わが事務所では、LANを組んで、情報の全てを共有できるような万全の環境の中で、

「こんな事件なんだけど、やったことある?」

「何年か前にやったことある気がする。あの当事者は誰だったかなぁ。」

「思い出して、見つかったらプリントアウトしておいて。」

「思い出したらね。」

という形で情報を共有しているのである。

Technologyの香りがさっぱりしないが、これをITと呼んでいいのだろうか。

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福祉の当番弁護士

迫田登紀子

会員の皆様、「福祉の当番弁護士」という電話相談の窓口があるのをご存知でしょうか。これは、行政機関、福祉団体、施設等において高齢者や障害者の相談を担当している方を対象に、それらの方の疑問を法的な側面からアドバイスすることを目的とした電話相談です。現在「あいゆう」に登録をした会員(福岡部会中120名)の中から、登録を承諾された49名の会員によって担われています。

2000年9月18日から始まった「福祉の当番弁護士」の丸2年を記念して、去る9月20日に九弁連及び当弁護士会主催の記念シンポジウムが行われました。本稿では、このシンポのプレ企画として9月12日に行われた、高齢者ご本人の相談をも含む電話と面接による相談会についてご報告します。

当日は、朝10時の開始直後から2台の電話ともにふさがるという盛況ぶりで、午後5時の終了までに合計30件もの多数の相談がよせられました。相談の会場には、新聞・テレビの記者が大勢駆けつけ、テレビカメラも数台入りましので、相談の状況がお昼のニュースに流れると、また途絶えることなく相談の電話が続きました。(この日私は、テレビカメラがきているなど全く知らず、「今日は人に会わないもんねえ。」とぼさぼさの頭のまま、相談会場に出かけたのでした。にもかからず、なぜかテレビにうつる羽目になり、そんな日に限って、たくさんの人から観られていて・・・。何人もの依頼者が、にこにこと「先生、見ましたよ!」声をかけてくださるので、何故だかとても落ち込みます。)

相談は、福祉団体や施設からが4件、その他は高齢者ご本人やその家族からでした。

主だった内容としては、行政手続き・行政とのトラブルに関するものが9件、負債関係が5件、家族間のトラブルに関するものが3件、弁護士とのトラブルに関するものが3件、遺産分割・遺言に関するものが2件、入所者の対処に関する施設からの相談が2件ありました。行政手続に関する質問や法的観点からのアドバイスは必要ないと思われる質問も少々見られましたが、このことは、相談窓口が分からずに1人で悩みを抱えておられるご高齢者が多いこと、そして「弁護士による相談」に対する期待・信頼が高いことの証でもあると思います。

これらの他にも、労働問題、刑事手続き、消費者問題、医療過誤に関する相談などもありました。高齢者の相談といっても、成年後見をはじめとする高齢者特有の相談ばかりでなく、一般相談と同様に幅広い相談がなされたと分析できると思います。

この企画の後に行われた2周年記念シンポジウムでも、高齢者や障害者の権利擁護のために、弁護士と関係各機関とが連携をすることや、その中における弁護士の役割の重要性が確認されました。

幅広い市民の皆様に弁護士を知って頂き、そして利用していただこうとしているこの司法改革の中で、高齢者や障害者の分野は、まだ私たちがなかなか手をつけられないでいる未開拓の分野であるといえるのではないでしょうか。会員の皆様、高齢者・障害者へのリーガル・サービスの提供のため、是非「あいゆう」そして「福祉の当番弁護士」にご登録ください。

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心神喪失者等医療観察法案について 

森 豊

1 去る9月27日(金曜日)午後6時から、福岡県弁護士会研修委員会の主催で『心神喪失者等医療観察法案に関するパネルディスカッション』が県弁護士会館三階ホールで開催されました。

この法案は、正式名称を「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」と言い、平成13年の大阪池田小学校事件に対する高い社会的関心や一部マスコミの煽情的報道もあって、重大犯罪を行った精神障害者の処遇を求める立法化の動きが一気に加速化し、ついに全文121条の法案として本年度通常国会に上程され、継続審議となっているものです。

2 このような急速な立法化の動き及びその結果としての法案の問題点に対してはすでに患者団体や日弁連・各地単位会はもちろんのこと、精神科医の学会・諸団体からも多くの反対声明が出されていますが、国会審議における対決法案となっていないため、これら反対論をも踏まえた十分な審議を経ないまま可決されるおそれが危惧されています。

『パネルディスカッション』は、法案(裁判官1人と精神科医1人で構成される合議体が重大犯罪行為を行った者の精神障害による「再犯の可能\性」を判断して入通院治療を強制するか否かを決定する審判制度の設置を中核とする)について、従来から指摘されてきた一般的な問題点を整理・確認するにとどまらず、さらに法案が規定する弁護士の付添人としての活動の内容に踏み込んだ問題点の洗い出しをも目指すことによって、研修委員会主催の会員研修に則したものになるように企画されました。

3 パネラーの高木茂先生は、日弁連刑事法制委員会において上記の立法化の動きをずっとフォローされ、措置入院審査会(精神科医2人、看護士、精神保健福祉士等の医療関係者の他に、弁護士及び検察官を構成員とする)で入通院治療を強制するか否かを決定する新制度の設置を中核とする対案の取りまとめに尽力されてきた立場から、立法化の経緯、裁判官が入退院の判断をする制度の弊害、判断の対象となる「再犯のおそれ」という要件の不明確性等の重要な問題点を一つずつ丁寧に指摘されました。

もう一人のパネラー池永満先生からは、国際人権規約も踏まえ人に医療を強制する制度はどうあるべきかという観点から、司法関与自体は肯定できるが、裁判官が判断すべきことと医者が判断すべきことの混同、強制入院期間が容易に継続され刑事罰と著しい不均衡が生ずる危険性、一事不再理原則の違背等の問題提起がなされました。さらにこれを補足する形で精神保健委員から、法案に規定された審判手続の種類、手続、付添人の権限等について、主に少年事件付添人と比較した問題点の洗い出し作業の報告がされました。

刑事法制と精神保健の両論客の仲裁の大役を担う司会者は、精神保健に深い見識をお持ちの八尋光秀先生で、司会者として適宜の解説等をしながらも、新制度の設置そのものに反対する持論を時折披露されました。

4 法案反対・精神医療全体の改善こそ最良の問題解決策であるという共通項がありながらも、法案反対のスタンスがそれぞれ異なる三者の間の緊張をはらんだ議論のやりとりに、2時間の所定時間はすぐに消化されました。

週末、夕刻の時間帯で強い雨ということもあり、参加会員は必ずしも多くはありませんでしたが、この法案の重大な問題点や反対する立場の多様性をよく理解して頂けたのではないかと思います。

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吃驚仰天!

渕上陽子

ある晴れた日の午後、公園を散歩して店に入る。海(男・仮名)は、日焼けした顔でパクリとドーナツを食べ、私を見てニッと笑う。まさに至福の時……。

でも、当番弁護士として出会ったばかりの海(当時一八才)は、幸福とほど遠い姿だった。首は包帯でぐるぐる巻き、顔も全身も傷だらけ。公務執行妨害罪で逮捕されてから4日経つけど、それにしてはボロボロすぎない?

海の話を要約すると、次のとおりであった。

その夜、元同級生の送別会に行くため、友だちと待ち合わせをしていたら、昔のワル仲間に声を掛けられた。彼らは、近くの広場に集まってシンナーを吸っていた。少年院を出てから真面目な日々を送っていた海であったが、恋人に裏切られた傷心もあって誘惑に負けた。

シンナーを吸い始めてすぐ、パトカーが来た。多くの少年が逃げたが、海は職務質問に応じた。ところが、いきなり両腕をひねり上げられ、パトカーの方に引きずられそうになった。「普通に話しているじゃないですか。手を離してください。」と言ったが、首をも絞められ、お腹も跳び蹴りされた。警察官はどんどん増え、何重にも囲まれた。抵抗しようにも、体中押さえつけられて動けない。あまりの痛さに、ひねられた腕を振りほどこうとしたら、左腕がスポッと抜けて、手の甲が警察官の眼鏡に当たって眼鏡が飛んだ。そのとたん、「公務執行妨害罪で逮捕する」と言われた。海は思わず「助けて!」と悲鳴を上げたが、そのままパトカーに押し込まれ、警察署で尿を取られた……。

「警察は、僕が右手の拳骨で警察官の頬を殴りつけたと言っているけど、嘘です。お願い。信じてください。」と、海は子犬のような目で私を見つめる。しかし、この時点の私は、まさか警察がそこまで?などと思わないでもなく、一〇〇%彼を信じたわけではなかった。ゴメンネ、海。

しかし、海は、その後も一貫して否認を続けた(シンナーを吸ったことは、最初から認めている)。逮捕から一〇日以上経っても調書を取られず、「認めないと少年院に行くぞ。」などと説得(脅?)され続ける毎日だったが、「今辛いけど、やってもいないことを認めたら一生後悔する。」と自分に言い聞かせていたようだ。

実際、警察の対応は凄まじかった。ある日、自己紹介をした私に、「先生は、あの子を少年院に行かせたいのか。警察官が、『殴られた』と言っている以上間違いない。無理にでも認めさせるのが弁護士の仕事でしょうが。」と大声でまくし立ててきた。「現場に目撃者はいませんでしたか。」と聞くと、「少年側の人間なんか、調べる必要はないっ。」とはねつけられた。

海は、こういった強烈な取調べに、よく耐えていたと思う。それでも、S.O.S.の電話は一日に何度も架かってきた。駆けつけると、「陽子先生!」と叫んで嬉しそうに立ち上がる姿が切ない。

期待もむなしく、公務執行妨害についても家裁送致された。実況見分調書すらないズサンな記録を読み終え、ため息をついた。これだけ食い違うとは、まさに『羅生門』(映画の)である。警察側の目撃者の調書もあったが、夜一一時過ぎ(現場はほとんど真っ暗)、約五〇メートルも離れた場所から、「『右手の拳骨で』殴りつけたのを見た」、などと言われてもね…。

しかし、海の側にも立派な証拠があった。彼は気付いていなかったが、待ち合わせをしていた友人二人は、職務質問開始とほぼ同時に現場に着いたそうで、状況を目撃していたのだ。これで、海の供述はほぼ全面的に裏付けられる。海は、ラッキーだったんだろう。彼らがいなかったら、と考えると恐ろしい。

さて、家裁では、まず中間審判で海の言い分を聞かれた。第一回目の審判では証人尋問(海側、二人)が行われ、第二回目に、いよいよ裁判所の判断が下されることになった。その前に海に会ったが、最初の頃とは別人のように落ち着いていた。「無実の罪に泣く人がいなくなるように、自分は絶対にこの経験を忘れません。」なーんて言っている。彼のたくましさと成長ぶりには、学ばされる一方だった。

結果は、「非行事実なしの不処分」(毒劇法違反は試験観察)。「ふんっ、当然だよね。」とばかりに海の方を見ると、海ったら、私を見て泣いているではないか。

よかったね、海!

こんな事件は、二度とあってはいけない。

海は、最近一九才になった。仕事と野球で真っ黒になり、また急に大人っぽくなった。近ごろ「嬉しいこと」があったらしい。今度、教えてね!

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2002年12月号 月報

「女性の権利110番」実施報告

山崎あづさ

10月26日(土)、12回目となる「全国一斉女性の権利(女性に対する暴力)110番」の電話相談が行われました。

これは、日弁連両性の平等に関する委員会の設置15周年を記念して1991年から始まったものであり、毎年4月の「女性週間」にちなんで実施してきました。「女性週間」というのは、1949年から2001年まで、日本の女性が初めて参政権を行使した1946年4月10日を記念して、毎年4月10日から16日までの1週間を、「女性週間」と定め、女性の地位向上の啓発活動を行ってきたものです。

今年は、DV法実施1周年を10月13日に迎えるのに伴い、「女性に対する暴力」を相談内容の中心に据えて、10月に実施されることになりました。

今回も、ドメスティック・バイオレンスをはじめストーカー、セクシュアル・ハラスメント等、女性が抱える問題についての相談に応じるため、6人の弁護士が午前、午後に分かれて担当しました。

この日の相談は17件でした。回線が2つしかなく、しかも一つの相談が内容上どうしても長くなってしまいがちなので、電話をかけたけれどもつながらなかった方もいたと思います。

相談内容としては、離婚にまつわる相談が7件、うちDV(心理的暴力を含む)が4件、ストーカーが2件、一般的な知識を尋ねるものが2件、その他(趣旨違い、趣旨不明)が6件でした。中には、直前に夫から暴\力を振るわれて家を飛び出したケース、夫から包丁を持って脅されたケースもあり、このような場合はDVについての相談や保護を行っている各種関係機関の連絡先を伝え、できるだけ次の機関につなげるように対応します。DVの場合、弁護士が保護命令申立をするにしても、女性相談所や警察などの協力が必要になりますし、被害女性自身が一人では対処できない場合が多いので、他の機関との連携というのが重要になってきます。

DVの相談を受けていて思うのは、ひどい暴力を受けていても、まわりから「我慢しなさい」と言われたり、助けを求める方法を知らなかったりということから、暴\力に耐えるしかないと思いこんでしまい、そのためにさらに暴力が日常化していくような面があるということです。今回の電話相談で表\れたケースは本当に氷山の一角であると思いますが、こうしてできるだけ多くの窓口を用意することで、被害を受けている女性が相談できるきっかけを作ることが大切だと思います。

今後とも、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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ヤミ金融根絶を目指す決議 〜九弁連定期大会にて〜

石田光史

1 去る10月25日(金),熊本市内のホテル日航熊本において,第55回九州弁護士会連合会定期大会が開催されました。その大会の中で,当会の提案により「ヤミ金融根絶を目指す決議」がなされましたので,ご報告いたします。

2 決議の内容・提案理由等については,全会員に配布される大会議事録をご確認いただきたいと思いますが,決議内容を簡単に要約すると,1.弁護士会としてヤミ金対策を実施するとともに,警察や行政機関などとも連携を取りヤミ金根絶のための活動を行う,2.ヤミ金による超高利の違法な貸付に対しては「返済しない」という基本方針で臨む,ということです。

4 しかし今回,当会があえてこのような内容の決議を提案したのにはもちろん理由があります。

1つには,ヤミ金を根絶するためには,単に捜査機関や行政機関に取締を求めていくのみでは全く不十分で,弁護士が個々の事件処理の中でヤミ金に対して経済的打撃を与えていくことが絶対に必要であり,そのためには「返済しない」という方針を九弁連全体に周知する必要がある,ということです(関係機関との連携等と個々の事件の適切な処理は,ヤミ金根絶を目指す上で車の両輪と考えます)。\n

もう1つ,ヤミ金事件を扱っている会員(特に若手の会員)は,みなヤミ金に手を焼いています。そのような会員に,ヤミ金と対峙する上での武器・拠り所を提供したかった,ということがあります。九弁連で「ヤミ金には返済しない」という決議がなされたということになれば,ヤミ金から「何で返さんのか!」とすごまれても,「いやあ,九州の弁護士の集まりで,返済しないってことになってねぇ。私だけ返すわけにはいかんやろ?」と切り返せます(この点,佐賀県弁護士会の平山泰士郎先生が,賛成討論の中でユーモアたっぷりに指摘されました。)。不適切な対応をした警察に対しても,「九弁連では返さないという方針を確認した,なのに『借りた物は返せ』なんて指導するとは何事だ!」と文句が言えます。そして何より,「返さないという方針は,自分だけがやっていることではなく,九弁連決議という土台があるのだ。」と思えることは,ヤミ金との交渉の際に心理的・精神的な拠り所となるのではないかと思います。

本提案は,我々のこれらの意図を会場の各会員にご理解いただき,圧倒的賛成多数で決議されました。

5 我々は決議提案をするに際して,単に取組みを表明するだけの決議ではなく,実務に「使える」決議にしたいと考えました。もちろん決議自体に会員に対する拘束力はありませんが,ヤミ金根絶のため,「使える」本決議を十\二分にご活用いただき,「ヤミ金に対して返済しない」という方針でヤミ金事件の処理をしていただきたいと思います。

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情報化の波にのれない私

田中裕司

今までのホームページ委員の先生方のコラムはネットやメールの活用法の紹介等があり、「すごいな」と思わせるものばかりでしたが、HP委員の幽霊部員である私は、今回あえて消極的にITのデメリットについて思いつくままにしゃべらせていただきたいと思います。

とはいうものの、私の事務所は税理士との共同事務所ということもあり、メール・ネットはもちろん、判例検索、ファックス送信まですべてパソコンで行うほどIT化は進んでいますし、私も日常業務・プライベートでは「便利になったなあ。」とその恩恵をうけることが多くあります。しかしです。なぜか心底パソ\コンと親しくすることができません。「好きになりたいのだけれど、心のどこかで冷めている。」そんな相手です。なぜかな?と考えてみました。

まず、最近食べ過ぎで肥満になっています。なにやらメーリングリストなる情報交換の場が急激に増えて、毎日莫大なメールの量に圧倒されているのは私だけではないはずです。最近はチェックするのが億劫で空けないメールがほとんどです。重要なのがよくわからないし、出欠確認のメールなんかだとごちゃごちゃで何がなんだか分からなくなります。さらに、見るだけで時間をとって仕事になりません。情報交換の趣旨であれば、掲示板のほうが有効に思います。メールはあくまで1対1の伝達方法として考えた方がいいようです。

それから、気まぐれで私の相手を拒否することもあります。復帰するのに相当時間をとります。私は荒いので、忙しいときにバグったりすると、ムカついてキレて電源を切ったり、コンセントを抜いたりするなどの暴行をします。でも、カーッとなった後、冷静になり「大丈夫かな。」と反省の念にかられながら電源をつけてみて大丈夫だと「もう二度としないから。」と更生を誓うのです。(しかし、また再犯を犯してしまいます。)

それから、けっこう口がかるくたくさんのひとにいろんなことを言ってまわります。「〇チャンネル」なる掲示板では誹謗中傷だらけで目を覆いたくなります。知っている人も載せられた事があり、すごい嫌な思いをしたそうです。さらには、ネット犯罪なるものも最近流行しており、われわれの仕事においても他人事では済まない被害が発生するおそれもあります。

そして、これが好きになれない最大の原因だと思うのが、愛情がないということです。個人的なやりとりについては、やはり手書きの方が味があって、なんとも知れないいい気持ちになります。最近は、年賀状やあいさつ状もワープロ字でなんか楽になったけど昔の手書きの暖かさにはかないません。さらには、メールや掲示板でコミュニケーションをとっていると、一方的に話をするものですから、意図を上手く伝えられなかったりして、誤解を生じたり、怒らせたりすることもありますね。

それとやっぱり図面から光を放っているので、目に優しくありません。

そんなこんなで私はまだ、心底好きになれないのです。

あっ1つだけ最近いいことがありました。これまで年に1回話すかどうかという疎遠な弟が海外に仕事で行っているのですが、メール、インターネットでやっと兄弟の国交が正常化して、会話ができるようになりました。

我々兄弟にとっては、「仲裁人」のようですね。

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釜山弁護士会との懇親会 

南谷敦子

今年も釜山地方弁護士会の弁護士の皆さんが、ご夫人とともに福岡にいらっしゃった。この交流会・懇親会は今年で一二年目になる。毎年福岡県弁護士会の会員も春に釜山を訪問し、盛大なる歓待を受けているときいている。私も経験があるが、韓国に行ったことがあるという人の話を聞くと、たいてい、たいへん素晴らしい接待を受けたということが多い。という訳で、福岡県弁護士会も負けられないと思いながら、国際委員会メンバーを中心に交流会や懇親会の準備をさせていただいた。

平成一四年一〇月一八日金曜日午後、皆さん福岡にご到着。夕方からシーホークで交流会が始まった。国際委員会の内田敬子会員の司会で、テーマは2つ、家庭内暴力の防止関連法規と韓国での金利規制で、日本でもホットな問題だ。前者は釜山の文興晩弁護士から、後者は朴瑛柱弁護士からご報告いただいた。

さて、実は私はこの交流会の間、ご夫人方を観光バスで小戸のマリノアまでご案内し、東洋一の大きさだという観覧車に乗っていた。

マリノアにはアウトレットショップがあり、私も観光案内という職権を利用して買い物でもしようとそわそわしていたのだが、この日はスマップのコンサートで交通渋滞が予想されるとのことで観覧車に乗っただけでシーホークにとんぼ返りだった。

懇親会は午後七時から、国際委員会の紫牟田洋志会員の司会で、福岡県弁護士会会員のご夫人も参加して始まった。日韓の弁護士がテーブルを囲み、通訳がついた。テーブルでは皆、お互いのことをもっと知りたい、でも言葉が通じない、通訳は一人しかいない、というので通訳を奪い合っての懇親会だった。お酒が入るにつれ会はますます盛り上がり、日韓マイクを奪い合ってのスピーチ合戦も始まってとても楽しかった。通訳を通じてなので、各国の笑いには時差があった。釜山弁護士会元会長の金 基弁護士が、会長でいらした国武格会員や荒木邦一会員と過去ずいぶん飲んで盛り上がった話をされ、歴史ある釜山との交流の深さをしみじみと思った。今後、釜山弁護士会と福岡県弁護士会は中国・大連の弁護士会との交流も進めていくとのこと。釜山の会員名付けて「三角関係の構築」(会場笑)。また、太田晃会員と松井仁会員は、見事な韓国語でスピーチをされ、釜山会員には大受けであった。

最後に釜山弁護士会からおみやげの「絵」をいただいた。とても立派なもので、曰く「韓国の有名な作家による貴重な作品」だそうだ。これに対応して、福岡県弁護士会からもおみやげの「有田焼の絵皿」をお渡しした。有田焼は日本の焼き物の原点なのであるが、「くやしいことに」その有田焼の原点は朝鮮にあるのだ・・とは南谷洋至会員のあいさつ。これもまたたいへん美しい絵皿であった。

こうして、盛大に会は幕を閉じた。

釜山の皆さんは、翌日から新幹線で広島・四国へと旅立たれるそうで、強行軍だ・・。

終了後、通訳をして下さった皆さんは御馳走を前に腹ぺこ状態であったので、一緒に二次会をすることとなった。皆さん、大塚芳典会員の一声でお集まりいただいた方々で、福岡の専門学校や大学で勉強されている「新進気鋭」と呼ぶにふさわしい学生達だ。今回の会ではたくさんの法律用語が飛び交い(「当番弁護士」「法律扶助」など)、通訳はとても難しかったが非常に勉強になった、もっと勉強したい、と紅潮した顔で話しており(酒のせいか?)、韓国の若者のエネルギーは素晴らしいなあと感心した。その後、  メールアドレスの交換などしつつ、私も日韓交流を目指すこととした。

外国の法律家と交流する機会があるときにいつも思うのは、折角知り合えた方々と本当に長く交流することができたらなということだ。どうしても一過性の飲み会でちょっとかじっただけの付き合いで終わってしまいがちで残念なのである。今回、金 基のご夫人が英語を話し、「同じ年頃の娘がいるのよ」と、私にとても親しく接して下さったことが忘れられない。この出会いを大切にしなければ・・・

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九弁連大会シンポジウム 川と海を考える〜環境保全と住民参加〜 

吉野隆二郎

1 さる10月25日の第55回九弁連大会に先立ち、午前9時30分からホテル日航熊本において表記の内容のシンポが行われました。今回のシンポについては、環境問題がテーマとして選ばれたうえに、その内容としても「川から海を考える」というタイトルからもお分かりのように、複数県にまたがる有明海・不知火海・筑後川・球磨川などが調査の対象となりましたことから、これまでの九弁連大会と異なり、開催県以外の単位会からも実行委員が選任されるということになりました。私は、福岡県弁護士会の公害環境委員会の副委員長として、このシンポの担当となり、その準備のために他県の委員としては最も多い回数、熊本との間を往復しましたので、その舞台裏を含めた報告をさせていただきます。

2 最初にこの実行委員の話が来たのは、2月8日の日弁連・九弁連等の共催の泡瀬干潟のシンポジウムのときでした。本年は、日弁連の人権大会のシンポにおいても湿地保全が1つのテーマと選ばれていたことや、ここ2年九弁連として泡瀬干潟の問題に取り組んでいたこともあり、その時点で福岡からは私と長戸弁護士が委員となることが事実上決まりました。

3 7月6日には、シンポのパネラーになっていただいた山村氏・福岡氏を講師にまねいて勉強会を開催しました。当日は、強風により鳥栖・久留米間で特急が止まるというアクシデントがあり、1時間以上勉強会に遅れてしまいました。

4 実行委員会に参加し、コンセプトについての議論を聞いたうえで、福岡県弁護士会公害環境委員会として、7月17日に筑後川の視察を行いました。この詳しい内容につきましては、私と長戸弁護士がシンポの報告書に執筆をしておりますし、月報9月号でも福留修習生が報告をしておりますのでそれを参照していただきたいと思いますが、私の感想としては、過去の計画とは言え、管理者側と漁民との捉え方のズレが大きいということでした。

5 8月31日には九弁連としての諫早視察にも参加しました。この日も台風が接近した日であり、雨が荒れ狂う中で大浦漁協の調査・諫早湾干拓の現場の視察・川副漁協との意見交換会などを行いました。この中で最も心に残っているのは、大浦でタイラギがまったくとれなくなったことなどを組合長の竹島氏から率直に語っていただいたことです。

6 実は上記以外の実行委員会のときにも、鹿児島方面で強風のため、特急が1時間以上遅れて熊本駅で待たされるというアクシデントが1回ありました。この実行委員の仕事はまさに自然任せの状況でありました。

7 シンポの詳しい内容につきましては省略させていただきますが、省庁の縦割りの弊害というべきでしょうが、川と海を1つの水系として捉えて全体の環境を保全していくという視点が不足していたのではないか、また、流域の住民が意見を言う制度も欠けていたのではないか、ということが一番の感想です。そして、その視点は大会の宣言へと結びつきました。

8 大会を前後して、諫早湾干拓事業の再開の問題や、泡瀬干潟の工事の着工などが新聞紙上をにぎわすようになりました。日弁連が反対の意見を出したこれらの事業につき、今後も、県弁及び九弁の環境問題の委員として、これらの大きな問題に関与していきたいと思っています。

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2003年1月号 月報

大盛況の「ヤミ金シンポジウム」 

奥田竜子

1 はじめに

去る11月30日土曜日、福岡市天神岩田屋Zサイド7階NTT夢天神ホールにて、九州弁護士会連合会と福岡県弁護士会共催の「ヤミ金シンポジウム」が開催された。

定員約270名のところ、多くの方々の来場を受け、また、街頭でのビラ配りが功を奏したのか一般市民も予想以上に来場され、大盛況(?)であった。座席数よりも多めに用意したはずの配布資料(350部用意)も、あっという間になくなってしまい、ヤミ金問題に対する市民の関心の高さを窺わせた。

2 シンポジウムの内容

シンポジウムは2部構成であった。

(1)九弁連会長紫垣陸助先生から開会の挨拶をいただいたあと、被害実態報告と題する第1部に入った。まず、ヤミ金が金を貸す際の手口やヤミ金地獄に堕ちていく様をわかりやすくまとめたビデオを上映し、その後、実際に被害者の方に登壇してもらい、体験談を語っていただいた。また、九弁連大会でも活躍した(??)ヤミ金業者がヤミ金被害者に対し罵詈雑言を浴びせ返済を迫る様を録音したテープを流し、その取り立ての恐ろしさを来場された方々に体感していただいた。

さらに、従前みなさんにご協力いただいたヤミ金アンケートから明らかになった被害実態等からヤミ金が犯罪の温床であることについて具体的に明らかにすると同時に、最近のヤミ金被害が増加傾向にあり、皆が連携してヤミ金撲滅のために闘うことの重要性と緊急性をアピールした。

(2)第2部では、関係機関報告と題し、ヤミ金解決に大いに関係を有していると思われる県と県警からそれぞれ福岡県商工部経営金融課課長井上照明氏および福岡県警察本部生活安全部参事官兼生活経済課長警視村上正一氏に、現在のヤミ金事件に関する認識や取り組み等についてお話しいただいた。当初予定していた県、県警、弁護士会の3者によるパネルディスカッション方式が頓挫したこともあって不安の残る第2部であったが、結果的には、なんのなんの、予\想以上に踏み込んだ内容を発表していただくことが出来た(県警からは「ヤミ金を明確に犯罪者と認識している」との発言有り。両者との調整を身を粉にしてやってくれた千綿会員の功績です!!)。

最後に、弁護士会からの報告となったが、眠気覚ましの趣旨で盛り込まれた寸劇が本シンポ一番の大盛り上がりを見せた。劇の内容は「ヤミ金被害者である疲れ果てたOL(渕上陽子会員)がさわやかでかっこいい弁護士(石田光史会員)のもとへ相談に行き、その結果、共に闘う決意を固め明るく弁護士事務所をあとにする」というものであったが、二人の息の合った絶妙な演技で会場中を沸かせた。

と同時に、普段は知ることのできない「弁護士のもとに相談に行ったらどんなアドバイスを受けるのだろう」という点を垣間見ることのできた良い機会だったのではないだろうか(現に、寸劇の間中、県警村上課長が何度も何度も大きくうなずいてくれていた!!)。 その後、椛島敏雅先生から弁護士会の取り組み等を報告していただき、寸劇でゆるんだ会場をぴりっとまとめていただいた。

(3)そのまま、皆のヤミ金撲滅への思いが最高潮に高まった瞬間を捉えて、平田広志先生よりアピール文採択へと移り、皆で連携してヤミ金を撲滅していくことを満場一致で採択し、最後に、藤井会長から閉会の挨拶をいただいて、無事シンポジウムは終了した。

3 おわりに

今振り返ってみても、かなり完璧な(!!)シンポジウムであった(自画自賛)。

各方面から「短い時間の中で内容が濃かった」とのお褒めの言葉もいただいた。

なにより、ヤミ金撲滅への思いが会場で一つになったことを本当に実感させられた。その意味でもこのシンポジウムは偉大なものであり、この成果を今後に生かしていかなければならないと皆が感じているものと思う。

閉会の挨拶の中で、藤井会長が「今日は、幾人かヤミ金業者の方もおられたようですが・・」とおっしゃられたのには驚いた。何をもって彼を「ヤミ金業者」と認定されたのか、いまだにその真相は謎のママである・・・(藤井会長曰く「○○弁護士が『ヤミ金も会場に来てた』って言ってたからさぁ・・・」)。

4 ほんとのおわりに

そうそう、「ヤミ金ラクラク対処法」がみなさんのお手元に届いていますよね。犬と猫のついたかわいいブルーの表紙の奴です。ヤミ金の事件処理は想像よりもずっとずっと簡単です。食わず嫌いの方、これを機に、是非大好物へとなってください。それが私たちの何よりの喜びです!!

