福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2018年3月号 月報

広報関連委員会だより ~ライジングゼファー福岡とコラボしました!~

月報記事

対外広報委員会委員・対外広報委員会戦略PT委員 南川 克博(67期)

1 はじめに

平成30年1月20日(土)、福岡市民体育館にて、プロバスケットボールリーグBリーグ2部(B2)のライジングゼファー福岡とコラボしたA5サイズカレンダーを1000部配布しました。

弁護士会とBリーグの(おそらく)全国初のコラボについて、僭越ながら、ご報告させていただきます。

2 コラボが実現するまで

これまで当会は、より弁護士会を身近に感じてもらうことを目的として、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスや、Jリーグのアビスパ福岡など、地元のプロスポーツチームとコラボした広報活動(グッズの配布)を行ってまいりました(詳細は月報547号、551号をご参照下さい)。

当会の公式twitterアカウント(@fben2016)でこれらの活動を報告したところ、「ライジングゼファー福岡とも是非コラボしませんか」という連絡(リプライ)をいただきました。その主は、ライジングゼファーの取締役も務められている、当会の八尋光良会員でした。中高バスケ部だった(今は面影ないですが・・・)私は、是非コラボできればと思い、ここからライジングゼファー福岡とのコラボプロジェクトが始動しました。

そして、冒頭にお話したように、チームの選手の写真と、弁護士会のロゴや電話番号、QRコード等が記載されたオリジナルのA5カレンダーを製作し、ホームでの試合の際に配布することとなりました。

3 試合当日

試合開始は18時ですが、熱烈なファン(ブースターといいます)の方は良い席を確保するため15時から入場するとのことでしたので、我々弁護士会有志も15時から配布を行い、無事試合前に目標の1000部を配布することができました。2時間以上立ちっぱなしでの配布でしたが、手に取って喜んでくれるブースターの皆様の様子を見て、(少なくとも私の)疲れは吹き飛びました。ちなみに、配布にご参加いただいた某先生は、年間シートをお持ち(しかも2席!)の熱狂的なブースターで、会場スタッフの方とも気さくにお話をされており、私は憧憬の念を禁じ得ませんでした。ご協力いただいた先生方、本当にありがとうございます!

カレンダー配布については当会の公式twitter(@fben2016)でも事前告知・当日の実況を行っておりましたが、チームの公式twitterでも告知していただいたこともあり、ネット上の反応も上々でした。試合後の報告ツイートに対して、一般のブースターの方から「今日は観戦できなかったけれど、貰った方は嬉しかったと思います。」という連絡をいただき、とても嬉しかったです。

試合も西地区1位の力を見せ、福岡が奈良に快勝しました。

4 さいごに

今後も、対外広報委員会は、地域の皆様にとって弁護士会が身近な存在になるように、様々な形で情報発信を行って参ります。会員の皆様におかれましては、所属される委員会のイベントや情報について、我々がよりよい形での広報のご提案やご協力をさせていただきますので、ぜひ対外広報委員会及び対外広報戦略PTをご活用ください。

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シンポジウム「再生可能エネルギーの可能性(先進事例から考える九州の未来)」報告

月報記事

公害環境委員会委員 中藤 寛(59期)

本年1月20日、九州弁護士連合会及び福岡県弁護士会共催のシンポジウム「再生可能エネルギーの可能性(先進事例から考える九州の未来)」が開催されました。大変興味深い内容でしたので、その概要をご報告いたします。

1 基調報告「九州における再生可能エネルギー普及の取組み」

まず、当会公害環境委員会の埋田昇平先生より、「九州における再生可能エネルギー普及の取組み」について基調報告が行なわれました。

日本の再生可能エネルギーの導入がヨーロッパ諸国に比べて大幅に遅れていること(日本6%、ドイツ24.5%、スペイン26.1%)、国内では都道府県別の再生可能エネルギーの導入比率(水力除く)で大分県が1位であること(40%弱)等が報告されました。

また、再生可能エネルギーについての弁護士会の取組として、福岡県弁護士会館及び北九州部会会館における新電力導入、北九州部会のエコアクション21認証取得などが紹介されました。

2 基調講演「地域が中心となった再生可能エネルギーの普及」

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也様より、「地域が中心となった再生可能エネルギーの普及」と題する基調講演が行われました。主な内容は以下のとおりです。

(1) 再生可能エネルギーへの産業革命規模の大転換(破壊的変化)

