福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2018年10月号 月報

全面的国選付添人制度実現をめざすシンポジウム「なんで、弁護士ついとらんと?」ご報告

月報記事

子どもの権利委員会委員 浅上 紗登美(69期)

1 はじめに

去る平成30年8月18日、天神ビル10号会議室にて、全面的国選付添人制度実現をめざすシンポジウム「なんで、弁護士ついとらんと?」が開催されましたのでご報告致します。

2 開会のご挨拶

知名健太郎定信委員長の開会のご挨拶とともに、ご多忙の中駆け付けて下さった、野田国義参議院議員、大島九州男参議院議員、山内康一衆議院議員、仁戸田元氣福岡県議会議員、鬼木誠衆議院議員の秘書の方よりご挨拶いただきました。

それぞれの皆様のご挨拶では、少年に裁量で国選付添人がつけられていることへの驚き、そして早急な解決に向け尽力したい旨の熱いお言葉を頂戴しました。

3 基調講演

「少年法講義」でお馴染みの武内謙治九州大学大学院教授による「国選付添人制度の課題」と題した基調講演が行われました。

全ての少年に国費で付添人がつかないといった現行少年法の問題点やその原因が国費を拠出することへの国民の納得を得ようとする制度設計になっていること等をご説明いただきました。

環境調整の重要性は明らかであるにも関わらず、環境調整の役割を果たしている付添人がつかない現行制度では、少年の特質、環境等の要保護性を勘案した適切な処遇をすることができず、結果的に少年の立ち直りを阻害しているのではと感じました。

4 九弁連報告

九弁連子どもの権利に関する連絡協議会吉田孝光委員長より、九州各地の独自の付添人活動のご報告、そして、九弁連としても各地でのシンポジウム開催や宣言など、全面的国選付添人制度実現に向け活動することが表明されました。

5 パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、ご講演いただいた武内教授、NPO法人田川ふれ愛義塾理事長の工藤良さん、SFD21JAPAN理事長の小野本道治さん、野口石油中原給油所所長兼保護司の野口純さん、そして元少年2名をパネリストとしてお招きし、少年との関わり方、付添人の関与による利点、少年自身の経験をお話いただきました。

全ての方々が共通してお話していたのは、「少年は必ず変わることができるが、時間がかかる。1ミリでも軌道修正できるよう、諦めず見守っていくことが大切」、「責任ある仕事を与え、社会での役割を与える」、「怒られることに慣れているので、とにかく褒めてあげる」ということでした。

大人を敵視していた元少年たちは、工藤さんたちに引き合わせてくれたり、処遇決定後も面会に来る弁護士の姿を見て、周囲のありがたみ、自分のしたことの重大さを知ることができ、立ち直るきっかけとなったそうです。

さらに、元少年たちが、100名以上もの参加者を前にして、「これからは、少年たちに辛い思いをさせないよう寄り添い、時には本気でぶつかりながら、人としての筋道を教えていきたい。少年たちのおかげで日々自分も成長させられ、日々感謝して過ごせている。」と話していました。

大人を信じられなくなるような境遇で過ごしたはずの元少年たちの堂々とした姿を見て、私自身も感動しましたが、何より、元少年たちに携わってきた弁護士の先生方や受け入れ先の方には、万感胸に迫るものがあったのではないでしょうか。

少年の立ち直り支援、全面的国選付添人の必要性について、参加者の方々に深く考えるきっかけを与えた大変意義深いパネルディスカッションであったと思います。

6 集会宣言

少年更生を支える各団体の皆様と賛同者一同で「全面的国選付添人の実現を求める集会宣言」を行い、付添人の質の向上及び全ての子どもたちへの支援実現を宣言しました。

7 閉会のご挨拶

最後に、当会の上田英友会長より閉会の挨拶がなされ、盛況のうちにシンポジウムは幕を閉じました。

8 おわりに

本シンポジウムは、他の少年には付添人がいるのに、自分には付添人がおらず適切な支援を受けられない少年の不平等間をなくしたいという想いから、タイトルを「なんで、弁護士ついとらんと?」にしました。

当日は、100名以上の方々にご参加いただき、アンケートにもご協力いただきました。アンケートでは「弁護士の支援の重要性をよく理解できた」、「支援に関わる人・機関の連携の重要性を改めて感じることができた」、「若気の至りで間違っても、長い人生の中で次代を担う市民として健全に育っていく機会をもっと増やしていくべきと考えた」等の意見が大多数でした。少年の不平等感をなくしたいという想いにご賛同いただけたことを喜ばしく思いました。

他方で、制度実現に伴う付添人の質の低下を懸念する意見もあり、付添人としての質の向上に努めることが、制度の早期実現の近道なのかもしれないと感じた次第です。

私自身も「愛は与えっぱなし」という言葉を体現できるよう、付添人として日々邁進して参ります。

最後に、この場をお借りして、携わって下さった各関係機関の皆々様に厚く御礼申し上げます。

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