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私を取り巻くIT環境いまむかし

会事務局 荒木さくら

ホームページ委員会を担当させていただいている関係で、月報に記事を書かせていただくことになりました。特にこれといって書くことも思いつかないのですが、先生方は自由業でいらっしゃるので、もしかしたら私が会社勤めをしていたころの「社内IT環境」についてお話したら少し目新しくて面白いかもしれませんね!そんなわけで、私の職場IT環境「いまむかし」について書いてみます。

むかしの職場

一応私は以前SE(システムエンジニア)でありまして(結局最後まで文系人間で付いていけませんでしたけど)、私が働いていた会社はSI(システムインテグレータ)であり社員数も1万人弱いましたので、IT環境は進んでいる方だったのです。

一番便利だったのが、会社の中ではお財布が要らなかった、ということです。社員証にICチップが付いていて、売店も食堂も自動販売機の飲み物も、全て社員証でお支払い。月末に給料天引というシステムになっていました。また、会社のドアはすべてオートロックで、ドアの前の社員証読み取り機に社員証を当てると開錠する仕組みになっていました。

仕事のやり方としては、FAXはほとんど使用したことがなく、やり取りの100%近くがメールでしたので、職場はひたすら「カタカタカタ」、キーボードを叩く音のみ。電話はよほど切羽詰った時しかかかってきませんし、となりの人ともメールでやりとりするような状況でしたので、職場はいつも「し〜ん…」そしてひたすら「カタカタカタ」。フレックス勤務でしたので、出社も退社もバラバラ。ゆえに、「し〜ん」としたなか挨拶するのも気が引けて、「おはようございま〜す」も「お先に失礼しま〜す」も誰にも聞こえないようなか細い声で行なわれておりました。

いまの職場

このように、以前の職場は、IT環境は発達していましたが、人と人との触れ合いは希薄になっていました。お昼休みになるまで隣の人が休んでいるのに気づかなかった、ということもしばしば。それに比べると今の職場の温かいことといったら!まず朝の挨拶が元気よくて気持ちいい。弁護士会館に来られた先生方とも「昨日はお疲れ様でした〜」などと言った会話がそこかしこから聞こえてきます。笑い声が聞こえる職場で「ああ、転職して本当に良かった」と思っている私です。

しかし、IT環境については不満があります。連絡手段の上位は現在FAXですが、急ぎのときに送信状を打ち出してFAX機までいくのはかなり面倒。しかもFAXはかなり時間がたってエラーが判明したりします。やはり、もう少しメールが普及して欲しいです。

メールの利用価値が高いものにML(メーリングリスト)があります。私が担当事務局である消費者委員会の「ヤミ金プロジェクトチーム」というチームは、すでにMLを駆使していろいろなことにすばやく対処してらっしゃいます。MLを覗いていると先生方の活動内容が良く分かるので、依頼された仕事の重要度が分かって対応しやすいですし、何より先生方の熱意が伝わってきますので、事務局としても積極的にお手伝いしたくなります。他の委員会やプロジェクトチームでも、もっとMLを活用していただけたら、先生方と事務局の距離が縮まって良いと思います。そのためには、全会員がメールアドレスを取得されることが先決ですね!

とりとめもなく書きましたが、少しづつ弁護士会のIT環境が整って、先生方同士、先生方と事務局とのコミュニケーションがより良くなることを願っています。くれぐれも、職場に笑いは残しつつ…ね!

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2003年2月号 月報

情報提供ツールとしてのホームページ

宇加治恭子

今回のコラムは、情報提供ツールという観点から、当会のHP(ホームページ)を紹介させていただきます。

各種行事の紹介

シンポジウムや講演会等会員以外の方に自由に参加していただく行事や臨時に実施される法律相談等について、案内を行っています。行事が終わるまでは、トップページの「新着情報」欄に載せられているようです。現在は、HP委員や弁護士会執行部が気付いた行事を掲載しているようですが、各会員や委員会から「こういうコトやるからHPにも載せて」とご連絡いただければ、さらに迅速に、充実した紹介ができるかと思います。

法律相談事業の紹介

天神弁護士センターをはじめとする各法律相談センターや、当番弁護士などの事業の紹介も行われています。トップページの「法律相談センター」や「こんな時どうする?!」をクリックすると、知りたい情報にたどりつくというわけです。

以前、ある電話相談の担当だった時、相談者からの質問に応じて「こんな相談制度もあるんですよ」とお伝えしたところ、「それってホームページに載ってますか?」と質問され、「載ってますよ」と答えたところ、しばらくの沈黙の後に「あっ。ありました」と言われた経験もあります。その相談者の方は、HPを見ながら相談の電話をかけていたのです。一般の方たちにとっては、実際にHPは法律相談窓口を探す1つのツールになっているんですね。

委員会活動の紹介

「付添人日誌」や「福祉弁護士のワークノート」をはじめとする月報や新聞からの転載記事などは、弁護士会のさまざまな委員会活動を、わかりやすく一般の方々に伝えるものです。「子どもの権利委員会や高齢者・障害者委員会ばかりHPで宣伝していてズルイ」「もっとウチの活動をたくさんの人たちに知ってもらいたい」と考えている委員会のみなさま、ぜひ、HP委員会に記事を持ち込んで下さい。

リンク集

当会のHPの目玉のひとつが、「使えるリンク集」です。リンク集には、「事件類型別リンク集」と「一般リンク集」があります。「事件類型別リンク集」には、「公的とか私的とかの色分けではなく、利用者に便利なページとのリンクが重要だ」という観点からさまざまなHPがリンクされています。HP委員会では、今後もリンク集をますます充実させていきたいと思っておりますので、よいHPをご存知の方は、ご推薦いただければと思います。また、「一般リンク集」には、各弁護士会のHPはもちろん、福岡県の弁護士・法律事務所のHPもリンクされています。

会員専用ページ

当会の会員のみが、専用のパスワードを取得して利用できる「福岡県弁護士会会員専用ページ」もあります。ヤミ金対策に威力を発揮するであろう最新の判決書がPDFファイルで紹介されていたりしますので、まだ見ていない会員の方は、是非覗いてみてください。

これからのHP

HP委員会は、「こんな情報が載っていたらもっと便利なのに」「ここは使いにくいからこういう風に変えたらいいのに」というご要望をお持ちの方からのご意見を募り、よりよいHPを目指したいと考えております。今後とも当会のHPをよろしくお願い申し上げます。

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「あとは弁護士だけなんです!」 子どもの虐待問題についての取り組み

松浦恭子

子どもの虐待問題については、子どもの権利委員会において、平成7年度に研修会が開催され、平成8年度から虐待問題小委員会が設置されて取り組まれるようになりました。平成12年度には、九弁連大会シンポジウムでテーマとして取り上げられ、多くの会員が参加されました。

そして、福岡部会の稲村鈴代会員が中心になって、民間団体として多くの専門職と一緒にふくおかこどもの虐待防止センター(略称F・CAP−C)が発足するに伴い、子どもの権利委員会メンバーを中心に、平成12年12月に、同センター弁護団が発足しました。現在当会から47名が参加し、児童相談所など関係機関からの相談や、虐待が問題となったケースの家庭裁判所の申立事件への代理人活動などに取り組んでいます。このほか福岡県、福岡市、北九州市の児童福祉審議会や福岡県児童虐待防止地域連絡会議(県内14ブロック)等に多くの会員が参加され、関係機関との連携が進んでいます。

平成12年11月には、児童虐待の防止等に関する法律が施行され、平成13年には、福岡家庭裁判所においても各支部で、関係機関連絡協議会が開催され、当会から参加しています。

こうした、いわば全体としての骨格となる取り組みが進むに連れ、様々な関係者と協議する機会が増え、実質的な連携が始まるようになりました。冒頭の言葉は、私がある児童養護施設の施設長さんから、開口一番いわれたものです。当初は、お互いにおっかなびっくりだった児童相談所との連携も、信頼関係が築けるに従い、中身の濃いものになりました。

これまで関わった事例では、当初は、乳児に対する身体的虐待や、重度のネグレクト(養育の懈怠、放棄)など比較的判断しやすいケースについて児童相談所が子どもを保護するにあたって、ケース会議で積極論を述べたり、現場に立ち会ったりと、どちらかといえば「励まし役」や「現場の用心棒?」的な役割を果たすことが多くありました。私も、頭部外傷で緊急入院した生後3ヶ月の男の子を病院から保護するなど、いわば典型的なケースに立ち会う経験をしました。また、家庭裁判所への申し立てにあたって、証拠のアドバイスをしたり、比較的簡単な法律相談を受けたり、ということが多かったのです。

しかし、最近は「親権」について、どのように考えていくのか、裁判所(司法)は、家族にどのように関わっていくのかを考えさせられる問題が多く、現代の問題の解決にふさわしいような条文や先例があまりない分野で、どうすれば子どもの保護を円滑に行なうことができるか、頭を悩ませることが多くなっています。例えば、民法766条は、離婚に際しての子どもの監護者の指定について定めていますが、これについて、親権者ではない第三者からの申し立ては許されるか、また第三者を監護者として指定することは認められるか、という問題が出てきています。先日開催された日本子どもの虐待防止研究会第8回大会では、初めて最高裁家庭局から講演が行なわれましたし、民法766条の問題などを協議した分科会には、東京家裁や横浜家裁から現職の裁判官も参加し、児童相談所関係者に交じって、意見を述べるようになりました。

問題となる虐待の種別も、性的虐待や心理的虐待など、司法の場での主張、立証が困難だったり、方針の建てにくい、難しいケースの相談が多くなりました。

まさにこれから、という分野ですが、弁護士としては、関係機関の一員としての動きということから、通常業務とは異なる手間もかかる、どちらかというと地味な仕事になるのかもしれません。

それでも、ケース担当可能な会員をFAXで募るのに対して、次々と担当可能という返事が返ってくるとき、こうした分野で骨身を惜しまず足を運ぶ仲間が多くいることを実感する、事務局として嬉しい一瞬です。

2004年には、福岡で日本子どもの虐待防止研究会第10回大会が開催される予定で、準備も進んでいます。弁護団では、1ヵ月に1度の事例検討会(勉強会)を軸に活動を続けていますので、興味のある方、ぜひ弁護団に御参加ください。

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動き出した「福岡県弁護士会紛争解決センター」

芦塚増美

平成14年12月20日に福岡県弁護士会紛争解決センターが発足しましたが、私が平成14年(福仲)第1号仲裁申立事件の仲裁人となりました。平成15年1月16日に第1回仲裁期日が開かれました。

さて本稿では紛争解決センター立ち上げに至る経緯を報告します。

私は犯罪被害者支援に関する委員会に所属しており、紛争解決センターの立ち上げにも末端ではありますがご助力させていただきました。昨年5月17日には、岡山弁護士会の岡山仲裁センターを見学させていただき岡山弁護士会の先生方からのご意見を拝聴いたしました。岡山では建築紛争等における仲裁が多いとのことでした。岡山では犯罪被害者と加害者との対話に臨床心理士が専門家として仲裁に参加している事例も報告されました。

昨年6月5日には、犯罪被害者支援に関する委員会とADR委員会の合同委員会が開催され紛争解決センターの立ち上げについて協議しました。

昨年7月15日には裁判外紛争解決についての専門家であります九州大学のレビン小林久子先生をお迎えしての講演会が開催され私も参加しました。先生のお講演では、海外の仲裁の事例が報告されています。また、先生の講演で日本では当事者に裁判官選択の自由がないとのお話が印象に残りました。民事裁判の第1回期日で初めて裁判官と会いますが、その裁判官を選択できる自由は当事者にはないです。海外では、紛争解決の担当者と当事者に選択できる場合もあるとのお話でした。

昨年11月7日に会長から仲裁人候補者が委嘱されましたが、私も含まれていました。仲裁人候補者の中から、事件ごとに仲裁人が選任されます。

昨年11月13日には名古屋弁護士会の渡邉一平先生を講師としてお招きしての研修会が開催され私も参加しました。名古屋では刑事手続での利用が多いとのことでした。

昨年12月12日には、実務面からの研修会が開催されています。

そして、昨年12月20日から正式に福岡県弁護士会紛争解決センターが開催されました。最初の事件である平成14年(福仲)第1号事件は、昨年12月24日に申し立てられています。

さて、最初の事件の仲裁人となったわけですが、仲裁人とての感想を述べます。

  1. 仲裁といっても法律上の「仲裁」ではなく、あくまで和解契約を前提として手続を始めるのが前提です。
  2. 仲裁人といっても弁護士ですので様々な配慮が必要です。当事者が入室する場合にも仲裁人が座っているより立って迎えるほうが印象がいいかもしれません。また、事務手続でも控室に仲裁人から足を運び説明するほうが妥当でしょう。「少しの親切」で、当事者が当紛争解決センターに与える印象が違います。
  3. 仲裁申立には、申\立手数料1万円が必要です。裁判所の調停において印紙額が1万円を超える場合には、仲裁が好ましいかもしれません。しかし仲裁から民事裁判へ移行した場合、印紙代の控除はないです。
  4. 仲裁が成立した場合に成立手数料を申立人と相手方の双方が支払います。解決額が100万円ですと申\立人が4万円、相手方が4万円の合計8万円を支払います。この相手方負担というのが、あまり、知られていない様子です。裁判所の調停とは異なります。
  5. 仲裁申立には時効中断効がないです。時効完成直前には仲裁は適さないです。
  6. 仲裁において、合意が成立した場合、和解契約書を作成しますが債務名義とはなりません。そこで、仲裁においては、現実の金銭受取後に和解契約書を作成することが好ましいと思います。

ともあれ、形式にこだわらない仲裁は、これから広く浸透していくことと思います。

建築紛争では、現地視察などが円滑に行われると予想されています。仲裁人と専門委員(建築士等)、そして当事者の都合で、土曜にも現場視察が可能\となり早期の紛争解決が期待されています。

刑事手続においても、刑事弁護人からの仲裁申立も予\想されます。刑事弁護人が被害者と示談をする際に、示談が進行しない場合には、仲裁申立もひとつの選択として考慮することも考えられます。他方、被害者側の場合、被害者側から仲裁を申\し立て示談を円滑に行う場合もあると思います。被害者から相談を受けた弁護士が自分で依頼を受けない場合、仲裁手続を被害者に知らせることも解決手段です。

ともあれ、裁判所の調停と弁護士会の仲裁との違いをよく認識しておくと、円満な紛争解決が期待できると思います。今後、岡山と名古屋の双方の仲裁手続を参考に、当会独自の仲裁手続が発展していくように努力します。

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「精神保健欧州視察団」同行記 

副会長 市丸信敏

1 なぜ今、精神保健の旅か?

前年秋の臨時国会で衆議院を通過して、目下の通常国会で参議院に付議されている「精神障害者医療観察法案」が、もはや時間の問題で成立しそうな情勢にある。この法案は、当会の昨年来の常議員会決議はじめ、各方面から重々指摘されてきているように、「再犯のおそれ」という極めて曖昧で判断が困難な要件で、事実上、触法精神障害者に対する拘禁を半永久的に容認してしまいかねない制度内容となっており(衆議院で通過した修正案であっても実質は異ならない)、人権保障の見地からは到底看過しがたい問題性をはらんでいる。にも関わらず、一般市民のみならず、実は弁護士の関心も薄く、却って「池田小事件」などを引き合いに世上の不安感が煽られるようにして、法案はついにここまで来きてしまった。

かかる状況下、当会の精神保健委員会(池永満委員長)では、わが国における精神障害者処遇制度のモデルとなったと言われているイギリス、そして、今、最も進んだ精神医療への取組を実践していると伝えられるオランダを緊急視察して、この法案の問題性を再検証するとともに、今後のわが国における触法精神障害者の処遇のあり方、ひいては、精神障害者に対する医療や社会的ケアのあり方について学ぶため、このほど「精神保健欧州視察」(一月四日〜一三日)を企画・敢行したものである。

(*私は、今年度の精神保健委員会の担当副会長という立場から視察団に同行させて頂いたが、正直に告白すると、本来この分野に関してはずぶの素人であり、肝心の視察内容については報告の責を果たす任に無い。視察団ではおって報告書が作成される予定であり、また、当会の精神保健当番弁護士制度一〇周年記念集会(三月一六日)での報告もなされる予\定であるので、私からは、取り急ぎ、視察の概要と簡単な感想を述べさせて頂くに留めることをお許し頂きたい。)

なお、池永会員は、今から六、七年ほど前に、事務所を他のメンバーに委ねて、二年間の英国(若干の期間はオランダ)留学を敢行するという離れ業を行い周囲を驚かせたが、今回は、まさにそのとき築かれたであろう人脈を活かして、超一流の報告者や視察内容等を取り揃えて頂いた。そればかりか、旅行中はツアコンよろしく、視察団一同の世話を終始一手に引き受けて頂き、まことに恐縮の限りであった。視察団一同に成り代わって、厚く感謝の意を表させて頂きたい。

2 視察の概要

視察団は、団長である池永満会員と奥様、当会から梶原恒夫会員と奥様、久保井摂会員、私(長男帯同)、さらに熊本から吉井秀広弁護士(熊本における弁護士としての精神保健活動の中心メンバー)、東京から池原毅和弁護士(全国精神障害者家族会連合会顧問。平成13年9月の当会の精神保健シンポジウムのパネラー)にも加わって頂き、更に当会から呼びかけて参加をお願いした、大学講師の藤井千枝子さん、福岡や東京のNPO関係(薬剤師、看護婦、ソーシャルワーカー等)である猿渡桂一郎さん、土屋眞知子さん、平田孝さん、吉原幸子さん、加々見陽子さんらにも加わって頂き、合計一五名での編成であった。かように法律家と精神医療の現場での専門家からなる視察団であった故か、次に報告する各視察先でも、きわめて友好的ながらも真摯に、そして高度で専門的な内容のレクチャー及び質疑がなされた。

◆イギリス

〔1日目〕午前:ロンドンの中心部に位置するソーホー地区(若者の歓楽街)にある精神保健デイケア施設を訪問。警察段階における精神障害者の迅速な振り分けを行っているという精神看護婦はじめ、触法精神障害者に対する警察、裁判、矯正の各段階の取組状況に関する三件のレクチャー。午後:チャリングクロス警察署を訪問。警察における精神医療看護施設や取組等、三件のレクチャーと留置施設の視察。

〔2日目〕午前・午後:ロンドン市内の施設を借り、一日がかりで、イギリスの精神保健法(八三年法)の改正に関する専門家チーム委員長であるリチャードソン教授、欧州人権裁判所の活動に関わっている医事法専門家であるサラルド教授、内務省精神衛生課係官(国側の言い分)、民間支援団体で働く弁護士(ソ\リシター)などから、イギリスにおける触法精神障害者の処遇や改正法案を巡る論議の状況など、四件のレクチャー。

〔3日目〕午前:ロンドン大学セントジョージ医学部に付属する触法精神障害者に対する中間的強制処遇施設の視察。その後、同医学部を訪問して、精神科医で法律家のイーストマン教授(全国精神医学会の法律関係の委員長)からイギリスの精神医療の歴史と問題状況等のレクチャー。

◆オランダ

〔4日目〕午後:アムステルダム大学付属病院を訪問。パンドラ基金関係者から、精神障害者に対する正しいイメージ形成のための広報活動への取組状況や、WHO「患者の権利促進宣言」(九四年)の起草者の一人であり医事法の専門家である同大学のヘルベス教授から、精神障害者にとっても患者の権利が重要であることなど、三件のレクチャー。

〔5日目〕午前:ユトレヒト市を訪問。パンドラ基金の従事者(元患者ら)から、オランダにおける精神医療の向上のための諸制度や支援団体の活動状況などのレクチャー。午後:同市内にあるオランダ最古の精神病院を訪問。ユトレヒト大学の教授のレクチャーの他、患者評議会代表(入院患者)のレクチャーも受ける。その後、病院内を視察。

3 最良の社会防衛は最善の治療にあり 〜視察雑感〜

我が国では、厳重な精神鑑定を経て、刑事手続からの離脱ないし不処罰が行われる。ところが、イギリスでは、精神看護婦(特別資格の看護婦)のアセスメントのみで、いち早く、警察段階の刑事手続から切り離しての処遇を行ったり、精神障害の故に裁判過程で公訴を取り消して入院させる場合でも、入院先(原則として本人の地元)等の処遇案を裁判官に報告した上でその決定を求める、また、刑務所内に専門的治療チームと精神障害者の区画を設けて治療に当たる、あるいは、触法精神障害者専門の多少緩やかな強制入院施設を設けてそこに入院させて処遇する(この間は刑期に参入される)、また、社会内における強制処遇(通院による)をも導入しようとしている等々、医療に重点を置いた処遇が試みられていることが印象的であった。まさに、最良の社会防衛は、最善の治療にこそある、とでもいうべき発想が根底にあるように思われた。それにしても、最後に聞いたイーストマン教授の「危険の評価は全く精度がなく、大変難しい。」「マスコミや政治的圧力によって、医療側が護身的になり、必要以上に拘束を受ける者が増えてしまう。」という言葉は、まるで我が国の現法案を初めとする問題状況をズバリ指摘されたかのような錯覚を覚えた。

オランダでも、患者を対等に位置づけて処遇する理念が更に徹底しており、極めて感銘深かった。各病院には、法律に基づいて苦情委員会が設置され、他方、全ての入院患者をPA(PATIENT'S ADVOCATE患者の弁護人。もと患者が多くを占めるボランティア組織(パンドラ基金)がこれを担っている。)が助言・援助する制度が確立している。さらには、病院内には患者評議会という患者組織が置かれ、毎週ミーティングを開き、病院側と協議し、マスコミ取材さえも受けるという。視察した病院では職員の制服が廃止されていたが、制服は患者の差別につながるからとの理由であった。そして、触法精神障害者の処遇については、刑務所でもあり病院でもある特別の施設を設けて、そこで治療が行なわれている旨であった。

我が国でも、一度法案が通ってしまったら、弁護士の役目はそれで終わりでは決してない。むしろ、新しい法制度の下では、弁護士は、「国選付添人」として触法精神障害者の処遇問題に関与せざるを得ないことになる。当会が奮闘してここ一〇年来取り組んできている精神保健当番弁護士活動を、さらに全国に展開・充実させてゆきつつ、今後もねばり強い持続した取組みが益々重要になるであろう。

4 旅情

近年、競争原理、市場原理主義、自己責任主義という言葉に完全に覆い包まれてしまった我が国にあって、もっぱらアメリカとせいぜい中国位にしか関心が向かず、何かに付け、アメリカンスタンダードこそ世界標準であるかのごとき感覚に陥ってしまっている自分自身にとって、あくまでも福祉を重視しつつ調和ある発展を目指しているヨーロッパの、そしてEUとしての大統合への歩みにともなう宿題(欧州人権条約に基づく諸指令等)を自他を高める契機にして努力している姿を、精神保健というテーマから垣間見ることができたことは有意義であった。

厳冬のヨーロッパであり、真昼のお天道様でも30度くらい?にしか上がらず、日の暮れも早い。

前評判通りに?ロンドンでは、物価は高く、食事もお世辞にも旨いとは言えない。パブの生ぬるいビールも私にはいまいちに感じた。たまたま何年かぶりの積雪ということで、土地の人でも滅多に見られない美しい雪景色のロンドンを愛でることができたことをラッキーと思っておこう。

オランダでは、土地の人が凍り付いた川面でスケートを楽しんでいた。夜の外歩きは耳が痛くなり、持参した毛糸の帽子が威力を発揮した。しかし、さすがはハイネケンの地元。レストランで「ビール」と注文すれば、黙ってハイネケンの生ビールがジョッキで出てくる。定番のインドシナ料理や、中華料理、イタリアン等ともども、堪能させて頂いた。オランダ、イズ、デリシャスであった。

オランダは、かねて、安楽死やダッチカウント(割り勘)、フリーセックス、そして最近ではワークシェアリングでの「オランダモデル」の成功、また先般の日弁連司法シンポでアムステルダム高裁長官から伺った弁護士任官の充実ぶり等々、個別的、断片的にはその合理的国民性を十分に伺い知っていた積もりであった。が、今般、現地に赴いてみると、確かに質素で寛容の国民性、省エネ、省資源の理念も国民に行き渡っており、現にアムステルダムの都心部でも、張り巡らされた自転車専用道や自転車レーンを人々が寒風を物ともせず自転車でガンガンと走り抜けてゆく(従って、歩道では日本のように後ろ(自転車)を気にせず安心して歩ける)。街角の分別収集ゴミ箱も充実していた。学校では、普通に二、三カ国語の外国語を教えるらしく、現に視察で接した人たちは、公用語のオランダ語をさておき、英語とドイツ語のどちらでレクチャーしたらよいか、と視察団側に尋ねてくるほどであった。これらの諸条件の故か、日本のある調査機関によれば、オランダは「潜在成長力」で堂々の世界第三位にランキングされている(日本は残念ながら第一七位程度)。オランダに学ぶべき点は、まだまだ沢山ありそうに感じた。

かくして、次は是非、花の季節の欧州を再訪してみたいと想いつつ、無事、岐路についた。

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2003年3月号 月報

オンライン書店活用術

石田光史

とうとう私にもITコラムの順番が回ってきてしまいました。メールの活用法、なんてテーマは既にやられちゃってるし、そもそも一部地域ではメール中毒なんて言われてる私が語るメール活用法なんて、ろくなモンじゃないだろうし・・・。とまあいろいろ考えまして、今回はオンライン書店について書くことにいたしました。「活用術」などと銘打っている割には大したことは書いていませんが、ご勘弁願います。

さて。オンライン書店とは要するに、インターネット上の本屋さんのことです。本を検索できるし、トップページにはお薦めの本が紹介されていたり(現実の本屋さんの平積みですね)、書評が載っていたり、大変便利です。もちろん気に入った本があれば購入することができますし、指定の場所へ配送してくれるので、重い本を担いで家まで持って帰る必要もありません。

オンライン書店の代表格と言えば、やはりアマゾンでしょう。しかし私がよく使うのはbk1です。なぜ後者を使うかというと、アマゾンは私にはあまり使い勝手が良くないのと、決済方法が違うからです。アマゾンを含め、多くのオンライン書店ではクレジットカード決済が基本ですが、これがどうも小心者の私には抵抗があるのです。自分のカード番号をあまり入力したくないんですよね。その点bk1だと、ニフティの会員の場合、ニフティのIDとパスワードを入力するだけでニフティの料金が引き落とされている口座で決済ができます。カード決済はイヤだしニフティ会員でもないという方は、イーエスブックスなど、最寄りのコンビニまで配達してくれてそこで代金と引き換えに受け取ることのできるサービスを行っている書店もありますので、ご利用されてみてはいかがでしょうか。