デジタル技術の急速な進歩によって銀塩フィルムのカメラが短期間でほぼ100%デジタルカメラに置き換えられたように、世界では、化石(火力)・原子力の既存エネルギーから風力・太陽光などの再生可能エネルギーへの急速な転換(破壊的変化)が起きている。風力・太陽光発電、蓄電の技術革新がIT革命並のスピードで急激に進んでおり、風力・太陽光の発電コストが急速に低下しているからである。

このような急速なコスト低下により、全世界の発電量に占める割合が、風力発電は10年で10倍、太陽光発電は6年半で10倍に増えており、今後、そのスピードはさらに加速することが予測される。実際、現時点においても、世界的に見れば、風力・太陽光による発電量は、いずれも既に原発の発電量を超えている。

(2) 「ベースロード電源」から「フレキシビリティ」へ

風力・太陽光は、発電量が気象の影響を受けるため安定供給が課題とされ、原発や火力などの既存エネルギーが「ベースロード電源」として重視されてきた。しかし、風力・太陽光発電も、気象予報、水力等他の発電による調整、他地域との電力融通、需要側での調整、蓄電池の活用などの柔軟な需給調整(フレキシビリティ)によって、安定供給という課題は解消できる。

(3) 日本の現状

日本では、固定価格買取制度(FIT)により、太陽光発電が普及し、電力小売自由化も実現したが、以下の課題がある。

すなわち、土地利用規制や環境アセスメントがなく、地域参加が優遇されなかったために太陽光発電開発で事業者と地域の対立が深刻化しつつあること、送電線を独占する既存の電力会社が化石・原子力による「ベースロード電源」にこだわり、変動型電源である太陽光・風力発電について送電線への接続を忌避・抑制しつつあり、太陽光・風力の日本における市場が急激に縮小しつつあること、日本の太陽光発電は世界の水準と比較して未だ2~3倍の高コストであることなどである。

日本において再生可能エネルギーをさらに普及させるには、これらの課題の解決が必要であり、特に、送電線を道路と同様に公共財として競争主体から分離する完全な発送電分離、完全にオープンな市場の実現が不可欠である。

(4) 地域からのエネルギー・デモクラシー

既存の発電は大規模・中央独占型であるのに対し、太陽光・風力などの再生可能エネルギーは、必ずしも大規模な設備が必要ではなく、小規模・地域分散型である。いわばエネルギーの地産地消が可能であり、誰もが発電することが可能である。日本でも各地に小規模分散型のエネルギーシステムで自立を目指す「ご当地エネルギー」が次々と誕生している。

このような発電の担い手の広がり、多様さは、「エネルギー・デモクラシー」というべきものである。

3 パネルディスカッション「地域の力でなしうる取り組み」

パネリストを飯田所長、みやまスマートエネルギー株式会社(みやま市)代表取締役の磯部達様、大分県商工労働部工業推進課エネルギー政策班の渡辺康志様、コーディネーターを当会公害環境委員会委員長緒方剛先生として、パネルディスカッションが行われました。

(1) 大分県の施策

まず、渡辺様から、再生可能エネルギー導入比率全国一位の大分県における施策と実績、及び他の都道府県と異なり、太陽光・風力以外にも大分県特有の地域資源を活かした地熱・バイオマス・小水力など多様な発電方式を導入していることが報告されました。このような再生可能エネルギーの普及は、大分県のエコエネルギー導入促進条例を契機としたものであるとのことでした。

これについて、飯田所長より、地方自治体が条例によって再生可能エネルギー導入促進を図ると、それが他の自治体にも広がっていき、さらには国レベルでの施策につながっていくことから、県レベルでの施策が重要であるとの指摘がなされました。

(2) みやまスマートエネルギーの取組み

みやま市は、多くの地方自治体と同様、人口減少・高齢化による活力減退という問題を抱え、また、電気代として市外へ年間約40~50億円が流出していました。そこで、地域資源を活かし、地域で電力を作って地域で売ることで、安定した雇用を生み出すとともに、その収益を地域に還元する(子育て支援など生活支援に充てる)ため、みやま市が筆頭株主となり、地元企業に呼び掛けて、みやまスマートエネルギー株式会社が設立されました。

実績として、出資者に年間8%の配当ができており、また、大分県豊後大野市、同県竹田市などの自治体の再生可能エネルギー導入支援も行なっていることが報告されました。

再生可能エネルギーの課題である需給調整についてコーディネーターより質問がなされましたが、専門家ではない地域住民を雇用して需給調整を行なっているが、特に問題は生じていないとのことでした。

4 最後に

以上のように、コスト低下により、太陽光・風力を初めとする再生可能エネルギーは急速に普及しており、現在、同時進行しているグローバルなエネルギーの大転換は、大規模・集中・独占型から地域分散・ネットワーク型への移行という点に大きな特色があるようです。