私がオンライン書店を使うのは、主に仕事関係の本を購入する場合です。キーワードや著者名、書名などで検索がかけられるので、本を探すのがとても便利です。例えばこの前、人格障害について調べなければならない事件があったのですが、bk1で「人格障害」を検索すると、ざっと34冊の本がヒットしました。現実の書店でこれだけの本を探すのは至難の業ですが、オンライン書店ならわずか数秒で検索でき、時間をグッと節約できます。ただそうは言っても、買うべき本か否か、実際に本を手に取ってみないと分からない場合もあります。そのような場合私は、紀伊国屋BookWebを使います。ここでは、検索した本について、現実の紀伊国屋のどこの店に在庫があるかを調べることができます。例えば『人格障害論の虚像』という本について調べると、福岡本店(博多駅)にも福岡天神店にも在庫があることが分かりました。そこで私は天神の紀伊国屋に行き、実際に本を手に取り、買うべきか否かをじっくり確認できたわけです(結局買いませんでした)。

私は現実の書店も大好きで、日曜はたいていジュンク堂あたりに出没しています。趣味の読書用の本を探すのは、非効率もまた楽しいものです。オンライン書店と現実の書店、それぞれの長所を生かして使いこなすと、とても充実した本ライフ(?)が送れると思いますよ。

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女性相談研修

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虐待と少年事件についての一考察

井下 顕

月報1月1日号の小坂昌司会員の付添人日記に感動して、小坂会員に「感動しました」のメールを送ったのが運の尽きで、じゃあ次は君が書いてくれという話になってしまった。

付添人、付添人…。そういえばここ半年近く付添人やってないなあ(こんなことを書いて当番弁護士担当の時にどっと来ないだろうなあ…)。何を書こうか。全件付添人制度を支える若手に付添人活動が集中して、若手が疲れてるんじゃないかということを書こうと思ったが、月報に載せるようなことでもない。

私も二児の父親なので、日頃の父親不在の状況についての反省文でも書こうか…。そういえば私は名前だけ「ふくおかこどもの虐待防止センター(F・CAP−C)」のメンバーでもあるので虐待と少年事件の関係について書こう。しかしながら、とてもそれだけの大それたテーマは書けない。自分自身が関与した少年事件の中で感じたこと、考えたことを素直に書こう…。

もう一年以上も前の事件だが、ひったくりをして在宅で審判待ちだった少年が仲間と三人でバイクに乗って、通行中の女性からひったくりをして被害者が軽傷を負ったという事案で、結果は短期の少年院送致になったという事件があった。

私は当番弁護士で宗像署に赴き、少年と接見した。少年は当初私を相当に警戒しているのか、付添人制度のことや、付添扶助を受ければ費用は要らないという話をしても、そんな都合のいい話があるわけない、何か企んでいるなという感じでなかなか信頼してくれずその日はとりあえず考えるということで別れた。その後、少年から再度連絡があり、私が付添人として活動することになった。少しずつ信頼関係ができるにつれ、少年はいろんな話をしてくれるようになっていった。

その中で少年が実の父親から、かなりひどい暴力を受け続けてきたことが分かった。少年は父親に対して、別に憎いとも思っていないと言い、ただあんな人間にはなりたくないと言っていた。少年は母親と妹と三人暮らしで、母は父親と離婚していた。少年と何度も接するうち、私は少年の「開き直り」がどうしても気になるようになっていった。事件そのものについて反省はしているし、将来の目標も具体的に持っている。実直に働く母親を尊敬していると言い、被害者にも申\し訳なかったという気持ちもちゃんと持っている。しかしながら、どこか人生に対し、開き直っているという感じがするのだ。語弊を恐れず言えば「潔すぎる」ともとれる態度を時に示すのである。そういえば、修習生のころ、九州ダルク(薬物治療のための自立支援団体)に遊びに行ったとき、ひどい虐待を受けて育った少年が自分の生い立ちを語る中で、彼も人を殴ることに何の躊躇も覚えないと言っていたが、その時の彼も人生に「開き直った」ような感じがあったことを思い出した。

最近私は、人生に「開き直る」ということは、自分はこういう人間になりたい、こうありたいんだという自分自身を放棄してしまうことではないかと思っている。本来無条件の愛情を注がれてしかるべき親からひどい虐待を受ける、そのために、だれもが持ちうる自分自身の理想像、目標を心の中に描けなくなる、そのためのモチベーションさえ沸かなくなってしまうのではないかと思うのだ。大変分かりにくい表現になってしまったが、つまるところ親から虐待を受けるということは、自分の中にある「自分自身を形作る力」を喪失させてしまうというように思う。

最近私はネグレクト(不保護)も虐待であるとの痛切な(!?)認識のもとに、どうしても出なければならない飲み会には出るが、それも一次会だけにして帰るようにしている。かかる認識にいたるには、かなりの「格闘」と葛藤があったが、少しずつ父親になっていっているかなと思う今日この頃である。

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女性相談研修第3回

山崎あづさ

1 3月11日、3回連続講座として行ってきた「女性相談研修」の最終回である、「性暴力被害について」の研修が行われましたので、そのご報告をしたいと思います。

2 はじめに、原田弁護士から、性暴力の意義、問題となる点、対応において留意すべき点などについての説明が行われました。その内容をご紹介します。\n 性暴力には、強姦、強制わいせつ、痴漢、ストーカー、未成熟者との性行為、性的虐待等が含まれ、それぞれの事案によって、問題となるポイント、それを踏まえた被害者に対する対応が異なってきます。

まず、強姦のケースでは、被害直後に相談を受けた場合には、事後避妊の処置や性感染症の対策のために産婦人科で診察を受けてもらうとか、事件のショックによりPTSDやうつ状態といった精神的な症状が表れている場合は、精神科の受診を勧めるなど、被害者の安全の確保のためのアドバイスが必要となります。

相談後、事件として受任する際、注意すべきなのは、被害女性本人の意思を十分に確認することです。特に、家族や恋人が相談に同行して、積極的に進めようとしている場合は、被害者本人の意思は十\分固まっていないこともあるので、周囲のペースに引きずられないよう注意が必要です。また、本人が責任追及をしたいという意思を持っている場合でも、刑事告訴、民事損害賠償などの違いを十分説明し、理解してもらうことが必要です。

それから、なるべく早い段階で、構成要件該当性で問題となりそうなポイントについて十\分な聞き取りを行い、把握することが必要です。判例で犯罪の成否が争われている事案の中には、「誘われて車に乗った」「逃げ出さなかった」「すぐに被害届けを出していない」など、被害女性の行動を問題にしてその信用性を否定しているものがありますが、こういった形で被害者を無用な攻撃にさらさないため、事前の聞き取りで問題となりそうな点を十分把握し検討しておくことが重要ということです。最初の聞き取りはざっと行い、反論が出た段階でその部分について聞き取りをする、という方法をとると、被害者は自分の代理人から攻撃を受けていると感じてしまうので、相手が問題にしてくる前に詳しく聞き取っておき、できれば陳述書等を作成しておくのがよいということです。なお、その際、被害者を非難することがないように留意することが必要です。

ストーカーの事案の場合、ストーカーを行う人には何種類かの特性があり、動機が了解可能で法的措置や警察の介入が功を奏する場合と、精神障害が原因で治療の対象となる場合、これらでは説明できず対応が功を奏さず事件化しやすい場合があり、事案ごとに相手の特性を十\分見極めることが重要です。法的措置としては、ストーカー防止法に基づく警告を求める、告訴を行う、民事仮処分の申立てをする、などが考えられます。

痴漢については、最近、冤罪が問題となっており被害者の供述の信用性を否定する傾向が強まっていますが、犯人の同一性のところで争われることがほとんどなので、警察の捜査のずさんさと被害者の問題は区別して考えることが必要です。

3 次に、松原弁護士から、性暴力事件についての捜査側の取り組み方などを、検察官の経験を踏まえてお話していただきました。性暴\力の場合、男性と女性の間の力の差を十分理解したうえで事実を把握していくことが重要であること、しかし現実にはこういった感覚について男性の捜査官はなかなか理解できていないことなど、貴重なお話を聞くことができました。

4 それから、私が先日、刑事事件で遮へい措置の中に入って被害者の付き添いをする、という経験をしましたので、それについての報告をしました。参加者からは、遮へい措置自体が被害者にとって圧迫感を与えないように、配置などについて弁護士が積極的に意見を出していくべきだというご意見や、家庭裁判所の法廷を活用してはどうかというご意見が出されました。

5 最後の質疑応答の中では、犯罪被害者の方の事件を受ける場合に法律扶助を使えるのか、という質問があり、萬年先生から、4月から犯罪被害の事案でも扶助の利用ができるようになるとのお話がありました。

6 今回の研修は、難しい、扱いにくい、気を遣うといったことから精神的に気おくれしてしまいがちな性暴力事件について、基本的なところから実践的なところまで勉強することができ、大変有意義なものとなりました。

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2003年5月号 月報

「止めよう住基ネット・住基カード」シンポジウム開催

永田一志

皆さん、「住基ネット」という言葉を覚えておられるでしょうか。昨年の8月頃、皆さんの家に葉書で「住民票コード」(11桁の番号)なるものが送られて来ましたよね。そのころ、横浜市が住基ネットから離脱するとか、どこそこの町がつながないと決めたとか言う話が新聞やテレビ等で流されていたことをご記憶の方が多いと思います。

ただ、その後新聞もほとんど取り上げなくなり、テレビでこの問題を見ることも皆無と言っていい状態になって、皆さんも「住民票コード?」、そう言えばそんなものが来たな、でも番号なんか覚えてもいないし、何も変わっていないみたいだし、という感覚になっておられるのではないでしょうか。

ところがどっこい、この問題はまだ終わっていなかったのです。昨年稼働した住基ネットは、本来の住基ネットの一部でしかなかったのです。それが、今年8月に全面的(本格的)稼働となるのです。どういうことかと言うと、昨年8月に稼働を始めたのは、住民票に付随する個人情報を、住民票を管理する市町村から県へ、県から地方自治情報センターへ、地方自治情報センターから国の機関へコンピュータ回線で流していくという、いわば縦のラインだけでした。それが、今年の8月に「住基カード」という個人情報を載せたカードを発行することにより、一つの市町村から他の市町村へという、いわば横のラインでもコンピュータ回線で個人情報が流されるようになるのです。昨年動き出した縦のラインと今年動き出す横のラインの両方がそろって、「ネット」が完成するわけです。

しかし、縦横で情報が流れるようになれば、個人情報が流出の危険がより高くなります。また住基カードには国が決めた情報の他、発行する市町村が決めた情報を載せることができるようになっていますが、たくさんの情報を載せれば載せるほど、利便性は高まりますが、(カードからの)個人情報流出の危険性も高くなります。また、個人情報の名寄せはできないことにはなっていますが、それが行われない保証もありません。これら個人情報の流出や名寄せに対する防止策はどうでしょうか。今年再提出された個人情報保護法案(この原稿を書いている時点では衆議院で審議中ですが)も民に厳しく官に甘いといわれる基本的な問題点は改善されていないようです。また、実際の現場でのセキュリティー管理もとても十分とは言えません。(人口何千人の村にもネットにつながった端末がありますが、それを村の予\算で管理するのが非常に難しいことは想像に難くないでしょう。)

そこで、この危険な「住基ネット」を何とか停止すべく、昨年から引き続き活動をしていますが、その一環として、去る3月28日に中央市民センターでシンポジウムを開催しました。マスコミの無関心さに比例するようにとまでは行きませんが、昨年のシンポよりも少ない参加者となってしまいました。しかし、パネリストを初め、熱い議論・意見が出され、参加者の情熱は失われていないことが分かりました。今後も、住基ネットの稼働停止に向けて、再度のシンポ等を企画していますので、皆さんも是非参加、ご協力下さい。

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2003年7月号 月報

「すべての少年に付添人を!」 公的付添人制度実現に向けたシンポジウム報告

山之口 泉

平成一五年五月三〇日、弁護士会館2階クレオにて、「すべての少年に付添人を!」−幅広い公的付添人制度実現のために−と題して、日弁連、東京三会及び法律扶助協会の共同主催による公的付添人制度実現を目指すシンポジウムが開催されましたのでご報告いたします。

シンポジウムでは、前半に東京での現在の付添人制度の実情及びケース報告が行われ、後半に少年事件に異なる立場から関わる四人のパネリストによるパネルディスカッションが行われました。

一 付添人制度の現状及びケース報告

まず、日弁連副会長高階貞男氏による開会の辞に続き、第二東京弁護士会の樫尾わかな弁護士が現在の付添人選任状況について報告されました。

東京家庭裁判所管内における付添人の選任状況について、観護措置決定件数総数に対する付添人選任件数の割合は平成一〇年では二三パーセントであったのに対し平成一三年には三一パーセントであり上昇傾向にはあります。しかし、計算の対象となる付添人選任件数については観護措置がとられていない場合も含んでおり観護措置決定された少年に対する付添人選任割合としてはさらに低くなるとの報告でした。

次に、法律扶助協会の専務理事である藤井範弘弁護士から付添扶助の現状について報告がありました。

付添扶助は全国五〇支部によって格差があり付添扶助が全くないという支部もあるものの、全体としては平成一三年における援助決定は二四二九件で前年度比にして四〇.七パーセント増という驚異的な数字であるとのことです。

しかし、現在の段階でも財源が限界にきておりそのために援助要件の変更を余儀なくされつつあるという問題点が指摘され、早急に公的付添人制度を実現する必要性を訴えていました。

続いて、日弁連子どもの権利委員会副委員長である羽倉佐和子弁護士から現在の公的弁護制度検討会における法曹三者の意見について報告がされました。

平成一五年二月二八日の第七回公的弁護制度検討会における法曹三者の意見についてはメールマガジン等を通じてご存知の方も多いかと思われますが要約してご説明いたします。

日弁連:公的付添人制度を実現すべきである。

最高裁事務総局:要保護性が問題となる事件については調査官がいるので付添人制度の必要性はさらに検討すべきである。他方事実認定が問題となる事件は適正な事実認定という観点から検察官関与と併せて公的付添人制度を検討すべきである。

法務省刑事局:事実認定の適正化という観点からは検察官関与のない公的付添人制度は考えにくくかつ被害者の納得も得られない。要保護性の適切な認定のためには調査官が存在する。公的付添人制度の導入については真に必要性があるか十分に検討すべきである。

その後、東京弁護士会の川村百合弁護士の司会により四名の弁護士の付添人のケース報告がなされました。

ケース報告では、非行事実に争いがなくても付添人活動により認定落ちをさせた事案や身柄解放に向けて付添人が活動した事案が報告され、川村弁護士は成人の刑事事件の九〇パーセントが自白事件であることと比較しても事実認定に争いがない少年事件についても付添人の必要性があることは明らかであると話されていました。また、要保護性のみが問題となっていても親からの虐待について調査官には話せず付添人との信頼関係のなかでようやく打ち明けたという事案、付添人が被害者との交渉や審判後にも少年の環境調整を行ったという事案などが生き生きと報告されており、まさに東京版「非行少年と弁護士たちの挑戦」といった内容で非常に勉強になりました。

二 パネルディスカッション

ここで休憩をはさんだ後、日弁連子どもの権利委員会委員の坪井節子弁護士のコーディネートにより、4人のパネリストによるパネルディスカッションが行われました。

まず学者としての立場から九州大学大学院法学研究院助教授の武内謙治氏より、付添人選任率の現状は五パーセントであり成人とくらべると異常に低いこと、また少年審判に主体的に少年が参加できるようにするためにまた適正手続の観点から付添人制度は必要であり少年には経済力がないことから公的制度が必要であるとの理論付けをされていました。

次に、元家庭裁判所調査官である寺尾絢彦氏より要保護性が問題となる事案では調査官がいるから付添人は不要であるとの意見に対して調査官はあくまで少年の処分を決定する裁判所の立場であること、また成年後見制度や少年法の改正により調査官の職域が広がっているので従来の調査官としての仕事が十分にできにくくなっている状況にあるという指摘がありました。

また、少年の親の立場から「非行」と向き合う親たちの会世話人である菊池明氏より付添人弁護士が子どもとの架け橋になってくれた体験を紹介され法律的な専門的知識をもった付添人の必要性と親の経済的状況により付添人を依頼できない状況にある親も多くいることから公的制度による付添人の制度を実現していくことが必要性があることを訴えていました。

そして、元裁判官でもあり現役の弁護士としての立場から大谷辰雄弁護士が、坪井弁護士から「私たちの希望の星です!」と紹介され話をされました。大谷弁護士は裁判官と付添人の両方の経験をふまえて裁判官は少年の処分を決める側の人間であり付添人は少年の更生を考える立場にあり全く異なる立場にあること、そして福岡での全件付添人制度の取り組みを紹介されていました。福岡では成人には国選弁護人制度があるのになぜ少年事件にはないのかという素朴な疑問から制度の発足にいたったこと、現在の福岡での取組みは公的付添人制度発足に向けて弁護士の対応能力の基礎をつくっておくためという意味合いもあったこと、制度の発足にあたって会員に対し3年後には公的制度ができるはずであるのでそれまで負担をお願いしたので公的制度を実現しなければ「私は約束を破ったことになります!」と鬼気迫る勢いで訴えていました。

その後会場との質疑応答が行われ、最後に日弁連子どもの権利委員会委員長の山田由紀子氏より、少年が納得して処分を受け入れる体制を作るべきでありそのために付添人弁護士が果たす役割は非常に重要である、しかし費用的な限界があることから公的付添人制度を早急に実現すべきであり、公費投入することについて国民の理解が得られるようさらに活動を続けていきましょうとの総括がなされ満場一致の拍手の中で閉会しました。

当日は、約二〇〇人の参加者が集まり、全国各地から弁護士も集まっており、また会場では特に学生、少年の親や教育関係者などの一般の方の参加が目立ち、シンポジウム後は「非行少年と弁護士たちの挑戦」も四〇冊完売しました。

パネルディスカッションの中で特に印象的だったのは、調査官の寺尾氏と少年事件を親として経験した菊池氏のお話でした。元調査官の寺尾氏が調査官が存在するからという理由で付添人不要論に対して調査官の事情としても付添人は必要であり少年の更生のためには調査官と付添人が情報交換をして協力していくべきであるという話をされ、また少年の親の立場から菊池氏が非行に走った少年の親の苦悩する心情を非常に生々しく語っており親の立場からしても「専門知識をもった」付添人弁護士は必要であると話されていました。検討委員会の意見でも公的付添人制度に対する厳しい反対意見が出されていますが、このお二人のお話は非常に心強いものでした。この日と前後して東京でも全件付添人制度の導入の検討に入ったということで、全国にもこの日の熱気が伝えられたことと思います。

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裁判員ドラマ上映会

徳田宣子

5月24日、中央市民センターにおいて、日弁連作成のドラマ「裁判員〜決めるのはあなた」の福岡上映会が開催されました。その模様をお伝えしようと思います。

当日は、集客に多少の不安はあったものの、160名を越す方々の参加がありました。私は司会をしていたため、ステージの上から会場にいらした方を見ていましたが、大学生風の人から年輩の方まで、幅広い層の市民の方々に参加していただいたという印象を受けました(残念ながら会場を満員にすることはできなかったのですが)。

さて、当日のプログラムとしては、まず今回の目玉である日弁連作成ドラマ「裁判員〜決めるのはあなた」の上映が行われました。見ていない方というのために簡単に説明しますと、嫁が姑を殺したとされる殺人被告事件において、石坂浩二扮する裁判長とともに選挙人名簿から無作為に選ばれた個性あふれる7人の裁判員が審理をしていくという内容のものです。見どころは何と言っても審理の過程です。始めは、被告人が故意に被害者を突き落としたと考えていた裁判員が議論を深めていく中で次第に考えが変わり、最後には被害者は誤って転落したにすぎず被告人は無罪であると全員一致で判断するに至ります。和製「12人の怒れる男たち」といったところでしょうか。かなり本格的な作りです。参加者の方からも大変好評で、協力いただいたアンケートでは、「裁判員1人1人の描写が深く表現されていて感動的で説得力のあるドラマだった」「予\備知識なしでも十分楽しめるし、裁判員制度についても身近に感じられると思う」といった感想が寄せられました。

ドラマの上映に続いては、福岡上映会の独自の企画として、関西学院大学の丸田隆教授に「市民が参加しやすい裁判員制について」と題する特別講演を行っていただきました。丸田教授は、法的観点から市民が利用しやすい裁判員制度と言えるためには、人数・対象事件・評議方法・評決方法などの点でどのような制度が望ましいかということや、現実的に市民が使いやすい制度と言うためには、どのような補償が必要となってくるかということなどを、流暢な関西弁に乗せて、大変わかりやすく説明してくださいました。もちろん参加者の方からの評判も大変よく、会場のあちらこちらから「わかりやすかった」という声が聞こえてきました。

最後に、船木副会長から、閉会の挨拶に代えて、「より良い制度の実現に向けて」として、裁判員制度導入にあたって、捜査の可視化が不可欠だという提案がされ、裁判員ドラマ福岡上映会が幕を閉じました。あっという間の三時間。参加された方は、時間を忘れて裁判員制度の理解を深められたのではないかと思います。

平成13年6月、司法制度改革審議会から裁判員制度を取り入れた意見書が答申され、裁判員制度の導入がいよいよ現実化しようとしていますが、正直なところ、私自身は恥ずかしながらどのような制度が導入されるのか、よくわかっていませんでした。しかし、今回の上映会を通じて少しではありますが、イメージすることができました。もちろん、これまでとは全く違う制度が導入されるのですから問題がないということはあり得ないと思います。しかし、よりよい制度にするためにできることとして、まずは1人1人が関心を持つことが何より大事なのではないかと思います。私を含めて少なくとも上映会に参加された方は裁判員制度に関心を持ち、自分なりに「理想的な制度とは?」ということを考えた1日だったのではないかと思います。

さて、裁判員ドラマ上映会は、6月27日は久留米で、また本稿執筆段階では日程は未定ですが、北九州でも開催されます。また、ご希望の方がいらしたら再度の上映会の開催も考えています。まだ裁判員ドラマをご覧になっていない方はぜひご覧頂きたいと思います。

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2003年9月号 月報

最適IT度

中野

ITコラムの原稿依頼を受け,ITに詳しくもない私としては困りましたが,「ITに関する雑感でも何でも良いから」と言われ,引き受けることにしました。

このコラムでITの新活用法や裏ワザが分かるのではないかと思って読まれる方は,参考になりません。以下は全くの雑感です。

私の事務所にも数台のパソコンはあり,簡単なワープロ,表\計算,インターネット,Eメール程度はできますが,それ以上に精通はしていません。携帯電話も一応持っていますが,電話の受発信だけでメールのやりとりなどはしていません。私はITにも各人ごとに「これくらいが丁度良い」というIT度(最適IT度)があるように思うのです。

先日,北九州部会で新弁護士会館が完成したので,記念誌を作ろうということになり,記事にするため,弁護士会館のこれまでの歴史を大先輩の先生方にお聴きする機会がありました。そのとき,昭和30年頃の書面作成などの興味深い話をうかがうことができました。その当時はパソコンは勿論,複写機もありませんでしたので,写しを作成するときなどは複写紙を間に入れて手書きで作成していたとのことでした。複写機,パソ\コン,プリンターなどがなかった時代を経験された先生から見ると,ボタン一つで写しができ,簡単に修正できる文書が即座に印刷されて出てくるなどというのは全く夢の話で,その意味では革命的に便利になったが,他方,何でもコピーしたり,書面を書くにも後から修正すれば良いとして筋立てもそこそこにパソコンで打ち始め,印刷して活字になると何か出来上がったような気になって,そのまま提出してみたりというように仕事に対する「集中度」が希薄になったような気がするという趣旨の話も出ました。

私は弁護士登録前に企業に就職していたのですが,いわゆるワープロ専用機が出始めの頃で,新人の頃は上司からワープロ専用機(それも各部で2台くらいしかないので予約制でした)での書面作成を頼まれたものですが,ほとんどが手書きメモを清書するというパターンでした。パソ\コンやワープロ専用機がひとり一台時代になって,資料や文書をパソコン画面で推敲しながら考えるという執務形態に変わっていきました。パソ\コン等が出まわり,これで文書作成が楽になると思ったら,文書作成や修正が容易なので,かえって上司に何回も修正を命じられたり,上司も膨大なワープロ作成資料を見せられたりして,何がポイントなのかが分からないまま,資料・情報に埋もれてしまうことが多くなったような気がします。電子メールも便利ですが,他方,朝メールを開くとたくさんのメールが入っており,その内容をみるだけで時間がたち(しかも不必要な情報が多い),添付ファイルで取捨選択もないまま膨大な付属書類が流されてくることも多く,辟易することもあります。親指をつかっての携帯電話でのメールの頻繁なやりとりや電子メールでのチャットなどは個人的にはどうも違和感を覚えます。

このようにIT機器には功罪両面あり,また好悪もあり,やはり,各人の人生経験,仕事作法,性格などから,最適IT度には個人差があるように思います。だから,ITを駆使している方を見ても焦る必要はないと思います。ただ,「IT機器を扱ってみたが自分としてはここまでにしておく」という姿勢が大事で,初めからIT機器に近寄りもしないというのでは,最適IT度も分かりません。

「IT機器はどうも」という先生方もおられるかもしれませんが,まずトライしてみて(さしあたり弁護士会のホームページを見ることができるくらいまでは),その上で自分なりの最適IT度に落ち着くというのが良いのではないでしょうか。

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ADRの研修に参加して

松原妙子

1 ADRとは何ぞやと思われている方のために。

簡単に言うと、紛争を早期に解決するために裁判所以外で解決しようという制 度で、民間紛争解決センターのことです。

研修は、本当にびっちりと12日は午後一杯、13日も午前9時から午後1時 まで。議論の内容は、主に、今後制定されるADR法がどう規定されるべきかに ついてであり、参加者は、皆各地でADR設立、運営について活動されている方 ばかりでした。

主な問題点は、ADRに申し立てたことについて、時効中断の効果を認めるか、 成立した和解に執行力を付与するかでした。

私は、時効中断の効果を認めなければ利用価値がないと思います。

そして、そのためには、ADR制度そのものが、信頼されるものである必要が あると思います。

その後、各地からの活動報告があり、石橋先生が立派に発表されました。

福岡は、医師、建築家等各種の専門家との連携を取れる体制になっているとの 発表で、福岡が1番整備されていると各地の先生が羨ましがっておられました。

福岡は、様々な制度で先駆者の役割を果たし、且つ、その制度を円滑に活用し ていることは誇りに思って良いことだと思います。

ところで、私が今回の研修に参加して1番感動したことは、結構お年の先生方 が参加しておられ、熱心に疲れを知らずに議論されていることでした。

ADRの設立準備の時から関与され、これまで熱心に活動され、さらにこれか らの制度、体制等を良くしようと考えておられる情熱は素晴らしく、法律家は何 時までも精神を若々しくしていなければいけないと刺激を受けました。

毎日、仕事に追われる生活ではありますが、そのような生活の中でも、余力を 残し、人のため、社会のために貢献せねばと思わせられた研修でした。

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2003年10月号 月報

「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名3517人分集まる   

安部 千春

1 黒崎合同法律事務所では、依頼者や相談者に年賀と暑中お見舞いの「事務所だより」を発送し、31号になります。

内容の一は裁判の報告で、今回は東敦子弁護士が麻生知事に1億円の支払いを命じた県同教の裁判を、内容の一は「法律相談シリーズ」を田邊匡彦弁護士が、内容の一は政治に関するもので「有事法制三法案と日本の未来」を横光幸雄弁護士が書きました。

これだけでは面白くないので、もう一つは何か依頼者や相談者が面白く読んでくれるようなもの、例えば弁護士宅訪問や子ども時代の思いでなどを書いています。田邊匡彦弁護士の「私の双子時代」というのは評判がよかった。

田邊弁護士は一卵性双生児で2人とも弁護士です。幼稚園、小学校、中学、高校、大学と同じで、いつも比較され続け、匡彦弁護士の最大のライバルは弟だったそうです。弁護士になりたてのころはよく知らない人から声をかけられたが、今は体型が違って双子時代は終わったとまとめてありました。

弟君から「安部先生、兄が事務所ニュースは私のことを書いて面白かったといわれるが、私は読んでいませんので送って下さい」と頼まれて送った。

「事務所ニュース」は、4人の弁護士がそれぞれ書いており、今回は私が面白い記事として2003年憲法集会を書いたが、あまりこんな報告文は面白くなかった。やむなく、もう一本「行列のできる法律事務所の北村晴男弁護士、交渉のために黒崎合同法律事務所に来る」を書いた。こっちはまあまあでした。

2 今回、この事務所ニュースに「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名を同封し、返信をお願いしたところ、587人から3517人分の署名が集まりました。私が書いたお願いの文章を参考のためにお知らせします。

『私達の事務所では、筑豊じん肺訴訟や過労死認定訴訟、オンブズマン訴訟など、国や北九州市を相手にした訴訟や、新日鉄などの大企業を相手にした配転無効、出向無効の裁判をしています。

通常の訴訟では、依頼者から着手金をいただいて裁判を始めますが、これらの訴訟は手弁当で行っています。それは、依頼者に着手金を支払う資力がなく、その裁判は人権を守るために私達が弁護士としてやらなければならないと考えたからです。

これらの裁判は、勝か負けるかやってみなければわかりません。大変難しい裁判です。 筑豊じん肺訴訟では、一審では国に敗訴し、控訴審では勝訴しました。

弁護士報酬の敗訴者負担が決まれば、私達は「この裁判を私達は、勝つために必死に闘いますが、敗訴することも考えなければなりません。私達の着手金はいりませんが、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければなりません。」と説明しなければなりません。

こんなことを説明したら、私達に弁護を頼む人がいるでしょうか。

通常の事件でも、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければならない場合に、それでも私達に依頼する人がいるでしょうか。

弁護士報酬敗訴者負担は、結果として国民が国や県や北九州市を被告とする裁判や、医療過誤や労働裁判など被告の方が圧倒的に資力がある裁判ができにくくします。市民を裁判からしめ出すことになります。

日本弁護士連合会では反対署名に取り組んでおります。

お忙しいこととは存じますが、ご家族、友人、知人、ご親戚の方々に反対署名をしていただいて、同封の返信用封筒にて事務所までご返送下さい(できましたら8月末日を目処に)。他の方にご依頼できない方は、自分の分だけでも結構です。

ご協力お願い致します。』

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ヤミ金対策法成立す!!  