飯田所長がこのような大転換を、「パワーエリート」から「民衆のパワー」へ、「核による戦争」「石油を巡る戦争」から「太陽による自立・平等・平和」へ、と表現していたのが非常に印象的でした。

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公金の債権回収業務に関する法務研修(福岡開催)の実施報告 ~行政連携に関する新たな取り組みとして~

月報記事

弁護士業務委員会 福山 聖(64期)

1 はじめに

平成30年1月26日(金)午前10時~午後5時、電気ビル共創館3階A会議室において、総務省行政管理局公共サービス改革推進室と当会が主催、日弁連が共催し、九州全域(沖縄を除く)の自治体職員を対象として、「公金の債権回収業務に関する法務研修」を実施しました。当日は、自治体職員106名、弁護士33名(他会含む)の方に参加いただきました。

公金債権は、強制徴収公債権(地方税等)のみならず、たとえば、母子父子寡婦福祉資金貸付金といった私債権等も含まれます。債権管理にあたっては、費用対効果という「効率性」の観点だけでなく、「公平性」・「平等性」等の観点や福祉的配慮等も考慮する必要があるという特徴も有しています。今回は、そのような債権の管理に関する本研修について、ご報告いたします。

2 研修について
(1) 総務省・各自治体・当会の取組報告等について

午前の部は、作間功会長の開会挨拶に始まり、総務省・福岡県・福岡市・中間市・当会の各公金債権回収業務に関する取組等について報告が行われました。各自治体の取り組みは、それぞれ工夫がなされており、たとえば、色付きの督促状を使用する等、私たちの業務でも参考になるものもありました。

当会の取組報告(報告者:当委員会森山大輔委員長)では、行政との連携メニュー(http://www.fben.jp/gyousei/)、任期付き公務員や当委員会の活動予定等について紹介がありました。

(2) 公金の債権回収に関する法令と実務(前編・後編)について

午後の部前半は、当委員会副委員長・日弁連自治体等連携センター委員の服部博之委員による2時間の講義が行われました。条文や裁判例集、資料を使用した講義は好況で、アンケートでは「全部参考になった」「もっと時間をかけて講義をしてほしかった」等、参加職員の9割以上から「参考になった」という結果をいただきました。

なお、当日の配布資料は、近日中に、総務省のホームページで公開予定ですので、ご覧いただけると幸いです。

(3) 意見交換会について

午後の部後半は、今回のメインイベントである意見交換会を1時間半、2会場に分かれ実施しました。意見交換会は、参加者が18グループに分かれ、各グループ6~8名の自治体職員に対し、弁護士が1~3名担当者として入り、自治体職員と弁護士(会)との間で、公金債権回収に関する自治体職員の日々の悩み等を共有し、交流することで、弁護士(会)との接点をもってもらう機会として実施しました。

参加職員、担当弁護士の双方から、充実した時間であったという感想を伺っており、当委員会では、公金債権管理に関する取り組みを始める良いきっかけになったのではないかと感じております。

3 懇親会について

同日午後5時30分からは、ビストロアトリにおいて、自治体職員の方も交え、懇親会を実施しました。自治体職員の方も14名出席され、研修に引き続き、交流を深める時間となりました。

4 最後に

今回、企画から実施までの約1年間、日弁連自治体等連携センター委員として、本研修を担当し、貴重な経験をさせていただくことができ、心から感謝しております。昨年4月、当委員会で、本研修について報告・提案をさせていただいてから、服部博之委員を研修責任者として、牟田遼介委員と共に本研修PTを組み、事前勉強会等を経て、研修実施に至るまでの間、甲斐田靖副会長、森山大輔委員長、当委員会の先生方、牟田哲朗先生や小野裕樹先生を筆頭とする当委員会外の先生方、他県の先生方、担当事務局の福井さんをはじめ、多くの方に、お力添えをいただきました。

そのお力添えのおかげで、無事に、盛況のうちに、本研修を終えることができました。参加者満足度の高い研修であったことは、アンケート結果からも明らかですが、研修終了後、自治体職員の方々から直接伺った感想や拝見した笑顔を通して、実感することもでき、貴重な体験となりました。

この場をお借りして、準備から実施まで、当方の至らぬ点多々あったことにつき、お詫び申し上げるとともに、多くの方にご協力いただけたこと、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

当委員会では、本研修をきっかけに、新たな取り組みの一つとして、公金債権管理に関する自治体職員向けのメール相談等検討しております。今後も、行政連携の分野においても、弁護士をもっと身近に感じてもらえるように、弁護士を活用してもらえるように、努めてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