石田光史

第1節 先の国会において、いわゆる「ヤミ金対策法」が成立しました。この主要部分は、既に九月一日から施行されています。みなさん新聞報道等でご存じかとは思いますが、紹介と解説をさせていただきたいと思います。

第2節 ヤミ金対策法の内実は、貸金業法と出資法の改正です。内容は多岐にわたっていますが、主なところを挙げると、貸金業登録の拒否事由の追加、無登録業者の広告等の禁止、貸金業者に使用人等への従業員証明書の携帯義務を負わせたこと、出資法に定める金利違反の罰則強化などです。

第3節 しかし何と言っても本法の眼目は、契約無効規定を置いたことでしょう。貸金業法四二条の二は、次のように定めます。

貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約において、年一〇九・五%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は無効とする。

ここで言う「貸金業を営む者」とは、登録業者に限りません。したがって、我々が日常相手をするいわゆる「ヤミ金」の契約は、利息部分だけでなく消費貸借契約全体が無効となります。

第4節 ところで、債務者がまだ元本分の返済も終えていない場合、どう処理すべきことになるのでしょうか。

この点、一部では、「元本分を返済すれば利息分は無効となる」といった報道がなされ、また某庁のホームページにはわざわざ「元本の返済義務はある」と記載されていました。会員の中にも、この点で混乱された方もおられるのではないでしょうか。

しかしこの報道・解説は明らかに誤りです。正解は、「この法律は、元本分の返済については何も言っていない」です。返せとも返さなくてもいいとも言っていない。つまり、元本分については、通常の不当利得法理によって処理されることになります。不法原因給付の適用も排除されません。衆議院法制局職員による解説も同旨です(金融法務事情一六八三号三七,三八頁)。したがって、ヤミ金による数百・数千%にも及ぶ超高利の貸付は、不法の原因によって給付されたものであり返還義務はない、としてきた従来の我々の主張に、何ら変更の必要はありません。

第5節 立法過程で、元本の返済不要も明記すべきとの意見もありましたが、今回は見送られました。この点を曲解して、立法により元本分は返済しなければならなくなったとする向きもあるようです。

しかし前述のとおりそれは誤りですし、実質的に考えても、ヤミ金「対策」立法が成立したことにより、従来我々が貫いてきた「ヤミ金に対しては一切返済しない」との原則が否定されるというのはおかしな話です。少なくとも、数百・数千%の超高利を取っている「ヤミ金」の貸付については不法原因給付に該当するとして、従来どおり一切返還しないという立場を貫くべきですし、それは全く可能であると考えます。

第6節 今回のヤミ金対策法には、物足りないとの批判もあります。その批判も解るのですが、ただ「『返済しない』という理屈は立つのか。立つとしても実際にはヤミ金とどう闘うのか。」などという議論をしていた当時(ほんの二年程度前です)からすれば、隔世の感があります。

近頃ヤミ金はだいぶおとなしくなり、数も減ったという印象があります。あと一歩です。このヤミ金対策法を活用して、ヤミ金を撲滅しましょう!

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2003年11月号 月報

福祉の当番弁護士発足3周年記念シンポジウム報告

吉田 知弘

初秋というのに残暑厳しい9月19日、岩田屋Zサイド夢天神ホールにおいて、福祉の当番弁護士発足3周年記念シンポジウムが開催されました。満場の聴衆に溢れた会場の様子を仰ぎ見るにつけ、この高齢者・障害者関連法務というものには強い社会的ニーズがあるのだと、改めて実感しました。

ところで、会員の皆様は、この「福祉の当番弁護士」という制度をご存知でしょうか。この制度は「専門相談者のための法律相談」とでもいうべき制度です。高齢者や障害者に関わる分野では、法的問題を含む事案でも、医療・保健・福祉等の分野に関わる行政や各種団体の実務者のところで、第一次的な把握がされることが圧倒的に多いと思われます。彼らはそれぞれの専門実務者としての立場から問題の要点を要領よく把握しているものの、法律知識に欠けるために対処方法がわからずに困っている。そこで、これを我々法律専門家に迅速に繋ぐために、専門実務者が抱える事例に関する法律相談を無料で受けられるように配慮した法律相談の仕組が「福祉の当番弁護士」なのです。この福祉の当番弁護士は、当会が全国に先駆けてスタートさせ、その後、九弁連内の各単位会で徐々に採用が進み、目下、岡山や大阪でも採用が具体的に検討されているなど、各般から強い期待が寄せられています。今回のシンポジウムは、この制度の発足3周年を記念して開催されました。

このような経緯もあって、このシンポジウムの開催にあたっては、九弁連や日弁連のみならず、福岡市・福岡県・市社協・県社協・医師会等、行政や医療保健分野の各般の共催を仰ぎました。単なる行事とはいえ、各般のご協力を賜ること自体が高齢者障害者法務にとって欠くことのできない専門実務者間の問題関心の共有と連携強化のために意義あるものと位置付けられていることをご承知いただければと思います。

さて、当日の司会進行は、当会の加茂雅也会員と原志津子会員という溌剌とした組合せで、会の円滑な進行に大いに寄与されました。最初に、福岡市保健福祉局介護保険課の古屋英明課長より「介護保険導入4年目を迎えた福岡市の取組」との題目でまとまったご報告をいただきました。

その後、基調講演として、大阪弁護士会の池田直樹先生より「『高齢の人・障害のある人の権利擁護と虐待防止』に向けて」と題して、基調講演を賜りました。池田先生は、高齢者障害者の権利擁護の活動に大変造詣が深く、虐待防止のために必要なことを抽象的にではなく、具体的な事案の中で取り得べき手段という形で事細かにご紹介いただき、その上で、虐待防止法を制定する必要性とそのための課題を分かりやすくご説明していただきました。また、各地の自治体などにおける虐待防止のための取組や対応方法のマニュアルなどもご紹介があり、参加者やパネリストからも大変な好評を得ていました。
その後、当会の宇都宮英人会員をコーディネーターとし、古賀美穂会員ほか各般から多数のパネリストをお迎えしてパネルディスカッションが催されましたが、虐待を発見した場合の通報義務と実務者に課せられる保秘義務との調整をどのようにして克服するのかが重要な問題となるという共通認識ができたように思いました。

その他、諸々、この狭いスペースで語り尽くすことはできませんが、引き続き催された懇親会を含め、大いに盛会であったことをご報告します。どうぞ、会員の皆様にも、この高齢者障害者法務の分野に対するご理解と積極的なご参加をお願いするものです。

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ITコラム 〜サルからの進化

田邊 俊

遂に、私にもITコラムの順番が回って来ました!思い起こせば、修習生になるまでは、パソコンはおろか、ワープロさえ触ったことがなかった超アナログ人間であるにもかかわらず(因みに、現在の趣味は、蓄音機でのSP鑑賞です。)、何の因果か、ホームページ委員会に所属することになり、ITに関するコラムを書いているのですから、人生、何があるか分かりません。という訳で、色々な先生方がITコラムを執筆された後に、何について書けば良いのか悩みましたが、私とパソ\コンとの付き合いは、「サルにも分かる」と銘打たれたパソコン入門本からスタートしましたので、「コンピューターを使わなくても仕事には差し支えがない。」と考えられている年輩の先生方(当然ながら、うちのボスも含まれます。)に向けて、私が、どのようにしてサルから進化したのかをご紹介したいと思います。

まず、修習生になった私は、実務修習に向けて、起案のためにパソコンを使うようになりました(ワープロとしての使用)。勿論、キーボードの使用に慣れていなかったため、悪戦苦闘の日々を過ごしましたが、「特打ち」等のタイピングソ\フトを用いながら、少しずつキーボードに慣れて行きました。この修習生時代には、メールの利用も消極的で、インターネットも、「大人のインターネット」の利用に留まっていました!その後、うちの事務所では、私の就職を機会に、遅蒔きながらワープロからパソコンへの転換が行われ、LANも整備され、情報の共有化が行われるようになりました。

そして、この段階では、複数のメーリングリストに所属するようになったため(福岡の同期、研修所のクラス、修習地など)、メールも積極的に利用するようになり(コミュニケーション手段としての利用)、今では弁護士会のメーリングリストへの加入も増え、何日か出張をすると、100通余りのメールが貯まるという状態です(もう出張にもパソコンを持ち歩かないといけません。)。

さらに、インターネットも多用するようになり(情報収集手段としての使用)、判例検索は勿論のこと、何か調べものをしたいときには、ヤフーやMSNの検索サイトを利用し(相手方の会社の住所、郵便番号などの調査も容易です。)、出張の際には、路線の確認や、電車・飛行機の予約(インターネットを利用すれば割引などの特典が満載)、ホテルの予\約(オークションサイトを使えば、半額以下の料金での宿泊も可能)に重宝しています。加えて、ネットオークションの利用も、趣味のレコードやコンサートチケットに留まらず、書籍や日常品でも、キーワードを予\め登録しさえすれば、オークション会社から出品連絡がメールで入るという便利なシステムであるため、探している物の発見が容易になりました(余談ですが、オークションを通じて同好の士と仲良くなることも多く、弁護士会の一員として釜山を訪問した際には、自由行動時間中に韓国の大学教授と会い、オタク話に花を咲かせました。)。

以上、私とコンピューターとの関わりを披露させていただきましたが、この5年間で、ワープロから通信手段、さらには、情報入手手段へと進化しており、後は、情報発信手段(Hpの作成)への発展という課題が残されているだけです。

このように、典型的な文系人間の私でも、今では、コンピューターなしの生活など考えられない程になっているのですから、パソコンに慣れていない方には、パソ\コンの利用を強くお薦めします。この点、デジタルデバイドとは、ITを使う人と使わない人との間に生じる社会的・経済的な格差を意味しますが、最近宿泊した東京のホテルでは、テレビ代わりにパソコンが装備され、ルームサービスもパソ\コンを通じて依頼するシステムが採用されており、パソコンを使用しなければ生活が出来ないという時代の到来を強く予\感した次第です。

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2004年1月号 月報

犯罪被害者支援研修

恒川 元志

弁護士登録して1か月ほど経った11月12日、われわれ新入会員弁護士は弁護士会館3階ホールにおいて犯罪被害者支援研修を受講しました。一昔前には犯罪被害者は刑事訴訟において忘れられた当事者とまでいわれておりましたが、現在においては被害者保護に関する法令の整備も少しずつ進んでいるところです。ということで近年注目の分野の1つであると思いますので、気を引き締めて研修に参加させていただきました。

今回の研修で配布された資料の中に、西日本新聞の見開き1枚の大きなカラーコピーがありました。おぉ、よく見ると何枚かのコピーを糊付けしてつなぎ合わせてあるではないですか。私はその内容のわかりやすさもさることながら、まずは関係者の方々の研修資料作成の努力に感動してしまいました(事務所には内緒ですが、時間を間違えて30分早く会場に到着してしまいましたので、じっくり目を通させていただきました)。

研修が始まると、まずは福岡県警本部犯罪被害者対策係主任で臨床心理士の加藤友香さんから、県警の犯罪被害者相談電話受付をする「ミズリリーフライン」の説明と、そこによく相談があるドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者を中心とした説明がありました。加藤さんには検察修習中にもお話を聞く機会があり、近年の流れから市民の味方の県警としても力を入れられておられるのだと思いました

次に、郷田真樹先生から、犯罪被害者支援の一般的な注意点と、被害者の代理人となった場合の刑事・民事事件での役割、加害者の弁護人・代理人の役割について丁寧な説明がありました。また、具体的な用例を挙げて、被害者の意思を尊重せずに援助者個人の価値観を押しつけるだとか、被害者の側に落ち度があると責めるだとかの悪い対応例も紹介いただきました。

最後に、特定非営利活動法人福岡犯罪被害者支援センター理事長の内川昭司先生から同法人の概要等について説明がありました。同センターは弁護士だけでなく、医師、臨床心理士、社会福祉士、大学研究者等の専門職の方々と、専門的研修を受けた市民ボランティアの方々で成り立っているとのことでした。また、実際の事件で遺族の方が書かれた文章を紹介いただきましたが、そこには遺族の心境や事件後の環境変化、家族が立ち直るまでの過程等、リアルに描かれており、犯罪被害者支援の重要性とその困難さを改めて認識する事ができたように思います。

その後、質疑応答の時間がもうけられ、われわれ新入会員の質問に対し、途中から参加された萬年先生らが豊富な経験を踏まえられた的確な回答をされていました。 これまでの私にとって犯罪被害者保護といっても机上の空論でしかなかったのですが(本稿執筆段階でも未だ扱ったことはないですが・・・)、今回の研修を通して、犯罪被害者が受ける具体的な被害を考えることができたと思います。研修の途中まで、犯罪被害者支援委員会とミズリリーフラインとの関係は?犯罪被害者支援センターとの関係は?などと、実際自分がどのようにこの分野に携わっていくのか疑問だらけでしたが、研修が終わり、懇親会を経てなんとか研修を受けたといえる程度までには理解できました。

法曹関係者以外の方から、どうして悪者の見方をするのかという質問をよく受けますが、それに対する誤解を解くとともに、被告人だけでなく被害者の支援もしているのだということをもっとアピールしていくことも大切なのではないかと思いました。これからは今回の研修で学んだことを生かして、犯罪被害者の支援に貢献したいと思います。

最後になりましたが、お忙しい中われわれ新入会員のために講義していただきまして、ありがとうございました。

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少年非行と更生支援

八尋 八郎

弁護士業務委員会の「弁護士に未来はあるか」シリーズ(第3弾)として、昨年12月4日に話をさせて頂いた要旨は次のとおりです。

私は少年事件が多い年には20件くらいあり、10余年前には全国の年間付添人選任件数の1%を越えたことがあります。少年に付添人選任届を書いてもらうときには誠実に精一杯の活動を誓うので、少年の意に反して「少年院に送ってほしい」という付添人意見を述べることはありません。面会と文通を重ねるなかで少年の自分史のなかに本件非行を位置づけ、非行の原因と対策を少年と一緒に考えてゆきます。

また、少年には鑑別所では行動観察という態度評価が行なわれるのでキチンとしておくように伝え、保護者には社会資源(家庭・学校・職場などの少年の更生を支えるもの)の再構成と開拓にフル回転するよう求めます。これらがうまく噛み合えば少年は社会内処遇を受けることになるのですが、その場合にも少年には再非行の抽象的危険は残ります。それで「野獣を野に放つものだ」という批判を甘受しています。とはいえアッサリと少年院に送るよりはギリギリで社会内処遇にした方が再非行の危険性は低く、予\後が良いように思います。

付添活動が奏功せずに少年院に送られたときには、一日潰して面会に行き「少年院の処遇プログラムどおりにしっかり勉強して元気に戻ってほしい」と伝えます。やがて仮退院した少年が事務所に来ます。背筋をピンと伸ばして私の目を見て「ありがとうございました。これから頑張ります」と言うと少し嬉しくなるのですが、今どき運動部の子だってこんな挨拶はしないのです。暗くて反抗的なままでよいから少年院で運転免許くらい取らせて欲しかったと思うのです。免許があれば就職先が広がり生きてゆく役に立つのです。

虐待と少年非行には高い相関があります。虐待に限らず、貧困・離婚などの負因と少年非行とのあいだにも高い相関があります。だからといって親を処罰したところで何も始まりません。逆に出生率が低下するなか産んでくれてありがとうと言うべきです。国がさまざまな負因を抱えた弱い親を支援できれば子どもの役に立つのですが、財政赤字で窮迫したわが国は、福祉のオール切捨てへと逆走中です。

国の年間税収が42兆円であれば、42兆円で予算編成するのが当然です。それなのに、同額の赤字国債を発行して毎年のように収入の2倍を濫費し、いまや国債未償還残高は660兆円の破産状態です。少年に面会して「何やってんだ」と叱責する前に、総理大臣にそう言いたいところです。子どもの世話にはならないと決意して国民が積み立てた年金をデタラメに喰い潰し、若年者に負担してもらうとは何たる言い草でしょうか。今なら年金の使い残しが140兆円あるそうです。いま自己破産を決断すれば、この140兆円を配当できます。配当率が年金積立総額の何パーセントになるか分かりませんが、せめてもの誠意ってやつです。事務費も出ない低利回りの時世に積立額以上の給付を予定する年金制度が存続できる筈はないのです。それなのに、年金制度改悪を弄するのは、これをあと3年で喰いつぶす目的というしかありません。そのついでにイラク派兵というのでは、まるで子どもの学校給食費で福岡ボートに行くようなものです。こんな有様では「やってられない」という子どもに返す言葉はないのです。子どもの不幸のシンボルである非行を少年と家族だけに背負わせて一丁上がりにするのなら、国はいりません。サッチャーは「社会などない。男と女がいて家族があるだけだ」と言って福祉オール切捨の小さな政府宣言をし、ついでに愛国心を強調したのですが、そんな国よりも私は妻を愛します。

私たちにできる更生の援助とは少年本人の意思・意欲を尊重し、曲がった枝は曲がったままに生かしてゆくことであって、枝を折ったり刈り込んだりして形ばかりを整えることではない筈です。或いは、少年に必要なのは警察の取締や少年院ではなく若者宿(地域の若者たちが夜集まって手仕事をしたり話し合ったりして寝泊りする居場所)かなと思いついたりもするのですが、若者宿を開設しても誰も来ないだろうと考えると、やはり子の心、親知らずということでしょうか。

子どもの未来は人類の未来です。子どもに未来がなければ、弁護士の未来だってありません。少年法を「改正」しても「やっぱり」非行は減らなかったし、これに続く教育基本法や憲法の「改正」スケジュールをみると、早めに自己破産させないと、後日、元に戻す法律が多すぎて大変だと思うのです。

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2004年2月号 月報

ちょっとだけIT病

堀 良一

コンピュータは,わたしの体の一部である。

年々衰えていくわたしの大脳の機能は,次々にノートパソ\コンのCPUとハードディスクによって置き換えられている。

訟廷日誌はとっくの昔に捨てられ,ポケットには電子手帳のクリエが収まっている。携帯はもちろん肌身離さず持ち歩いている。

打ち合わせも相談も全部ノートパソコンでメモを取るし,スケジュールはクリエだし,ペンを使って文字を書くことは,署名以外では法廷で証言をメモるときくらいだ。そのため,ワープロ専用機時代から進んでいた「漢字が書けない病」は,ほぼ極限にまで達している。仮名を書くときも,もたもたして時間がかかる。わたしの書いた字は,もはや,わたしを担当する事務員にも読めない。

最近は,小説やコミックも,かなりパソコンやクリエで見るようになった。カバンのなかに入れているiPODには2000曲近くの音楽が入っていて,自宅のCDライブラリをほぼ持ち歩いていることになる。音楽はクリエからでも聴いている。

メールやネットは,ノートパソコンがメインだが,自宅や事務所のデスクトップからも,携帯からでもクリエからでも頻繁にアクセスしている。わたし宛のメールは,睡眠中と尋問中を除けば,どこにいようと,ほぼ30分から40分程度で確実にわたしに届く。

メーリングリストも自分が開設したものだけで7つあるから,メールは1日に100通前後届く。書いているメールの分量もかなりになる。

担当している集団事件では,もちろんメーリングリストを開設して,20名くらいの弁護団員が議論したり,情報を交換したり,書面の検討をしたりしている。相手方から提出された書面はスキャナで読み込んでOCRにかけ,ワードやPDFのファイルにして,こちらが提出した書面や資料といっしょに,ウェブ上のオンラインストレージにアップして,全員で共有している。いまや,この集団事件の弁護団員はパソコンなしにはついてこれない。

先日,弁護士会の委員会で出かけたモロッコ旅行の際には,毎晩,その日にデジカメで撮った静止画や動画をつなぎ合わせ,BGMをつけて,ムービーファイルを作っていた。海外でもホテルからネットに接続して,日本の情報をチェックし,メールを読み,気が向いたらメールを書いている。モロッコの地方都市のホテルは外線がホテルの交換を通すという古いシステムのままのところがあってネット接続ができず,おかげでその日は早寝ができた。携帯用のスピーカーも旅行カバンに入れているから,ほぼ自宅と同じ環境で音楽も楽しんだ。

西にフリーズしたパソコンがあれば,飛んでいって,あれこれ原因を究明してあげたい。東にパソ\コンを購入しようとしている人がいれば,いっしょにパソコンショップにでかけて悩みを共有してあげたい。

まだパソコンに変身した夢をみたことはないが,最近,ちょっとだけIT病が進行中であるという自覚はある。

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弁護士過疎地域への派遣支援について

石渡 一史

 福岡県弁護士会は、地域司法計画の一環として、弁護士過疎地域を克服する事業を積極的に支援していくことを12月2日の常議員会で決議しました。

弁護士過疎地域の問題については、今回の常議員会決議を経て、具体的に支援事務所の募集を始めることになりました。そこで、本稿を借りて、改めて、弁護士過疎地域克服の今後の計画について、会員の皆様の積極的な参加を呼びかけたいと思います。

 福岡県弁護士会は、今後、直接、間接の支援事務所を募集し、地域司法計画に従って克服すべき弁護士過疎地域(当面の地域は、八女、柳川、田川ですが、この地域には限りません。)への派遣を2004年度以降、順次実施していく予定です。派遣する弁護士については、本人が希望すれば当該地域に定着することが望ましいのは当然ですが、実際には、2年ないし3年の期間を限定した派遣が中心となると思われます。

 福岡県弁護士会が計画している、弁護士過疎地域克服のための事業の柱となるのは、直接、間接の事業支援事務所ですので、この支援事務所の役割について説明したいと思います。

1 直接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 過疎地派遣希望の司法修習生を採用する。

    受入条件については、司法修習生と面接及び協議して、採用することになります。

  2. 派遣弁護士(派遣前)に対して研修を行う。

    一定期間、事件処理や事務所経営等 の研修を行わせることになります。

  3. 派遣弁護士(派遣中)の相談に応じる。

    事件について派遣弁護士の要請があれば相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

  4. 派遣弁護士(派遣後)の受入先となる。

    派遣弁護士が、派遣期間満了後に、直接支援事務所への復帰を希望した場合に、その受入先となることになります。

2 間接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 派遣弁護士就職前に、直接支援事務所が作成する一般的基準研修プログラムに沿って、研修段階で共同受任する事件の種類や数量、及び、設立後の協力体制について、協議する。
  2. 派遣弁護士(派遣前)に対する研修を、直接支援事務所と共同で行う。
  3. 派遣弁護士(派遣中)を支援する。

派遣弁護士から、事件処理について要請があれば、優先的に相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

 もっとも、ここで述べた役割というのはあくまでイメージであり、それぞれの法律事務所が、この計画とは別に独自の構想で、弁護士過疎地域に法律事務所を開設することを妨げるものでないことはいうまでもありません。

また、以前、寄稿した際にも述べたように、ルールに基ずく社会が、地域のすみずみに行き渡るようにしたいというのが、地域司法計画の重要な柱の一つです。また、これによってリーガルサービスセンターに頼らずに公的弁護制度等、新しい改革の試みも実現していくことができるものと考えます。重ねて会員の皆様が本事業の意義を理解され、積極的に支援事務所として名乗りを挙げられることを希望するものです。

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当番弁護士日誌

塩澄 哲也

一 弁護士になって約半年、国選弁護や私選弁護もある程度の件数をこなし、大分ペースがつかめてきたかなというときに、1件の当番弁護の出動要請があった。15歳の少年。罪名は窃盗。中学生が、万引きかひったくりでもしたのかなと思いながら、とりあえず久留米署に面会に行った。

二 金髪で髪を逆立てた如何にも悪そうな少年。遊び仲間と原付に二人乗りし、歩行中の女性の背後から近づき手提げバッグをひったくった、他にも同様のひったくりを1件やっているとのこと。窃盗やシンナー等で保護観察処分を受けた前歴もある。既に、中学校は卒業しており、定職にも就かずぶらぶらしていたらしいので、少年院送致という結論も十分にありうると思った。今の段階から環境調整に努めなければと思い、私選弁護の意思についても確認するべく母親に連絡を取ってみると、「あの子は小さい時から親にすぐ嘘をつく、今まで何度あの子のために頭を下げに行ったことか、あの子のためにお金を出すつもりはありません。少年院に行ったほうがあの子のためにはいいのではないか」と言われた。このままでは、少年院送致は避けられないと思い、少年の母親を呼び出し、(1)扶助申請するので弁護士費用は気にしなくてよいこと、(2)少年を今の段階で少年院に送ることが必ずしも少年にとってプラスになるとはいえないことなどを説明し、少年の母親に、被害賠償金を出したり、少年の社会復帰後の就業先を探したりするなど、最大限協力してもらうようにお願いした。結局、被疑者弁護の段階では、被害賠償をすることくらいしかできなかった。

三 観護措置が採られた後、社会記録を読んでみて、少年の家庭は重大な問題を抱えていることが分かった。少年の母親は、実父(少年の祖父)から激しい体罰を受けて育ってきており、同じように、少年も母親から、バットやビール瓶で殴られるなど継続的に体罰を受けて育ってきたのである。少年の祖父は、過去に長期間服役していたこともあり、少年に対して一社会人としての理想の大人像を示すことが全くできていなかった。少年の母親は、少年の父親と離婚した後、数年前に別の男性と再婚しており、再婚後二人の子供を設け、幼子の面倒を見るのに精一杯であったことなどから少年を放任していた。少年の義父は、東京に単身赴任しており年に数日しか戻ってこないこともあり、過去に少年が犯罪を犯したときにも、みな母親任せという状態であった。少年は家庭には居場所がないと考えており、母親に対する根深い不信感があること、母親自身も監督能力に欠けていることから、少年をこのまま家に帰しても元の木阿弥であると思い、私は、実家以外の帰住先を探すことに付添人活動の重点を置こうと考えた。

まず、私は、少年を義父が勤めている会社に就職させ、東京で義父と一緒に生活させることがよいのではないかと考えた。その話がまとまるかと思われたが、少年審判の直前になって、義父の勤める会社の他の社員が少年の面倒を見きれないと反対したことなどから御破算になった。

裁判官は、保護観察処分という結論も考えていたようであったが、少年や母親と何度も面会している私としては、少年を母親から離したところでしっかり監督した方がよいと考えていたので、試験観察処分を獲得すべく別の帰住先を探すことにした。裁判所からは補導委託先として中華料理屋があるといわれたが、少年は、「そのようなところで働きたくはない、力仕事がしたい」というので、結局、私が別のところを探すことになった。

そこで、以前、私が国選事件を担当した際に、型枠会社の社長さんに証人として立って頂いたことがあったのを思い出し電話したところ、面度を見てもよいという思いもよらぬ返事を頂いた。しかも、会社の近くにある下宿先まで紹介して頂き、下宿先のご主人の了解もとることができた。結局、型枠会社に勤め、下宿先から仕事場に通うということ等を条件に、少年は試験観察処分となった。

四 最初は順調かと思われたが、少年は何かと理由をつけて次第に仕事場に行か]なくなった。しかも、二度と原付の無免許運転はしないと約束したにもかかわらず、少年が無免許運転をしているという情報があちこちから寄せられるようになった。調査官や私は、このままでは少年が重大犯罪を犯す可能性が高いと判断し、少年を裁判所に呼び出し、今後のことについてしっかりと話し合おうということになった。

私は少年の下宿先を訪問し、仕事に行かなかったり、無免許運転をしたことが発覚すると、また身柄拘束されてしまう可能性があることなどを説明して、明日からは仕事に行くこと、数日後には裁判所で調査官との面会があるからその時には私が迎えに行くことを告げた。約2時間ほど話し、少年の下宿先を後にした。

調査官との面会日に、私が少年を下宿先まで迎えに行くと、少年は早朝からいないとのこと。下宿先の方の話によれば、私が少年を訪問した日以降、少年は全く仕事に行っていないことも判明した。少年との面会を後日にしてもらうように調査官に連絡した後、私は別件の少年事件の件で少年鑑別所に行くと、私の携帯に事務所から連絡が入った。「少年が窃盗罪で逮捕されたようです。少年は先生に面会に来て欲しいと言っているので鳥栖署に行って頂けませんか!」

五 少年から事情を聞いてみると、3人で自転車を盗んだということで逮捕されたが自分には覚えはないこと、高校生から500円を恐喝をしたが、他の2人から誘われてやむなくしたなどと弁解していた。少年の家庭環境を考えると、急に「立ち直れ、優等生的に振る舞いなさい」と言ったところで、いきなりそのような対応を取らせるのは難しいと考えられること、経営が苦しいにもかかわらず型枠会社の社長さんが、今後しっかりと働くならばもう一度少年の面倒をみてもよいと約束して頂いたことから、私は、再度の試験観察処分を目指すことにした。

窃盗の事実関係についての中間審判を経て(結局、窃盗の事実は認められてしまった)、2回目の審判前に裁判官と事前に面会した際、試験観察期間中にいくつか犯罪を犯していたとしても、今まで嘘をついていたことを謝罪し、心から反省しているとみられるならば、もう一度チャンスを与えようかと思っていると言われた。「ひょっとしてまた試験観察になるのか」などと淡い期待を抱いていたが、審判の場でも、少年は、「自分は窃盗はしていない、無免許運転はしていない」と言い張り、結局、少年の口から反省の弁は聞かれず、少年院送致になってしまった。

六 当番弁護で出動してから4ヶ月間少年と接してきた。自分が少年のために一生懸命動いたことで、少しでも大人に対する不信感を払拭できればいいなとは思う。ただ、「少年院に行って更生する者なんて誰もおらんよ。自分の周りも見てもそうやんけんが」などと嘯いていた少年の今後が心配でならない。

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2004年3月号 月報

公害環境委員会・曽根干潟視察

後藤 富和

近年,自然環境の分野では,湿地とりわけ干潟の重要性とその保護の必要性が強く叫ばれているのをご存知でしょうか。

かつて干潟は,人類にとって利用価値の少ないものという認識から,開発の格好の標的になり,埋め立てられ,戦後数十年の間に日本中の干潟の約4割が失われました。そして,残った干潟も,都市化や公共事業のために,消失しようとしています。

しかし,干潟には,豊かな生態系が発達しており,そこに生息する生物の種類,個体数は極めて豊かであり,生物多様性の宝庫になっています。また,干潟の海の漁業生産量はきわめて高く,そこで獲れる魚介類は,われわれの食卓を潤してくれます。さらに,近時見直されてきているのが,干潟の浄化機能です。下水処理場にたとえると,干潟1haあたりの下水処理人口は約7000人に相当すると言われています。

国際的には,ラムサール条約やNGOの活動の高まりによって干潟の保全が訴えられてきました。

そして,わが国では,1997年4月14日,諫早湾干拓事業の水門閉め切り(通称「ギロチン」)のショッキングな映像が全国の茶の間に流れたことから,一気に干潟保全の国民意識が高まり,1998年の伊勢湾藤前干潟の干拓中止を皮切りに,東京湾三番瀬や中海干拓など,わが国の重要干潟の開発が続々と中止されていきました。

その中で,福岡県においては,北九州市小倉南区の海側に広がる「曽根干潟」が注目を集めました。曽根干潟は,絶滅危惧種を含む鳥類や底生生物,魚介類が多数生息する全国でも数少ない生き物たちの楽園としてその保護が叫ばれている干潟です。

今回,わが国に残された数少ない干潟の現状を認識し,その保護に対する行政の取り組みについてお話を伺おうと,「曽根干潟視察」を計画しました。

委員会では,昨年末から,研究者等を招き,曽根干潟の特性,保護の必要性を学習し,「よし,実際に干潟を見に行こう!」と予定した1月22日,その日,福岡県地方は,近年まれに見る大雪のため,交通は麻痺し,特に,北九州地方については,一度行ったら最後,福岡まで戻れないかもしれないという危機的な状況に見舞われてしまいました。

委員らは,双眼鏡や一眼レフカメラ,手袋,登山靴などを装備し,いつでも出発できる準備を整えていました。

しかし,状況は好転せず,「断腸の思い」で曽根干潟の視察を中止し,北九州市役所への聞き取り調査のみ行うことになりました。

北九州市役所で,「曽根干潟」の保護に取り組む関係各部署の担当者に集まってもらい,まず,干潟の価値,保全の必要性に対する市の考えと,干潟保全の具体的取組について話を聞きました。

ここで,私たちの予想を良い意味で裏切ったのは,北九州市が(意外に?)干潟の重要性や保護の必要性を認識し,その保護に積極的に取り組んでいることでした。

若い担当者が,目を輝かせながら,生き生きと北九州市の取り組みを説明してくれました。いわく「過去の干拓を続けていると,自然環境と人間活動の共生は図れない」との観点から,これ以上の干潟の干拓を中止し,そして,側にある北九州空港の跡地についても曽根干潟の環境を意識した整備をすると熱く(外はめちゃくちゃ寒かったですが)「夢」を語ってくれました。

われわれは,良い意味で予測を裏切られました。

そうなると人間どんどん欲が出てくるもので,委員から,さらに上を行く要求がいくつも市の担当者に向けられました。

「ズグロカモメやカブトガニがウヨウヨいるというのは,たとえて言うならば,パンダやトラがひとつの場所にたくさんいるのと同じであり,わが国の中でも超1級の干潟であるから,北九州市は,もっともっと曽根干潟のことを市民にアピールすべきである。市の宣伝が足りない!」

「ラムサール条約登録についても,市民のコンセンサスが得られるよう地道にその意義について市民に訴えていくべきだ!」など,委員の要求はどんどん大きくなる一方でした。

これも,北九州市が一所懸命に干潟の保全に取り組んでおり,この人たちならまじめに取り組んでくれると思ったからでした。

私たちの要求は尽きることはなかったのですが,時間の関係で市役所をあとにすることになりました。

一歩外に出ると,すごい豪雪,途はつるつると滑るアイスバーン状態になっていました。

本来であれば,新幹線が運休するかもしれない不安があるので,さっさと博多に帰るべきなのですが,関門の「ふぐ」の魅力には逆らえず,われわれは,鹿児島本線を博多とは逆方向に進み,新年会をすることになりました。

このような状況下で,やっぱり福岡に帰ったほうが良いと言う意見を誰一人言い出さないのが不思議です。

腹いっぱい関門の幸を堪能した後,帰りは案の定,電車が動かず,停車したままの列車内で約1時間を過ごさねばなりませんでした。それでも,人間幸せなときは腹も立たないので,誰も文句を言いません。恐るべき「ふぐ」の威力です。

寒さを感じないのは,「ヒレ酒」の威力でしょう。

止まったままの列車の中でふと思いました。曽根干潟の開発中止のきっかけとなった諫早湾干拓事業がいまだに続いているのはどういうことでしょうね。

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私のIT機器の買い方

田上 尚志

思えば私が最初にコンピューターを買ったのは,1997年のことだった。ウィンドウズ98が出る少し前のことで,最初に買ったIBMのデスクトップ機だった。現在は自宅で3台目のデスクトップパソコンを使い,事務所では3代目のノートパソ\コンを使っている。この他,プリンターも買ったし,スキャナーも買った。タブレットも買ったし,CD−RもMOも外付けハードディスクも買った。

この私のコンピューター遍歴の中で,買って良かったと思ったもの,買わなきゃ良かったと思ったもの,いろいろある。そんな中で,少しばかりは買物が上手くなったのか最近はハズレはない。そこで,私なりのIT機器の選び方を紹介させて頂こうと思う。

まず,デスクトップ機だが,コンピューター好きの方なら遊んで楽しい。コンピューターグラフィックやゲームなどを楽しもうと思ったら,性能の良いデスクトップ機の方がノートパソ\コンよりも良いだろう。また,キーボードはデスクトップの方が明らかに打ちやすいので,疲れにくいのではないだろうか。

ノートパソコンを買う基準は,バッテリー駆動時間が長いこと,軽いこと,画面が見易いことの3つである。移動の際,ノートパソ\コンも持っていって出先で仕事をする。流石に喫茶店などで準備書面を書くわけにも行かないが,ITコラムの記事などなら空き時間で処理してしまえる。出先に必ずしも電源があるとは限らないので,バッテリー駆動時間は重要だ。また,ノートパソコンだけを持っていくわけではないので重いのはダメだ。できれば1キログラムを切るものが望ましい。あと,いくら軽くて小さいからといって,画面が見にくいと仕事がしづらい。できれば11.3インチ以上の画面が欲しい。

私がコンピューターを買うときは,一緒にコンピューターのディスプレイ用のフィルターを必ず買うことにしている。フィルターをつけるのとつけないのでは目の疲れが全く違う。私はフィルター無しだと1時間ほどで頭痛と吐き気がしてくるのだが,フィルターがあれば頭痛や吐き気に悩まされることもない。

CPUにはそれほど高度な処理能力はいらない。仕事で使うのはせいぜいワープロソ\フトや表計算ソ\フトである。CPUに一番不可をかけるのは実は子供がやるようなゲームであって,ワープロや表計算は実はコンピューターにとっては楽な仕事なのである。メモリーお金が許す限りたくさんあった方が良いが,ハードディスクは大きくなくてよい。私のコンピューターにはソ\フトがかなり入っているが,それでも10ギガバイトも使っていない。

プリンターは高いものを買った方が良いと思う。粒状感なく印刷できる写真画質プリンターを買えば,自宅で写真のカラーコピーもできる。また,去年A3まで印刷できるカラープリンターを買ったのだが,仕事でとても重宝している。とにかく,プリンターは少し張り込んだ方が良いだろう。

あるととても便利なのがスキャナーである。本や相手の準備書面を読み込んで引用したり,主張対照表を作ったり,キーボードでは打ち込めなくても,スキャナーで取り込めばOCRソ\フトで文字返還できる。

画像入りの資料はフロッピーディスクには入りきらないことも多いので,CD−RやDVDを焼けるようにしておいた方が何かと便利だ。そんなわけで,コンピューター本体,高性能プリンター,スキャナー,大規模記憶媒体が三種ならぬ四種の神器といったところ。これだけあれば最低限のSOHOにはなるだろう。

でも,羨ましいのは原田直子先生の赤いパソコン。あれって,いいよねえ。エレガントで。

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最高裁判所弁論出席感想記

松永 摂子

平成16年1月23日、上告中の刑事事件につき、最高裁判所で弁論が行われた。

最高裁の弁論に出席するというのは、おそらく最初で最後の貴重な経験。誰もが一度は行ってみたいであろう最高裁、その様子をちょっとだけお伝えしたい。

1 その前に、何で最高裁?

本件は、いわゆる路上生活者である被告人が、路上で自転車の前かご内にナイフを所持していたことから銃刀法違反で逮捕された、という単純な事案である。

単純とは言え、被告人にとって、ナイフは生活必需品。第1審弁護人(美奈川成章会員)は、無罪を主張して争っていた。

ところが、その後、予期せぬ事態に。裁判が進行するにつれ、論点整理ならぬ論点拡大の一途をたどり(訴因変更の可否、公訴権濫用、不告不理原則違反、控訴審における職権発動の限界、攻防対象論の妥当する範囲等々・・・)、とうとう最高裁で弁論が開かれる“大事件”へと発展していったのである。

2 いよいよ最高裁。

(1)最高裁は、弁論の準備に余念がない。弁護人は、美奈川成章会員、古賀康紀会員、船木誠一郎会員という錚々たるメンバーに、おまけのように私が加わっていたのだが、事前に、何名出席するのか、誰が弁論を述べるのか、法廷では上告趣意書に記載されたとおりの順番で着席せよ、弁論を述べる者は起立せよ、等々の確認・注意事項が満載である。しかも、なぜか私だけ登録期を尋ねられ、身辺調査(?)らしきことも。なかなかガードが固い。

(2)弁論が開かれたのは、第二小法廷。裁判官の背後に壁画のようなデザインが施された法廷を期待していたので、別のシンプルな法廷だと知った時の落胆は大きかったが、それでも、一面に引かれた絨毯はふかふか、天井の両側には間接照明が灯り、上品で落ち着いた雰囲気を醸し出しており、どこかの高級ホテルの会議室のよう。裁判関係者席は茶色の革張りで、正面の裁判官席方向を向いており、その座席の中央から左側にかけて、弁護人が指示されたとおりに着席する。ほどなくして、ベルボーイ(いえ、廷吏)が左側の扉から現れ、「チリン、チリン♪」と高尚なベルの音を響かせて「只今より開廷します。」と告げると、面前の観音開きの扉が自動で開き、裁判官4名がスルリと入廷された。もはや法廷ではなく、“劇場”といったところか。

難解な議論は大御所の先生方にお任せし、弁論を述べるという形式面を担当していた私は、ここで粗相があってはならないと、事前に読みの練習をしたのは言うまでもない。練習の甲斐あって無事終了し、あっという間に閉廷となった。

3 ところで被告人は・・・。

弁護人的には貴重な体験となったこの事件。が、当の被告人はというと、何で自分の事件が最高裁にまでいってしまうのか、困惑気味。ソインヘンコウ、フコクフリゲンソ\ク、コウボウタイショウロンなるものを説明しても、“ジュゲム ジュゲム ゴコウノスリキレ・・・”のようなもので、理解が得られそうにない。きっと、「そんなものはどうでもいいから、早く裁判を終わらせてくれ」というのが本音に違いない。

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2004年4月号 月報

俄然、利用しやすくなる行政訴訟

池永 満

今期通常国会に提出される三大司法改革法案の一つとして「行政訴訟法改革」が提出されることが固まった。司法制度改革審議会意見書では、単に「司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で行政は法制度を見直す」という極めて理念的な方向性が打ち出されただけで、どの程度の改革が具体化できるか、はなはだ心もとない状況での行政訴訟検討会の出発であったが、日弁連と検討会委員や与党若手の会等の連携した抜本改革を求める声と運動が大きく盛り上がった反映もあり、検討会委員全員が一致したものだけを第一トラックとして取りまとめるという検討会の基本姿勢はつき崩せなかったものの、確実に改革を進めうる内容で取り纏められたと評価できよう。以下、ポイントを紹介する。

確実に門戸が広がる行政訴訟

取消訴訟の原告適格が拡大される。これまでのように法律の形式や規定ぶり、行政実務の運用等にとらわれずに、法律の趣旨、目的や処分において考慮されるべき利益の内容・性質等を考慮する等、原告適格が実質的に広く認められるために必要な考慮事項を解釈規定として明文化する。

救済方法が広がる行政訴訟

新たに義務付け訴訟も法定される。従前は行政行為を直接義務付けることは出来なかったが、司法による救済の実効性を高めるため、行政庁が処分すべきことが一義的に定まる場合には、一定の要件のもとで行政庁が処分すべきことを義務付ける訴訟類型が採用されることになった。なお申請に対する処分の義務付けを求める訴訟は、申\請拒否処分の取消訴訟等とともに提起することとなる。

新たに差止訴訟も法定される。取消訴訟による事後救済の他に行政に対する事前の救済方法を定めることによって司法による救済の実効性を高めるため、行政庁が特定の処分をしようとする場合で、その処分をしてはならないことが一義的に定まるときには、一定の要件のもとで行政庁が処分することを事前に差し止める訴訟類型が採用されることになった。

審理が充実・促進される行政訴訟

審理の充実・促進の観点から、訴訟の早い段階で、処分の理由・根拠に関する当事者の主張及び争点を明らかにするため、新たに釈明処分の特例を定め、裁判所が行政庁に対し、裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料などの提出を求める制度が新設される。

おこしやすくなる行政訴訟

抗告訴訟の被告を、処分をした行政庁ではなく、行政庁が所属する国または公共団体とする。国や公共団体に所属しない行政庁にあっては処分をした指定法人などが被告となり、いずれでもない場合には、処分にかかる事務の帰属する国または公共団体が被告となる。訴えの提起にあたり、処分をした行政庁の特定は被告の責任とし、その不特定や誤りは原告の不利益にならない。

取消訴訟の出訴期間を『処分があったことを知った日から六ヶ月(現行は三ヶ月)』に延長し、出訴期間を不変期間とせず、期間内に提訴できなかったことにつき正当な理由がある場合には、期間経過後でも提訴できることとする。

救済の迅速性・実効性が高まる行政訴訟

執行停止の要件を緩和する。現在の規定にある「回復困難な損害」を「重大な損害」のような文言に改め、要件該当の有無の判断に際し、損害の程度や処分の内容及び性質も考慮されるようにする。

仮の義務付け、仮の差止めの制度を法定する。義務付け訴訟や差止訴訟において、本案判決を待っていたのでは償うことが出来ない損害を生ずるおそれがある場合に迅速かつ実効的な権利救済を可能にするために、裁判所が行政に対し処分をすべきことを仮に義務付け、または処分をすることを仮に差止める裁判をする『仮の救済の制度』を新設する。

訴えの対象が広がる行政訴訟

行政の活動・作用が複雑多様化したことに伴い、「行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為」を対象とする取消訴訟中心の抗告訴訟のみでは国民の権利利益の実効的な救済が図れないので、取消訴訟の対象となる行政の行為に限らず、広く国民と行政との間の多様な関係について権利義務などの法律関係を確認するために、確認訴訟を積極的に活用できるようにする。

尻込みや敗訴の言い訳が難しくなる行政訴訟

これだけ使い勝手が良くなる行政訴訟改革に、弁護士にとって何か不都合が生じるであろうか?

ひとつだけはっきりしていることは、「行政訴訟はやるだけ無駄ですよ」「法律が悪いから行政訴訟は負ける」「裁判所は行政べったりですから」などと御託を並べたり、「行政事件はちょっと・・・」と尻込みすることはもはや許されないということであろう。ちなみに、新司法試験では、公法・行政法が試験科目として採用されたので、数年後には行政事件に強いのは当然とする後輩たちが続々と登場するだろう。

こうした展開を踏まえて、福岡県弁護士会では、本年四月から、行政訴訟改革に伴う研修会の開催や行政問題委員会のメンバーを中心に「行政事件一一〇番」活動を定期化し、近い将来における「行政事件当番弁護士制度(仮称)」の立ち上げ準備を進める予定です。日本弁護士連合会においても全国規模の行政事件支援センターや行政法実務学会などを設立しマンパワーを強化する作業に着手しています。会員の皆さんの積極的な参加を期待します。

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当番弁護士日誌 〜平成16年3月9日〜

花田 茂治

私は、去年の10月に弁護士登録をした五六期の花田です。今回は、私が当番弁護士研修で去年の12月に出動し、その後、扶助申請をして受任した刑事事件について書かせていただきます。

当番弁護士研修とは、指導担当弁護士の方と共に当番弁護士として出動し、指導担当弁護士の方の接見を隣で傍聴するという研修です。研修の日の昼、私の事務所に出動要請のファックスが入りました。被疑者の罪名は恐喝未遂。

私は、指導担当弁護士の方と連絡をとり接見室で待ち合わせて、その後被疑者と接見しました。事件の内容は、共犯者がいる、共犯者が主導的に行ったものである、被害者に数十万円支払う旨の誓約書を書かせたが結局連絡が取れなくなり誓約書は捨てた、被害者にも共犯者の名を騙り女性に手を出していたという落ち度があるというものでした。私の受けた感じとしては、今回の事件は後輩同士のいざこざに被疑者が巻き込まれたという感じでした。また、被疑者は少年時代に前歴があり、少年院に行った経験もありましたが、その後、真面目に仕事をしており、その最中に事件に巻き込まれたものでした。ただ、被疑者は事件に巻き込まれた自分の甘さを後悔しており、今後は気を付けたいと言っていました。

最大のポイントは、最後の検察官調べの時に、被疑者が検察官から、弁護士を付けて被害者との間に示談を成立させるよう勧められたという点でした。おそらく示談が成立すれば起訴猶予になる可能\性が大でした。しかし、問題が一つありまして、それは検察官が何かしらの処分をする勾留満期まで4日しかないという点でした。4日といっても、当番当日と検察官が処分を決め上司の決裁を受ける最後の1日を除くと実質的には2日しかないという状態でした。

そこで、事件をいっぱい抱え事務所を経営していかなければならない指導担当弁護士の方から、新人で抱えている事件も少ない私にお鉢が回ってきたのです。初めての個人事件となるこの被疑者の弁護活動に私はやる気満々でした。また、更生途中であった被疑者の今後を考えると起訴されるか否かは大きな違いだと思いました。そこで、指導担当弁護士の方の「君、単独でやってみる?」との言葉に、「はい」と二つ返事をしたのでした。

接見を終え事務所に戻り、すぐに被疑者の母親に電話をしました。母親は、子供のためには何でもやる、また、被疑者の雇い主も被疑者のことを気にかけてくれていると話しました。そこで、明日の朝一番に、事務所に来てもらう約束をして電話を切り、それから、指導監督を誓う旨の検察官宛の上申書を母親の分と雇い主との分、起案しました。

そして、翌朝、母親と面会をし、示談の成否で被疑者の処分が決まってしまう可能性があることを伝え、今日か明日、被害者のところに謝罪及び示談交渉に行くかもしれないので示談金を用意するよう伝えました。そして、母親に被疑者の指導監督を責任持ってやる旨約束してもらった上で上申\書に署名押印してもらい、雇い主の上申書を言付けました。

その後、被害者と連絡を取り、その日の晩に、自宅に伺い謝罪したい旨を伝えたところ、被害者の承諾が得られたので、母親と連絡を取り、その日の晩、共に被害者の自宅に行くことにしました。

被害者の自宅に向かう途中に被疑者と接見し、今から示談に行く旨伝え、二度と被害者に近づかないとの誓約書を書かせ、それを持って被害者宅に行きました。

さて、示談の相手方ですが、被害者が未成年でしたので、寛大な処分を求める旨の上申書は被害者の名義で問題はないとしても、示談は被害者の両親も交えて成立させる必要がありました。このため、被害者の自宅では、私と被疑者の母親、そして被害者とその両親の五人で話をしました。時間は夜九時ころでした。まず、被疑者の母親が泣きながら土下座をして謝罪をしました。これに対して、被害者の両親は「いつ立場が変わるかは分かりませんので、どうぞ頭を上げてください」と言ってくれ、示談は順調に進むものかと思われました。しかし、謝罪が一段落し、示談金の数万円を提示したところ、被害者の父親がすごい剣幕で怒り始めたのでした。この数万円という額は、被疑者の母親が集めることのできる精一杯の額でありました。しかし、被害者の父親は、こんな端金では納得できないと額の増額を請求しました。被害者の父親としては当然の反応だったのかもしれません。しかし、その父親の反応を見た被害者が、「俺は金なんて要らん」と自分の父親に対して怒鳴り、怒って家から飛び出してしまいました。結局、金額の点で示談は不成立となり、また、上申\書を書いてもらう予定であった肝心の被害者もいなくなったことから、その日はそのまま帰りました。

残された日は、後2日、検察官の決裁も考えると、実質は明日1日だけという状態でした。そして、家を飛び出した被害者は携帯電話を持っておらず、連絡を取る手段が全くなく、また、一度家を飛び出したらいつ戻るか分からない状態でした。これで、勾留満期までの示談成立は絶望的になりました。

その次の日、私は、示談成立が無理だった場合のために、検察官宛の報告書を作成し、母親の上申書と雇い主の上申\書と共に、それらを持って検察官との面会に行きました。そこで、検察官に被害者とその母親は被疑者に対する宥怒の念を持っているが、今のところ示談は成立していない旨事情を話しました。

このような状態でいたところ、昼過ぎに被害者の母親から私に電話があり、被害者が家に戻ってきたこと、被害者及びその母親としては、今後被疑者が接触することのないよう弁護士に間に入ってもらって示談書を交わす方がよいと思っていること、そして被疑者を許す気持ちであることを伝えられました。

そこで、再び、その日の夜、今度は私一人で被害者の自宅を尋ね、被疑者と被害者及び被害者の母親との間に示談を成立させ、被害者には、寛大な処分を求める旨の上申書を書いてもらいました。なお、父親については、どのように思っているのか、聞くのも怖かったため、この時は父親のことは全く触れずに話を進めました。

このようにして、被害者との示談書、被害者の上申書を何とか揃え、勾留満期の当日朝一番で検察官と面会をして、これらを提出しました。

その後、午後には無事起訴猶予となり、釈放されたとの連絡がありました。

このように今回は、まさに、時間との勝負という一面がある起訴前の弁護活動を経験できました。ただ、新人で時間のある今だけしかこのような事件に十分対応できないのではという感想も正直なところです。

その後、被疑者が母親孝行している等の話を母親から聞き、今回の事件に接することができて良かったと思っています。

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2004年5月号 月報

取調べ可視化全国一斉集会・福岡会場

徳永 響

第一 裁判員制度に関する法案などが国会へ提出されたことによって刑事司法改革の全容が明らかになりつつありますが、弁護士会が求めていた「取調べ可視化」は法案に盛り込まれていません。

しかしながら、取調べ可視化は、弁護士会が冤罪防止の観点から長年求め続けてきたものであり、現時点に至ってもその重要性はいささかも色あせるものではありませんし、むしろ、裁判員制度が導入され裁判員に分かりやすい裁判とするためには、取調べを可視化しておくことが必要不可欠とさえいえます。

近時はマスコミでも取り上げられることが多くなって世間の注目も低くなく、裁判員制度の開始までにはなんとしても実現しておかなければならない緊急の課題です。

かかる事態を受け、様々な人々に取調べ可視化の重要性を認識してもらい、ぜひとも「取調べ可視化」を実現させるべく、全国一斉集会が開催される運びとなりました。

福岡では、可視化の面で日本は諸外国に遅れをとっているとの前田豊会長の挨拶を皮切りに、全国に先駆けて平成一六年三月二五日に福岡県弁護士会館三階ホールにて集会が開催されました。

第二 集会では、まず、取調べ状況を録音したテープが証拠として提出された松山事件・仁保事件を取り上げた「ザ・スクープ」(テレビ朝日)のビデオ上映が行われました。

録音テープの中には、被疑者に対して「南無阿弥陀仏で話せ、○○君」「南無阿弥陀仏で話せ、○○君」「南無阿弥陀仏で話せ、○○君」と何度も繰り返したり、「悪いようにはとりはからん」「君だけの罪ではない、社会の罪だ。」というように強要・甘言・偽計を尽くして自白を迫る取調べの実態が録音されており、自白を獲得せんがために被疑者を篭絡する取調べを知ることができました。

また、被疑者はやっていないことも自白しなければならないため、取調官から様々な誘導をうけることになります。

その結果、被疑者自身が最後に捜査官に対して、自分が間違ったことを供述しているかどうかを聞くかのようなシーンも録音されており、様々な客観的事実が自然に供述(録取)されているからといって、供述調書の任意性を裏付ける事情にならない場面がありうることを目の当たりにすることができました。

第三 ビデオ上映に引き続いて、日弁連取調べ可視化ワーキンググループの小坂井久弁護士(大阪弁護士会)から、取調べ可視化実現に向けての展望についてご講演いただきました。

講演では、現在の刑事司法が抱える大きな病理現象としての調書裁判の問題点は、調書の内容が正しいか否かについて事後的な検証ができないところにあると指摘され、調書内容を事後的に検証するためには、書面による取調べの記録化や「読み聞け」だけの録音・録画では足らず、取調べの全過程をビデオ録画・録音しなければならないことを明らかにされました。

また、取調べを可視化すると、取調官と被疑者の間に信頼関係が保てず、真相解明を妨げるといった根強い反対論に対しては、密室でしか真実が語られないという実証や経験則は存在しないと断じ、可視化によって調書が歪められなくなる結果、捜査官にとっても証拠保全の意味あいを持つことになり、むしろ真相解明に資することや違法取調べが減少する側面を有用性として掲げられました。

イギリス、台湾、韓国といった諸外国での導入事例を見れば、既に取調べ可視化はグローバルスタンダードになっているとのことです。

その他多岐にわたる論点を、パソコンを使った画面をスクリーンに映し出して的確迅速にご講演いただきました。

第四 自白強要や暴行による取調べと聞くと、「昔の取調べ」であるとか、「重大な強行犯だけだ」などと考えがちですが、船木誠一郎弁護士(福岡県弁護士会)から、担当された贈賄や公職選挙法違反事件でも、机をガンガン叩きながらの取調べや、被疑者が灰皿を投げつけられボールペンで胸を突かれたりする取調べ実態が報告され、いつ何時、自分が受任した被疑者がそのような取調べを受けるかもしれないとの現状認識を新たにすることができました。

第五 船木弁護士の報告に引き続いて質疑応答が行なわれ、市民の方から可視化を導入することによって組織犯罪を立件できなくなってしまうのではないかとの質問、会員からは捜査側の取調べの書面による記録化に対抗するための被疑者ノート(その日にどのような取調べがあったかを記録するために弁護士が被疑者に差入れるノート)の導入事例への質問などが相次ぎ、予定の時間を超過しながら盛況のもとに閉会しました。

第六 本集会は急遽日程が決定したこともあり、全国に先駆けて開催される集会であるにもかかわらず、一〇数人しか参加者がいない事態を危惧しておりましたが、興味深いテーマであったためか、五〇名にものぼる参加者を得て開催できましたことについて関係各位に深くお礼申し上げる次第です。また、懇親会の席では、可視化に向けより具体的に活動をすべきだとの頼もしい意見表\明があったこともあわせてご報告させていただきます。

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当番弁護士日誌

中野 俊徳

1 刑事弁護の覚悟

私は、修習生の前期・後期に、月に一、二度、クラスメイトらと、第二東京弁護士会の神山啓史先生の刑事弁護ゼミに通っていました。このゼミは、公設事務所赴任希望の新人弁護士が現に受任している刑事事件を題材に、どのような弁護活動をすべきかを一緒に検討しあう内容のものでした。このゼミで印象深いことは、私が「勾留取消請求します」等と答えた際、神山先生から「本当にやるのか」と再度問われたことです。

この再度の問いは、勾留取消請求等は弁護人が期待しているような結果を得られる可能性は少なく、周囲の目も「どうして、そのような無駄な活動をするのか」と冷たくなりがちであり、そういう状況下でも自分が本当に必要だと判断した弁護活動を貫く覚悟があるのかという問いだと、私は理解しています。

2 当番弁護出動と前半戦

そして、弁護士になった私は、昨年12月、当番弁護研修のため、指導担当弁護士の田中裕司先生と博多署の前で待ち合わせして、被疑者と接見しました。罪名は、公務執行妨害です。

深夜の中洲で、酔っていた被疑者のグループと別の酔っ払いグループが揉め事になり、中洲交番の警察官らが止めに入ったのですが、被疑者の相手方と警察官が一緒に転倒し、相手方に襟首を掴まれていた被疑者も警察官の上に転倒しかけて、被疑者の足が倒れた警察官の後頭部あたりに当たりました。

被疑者は、それを見ていた別の警察官らから、故意に警察官を蹴ったと判断され、公務執行妨害で現行犯逮捕されたのです。接見した日は勾留初日でした。

被疑者の話を聞いて、これは弁護人を受任して争う必要があると判断した田中先生と私は、被疑者にも被疑者の親にも資力がないことから、法律扶助で被疑者弁護を共同受任することにしました。

そして、とりあえず、交代で毎日接見することと、被疑者の家族には田中先生から連絡を取ることが決まりました。

こうして、被疑者弁護が始まりましたが、私は具体的に何をすればいいのかわからず、勾留3日目にたまたま時間ができたので、検察庁に行き、担当検事に面会して、在宅捜査への切替えを求めて、すげなく断られた以外は、最初の数日間は、接見と勾留状謄本の取寄せくらいしか弁護活動をしませんでした。

今振り返れば、共同受任ということで、自分から積極的に動く気持ちを持たず、指示待ちの状態になってしまっていたと思います。修習生の頃に思っていた覚悟を忘れた状態でした。

3 後半戦での巻き返し?

勾留5日目、私は、刑事弁護の勉強会に参加するため、静岡に行っていました。

前述の神山ゼミに一緒に通った、刑事弁護オタクとも言うべき、元クラスメイトが静岡県沼津支部で弁護士となり、東京の高山俊吉先生や静岡の小川英世先生を巻き込んで、刑事弁護の勉強会を事実上主催しており、なぜか私も強制参加させられていたのです。

この日は、オウムの麻原の弁護団長を務められた渡辺脩先生をお招きし、講演会が開かれました。

渡辺先生のお話を聞き、また、その後の懇親会で元クラスメイトから叱咤され、私はようやく自分から行動する気持ちを持てるようになりました。

勾留6日目、福岡に戻った私は、早速、被疑者と接見しましたが、被疑者は長引く身柄拘束に疲れと焦りを持ち始めていました。被疑者に対する取調べは、2、3日に一回度、一回あたり1時間程度しか行われておらず、被疑者は逮捕直後から一貫した供述を維持し続けていましたが、身柄拘束されている時間の中で、つい悲観的な考えをしてしまっているようでした。

私も、落ち込み気味の被疑者を前にして、安易に慰めることもできず、できる限りの弁護活動を約束することしかできませんでした。

勾留7日目、私は、被疑者の妻に事務所に来てもらい、「被疑者の身柄拘束がこのまま続くと被疑者の妻と幼い子の生活が脅かされる」という内容の陳述書と身元引受書を作成したうえで、田中先生の承諾を得て、勾留取消請求しました。そして、請求書を提出する際、裁判官面接を申し入れておいて、勾留8日目、田中先生と共に担当裁判官に面会し、被疑者の家庭の窮乏と事案の内容から見て、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがなく、勾留の必要性もなくなっていることを訴えましたが、取消請求はあえなく却下されました。

事務所で却下の知らせを聞いた私はかっとなって、その場で準抗告の申立書を起案して、慌てて裁判所に行きましたが、慌てすぎて、何とも恥ずかしいことに抗告の申\立書を書いてしまっていたのです。それを受付で指摘された私は恥ずかしさに顔を真っ赤にして受付にお詫びしつつも、翌日の受付開始時間に準抗告の申立てをすることを予\告しました。

そして、勾留9日目、予告どおり裁判所で勾留取消却下に対する準抗告の申\立をした私は、その足で検察庁に行き、担当検事に「仮に準抗告が棄却されても勾留延長請求しないように」と求めました。

しかし、私の願いもむなしく、この日の午後六時頃、裁判所から準抗告棄却の知らせが届き、勾留10日目、10日間の勾留延長請求がなされました。そして、担当裁判官と面会して、延長しないことをお願いしましたが、これまた願いは届かず、10日間の勾留延長決定の知らせが届いたのでした。

4 釈 放

勾留11日目、私は、勾留延長決定に対する準抗告書を準備し、田中先生に資料をお借りして、勾留理由開示の申立書の起案にも着手していましたが、次に何をすべきか、悩んでいました。2日前に出た準抗告棄却決定によれば、関係者複数(被疑者の仲間と喧嘩相手のグループ)の検察官調べが終わっていないことが主な理由になっていて、今、準抗告しても、同じ理由で棄却されるのではないかと少し弱気になっていたのです。

別件の打ち合わせ中の私のところに、突然、被疑者から電話がかかってきました。釈放されたというのです。私は、わけもわからず、ただ、嬉しそうな被疑者の声を聞いて、涙ぐみそうになってしまいました。後日、検察庁に確認したところでは、起訴猶予処分ということでした。

5 最後に

こうして、私の弁護士になって最初の被疑者弁護は終わりました。今回の被疑者弁護は、私にとって多くの反省材料を与えてくれたものになりました。

この事件で弁護活動が果たして起訴猶予処分という結果に結びついたのかどうかすら、私にはわかりませんが、私にとっては良い経験になったと思います。最後に、ご指導いただいた田中裕司先生に感謝します。

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ITコラム 〜私がマックを愛する理由〜

辻本 育子

月報の担当者からこの原稿を書くようにいわれて、つい「何も書くことないけど」と言ってしまいました。「私がマックを愛する理由」でもいいからと言われて、書き始めましたが、これを見られる会員のなかに一体何人のマックユーザーがいるんでしょうか。

私がパソコンを初めて買ったのは、一九八九年販売されたDynaBook386SXだったと思います。あのころの東芝は偉かった。MS DOSの時代ですが、全くの素人が買って来て、誰の助けもなしに説明書だけでパソコンが使え、MS DOSのお勉強ができたのですから。

その後3.1、95、98、XPとウィンドウズ機もずっと使って来ましたが、一九九二年にアップルからPowerbook170が出て以降は、主マシンはマックです。洗練されたインターフェイスと、どんどん安くなったことでデスクトップもマックになりました。

うちの事務所のパソコンも、「マックでなければメンテナンスできない」(実はしたくない) という私の我が儘から、ほぼ全部マックです。しかし、弁護士個人の携帯用にはやむなくウィンノートを使っています。なにしろ、一番軽いノートでもマックは二キロですから、携帯を考えると、ウィンノートで我慢せざるをえません。

パソコンを使う人は二種類いるんじゃないでしょうか。ソ\フトを使って目的が達せられればいい人と、パソコンという道具自体が好きで、それを自分好みに変えて使いたい人です。私にとってパソ\コンは電子レンジと同じく無くてはならないものですが、レンジをいじってみようとは思わないのに、パソコンは、いじってみたくなります。といっても、物理的にパソ\コンを組み立てること (自作) は、いまやそれこそサルでもできるレベルになっているので、一回で飽きました。実は私はいわば「環境設定オタク」です。だから、config.sysなどでいじれなくなったウィン98の途中からおもしろくなくなりました。

その点マックは、OS9までは、インターフェイスが洗練されているだけでなく、ユーザーがシステムをいじれる自由度も高くて、楽しいマシンでした。そのマックも、最新のOS X (テン) になってからは、システムが変わってしまい、適応できません。適応したくないというのが本音かもしれませんが。昨年は、あと数年OS9をつかっていくために、OS9も使えるパソコンを数台購入して将来に備えたところです。

私にはなじめないMacOS Xですが、新しく始める人には、今のマックは、安くてパワフルで安定していて、すぐれたアップル製ソフトもついていて、とてもお勧めです。アップル製品は、デザイン的にも優れていて、使わなくなったマックはインテリアにもなります。OS Xしか入っていないから私は買っていないけど、PowerMac G5はケースの中も外も美しい。

データーのやりとりが心配ですか。マイクロソフトオフィスを使うかぎり心配無用です。それに昨今のようにウイルスがはびこってくると、ウィルスの少ないマックの世界は別世界のように安全で平和ですよ。どうも弁護上のメーリングリストでウイルスメールが飛び交っているようなので、最近ウィンドウズ機でのメールチェックは止めました。

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土地家屋調査士会ADRセンターに参加して

塩川 泰徳

1 本年(平成16年)3月8日、福岡県土地家屋調査士会ADRセンターが発足した。正式名称は、「境界問題解決センターふくおか」という。愛知、大阪、東京に次ぎ全国で四番目という事である。私は相談委員を担当している。

まず、センターの概要を説明しよう。目的は、(1)境界に関する相談または問題について、当事者と専門家が協力して裁判に代わる簡易な手続で迅速、公正かつ柔軟に解決を図る。(2)問題解決の結果を登記簿及び地図に反映させ、国民の権利の明確化に寄与する。(3)問題解決にあたり、当事者の主体性を尊重し、当事者自身の問題解決意識を高める、の三点である。

人的構成は、運営委員会(調査士3名、弁護士2名)、相談委員会(調査士1名、弁護士1名)、調停委員会(調査士2名、弁護士1名)である。発足当時の委員の総数は、相談委員が調査士七名、弁護士五名、調停委員が調査士10名・弁護士5名であったが、申\込件数が多いため、先日、弁護士相談委員が五名から10名に増員された(弁護士調停委員の定数は変わらず)。

開設から本原稿執筆時までの活動状況であるが、約一月間の相談申込件数は21件。うち調停申\立は八件である(いずれもまだ未成立)。

手続は、まず、電話による受付から始まるが、電話では、紛争の存在や必要書類を確認し来訪をお願いするまでに止まり、実際の申込は、関係書類持参の上で一度センターを訪問してもらう必要がある。そして、センター訪問の際、センターの趣旨や相談・調停手続の流れの説明が行われ、申\込者持参の関係書類を受領する。相談日は、調査士及び弁護士の両相談委員の予定を確認した上で後日決定される。つまり、実際の相談は、2回目の来訪時である。調停については、弁護士会のADRと同様、相談前置主義がとられ、まず、相談委員会が当事者の話を伺い(2時間ほど)、相談で解決すれば調停には移行しない。なお、境界問題解決センターは、当然の事ながら対立当事者間の紛争の存在を前提としているので、申\込者の意識では境界に関する問題に属するとしても、当事者間の紛争が存在しない場合、例えば、「隣地との境界をはっきりさせていない(測量していない)ので不安です。今のところ、隣地所有者との意見の食い違いはなし、土地を処分する予定もないのですが、どうしたらよいでしょうか?」などという相談についてはセンター取扱い事案の対象外となる。かかる事件性のスクリーニングは、本来、受付段階で行われるが、実際資料を見ながら話した上でないと分からないことも少なくないので、相談段階になって、初めて紛争が存在しないことが分かることも少なくないようである。

費用は、相談手数料が五、250円(一回2時間)、調停申立手数料は10500円、成立手数料は解決額の8%を原則とし31500円を最低額とする(負担割合は当事者の合意)。測量等が必要となる場合は、別途見積による。

2 まだ、センター開設後一月余りであり、多くの案件を担当した訳ではない。しかし、本年1月から開設準備作業に携わり、模擬問題の作成や模擬相談・模擬調停に関与した中から学んだことがあるので、一つ重要なことを紹介しよう。

我々弁護士の感覚からすると、ともすれば誤解しそうになる事柄であり、土地家屋調査士の役割は何かという極めて重要な問題でもある。例えば、境界紛争について関係二当事者間で一定の合意(解決案)が見出せそうな雰囲気が出てきたとしよう。我々弁護士だと、「当事者がそれでいいと言っているのだから、それでいいじゃない」と、つい思ってしまわないだろうか?(私を含め、開設準備作業に携わった数人の弁護士はそういう感覚を持っていた)。しかし、これには問題がある。前述のセンターの目的にもあったように、「問題解決の結果を登記簿及び地図に反映」させねばならない。土地の境界は公的意味を持つし、境界問題の他の土地所有者にも必然的に影響を及ぼす問題である。当該土地につき、将来、取引関係に入ってくる第三者の利益のこともある。よって、現在の当事者間だけの利害調整として処理すればよいというものではない。その結果、調査、測量等の客観的結果を横に置いておき、現在の紛争当事者がそれでよいといっているからよいではないか、という処理をしてよいとは直ちには言えないのである。注意しなければならない。ただ、そうなってくると、場合によっては、センターに相談(調停)を申し込んだばっかりに、当事者双方ともに予\想しなかった負担を強いられる結果になる可能性がないとは言えず、それで当事者の納得が得られるのかという問題が残される。現代社会で不動産を所有するということはどういう意味を持つのかという問題でもあり、今後も検討していかねばならないだろう。

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想えば遠くへ来たもんだ 〜弁護士会ホームページに関与して〜

堀 孝之

1 ホームページ委員会(HP委員会)が立ち上がり、

当会のホームページ(HP)がリニューアルされて早くも二年弱が経ちました。私はHP委員会創設時からのメンバーとして関与して参りましたが、振り返ってみると、山あり谷あり、本当にいろいろなことがあったように思います。

今回、HP委員会だよりの原稿執筆依頼を受け、せっかくの機会だから、これまでの当会HPの歩みを、私が知る限りで振り返ってみたいなと思いました。しばしお付き合いいただければ幸いです。

2 草創期(旧HP時代)

当会HPは、平成10年ころに産声を上げたと聞きます。平成10年といえば、私が司法試験に合格したその年です。貧乏受験生だった私はパソコンなんて持ってませんでしたし(でもそう言えば昔事務職員として勤務していた事務所からもらい受けたDOSのパソ\コンがあったなあ・・・この子は今は自宅で永い眠りに就いています。本当におつかれさま)、HPなんて言われても「何それ?」というていたらくでした。司法修習生になって、夏のボーナスで初めてウィンドウズシステムのパソコンを手に入れました。こわごわインターネットに接続したのを覚えています。当時は常時接続といえばNTTのテレホーダイというサービスを使わなければならない状態で(私は利用しませんでしたが)、プロバイダの料金も接続時間に応じて課金されるシステムでしたから、ネットサーフィンをダラダラやってるととんでもない料金請求が来たりして・・・いかんいかん、テーマは私の歴史じゃなくて、当会HPの歴史だった。本題に戻りましょう。

修習生時代に弁護士会関連のHPで最初にアクセスしたのは確か日弁連のHPだったと思います。そこからリンクをたどって、当会のHPにたどり着きました。初めてみた印象は・・・実はそんなに悪いものではなかったです。デザイン的には、いわゆる「フレームページ」というやつで、開いたら表紙部分がジワジワと下からロールして上がってくるという、なかなか凝ったものでした。当時のコンテンツ(内容)を覚えていらっしゃるでしょうか?私もずいぶん記憶が薄れましたが、会長挨拶、「こんなときどうする?(これは今でもありますね)」、法律相談センター紹介、弁護士費用説明、市民向けイベント情報、委員会紹介、九弁連コンテンツ(所属単位会の紹介のみ)、会員情報、リンク(工事中)、「月報記事から」、だいたいこんなところだったかなと思います。ただ、修習生なりに仕入れていた情報として、すでに「元気な福岡県弁護士会」というイメージがあったのですが、当時のHPからはあまりそのようなイメージが伝わってこず、意外に思った記憶があります。

3 改革停滞期(HPPTの立ち上げ)

私が平成12年10月に当会に入会してからすぐに、ある一枚のペーパーがレターケースに投げ込まれました。内容は「当会HPについて意見交換するから言いたいことあるヤツは誰でも集まれ」という趣旨でした。思えばこのペーパー(発信元は執行部か業務委員会だったと思うけど忘れちゃいました)が、私が当会HPに関与する最初の機会でした。この会合には、今思い出せば、古賀克重会員、菅藤浩三会員、関口信也会員など、現在のHP委員である会員も多く集まっていました。

この意見交換会の直後、当時の植松功業務事務局長を座長とする、HPプロジェクトチーム(PT)が立ち上がり、私もこのメンバーに加わることになります。またこれと並行して、平成13年度からは主任・幹事会でもHP刷新についての話がなされるようになり、アクセス数の少なさに業を煮やした野田部哲也業務事務局長(当時)が「古賀克重のHPを超えよう」と唱え、これが合言葉になりました。ただここでの刷新作業は、いくつかのコンテンツを立ち上げはしましたが、全体としては遅々として進みませんでした。やはり最大の原因は技術情報の不足でしょう。克重会員は当会HPに対する独自の考えからPTには不参加でしたし、今のような業者との連携も全くありませんでした。更新作業は松本寛朗職員がコツコツやっていましたが、松本職員も技術情報に必ずしも詳しいわけではないし、何より業務の合間を見てやらざるを得ない。というわけでアイディアだけはたくさん出るのだけど実現の目処が立たないという何とももどかしい日々が続きました。

4 改革転換期(西日本新聞社訪問〜HP委員会発足)

平成13年八¥8月、HPPTと主任幹事会とで大挙して西日本新聞社にお話を伺いに参りました。このときの原田真紀メディア部長(当時。ちなみに男性です)の話は非常に示唆に富むものでした。いわく「もっと市民・住民に開かれたページを作らなければ」「現状は役員による役員のためのHP」「読んでもらえる、使ってもらえる、使って便利、という側面がないとだめ」「『一緒に考える、一緒に楽しむ』 という視点が不足」と次々に厳しい言葉をいただきました。この話を聞きながら、私の頭の中で次第にどのようなHPを目指すべきかの構想が固まって行きました。当時のメモに、私自身は「徹底した見出しの見直し」「リンク集を充実させる。これがメインでもよいのではないか。便利さの追及 『そこに行けば何かがわかる』」という言葉を残しています。

しかしそのような会合を経てもなお、当会HPの刷新について現実性のあるアイディアがまとまった形で提示されることはないままに時が過ぎました。そこで私は平成14年2月15日の主任幹事会の席で「弁護士会HP新装への提言」と題するA4版一一ページの論稿を提出し、この論稿の中で、初めて「法律情報ポータルサイト化」という方向性を打ち出しました。また時を同じくして、永尾廣久会長(当時)からの「新しくHP委員会を作ろう」とのお話を受け、古賀克重会員を委員長に据え、私を事務局長とするHP委員会の骨格ができあがり、同年3月20日の常議員会での承認を経て、HP委員会が発足しました。

5 改革実現期(HP大刷新〜現在)

HP委員会の初期メンバーは、専ら古賀委員長と私とが一本釣りで集めました。できあがってみると、まるで「多重会務者ねらい打ち」のような委員委嘱で、大変申し訳なく思ったのを覚えています。業者にもうまく連携が取れ、非常に安価な顧問料で契約していただくことができ、技術情報の不足からアイディアが実現できないという苦痛からはとりあえず解放されました。もともと忙しい人たちの集まりだったので、議論はメールのやりとり中心で行い、やがてこれがメーリングリスト(ML)へ進化して、今では当然のように行われている委員会MLでの議論が、この時当会で初めて実現したことになります。

そしてHP大刷新の期限を設定すべきということで、平成14年度定期総会の日(5月28日)を目標と定めたところ、古賀委員長の尽力により、早くも4月11日には試作ページができあがってしまいました。そして無事に5月28日のリニューアルオープンにこぎ着け、役員就任披露パーティーの席で大々的に公開したのはご記憶に新しいところかと思います。その後本格的に、会員専用HPの製作にも取りかかり、同年10月には運用を開始、松尾重信委員が毎月この月報で報告しているとおり、徐々に改良を重ねて現在に至っております。

6 旧HP時代のことを考えると、当会自体のIT化も含め、現況はまさに隔世の感があります。しかし委員会MLや定例委員会での議論などは、本当に「こんなこといいな、できたらいいな」というドラえもんのような夢の応酬で、またこれが次々に何とか実現にこぎ着けるものですから、すごく楽しいのも間違いありません。これからも更新作業は続いていきます。皆さんのアイディアをぜひたくさんお寄せいただければと思います。

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2004年6月号 月報

「こどもの日記念無料相談」開催される

池田 耕一郎

平成16年5月8日(土)午前10時から午後3時半にかけて、電話による「こどもの日記念無料相談」が開催されました。当日は、福岡県弁護士会館二階会議室に受付電話回線を設置し、子どもの権利委員会の委員が午前と午後に分かれて張り付き待機しました。

この無料電話相談は、日弁連主催で、毎年5月のこどもの日前後に全国の各単位会で一斉に行われる恒例行事ですが、当会は、地元新聞、テレビ等の報道関係各位のご理解とご協力のもと、例年、全国の単位会の中でも上位の相談件数があり、本年度も昨年度の件数には及ばなかったものの、一二件の相談がありました。

今年の相談内容は、例年になくバラエティに富んでいたように感じます。

具体的には、近所の中学生男子から幼児(女子)への性的ないたずら行為に関する幼児の母親からの相談、息子と同じクラスに暴力的な同級生がおり危険であるから何らかの対策を講じたいという母親からの相談などがありました。他にも、保護者からの相談としては、中学生女子の不登校問題、担任教師からのいじめ問題、少年事件(傷害)の被害者となった中学生男子の示談交渉の相談などがありました。特筆すべき相談として、高校生本人から、学校の部活動の顧問教諭が部員間で差別的対応をするので、教育委員会に直訴したいというものがあり、子どもの権利委員会委員一同、思わず考え込まされました。

以上の相談どれをとっても、保護者あるいは子ども自身が、どこに相談してよいのかとまどう内容ばかりであり、本企画の存在意義をあらためて強く感じた次第です。

この「こどもの日記念無料相談」は、本年度で一四回目を迎え、市民の間に少しずつ定着してきた感がありますが、今後とも、当会会員、報道関係各位のご理解とご協力を得て、市民のみなさんがより一層利用しやすい企画にしていく所存です。

なお、当会では、今回の「こどもの日記念無料相談」とは別に、毎週土曜日午後0時半〜3時半の時間帯で、「子どもの人権110番」として、子どもの権利委員会の委員を中心とした担当弁護士が当番制で電話相談を受け付けています(電話番号092-752-1331)。これについても、積極的に市民への周知を図っていきたいと考えています。

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第五回刑弁研究会報告 〜刑事事件におけるマスコミヘの対応〜

曽場尾 雅宏

 1 昨年十月、私が弁護士登録してはじめて経験した刑事事件は、新聞等で大きく報道された事件だった。この事件を通じて、私は、被疑者を誤った報道から守ることも、重要な弁護活動の一つではないかという問題意識を持った。そこで、このテーマを取り上げた。

今回は、佐賀新聞社の森本貴彦記者、大鋸宏信記者を講師としてお招きして、お話をうかがうとともに、活発な質問にもお答えいただいた。また、今回の研究会では、多くの大先輩の先生方にご参加いただき、研究会の議論がより深いものになった。  遠路おいでいただいた佐賀新聞社のお二人と、ご多忙の中ご参加いただいた先輩の先生方には、深く感謝したい。

2 前述の、私が経験した事件の概要は次のとおりである。  被疑者の逮捕後、余罪に関するスクープ記事が、一紙のみに大きく掲載された。被疑者は、真実を報道されるなら仕方ないが、報道されたスクープの内容はほとんどが間違いであるとし、強い不満をもっていた。新聞に大きく報道されたことで、家族は深く傷つき、住居も転居せざるをえなくなった。

私は、報道した新聞社に対し、被疑者の言い分も聞いて欲しい旨を連絡した。すぐに記者の方が事務所に来られ、話を聞いてくれた。記者も、相手方の言い分はじっくり聞こうという姿勢を持っているものだと感じた。同時に、もっと早い時期に記者と接触できていれば、誤った報道を防ぐことはできたのではないかと感じた。

3 私の経験の発表の後、お招きした記者の方々の講演が行われた。ここでは我々にとって大いに有益な、刑事事件の取材や紙面構\成等の実務の話をしていただいた。

また、記者から弁護人に対して求めたい情報としては、第一に、被疑者の認否と、否認ならば詳しい供述内容とのことだった。

記者の方々が強調していたのは、記者と弁護士との間により強い信頼関係を構築する必要があるということだった。

4 講演後の討論の際の発言の一部を、以下にランダムに並べる。

  • 認否といっても、逮捕の段階では、否認に近い自白もあれば、その逆もある。また、公判で不利にならないようにするため、逮捕時には認否を明らかにできないこともある。
  • 一時期、被疑者の言い分も記事にするという流れができつつあったが、今はそれが停滞している感がある。
  • 弁護士会で広報担当者を定めて一元的に情報提供する方法は、メリットとデメリットがある。広報が形だけの情報提供をすると、無意味になる。
  • 少年犯罪について、実名で報道する会社もあるが、実名報道は弊害が大きい。
  • マスコミも弁護士も、もっと双方がお互いを利用しあってもよいのではないか。
  • 否認事件の場合は、見出しに否認している旨を書いて欲しい。。

5 記者の方々や先輩の先生方からは、他にも多くの有益なお話をお聞きできた。

結論としては、月並みではあるが、弁護人がマスコミに対しどのような情報提供をすべきかは、非常に難しい問題であるということになろう。

以下は、私個人の私見である。

被疑者・被告人のために、その言い分を積極的にマスコミに伝える必要性のあるケースもある。また、国民の司法参加が進められている今日、刑事事件に関する情報は広く国民に伝える必要がある。その意味で、弁護人は、個々のケースの特殊性に配慮しながら、提供すべき情報は積極的にマスコミに提供する必要があると考える。そして、適時の有効な情報提供のためには、普段から記者と弁護士との間の信頼関係を構築しておく必要があると考える。

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「消費者契約法」研修会報告

平岩 みゆき

1 平成16年4月16日吉岡隆典会員による「消費者契約法」研修会が行われました。

当職は吉岡会員と同じ事務所に所属しているため、同会員に対しては、困ったことがあれば何でも簡単に相談することができますし、相当嫌な顔をされることさえ覚悟すれば、確実に知恵を拝借することができるので、研修会費を取り立てられてまで同会員による研修を受けることには強い疑問を感じましたが、その価値については間違いないという確信がありましたので、出席することにしました。

2 講演は、事例をもとに、どのように消費者契約法を利用するか、その際どのような点に注意すべきかについて、説明がなされました。

事例は大雑把に言うと、次のようなものです。

(事例一)

Xは、日当たりの良いマンションを購入しようと考え、「陽差したっぷり」を謳い文句にするマンションを、その旨の記載があるパンフレットをもとに分譲担当者から説明を受け、購入したが、夏至においてはベランダの物干し部分に日光が全く当たらず、冬至においても室内にわずかに日光が届く程度というかなり日当たりの悪いマンションであった。

(事例二)

Xは、Y社が日当たりと眺望の良好をアピールするマンションを購入する際、Y社担当者に「近隣にマンションが建つことはないか」と聞いたところ、Y社担当者は「私共が知る限りそのような情報はありません」と言ったため、購入した。ところが、その一か月後、Y社は南側約五〇メートル離れた土地を購入し、高層マンションを建てる計画を発表した。

3 こんな相談がきたとき、みなさんはどうしますか。

当職の場合は簡単です。吉岡会員に共同受任してもらえばいいのです。そんな失礼な冗談はさておき、事例では消費者契約法四条の取消権が問題になります。

事例一では、契約締結勧誘における重要事項に関する不実告知(法四条一項一号)の適用、「勧誘」「重要事項」の意義が問題になり、事例二では、利益事実の告知かつ不利益事実の不告知(法四条二項)の適用、事業者の「故意」の意義が問題になります。

また、両事例に共通する問題として、六か月という時効期間の定めがあります。

馴染みのない法律であるが故に、文言の解釈が問題になった場合、一冊の文献を調べて、この文言はこう解釈するのかと単純に納得してしまいそうですが、それではまだまだ甘いようです。

特に、当職は、監修、編者として「最高裁判所事務総局民事局」や「経済企画庁国民生活局消費者行政第一課」などという言葉が出てくると非常に弱いのですが、「日本弁護士連合会消費者問題対策委員会」も忘れてはなりません。

講演では、異なった立場から三冊の参考文献が紹介されましたが、その違いを理解し、事案に応じてより説得的な論理展開ができるようになると、敵はあっと驚くでしょう。

4 講演は、消費者契約法にとどまらず、詐欺、錯誤、減額・相殺の主張についても及び、事件の経緯に沿って、詳細な説明がありました。

当日は、多数の会員の出席があり、非常に熱心に講演を聴かれていました。

当職は、会場後方にて講演を拝聴しましたが、当初、研修会費の支払に強い不満を抱いていたことを深く恥じ入った次第です。

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2004年7月号 月報

当番弁護士日誌

田村雅樹

1 当番出動と受任の経緯

当番弁護士の出動要請があったのは三月のある日。窃盗の疑いで警察署に在監中の男性(以下Aさん)

当日接見に赴き事情をきくと、前日、スーパーでリュックサック一個(9800円相当)を万引きした、外に出たところで警備員に声をかけられ逃げたが、状況を察知した付近にいた男性に追跡され捕まった、とのこと。被害品は特に傷もついていないらしい。

現在、一人暮らしで、仕事は嘱託作業員をしている。特に連絡をとってほしい親族友人等はいない。

動機については、「もともとリュックサックを買うつもりだったのだが、意外と高かったのでつい盗んでしまった。手持ちの現金は4000円しかなかったが、銀行口座には6万円程度はあったのだが・・・」と話す。

理解できないではないが、安易に物を盗んでしまう心理傾向の持主のように思われ、常習性があるのではないかと案じ、余罪関係についてきいてみるが、「他にはやっていない。」と言う。警察からも一通り余罪の追及は受けているが、厳しいものではないらしい。

逮捕時の状況については、現場から自転車で逃げたものだから、スクーターで追跡衝突される形で逮捕された、と話していた(あとでやや問題となるが、このときはたいして気にしなかった。)。

示談する気はあるのか、と尋ねると、お金はあるので示談をしたい、と言う。

初回接見時の印象として、動機等、やや疑問にも思ったが、内気でまじめそうな青年という感じをもった。しきりと自分の今後の処分について気にしており、勾留されるだろうか、起訴されるだろうか、といったことを何度も心配そうに聞いてきたことをよく覚えている。

状況をきき、事実関係は取調べでも素直に認めて話しているとのことなので、スーパーとの示談を早期にすすめ身柄を解放する必要が高く、また、勾留にまで持ち込ませないようにしなければならないと考え、扶助にて受任。

2 勾留は阻止できず

接見した翌日(逮捕から三日目)の午後、検察庁の本件担当事務官(検事が担当ではなかった)に電話。

ちょうどAさんの弁録中であったようだが、事案軽微であり、かつ早期に示談に動く予定であるから、勾留はしないでいただきたい、と申\し入れた。

「検討をする。」とのことだったが、翌日(逮捕から四日目)朝、再度電話をすると、勾留請求することにした、とのこと。ただし、示談が成立すれば、早期釈放を考える、とのこと。

同日午前中には勾留され、やむを得ず、示談を早期にすすめることとした。

3 示談活動

同日午後、スーパーに電話をすると、当時の警備担当者につなげられた。私は、被害品を買い取る形で早期に示談をしたい旨を申し入れたところ、支配人が現在いないのでなんともいえない、との前提だが「Aさんを捕まえた人が留学生なのだが、捕まえるときにスクーターが衝突して大破している。店側としては、留学生に協力していただいた手前もあり買い替え代をもたなければならないことになりそうで、そうすると、Aさんにその分(買い替え代分)も請求せざるをえなくなるかもしれない。」とのこと。

被害品の買取の形で簡単に示談し、すぐに釈放になると思っていただけに、直ちには示談ができず、やっかいなことになったな、と思った。

いずれにしても、週明け月曜日(逮捕から七日目)以後に連絡してもらうこととなった。

月曜日には結局スーパーからの連絡がなく、火曜日(逮捕から八日目)朝、Aさんに接見に行き、そのように店側からいわれていることを伝えた。

私は、「確かにその留学生はあなたのせいでスクーターが大破してしまっているが、だからといってそれを弁償しなければならないということには必ずしもならないだろう。ただし、店側がそのように言っているので、応じた方が早く示談は成立するだろう。」と伝えた。

Aさんは、少し考えていたが、やはり、早く示談をしたいとのことで、25万円程度までならキャッシングをすれば払えるので、それ以内の額で示談してもらえば、釈放後直ちに支払うとのこと。

事務所に戻ってすぐに店側に連絡するが、支配人が今日はいないので明日以後連絡してくれ、と言われ、翌日(逮捕から九日目)になって、ようやく支配人と連絡がとれた。

私は、リュックサックの買取に加えてスクーターの買い替え代も出す意向であることを伝えた。

支配人は当方の申出を了承し、スクーターは中古だから9万円から10万円程度で済むと思う、とのことで、今後、留学生と早急に話をする、とのこと。

4 意見書提出と釈放

支配人との電話により、示談の方向性がみえてきたので、電話後直ちに、検察庁に対して、現在の状況からして釈放後すぐに示談が成立する見込であること、被疑者が反省していること等を記載した意見書を提出した。

検察庁からは翌々日(逮捕から11日目)の朝、電話が入り、「今日午前中に釈放する。」との連絡を受けた。

Aさんからは、同日昼前に事務所に連絡が入り釈放された旨確認できた。

5 示談成立と起訴猶予

Aさんには、釈放翌日、さっそくスーパーに謝罪に訪れてもらい、その後、若干の交渉を経て、結局、店側とはリュックサックを買い取る形で、留学生にはスクーター買い替え代7万円を支払うことで話がまとまり、いずれについても、釈放されてから四日後に支払った。

検察庁にはその旨報告書を提出し、最終的に起訴猶予処分となった。

6 顧みて

改めて事件を振り返ると、9800円のリュックサックの万引きで、事実を認めていながら、結局、逮捕日を入れて11日間身柄拘束をされる羽目になってしまった。

そもそもAさんには、示談をする意向は当初からあったので、積極的に勾留裁判官に面会し勾留の必要性のないことを説得する必要等があったのではないかと、反省している。

また、示談活動も、もう少し早くできなかたったかとも思う。

ただ、Aさん本人は、その後無事もとの職場に戻れ、また、多少高額のスクーター弁償費用を支払ったことも自分のしたことが原因と割り切って納得されているようだったので、その点は救いではある。

軽微な自白事件ではあったが、それだけに、身柄拘束下の被疑者弁護活動では、その一日一日の活動が重要であることを、改めておもいしらされた。

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ITコラム 「IT化は一日にしてならず」

田中雅敏

鴻和法律事務所は、平成九年ころからホームページを立ち上げていました。

また、同時期から、事務所内のパソコンはLANで接続し、文書管理なども、一つのサーバに集約して、相互に利用できるようにしてあるため、事務所に所属している弁護士の文書財産の共有化を図ることができるのは、大きなメリットです。

コンピュータを事務所に導入することやインターネットの利点については、すでにこれまで何度かコラムで取り上げられてきていますので、このような点はさておくとして、今回は「IT化」のデメリット、というか苦労話をいくつかしたいと思います。

コンピュータやネットワークを導入し、ホームページを設置することのもっとも大きな「苦労」は、何と言っても、「管理」の一言に尽きると思います。

事務所のLANシステムは、第一次的には事務局員が管理をし、何か問題が起きた場合は、専門の業者に来てもらうことにしています。業者の方は、何か起きればその日のうちに出動してくれるため、大変重宝しているのですが、それでも、「突然サーバが落ちた(止まった)」という事態で、二〜三時間既存の文書が開けない、などということになると、非常にいらいらします。

このようなときのために、毎日のバックアップや、サブシステム(サーバが落ちても、なお影響を受けない別システムのネットワーク)の構築などが欠かせません。

ところで、このような管理以上に難しいのは、何と言っても「ホームページの更新」でしよう。

事務所のホームページは、実は、平成九年の開設以来、弁護士の人数の変更程度の更新しかしておらず、事実上、七年間更新無しという状態が続いていました。

私自身もずっと気になっていたのですが、なかなか更新する時間がとれず、更新するとしてもそのコンテンツはどうするのか、といった点が決まらないこともあって、結局、放置されていたという現状でした。

今年に入り、久しぶりに事務所のホームページをみて、いつのまにかあまりに時代遅れになっていることに愕然とし、発作的に、その週末にホームページビルダーとマニュアル本を購入し、土日の二日間の突貫工事で作り直したのが、現在のホームページです。

同時に、プロジェクトチーム(?)を編成し、コンテンツの案を考え、10人いる弁護士各自に、作成の割り振りを行いました。

しかし、結局、原稿は集まらず、その先は、またしても遅々として進んでいない状態です。あたりまえのことですが、IT化と言っても、勝手にコンピュータが原稿を書いてくれるわけではない以上、コンテンツを作る人間の努力なくして、IT化の効用は見込めないということなのでしょう。

そこで、結論。IT(情報通信技術)は、あくまで道具にすぎません。設備投資をして「IT化」を進める前に、「何をやりたいのか?」「何が発信したいのか?」を、よくよく熟考し、発信可能なコンテンツの質と量を見越した上で、環境整備を行うことを、お勧めします。

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2005年5月号 月報

当番弁護士日誌 〜動機は彼女との別れ〜

後藤景子

夏の暑い日が続く中、当番弁護の出動依頼が入った。警察に留置されている被疑者本人からであった。罪名は住居侵入。被疑者はまだ若い男性であった。

いつもそうであるが、弁護士会からFAXされる当番弁護士申込書の記載のうち、被疑者に関する事項は住所氏名、年齢、職業性別のみであり、犯罪の内容に関するものといえば罪名、逮捕日時くらいである。したがって、申\込書を読んでから接見に行くまでの間、私の頭は想像でいっぱいになる。まだ若い男性が、夜中に住居に侵入しなければならなかった事情とはいったいどんな事情なのか・・・と。

接見室で面会して事情を聞くと、深夜、別れて間もない元交際女性のアパートの部屋に入ろうとして、建物二階にある彼女の部屋のベランダで窓ガラスをドンドンと叩いていたところ、駆けつけた警察官に逮捕されたということであった。

「ただ彼女と話をしたかった・・・」それが彼の動機だった。いくらよりを戻したいから会って話をしたいとはいえ、時間と方法を考えて行動しなければならないことは言うまでもない。彼のとった行動は間違っている。法に触れる犯罪である。しかし、一年間つきあった女性と別れてまだ二日しかたっていなかった。彼は、ゆっくり話しあう時間もなく一方的に振られたのであった。

恋愛のもつれが犯罪と関わっている場面は少なくない。別れ話、三角関係のもつれからおこる事件の態様は様々である。相手の命さえも奪ってしまうこともある。冷静な判断能力を失ってしまうからであると思う。責任能\力という難しい議論に踏み込むつもりはここではない。自分を見失うというのが正しい表現だろうか。愛情が深ければ深いほど、それを失った時には、もの凄い、自分ではコントロールできない感情に変化してしまう。犯罪に踏み込まないように自分をコントロールするという経験が、彼の人生においてそれまであっただろうか。今までにない自分を経験したことだろう。いろいろつらつら述べてしまったが、要は、被害者である元彼女と一刻も早く連絡をとり、彼の早期釈放を実現させようと思ったのである。

女性と連絡を取ると、彼女は「自分が悪い」という言葉を何度も発した。一方的に別れ話をした自分が悪いと自分を責めていること、事件の時には新しい交際相手と一緒におり、知らない間にその男性が通報していたこと、事件後駆けつけた警察官に対して彼を逮捕しないで欲しいと訴えたが半ば説得されるようにして彼が逮捕されてしまったこと、新しい交際相手を説得して警察署へ被害届の取下げと彼の釈放をお願いに行ったが検事に連絡を取るように言われたことなどの詳しい事情が分かったので、そのままを文章にして嘆願書を作成し、担当検事に提出した。

遠方の父親に身柄引受人になってもらうべく連絡をとったがすぐには駆けつけられないとのことであったため、彼が趣味を通じてお世話になっている知人の存在を担当検事に話した。しかし、担当検事が、身柄引受人は親族である父親の方が望ましいと判断したため、しばらくして父親に対し、検察庁の担当検事に会ってもらうように頼んだ。

そして、父親が担当検事に会った日の昼過ぎ、父親から彼の釈放の一報が入った。

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激震襲う! 被災者への無料相談会始まる

藤尾順司

三月二〇日、のどかな休日のお昼、突然、震度六の大地震(福岡県西方沖地震)が福岡北西部を襲いました。この地震で事務所やご自宅が被害に遭われた会員の方には、心からお見舞い申し上げます。弁護士会館も三階の天井の一部に亀裂が入るなどの被害を受けました。

休み明けの三月二二日には、前年度執行部が地元の被災者のために無料電話相談会を実施され(前年度への気遣い)、その後、次のような相談会等を実施しましたので、併せて報告します。

急なお願いにもかかわらず、多くの会員に快く相談担当を引き受けていただきました。なかには、相談日は予定があるが、もし担当者が足りない場合は予\定を変更して引き受けてもいいと言っていただいた会員もおられたり、電話入れしながら嬉しくなるということがありました(実は、当番弁護士や国選弁護のお願いをする担当になりました。その節もどうぞよろしく!)。この紙面を借りまして、厚く御礼申し上げます。

電話相談
  1. 三月二四日から二六日の三日間
  2. 相談担当者のべ 三六名
  3. 相談件数合計 一四六件
面接相談(弁護士会館)
  1. 四月九日(土)午後一時から四時
  2. 相談担当者 一二名
  3. 相談件数  一九件
相談への派遣

福岡市から、被害が甚大であった地域に、行政、法律、福祉、住宅、健康について巡回相談を実施するので、相談担当者を派遣してほしいとの要請がありましたので、次の各地域に二名づつ派遣しました。五日間の相談件数は合計二〇件でした。

四月一日 東区 志賀島公民館
四月二日 西区 西浦岡集会所及び浦救難所
四月三日 西区 北崎公民館
四月四日 西区 今宿出張所
四月五日 西区 今宿出張所

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

法律相談センターでは、地震に関する相談については相談料を無料という取り扱いにしました。三月二四日から四月七日までの間に福岡市内及び近郊の五カ所の法律相談センターで受けた地震の相談件数の合計は四六件でした。

紛争解決センターも地震に関する紛争については、申立手数料を免除することにしました。

これまでのところ、相談内容は、地震によって瓦が隣家に落ちて隣家の車を傷つけた、ブロック塀が倒壊して隣家に被害を与えた、マンションにおいて温水器や水道管からの水漏れにより下の部屋に被害を与えたなどによる被害の相談が三五%ほどを占めていました。その次に多いのは、借家の修繕や賃料、敷金に関する問題や、マンションやビルの補修の問題でした。

被災者の生活が落ち着きだすと、次第にマンションの修繕や保険金請求の問題など専門的知識が要求される相談が増えてくるのではないかと思います。

阪神淡路大震災後、たくさんの法律相談活動を経験された弁護士を招いて、地震の法律相談についての研修会を企画する予定です。

今後も状況を見て、弁護士会で相談会を実施することになると思いますので、ご協力をよろしくお願いします。

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ホームページ委員会だより

中野俊徳

第一 私がHP委員会の委員である意味

昨年度末頃にホームページ委員会の委員になりまして一年が経過しました。

私は今年三月三一日の時点で七つの委員会等の委員にしていただいておりますが、誠に申し訳ないことに、このホームページ委員会を含め、ほとんどの委員会等で幽霊委員と化してしまっています。

しかし、多くの委員会ではMLを持っており、MLに入っていることで少なくとも情報・意見交換は可能な状態です。

そういったことから、私のように福岡市から遠い地の事務所に属する者が弁護士会の活動に継続的に参加するためには、弁護士会の活動のIT化は必要不可欠なことなのだろうと実感していますし、そういった観点から、福岡市以外の地に事務所を持つ弁護士にとっての弁護士会のホームページのあり方を考えろというのが、私がホームページ委員会の委員である意味であるのでしょう。

第二 私の弁護士会HP利用の内容

そこで、幽霊委員ですのであたかも非委員かのような第三者的な書き方になってしまいますが、私が日頃の弁護士業務において弁護士会のホームページをどのように利用しているかを考えてみます。

改めて思い返してみると、私は、日頃の業務時間の中で、弁護士会のホームページを見ることが案外多いように思います。

他の先生方の電話番号、ファックス番号を知りたいときは会員情報のページで確認しますし、刑事弁護で量刑について検討したいときは量刑資料検索も見ています。

また、筑豊以外の裁判所での訴訟等を受任したときは、裁判官・検察官配置表で裁判官・検察官の名前や期を確認したりもしています。

掲示板で刑事弁護の事案について悩みというか愚痴を書いたこともありました(その事案がその後思わぬ展開となってしまいましたが・・・・・・)。

今や、情報収集や他者とのコミュニケーションの多くの場面でインターネットを利用することが当然の時代になっていますが、その中で弁護士会のホームページが弁護士業務に果たす役割は大きいのだろうと思いますし、もっと専門的な情報提供(たとえば、兵庫県弁護士会のホームページでの消費者問題判例検索ページのような)ができたらいいなと感じてもいます。

第三 市民にとっての弁護士会HP

また、弁護士会のホームページはいわば弁護士会の顔ですから、幽霊委員とは言いつつ、市民の方が弁護士会のホームページをどのように利用しているかも気になるところです。

今、弁護士に法律相談に行く前に、インターネットで多くの知識を得てきている相談者の方は珍しくありません。

しかし、その一方で、弁護士を探している市民の方が、弁護士事務所にたどり着く過程で、弁護士会のホームページ等、インターネットを利用しているという実感がまだまだ私にはありません。

私のところに相談に来る方は、地元の司法書士や税理士、行政書士からの紹介など口コミが多いですし、時には、私が東京での生活が長かったこともあり、当事者が共に東京在住という事件の受任依頼をいただくこともあります。

こういったことは多くの先生方が経験されていると思いますが、こういったことがある度に、市民にとっての弁護士への距離を感じてしまうのです。

個々の弁護士に関する情報は個々の弁護士のホームページで提供するべきだとも思いますが、まだまだ越えがたい壁になっている、市民と弁護士との間の壁を取り払ううえでの一定の役割を弁護士会のホームページが担っているものと認識しています。

その意味で当委員会がなすべきことはまだまだたくさんあるのだろうと思います(と幽霊委員が勝手なことを言っております)。

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2005年6月号 月報

英国便りNo.1 苦労した学生ビザ取得(2003年8月16日記)

松井仁

これから時々、近況やイギリスの法律事情など報告したいと思います。  ロンドンへ到着する飛行機を降りて、今までの海外旅行では経験したことのない緊張を覚えました。入国審査で学生ビザをもらえるかどうか不安だったからです。  学生ビザの取得のためには、

  1. 入学を許可されたことを示す大学からの手紙
  2. 銀行の残高証明書
  3. 帰りの航空券

が必要ですが、それがそろっていても認められない場合があると言われています。  同じ飛行機を降りた観光客が皆簡単に入国審査をすませているなか、私と妻は、案の定、入国審査官から専攻科目や滞在先などについていろいろ質問され、なかなかビザの判を押してくれません。  特に、妻のほうは、大学からの入学をオファーされた手紙は持っていたものの、返事を出す時間がないまま渡航しており、入学許可証明書が完全ではなかったため、「あなたはなぜまだ返事を出していないのか。」と、明らかに疑いの目で見られていました。私たちは必死で、「大学から手紙が来たのが直前で、自分たちの引越も重なって、時間がなかったんです。」、「行き違いになったら困るので直接大学に返事を出したほうがいいと思ったんです」などと説明したのですが、渋い顔は変わりません。 その間、私の頭の中には、(もし拒否されたら、異議申立をしようか、いや、観光ビザで入って大学の手紙を取り直して変更申\請か・・・)などと、英国の入管手続など知らないくせに考えがぐるぐる回っていたのですが、最後は、私たちの銀行残高証明書を見て、ようやくパスポートに1年間の学生ビザの判子を押してくれました。不法就労目的ではないと納得してくれたのかもしれません。  今まで、弁護士として何度か外国人依頼者のビザの変更や更新の手続を手伝ったことがありましたが、ビザをもらったときの嬉しい気持ちが、はじめて身に染みて分かりました。

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当会における弁護士過疎解消に向けて

石渡一史

  1. 熊本県弁護士会の弁護士過疎解消に向けた取組み  当会月報三月号に、長弁護士が日弁連ひまわり基金による熊本地方裁判所八代支部管内の公設事務所へ赴任するにあたっての記事を寄せている。その八代で、八代ひまわり基金法律事務所の開所式と披露パーティーが五月一〇日に日弁連副会長、九弁連理事長、熊本県弁護士会会長、八女市長等が出席して、盛大に行われた。  私は、かねがね弁護士過疎地域に行く弁護士こそ、優秀な弁護士が行くべきだということを持論としており、その意味でもふさわしい弁護士を送り出すことが出来たと思っている。長弁護士が、八代の地でつつがなく派遣弁護士としての任務を全うされるよう願う次第である。  九弁連だより四月号には、やはり当会から玉名ひまわり基金法律事務所に行った田中裕司弁護士が記事を寄せており、熊本県弁護士会の弁護士過疎地域克服に対する積極的な取組みがうかがえる。
  2. 当会に弁護士過疎はないか  同じく九弁連だより四月号に当会筑後部会の弁護士過疎対策についての記事も掲載されている。この記事によれば、多数の若手の定着が筑後部会の最大かつ最善の「過疎対策」であり、おそらく本当の過疎地域から見れば筑後はもはや過疎地域ではないと言われるかもしれないとのことである。しかし、この見解には、にわかには賛同し難い。まず、筑後部会に五二名の弁護士がいる(日本弁護士連合会会員名簿平成一六年度版による)ことからどうして筑後地域全体が過疎でないという結論が導かれるのであろうか。(ちなみに、久留米市から八女市、大牟田市は、公共交通機関とタクシーで裁判所へ行くとどちらも四五分であるが、大牟田市の弁護士が〇になった時も弁護士過疎はないということになるのだろうか。)
  3. 弁護士が足りているかどうかは住民の視点からも検討が必要  私は、弁護士がその地域に必要であるかどうかは、弁護士の視点だけでなく、住民の側の判断にも委ねるべき問題であると考えている。(九弁連だより四月号で田中裕司弁護士が言っているように、弁護士が常駐することにより、いままで眠っていた事件や、知識不足ゆえに不当な扱いをうけたりするケースも発掘される。私たちは街中まで相談に行けばいいじゃないかと思うが、そういう風に考えられるのは行動範囲が広い一部の人たちで、実際は地元から出たことがない人も多いし、ましてや何のものかも分からない遠方の弁護士のところに相談に行くのは一大決心で躊躇してしまう人も多いのであるという意見には同感である。)  私は、弁護士過疎であるかどうかを判断するにあたって裁判所の管轄のみが基準になるとは思わないが、弁護士会の部会が基準になるとも思わない。ちなみに、平成六年の久留米部会の弁護士数は三二名(うち久留米市二四名、大牟田市五名、八女市一名、柳川市〇名、その他二名)、同一六年度では、五二名(うち久留米市四一名、大牟田市六名、八女市〇名、柳川市一名、その他四名)である。つまり、増えているのは久留米市だけと言ってもよい
  4. 当会の弁護士過疎問題について積極的な議論を望む  九弁連だよりの筑後部会の弁護士過疎対策に関する記事では、部会制度という福岡県弁護士会の独特のあり方や公設事務所の評価に関する理念的な問題とも絡むため、もう少し議論を整理しながら、あるべき方向性を見いだしていきたいと述べられており、結論として八女、柳川への公設事務所の設置を否定している訳ではない。  もし八女や柳川に公設事務所が設置されても、住民のニーズがなければ、住民は公設事務所には行かず、久留米市の弁護士のところへ行くだけであろう。(全国の例で言えば、公設事務所は盛況であり、やはり地元に法律事務所があることを住民は望んでいる。)最初から弁護士過疎はないというのではなくいろいろな角度から弁護士過疎対策をやってみていいのではないか。  法律相談センターを久留米に最初に作ろうとしたとき、当時の久留米部会では、積極論と消極論の対立があったが、現在では、急速な弁護士増加の原因の一つとして揚げられるほどになっている。また、弁護士実務修習を久留米支部で制度的に実施するに至った目的は、筑後部会全体の弁護士過疎の解消ではなく、筑後部会内の各地域の弁護士過疎の解消にもあると考えるべきではなかろうか。

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2005年7月号 月報

シリーズ仲裁人に聞く

松村龍彦

平成一四年一二月、当弁護士会に紛争解決センターが設立され、およそ半年が経過しました。そこで、紛争解決センター運営委員会では、今後、定期的に仲裁人にインタビューし、月報に掲載することにしました。

第一回は、岩崎明弘会員にお話を伺いました。同会員は、仲裁人として、紛争解決センター設立後、初めて和解が成立した事件をご担当になられました。

Q 紛争解決センターの設立について、どのような感想をお持ちですか?

A 私は、一五年以上も前の月報に、当会でもADRを設立すべきだという意見を掲載したことがあります。

紛争の「公平な」解決機関が裁判所だけというのは裁判所にとっても荷が重いでしょうし、「紛争を公平かつ迅速に解決したい」という国民の需要に応えるには、弁護士が仲裁に当たることが不可欠だと考えていたのです。

Q 和解成立第一号事案は、どのような事件だったのでしょうか?

A 貞操権侵害を理由とする慰謝料請求事件でした。当事者双方に弁護士は就いておらず、「慰謝料の額」が主たる争点となりました。

Q 仲裁人として、どのような点に留意されたのでしょうか?

A 「公平な」専門家であることについて各当事者の信用を獲得、維持することや履行を確保することに注意しました。また、「迅速な」解決を目指して、期日を集中的に入れました。

Q 差し支えない範囲で、和解成立の経緯についてご教示下さい。

A 申立人は、相手方の処罰を望む一方で、できれば早期に解決したいという希望を抱いていました。そこで、私は、常識的な範囲内での金銭賠償で満足する他ないことを丹念に説明しました。

その結果、第二回期日で、ほぼ合意に達したのですが、解決を急ぐと、相手方が不満を覚え、履行を確保できないおそれがあったので、相手方に対し「ご納得頂いたら、次回、和解金を持参して下さい」と告げ、第三回期日を指定しました。

相手方は、第三回期日に和解金を持参し、和解成立の席上で、これを支払いました。

Q 申立てからどのくらいの期間がかかりましたか?

A 申立てから第一回期日までが二週間余り、申\立てから和解成立までが約一か月でした。

Q 随分、迅速な解決でしたね。同席調停の形はおとりになったのでしょうか?

A 事案の性質上、同席調停は行いませんでした。各当事者には別個の控室を与えて、顔を合わせることがないようにしました。もっとも、和解成立の席では、当事者を同席させ、和解の内容とくに清算条項について十分に説明しました。

Q 「和解成立第一号」ということで、ご苦労なさった点は?

A 慎重に、和解条項を作成しました。特に、仲裁費用の負担条項は前例がなく、また今後は先例にもなるので、気を遣いました。

Q 紛争解決センターの今後について、どのようなご意見をお持ちですか?

A 大いに発展させたいと考えています。そのためには、会員や利用者となり得る市民に、制度の存在、目的等について知ってもらうことが重要でしょう。

岩崎明弘会員には、ご多忙のところ、約一時間にわたってお話を頂き、誠にありがとうございました。

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英国便りNo.2 イギリス賃貸契約体験記(2003年9月14日記)

松井 仁

刑弁委員会の皆様、松井です。

今回は、英国で体験した賃貸契約の実務をご紹介したいと思います。

7月末に無事ビザをもらって英国入国を果した後、私たちは仮住まいの大学寮に入りました(夏休みで学生がいなくなったところを旅行者に提供しているのです)。ところが、二人部屋といいながら、日本でいう8畳くらいしかないワンルームで、シャワー室も海の家のような粗末なもので、あまりにも侘しいのです。

当初私は、留学費用節約のため、9月からの寮の手配を大学に申し込んでいたのですが、せっかく長年の夢を実現して留学したのに、侘しい生活は嫌だと思って、急遽キャンセルし、民間の賃貸住宅を探すことにしました。

とはいうものの、現地の不動産屋と英語でやりとりするだけの勇気はなく、(多少悔しい思いをしつつ)日系の不動産屋に日本語で申込をし、紹介された物件のなかから選びました。日系といっても、英国賃貸協会に加入している業者だったので、契約書等は英国の法律にもとづいて英語で作成されています。条項は日本の一般的契約書に比べれば詳細で、賃借人の義務も細かく書かれています。

最も異なっているのは、1年を期間とする契約でも、開始後4ヶ月たてば、賃貸人、賃借人ともに、2ヶ月前の告知により契約を自由に解約することができることです。つまり、賃貸人からの解約に、日本のような正当事由はいらないことになっているわけです。念のため法律にもあたってみると「Housing Act」という法律の、「Assured Shorthold Tenancies」の項に、上記のような規定がありました。つまり特別な短期賃貸借のようなものですね。

Deposit(敷金)は家賃の1か月分のみ、不動産屋の手数料は約50ポンド(約1万円)と、日本より良心的です。

もうひとつ、日本にはない手続として「Inventry Check」(財産目録調査)というものがあります。これは、入居前に、賃貸人と賃借人立会いのもと、公平な第三者たる「Inventry Clerk」という人が、対象物件の状態や家財の内容について、くまなく調査し、一覧表をつくるというものです。これは、家具付きの物件が多くを占めるという英国において、退去時の紛争防止を目的としたものです。例えば、「ワイングラス5つ」と目録に書かれていて、退去時に4つしかなければ、賃借人は1つ割ったものと推定され、弁償(敷金からの差引)をさせられるわけです。

ですから、私たちも、Inventry Check のときは、気合を入れて、「ここに傷がありますので記録しておいてください」などと指摘しました。日本では、レンタカーを借りるときに事前に傷の状態をチェックすることはありますが、賃貸借契約では、普通、Inventry Check のようなものはありません。これは、家具つきの物件がほとんどないことや、退去時に畳や襖や壁紙など、全部張り替える習慣があるので、チェックする意味がないからだろうと思います。

しかし、日本も近時、通常損耗は賃貸人の負担という判例が多数出ています。とすると、退去時に、壁の汚れが通常損耗なのか過失による汚損なのかというような争いが増えるでしょう。そうなってくると、紛争防止のために、入居時にInventry Check を行う必要が出てくるかも知れませんね。

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ITコラム 〜すべては記憶の減退から〜

森 竹彦

記憶の減退に悩む

五〇歳を過ぎて記憶の減退がひしひしと迫ってきた。何を頼まれている? それはどこまで準備した? 何をしなければならない?

何しろ弁護士が依頼を受けている“問題”は、大は訴訟事件から小はちょっとした調べ物まで、どれをどうした? あれはどうした? 克明にメモしたつもりでも、どこか抜けてしまうのではないかという不.安。

パソコンを勧められた。データベースソ\フトを使いなさい。

当時はNECのPC九八全盛時代。パソコンもソ\フトも高価だった。思い切って買った。全部で五〇万円以上。この投資が無駄になるのでは? と不安でいっぱいだった。 データベースソフト

データベース。最初に、「あなたが求めているのはデータベースソフトです」と教えて貰った。が、どうやって操作するのか判らなかった。しかしまた、データベースこそコンピュータの花形のような気がした。究極の目的=自分の事件管理をどうするか、について“先輩”はデータベースソ\フトをマスターせよ、といった。もちろんこの“先輩”はわたしよりずいぶん年下なのだ。記憶力の減退を補うためにパソコンを買ったのに、そのためにさらに新しい知識の吸収を強いられる。とんでもない話だと思うものの、やり始めると面白くもある。バッチファイルの作成。config.sys の書き換え(そういえば数号前に辻本さんが同じようなことをやっていたと書いていたな。結構面白かった)、マクロ(ソ\フトウエアの中での簡易プログラミング)の作成と進んでくると、ある程度は使いこなしが可能となってきた。

ITの活用

いま、私の事務所の事件管理はデータベースソフトによる自作のマクロ処理である(このマクロは何人かの方に提供、今も使って貰っている?)。

一台のPCをホストコンピュータとして、これにデータを蓄積、全てのPCをLANで接続、ルーター経由で光ファイバーでインターネットへ(これを全部私がやったというところが“趣味”か)。

仕事のデータを一度入力さえすれば、並べ替え、ピックアップはお手のもの。その日の仕事の進行を入力すれば報告書のプリントへ。日付順に並べなおして一覧で進行具合を管理する。金銭管理も、住所管理も。データベースソフトはこれらを連結して取り扱える(リレーショナル)ところに妙味がある。(エクセルはデータ処理が出来るソ\フトであるが、リレーショナルではない)

おかげでさらに進んだ“記憶の減退”にかなりの部分対応できていると思う。

いま、IT活用の方向は、一つは事務所内LANによる情報の一本化と集積、活用、他の一つはインターネットによる外部情報の収集・活用と情報発信であるが、はたして“活用”されているだろうか?

みんなが徒歩で歩く社会に、自動車を用いることが出来る者がはいれば、誰が勝つかは明らかだ。ITを使いこなせるかどうかもこれと同じことだろう。他方、ITといっても活用にはノウハウがずいぶんある。会員のノウハウを持ち寄って皆で生かすことも考えていいのではないだろうか。IT委員会にはぜひその方法を考えて頂きたいと希望しているのだが。

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ホームページ委員会だより

本岡 大祐

一 法律相談センターへの相談のきっかけ

先日、天神センター等の法律相談センターへ行った際、相談者のお一人が、相談カード「紹介機関」欄の「その他」にチェックされ、(インターネットを見て)と記載されていました。

聞いてみると、福岡県弁護士会のホームページを見て、電話予約されたそうです。ホームページ内には、天神センターの地図も掲載しています。

最近は何か困ったことがあれば、「何はともあれ、まずインターネットに接続してみるか・・・」というのが、最近の若者の行動パターンです。それ故、チェック欄には「ホームページ」という項目はありませんが、弁護士会のホームページを見て法律相談センターに来る相談者は、意外に多いと思われます。

二 市民向けページへの事務所地図掲載(予定)

現在、福岡県弁護士会のホームページに、「会員情報」というコンテンツがあります。

検索エンジンで誰でも一度は自分の名前を検索してみたことがあると思いますが、若手会員の中には、自分の名前を入れてみたものの、このページだけしかヒットしなかった、という悲しい経験をされた方も多いのではないでしょうか。

現在は、「会員情報」として、弁護士名・事務所名・事務所住所・電話及びFAX番号だけが記載されていますが、事務所の地図までは掲載されていません。

そこで、ホームページ委員会では、今後、この会員情報に、各事務所の地図を掲載することを検討しています。  事務所の地図が掲載されることになれば、市民にとって事務所へのアクセスがより容易になりますし、弁護士にとっても、事務所の場所を電話で伝える手間を省くことができます。また、相談センター経由の相談者の方に対してだけでなく、各弁護士が日頃の業務の中で、依頼者(相談者)や相手方に事務所の場所を説明するときにも使うことができます。

そして、弁護士にとって、事務所の住所は既に公開しているのですから、事務所の地図をさらに掲載しても特に不都合はないと思われます。九州沖縄地区では、長崎県弁護士会が、事務所地図をホームページ上に掲載しています(http://www.nben.or.jp/)。

三 ホームページ委員会からのお願い

近日中に、ホームページ委員会から、各事務所宛に、「ホームページ上に事務所の地図を掲載することに同意して頂けるかどうか」の確認を行う予定です。

市民の弁護士へのアクセスを容易にするためですので、皆様、是々非々、ご協力をお願いします

また、ホームページ委員会では、事務所地図だけでなく、取扱業務や弁護士登録年度の掲載も検討しております。

ホームページ充実に向けた会員の皆さんの様々なご意見をお待ちしております。会員専用ページにアクセスして頂き、掲示板にジャンジャン書き込んでください。

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当番弁護士日誌 〜初めての否認事件

溝口 史子

一 出会い

登録して二度目の当番出動日、被疑者から、「拘置所で受刑待ちをしていたら、逮捕されました。でも全く心当たりがないんです。」と言われた。罪名は住居侵入・窃盗。逮捕の決め手は被害者宅に残された被疑者の指紋だという。これを聞いて、私は正直なところ、「指紋と前科があるのならやってるんじゃないの?」と考えた。

しかし、話を聞くうちに、被疑者が被害者宅を頻繁に訪れていたこと、一年近く前の事件で証拠関係が薄そうなことがわかってきた。また、被疑者の「今まで悪いことをしたらきちんと罰を受けてきた。でもこれだけは絶対やってない。」という言葉を聞いていると、「この人を信じてみよう。たったこれだけの証拠で起訴されるのもおかしい。」という気持ちになった。私は、この事件を受任した。

二 ひと勾留め〜手探りの日々
  • 受任して実感したのは、手元に資料がないことの大変さだった。何から手を付ければいいのか分からなかった。

    事件の空気を掴むため、私は、検事に電話や面談で話を聞いたり、令状裁判官と面談したりして、検事の心証や、重要な客観的証拠の有無などを探った。

  • こうした情報をもとに、被疑者からまめに事情を聴取すると共に、捜査状況を知らせた。被疑者の性格上自白のおそれは乏しかったが、彼がしゃべりすぎて揚げ足をとられるのは怖かった。そのため、必要以上話すなと口を酸っぱくして伝えた。
三 ふた勾留目から処分決定まで
  • 検事との電話で、現場に残された足跡を調べていることや、被害感情が強い事件なので「検審」を考えると捜査を尽くしたいとの話を聞けた。検事とは何度も話をしていたので、検事が不起訴を視野に入れて捜査していることがニュアンスで伝わってきた。
  • 同じ頃、被疑者の内妻と連絡がとれた。彼女は被疑者の行動を毎日日記に書いているとのことだったので、当時の日記帳を持って来るようお願いしたが、タッチの差で警察に彼女の身柄をとられてしまった。横取りをされたようで悔しかったため、警察で、取調中の彼女を呼び出して彼女の供述内容を確認した。彼女の供述は被疑者に有利なものであったため、そのまま調書化してもらった。
  • 接見の際、被疑者がポリグラフ検査を受けたことを知った。私は、ポリグラフ検査の正確性に不安を持っていたが、「これで無実が証明される」と自信満々の被疑者にはそのことを言えなかった。後に検事から、被疑者が心臓疾患を持っているため、検査結果を証拠として使う予定はないとの説明を受けたが、それならなぜ被疑者に検査を受けさせたのか、不明である。\n
  • GWに、検事から、被疑者を処分保留で釈放し、近々不起訴にするという連絡をもらった。被疑者は、検事から「君を信じる。」と言われたらしい。検事の話から、何とかなるのではないかと思っていたものの、心底ほっとした。
四 雑感

後日、拘置所の被疑者から丁寧な手紙が届いた。「自分を信じて弁護してくれたことが本当にうれしかった。責任を果たしたら、今度こそきちんと生きていこうと思う。」との内容だった。GWが潰れた不満も疲れも吹き飛んだ。  未熟な弁護活動だったし、検事が比較的冷静だったので、私が介入しなくとも結論は変わらなかったかもしれない。しかし、今回のプロセスが被疑者の心に変化をもたらしたのなら、弁護士冥利に尽きる。登録して半年、自分の弁護活動を少し誇りに思えた事件だった。

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少年の「付添人」として

服部 博之

私は、司法修習五七期。昨年一〇月に弁護士登録した新人弁護士である。司法修習生の時分より、福岡県弁護士会では全国に先駆けて当番付添人制度を実施し、高い実績を挙げていると聞いていた。私も、当会に登録する者として、本制度の下、微力ながら、多くの少年たちの更生の一助をなしたいとの希望を有している。

私は、一〇月の登録以降、事務所の先輩弁護士などと共同して既に数件の付添人活動を行ったが、ここでは実際に付添人活動を行ってみての新人弁護士としての感想を記したいと思う。

私が初めて付添人となったのは、登録直後の一〇月半ばのことであった。

少年院を退院して約二か月後の再非行。退院後間もなく家出し、そこで知り合った彼氏に勧められるままにシンナーを吸引したというものであった。

少年は、保護者である母親との関係がうまく構築できていないことが少年の非行の深化に大きく影響しているものと思われたため、私の方で母親に対して、何度も手紙や電話で連絡を取ろうと試みたが、結局、私は直接連絡を取ることができなかった。母親の知人である少年の以前の雇用主に連絡を取ることができたが、その方によれば、母親も少年への接し方が分からず、少年との接触を避けているようだとのこと。何とか審判当日は出席することは約束を取り付けたものの、結局、観護措置期間中一度も面会には来なかった。

少年は、これまでの交友関係からの離脱の必要性を自覚し、遠方での仕事をしながらの再出発を希望したが、有効な社会資源を見出すことはできず、遠隔地での補導委託先をあたってみたものの、女子の受け入れ先が極めて少ないこともあって、受け入れ先を見つけることはできなかった。補導委託先を探すにあたっては、調査官にも親身に協力していただいたが、結局、調査官は再度の少年院送致の意見を述べた。

審判当日。入廷した裁判官は処分意見を決めていたようで、淡々と審判が進められ、結果、少年院送致の処分が言い渡された。少年は、再度の少年院を覚悟していたようで、黙ってうなずいた。その時、少年の隣に座っていた母親が少年を抱きしめながら、「ごめんね。」と大声を出して泣き出したのである。少年も、緊張の糸が切れたのか、堰を切ったように大声で泣き出した。その抱擁は数分にわたり続いたが、やがて職員に促され、母親は審判廷を後にしたが、少年と母親はそのまま泣き続けていた。

私は、付添人としてその場にあって、自らの力不足と無力を痛感し、自らの今回の付添人活動の意義について考えさせられていたが、しばらくして少年院の少年からの手紙が届いた。その手紙には、「今もう一度自分のこれまでの生活について振り返って、同じ失敗を繰り返さないようにがんばっています。今は、お母さんも面会に何度か来てくれているし、手紙のやり取りもしています。もう二度とお母さんを裏切りたくないし、お母さんの気持ちに応えたいです。」とあった。この手紙を読んで、私自身とてもうれしくなり、また、本当に救われた気持ちになった。

次は一一月の中旬頃のこと。少年は、夜間に友人と共同して自動販売機荒らしをしているところを発見され、その場で現行犯逮捕されたとのことであり、当番弁護士として派遣された事務所の先輩弁護士とともに、この事件を受任することになったものである。

彼は、当時一九歳一一か月、年明けには二〇歳の誕生日を迎えることになっていた。これまでに非行歴がなく、実際に面会して話した印象も、反省と不安から声は沈みがちであったものの、質問に対する受け答えもその年齢以上に非常にしっかりしており、いわゆる「荒れた」感じは全く受けなかった。

少年は、大学を中退し、進学校である高校の友人などに対して疎外感を感じるようになる一方で、地元の友人等の不良文化に新鮮さを覚え、刹那的な感情に流されて非行行為に対する抵抗感を無くしていった結果であるようであった。幸い、非行もそれほどまでには深化しておらず、家族も少年の更生に向けた監護等について極めて協力的であり、立件された四件についてはいずれも被害弁償の目処が立ったこともあって、付添人は保護観察の意見を述べた。

しかし、調査官は少年院送致意見。面会して真意を尋ねたところ、「確かに、本人の反省や社会復帰後の家族の協力も期待できますが、余罪が八〇件くらいありますから。施設における再教育の必要性は否定できないと思います。」とのことであった。余罪と言っても、あくまで少年が捜査段階で「全部で八〇件くらいはやったと思います。」と供述しているというだけのこと。あくまで要保護性を判断するための資料については、刑事訴訟法上の証拠法則などが適用されないとはいえ、裏付けもない少年の自白のみで余罪として考慮するのは妥当でないと主張し、年齢切迫のため抗告が不可能であることを踏まえて、特に慎重な判断を求めたい旨の申\入れを行った。

審判廷でも同様の主張をしたところ、裁判官は付添人の意見を容れて保護観察処分となったが、少年事件の要保護性判断における危険性というものを感じさせられる事件であった。

なお、少年は、審判後も保護観察の他、定期的に私の事務所を訪れて面談するようにしているが、現在、保護者の経営する会社で工員の見習いをしているということで、先日も「親父の会社を発展させるためにも、今の仕事に関係する資格を取りたいと思い、勉強しているんですよ。」と明るく話してくれ、私を安心させてくれている。また、処分を行った裁判官も、審判後の少年の様子を確認したいと私まで連絡をいただき、そのことを聞いた少年自身も非常に喜んでいた。

「非行を犯してしまった少年にはすべからく専門家としての付添人の援助が必要である。付添人の援助があることによって、少年の更生にとってマイナスとなることはない。」という考えの下に、福岡県弁護士会の全件付添人制度が始まったと聞くが、私も正にそのとおりであると思う。他会に登録した同期などからは、「少年事件は一部の専門の弁護士が行うもの」、「少年事件は私選として相応の報酬を貰わないと割に合わない」という話を聞くこともある。しかし、少年非行に対する社会の関心も高まっている中で、私自身としては、弁護士として、個々の少年、また社会に対して何らかの役割を果たしうる以上、付添人活動に末永く携わっていきたい。私が携わったほんの数件の事件を採ってみても、それぞれの少年にそれぞれの未来があり、短期間ではあるが濃密な時間を共有することによってそれぞれの感動があって、そこには何物にも換えがたい魅力があるように思われるからである。

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2005年8月号 月報

英国便りNo.3 大学教員のストライキ(2003年10月22日記)

刑弁委員会の皆様、松井です。

今回は、大学のストライキについてご報告したいと思います。

9月22日、新学期が始まる日の朝、私は緊張の面持ちで大学へ向かいました。どんな人たちが同じクラスにいるのか、どんな授業があるのか、自分はうまくやっていけるのか、期待と不安が入り混じる複雑な思い。18年前の大学入学の時の気持ちが蘇ってきます。  ところが、新入生対象のオリエンテーションが行われ、さあこれから授業がはじまるというとき、「教員組合がストライキのため、明日からの授業は当面の間キャンセルされる」との通知がありました。それを聞いて喜んでいる学生もたくさんいましたが、気合を入れて臨んでいた私としては、拍子抜けの感があり、さらに、「授業料を満額払っているのに授業を受けられないなんて」との怒りも込み上げてきました。

翌日様子を見に学校に行ってみると、キャンパスでは、組合の法被のようなものを着た人たちが「オフィシャル ピケッテリング」と書かれた看板を掲げて校舎の入口に立ちふさがっており、学生たちにビラを配っていました。ビラには、大学教員組合とロンドン大学学生組合との共同宣言と題して、次のようなことが書いてありました。

「大学教員組合は、11年のあいだ凍結されたままのロンドン手当(物価の高いロンドンに勤務していることによる特別手当)の引き上げを求めて、さらなるストライキを行う。1年2134ポンド(約40万円)という額は、他の公務員に支払われている手当てをはるかに下回っている。教員組合は、これまで学生への支障を最小限にするために気を使ってきたが、経営者側は、それを逆に交渉回避のために利用してきた。このような状況のもと、学生組合も、教員組合がストライキに突入する以外に手段がないことを理解し、それを支援することにした。この紛争が11年間解決しなかった責任が、大学経営者側にあることは明らかである…」

見回してみると、前日のオリエンテーションで私たちの世話をしてくれた教官も法被を着て一生懸命ビラを配っており、「先生たちも大変なんだなあ」と思うと私の怒りもおさまってきました。

翌週、ストライキは解除されて通常の授業がはじまりました。その教官に顛末を聞いてみると、「まだ交渉中だけど、いつかは解決するさ」とのことでした。

イギリスでは、公共機関のストライキがよく行われています(公務員の争議行為も禁止されていないのでしょう)。これまで郵便局が2回ほどストで閉まっていましたし、つい先日は地下鉄がストのため止まりまりました。しかし、イギリスの人たちは、故障なども含め、公共機関が止まるということに慣れていて、文句をいう人はあまりいないようです。

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女性の権利110番

山 ? あづさ

六月二七日、「女性の権利一一〇番」の電話相談が行われました。これは、日弁連両性の平等に関する委員会と全国の弁護士会との共催により、「全国一斉女性の権利(女性に対する暴力)一一〇番」として、一九九一年以降、毎年実施されいるものです。今年は、六月二三日から二九日までの「男女共同参画週間」の間に全国の弁護士会で実施され、福岡では二七日に実施されました。

当日は、午前一〇時から午後四時まで、三名ないし四名の弁護士が待機して、二本の電話回線を使って電話相談を受け付けました。この日の相談件数は、一八件でした。午前一〇時すぎと、テレビのニュースで放映された正午すぎに電話が集中し、その間は、受話器を置くとすぐ次の呼出音が鳴る、という状態でした。一件の相談にどうしても二〇分〜三〇分は時間がかかってしまうので、おそらく、何度もかけたけれども電話がつながらなかったという方もいたと思います。(その一方で、全く電話がかかってこない時間帯もありましたが…)

相談内容の内訳は、次のとおりでした(複数回答あり)。

  • 夫婦・内縁・男女関係   一二件
  • (うち、離婚に関するもの一一件)
  • DV            三件
  • セクハラ          一件
  • 民事一般          四件
  • その他           一件

具体的な相談内容として多かったのが、離婚の際の条件に関するものでした。「子どもの親権は取れるか」、「慰謝料や養育費は取れるか、いくら取れるか」、「借金があるが離婚するとどうなるか」というものです。電話で、しかも短時間のうちに具体的ケースについて金額まで回答するのはとても無理なので、こうした相談に対しては、離婚に関する一般的な説明と、調停・裁判といった手続の説明を行い、場合によって弁護士会の法律相談などを紹介しました。

また、「暴力を受けていて、離婚しようかどうか迷っている」という相談に対しては、気持ちが決まるまで、女性センターなどに相談して、ひとつひとつ問題を解決していくように勧めました。\n そのほか、「離婚届を出してしまったが、取り決めた条件を変えられないか」、「離婚した夫が養育費を払わないので、元夫の両親に請求できないか」などの相談がありました。

今回は、緊急性のあるDVの相談などはありませんでしたが、一件、離婚調停中に子どもを夫に奪われたというケースがあり、これは急を要するということで、待機していた弁護士の事務所に直接相談に来てもらうという対応を行いました。(こういうケースがあると、電話相談をやった甲斐があったという気分になります。)

振り返ってみると、今回は、不安や悩みや疑問を思いつくままに話すというような相談が多かったのですが、「法律相談」というと躊躇してしまう方でも「女性の権利一一〇番」だと相談しやすいというのがあるのかもしれません。こうした相談に対しては、とりあえず話を聞いて、相談者の疑問や不安がどのあたりにあるのかを確認して、それに対応する一般的な説明をして、次の相談先を紹介するなど今後どう動けばいいかの方向性を提案する、ということくらいしかできないことが多いですが、それでも、相談された方の気持ちが軽くなるのなら意味があるかな、と自分を納得させています。

また来年も「女性の権利一一〇番」を実施することになると思いますので、ご協力をお願いいたします。

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刑事模擬裁判奮闘記

山 内 良 輝

一 苦労の始まり

「ちょっと模擬裁判の弁護人役をやってくれないかな」

古屋勇一刑弁委員長のお誘いの電話を二つ返事で引き受けたことが苦労の始まりでした。「ちょっと」とか「簡単だから」などという前置きのあるお誘いこそ要注意と承知していたはずなのに。

二 刑事模擬裁判とは?

昨年、刑事訴訟に関する二つの大きな制度改革が行われました。一つは、いわゆる「裁判員法」の成立であり、平成二一年五月までに裁判員制度が施行されることになりました。もう一つは、刑訴法の改正により、裁判員裁判を円滑に実施するための公判前整理手続が新たに導入され、本年一一月一日に施行されることになりました。

刑事模擬裁判は、裁判員制度に先行して始まる公判前整理手続に焦点を当て、法曹三者が模擬裁判の形式により起訴から判決までの一連の手続を実験的に行ってみて、制度の具体的なイメージを共有し、発生しうる問題点を洗い出そうとする試みです。

従前の証拠開示の実務は、昭和四四年の最高裁判決により、証拠調べの段階に入った後に、厳格な要件の下に裁判所の訴訟指揮権の発動として認められるだけでしたが、公判前整理手続では、検察官が請求を予定する証拠以外の証拠についても、証拠調べ前に、弁護人が一定の要件の下でその開示を請求する権利が認められました。

我が弁護団(団長は不肖当職、団員は平岩みゆき会員と五十川伸会員、被告人役は東拓治会員)は、証拠開示請求権を駆使して刑事弁護の新境地を切り開く意気込みで、裁判所(裁判長は川口宰護上席裁事)と検察官(主任は矢吹雄太郎総務部長)が待ち受ける公判前整理手続に臨んだのでした。

三 なぜ弁護団は押されてしまったのか?

事件は、被告人と被害者が飲酒の上、些細なことから喧嘩となり、被告人が包丁を持ち出して被害者を刺突して傷害を負わせたが、被告人は殺意を否認しているという設定です。

第一回公判前整理手続(六月一三日)では、(1)検察官が裁判所と弁護人に証明予定事実陳述書を提出し、(2)検察官が裁判所に証拠を請求し、(3)検察官が弁護人の請求に応じて証拠を開示し、(4)弁護人が裁判所と検察官に事実上・法律上の主張を明示するなどの手続が行われました。

第二回公判前整理手続(六月二八日)では、被告人が従前の供述を翻し、「実は私に犯行を唆した黒幕がいる」と告白するというハプニングがあったことから、弁護人が主張を変更するなどの手続が行われました。

これら二回の手続を通じて、我が弁護団は検察官に押されてしまいました。その一因は、主任検察官の勢いにもあったのですが、より本質的な原因として、今回の模擬裁判では証人尋問を被害者一名と目撃者一名に限るという前提があったため、弁護団が当初は不同意を幅広く主張したものの、結局は不同意を順次撤回していったという展開にありました。これは、弁護人として証人尋問を要すると考えた証拠については不同意を貫徹し、あくまで証人尋問を要求する姿勢を徹底しないと、本番の公判前整理手続でも検察官に押されてしまうという今後の教訓になることでした。

四 裁判所に見られた変化の兆し

第三回公判前整理手続(七月一四日)では、新しい動きが裁判所に見られました。それは、裁判所が(1)凶器の写真撮影報告書、(2)被告人の犯行再現報告書、(3)被告人の古い判決書について、「裁判員に不当な予断を与えるおそれがある」という理由から検察官の請求を却下したことです。従来の実務であれば、刑訴法三二一条三項、三二三条一号により容易に採用されていた証拠ですが、裁判所の中にも、裁判員裁判を見据えた新しい動きが出てきたようです。

五 最後に

実は第一回と第二回の模擬裁判が終わった後、会員数名に意見を聞いてみたのですが、「こんな難しい手続なら、自分はやりたくない」という声が大多数でした。しかし、第三回の模擬裁判を終えてみて、直接主義・公判中心主義に向けた土俵作りを整備するための新しい息吹も感じられました。

次回の模擬裁判(九月二七日午前九時から午後五時)では、冒頭手続、証人尋問、被告人質問、論告弁論、判決宣告まで行われます。会員の傍聴をお待ちしております。

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学生無年金訴訟について

千綿 俊一郎

一 はじめに

皆さん、学生無年金訴訟という