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創業支援研修会 ~中小企業診断士・梅山香里さんを講師に招いて~

月報記事

中小企業法律支援センター委員 松村 達紀(65期)

1 創業支援研修会の開催について

中小企業法律支援センターでは、国家戦略の一つでもある創業支援において、各会員が十分な力を発揮することができるよう各種研修会等を企画しており、これらの活動の一環として、平成30年1月29日(月)、中小企業診断士である梅山香里さんを講師にお招きし、「創業支援」をテーマとしてご講演いただきました。

今回の研修会は、1月中旬までに参加申込みが定員に達するなど、会員の関心が非常に高いことが窺われ、当日は雪も散らつく寒空であったにもかかわらず、会場は満員御礼、熱気ある中で始まりました。

2 創業支援について(創業との関わり方)

(1) 講演会は、主として、(1)中小企業診断士の業務内容の紹介、(2)創業と創業支援に関する動向の紹介・分析、(3)創業支援の実例の紹介の3本立てで行われました。

中小企業診断士の業務内容の紹介においては、まず始めに、中小企業診断士の資格概要を説明いただきました。その後、中小企業診断士として、中小企業の経営に関するアドバイスを行う中で、弁護士・公認会計士・税理士・弁理士・社労士等の各専門家への橋渡し的な役割を果たしていることや、これらの役割を円滑に行うために、各専門家との連携を進めていることの紹介がありました。

また、平成29年に福岡県中小企業診断士協会が中小企業診断士養成機関に登録されたことにより、中小企業診断士試験第1次試験に合格し、この養成課程を修了すれば、第2次試験を省略して中小企業診断士としての登録が可能となったことが紹介されました(これまでは養成機関が九州になかったため、養成課程を経るためには東京等のその他の地域に行くほかなかったそうです。)。

(2) 創業と創業支援に関する動向の紹介・分析においては、我が国における開廃業の現状や男女別・年代別の起業家数等の説明がなされました。また、他国と比較して開業率が低い理由の分析として、創業に当たってのハードル(障害)等の説明がなされ、あわせて創業者が直面しやすいリーガルリスクの紹介がなされました。

【創業におけるリーガルリスク】
  • HPリース契約によるトラブル
  • 契約書不備に起因するトラブル
  • 知的財産権に関する諸問題
  • 融資、経営者保証に関する諸問題
  • 共同創業者とのトラブル(安易な協業)
  • 労務管理に関する諸問題
  • 情報管理、情報漏えい
  • 廃業に関する諸問題

開業率の分析にあたっては、起業に関する相談相手がいないことが問題である点が指摘されましたが、その場で使用された統計データにおいては、相談相手として(税理士・公認会計士は挙げられている一方)そもそも弁護士は挙げられておらず、ビジネス構築段階における相談である以上、多少役割が異なる点はあるのかもしれませんが、残念ながら、現時点において、弁護士は十分な関与ができていないことを痛感いたしました。また、リーガルリスクの紹介においては、会員にとっては当たり前・自明なリスクであったとしても、創業者にとってはそうでないことも多数あり、創業段階から弁護士が関与し、サポートすることの重要性を改めて実感いたしました。

(3) 最後に、創業支援の実例の紹介においては、創業相談として、相談を持ち込まれることの多いテーマの説明がなされるとともに、相談実例をもとに、具体的にどのような事項をヒアリングし、アドバイスしていくのか、簡単に実例紹介がなされました。事業展開を検討することで見えてくるリーガルリスクもあることから、弁護士においても、ビジネスモデルや経済情勢等にアンテナを張っておく必要があると感じました。

3 おわりに

今回の研修は、18時から20時までの2時間だったのですが、初めから終わりまで終始各会員が熱心に臨んでおり、冒頭にも記載いたしましたが、「創業」に対する関心の高さを改めて感じました。

また、「創業」と一言で表現されたとしても、ビジネスの中身は様々であり、また、創業者ごとに準備のレベル(状況)やリスクの程度は、大きく異なるものと思います。国家的に「創業」が盛り上がっている中、トラブル等により失敗に陥る創業者を防ぎ、より多くの創業の成功への一助となるためにも、当センターとしては、各専門家との連携を深めつつ、早期の段階で創業にタッチし、多くの創業者のサポートを行えるよう、活動を続けてまいりたいと考えております。

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あさかぜ基金だより ~あさかぜを卒業します~

月報記事

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士 若林 毅(68期)

3月から対馬へ

あさかぜの弁護士は、およそ2年の養成を終えたあと、九弁連管内の弁護士過疎地域で弁護士として活動することとなります。私が入所してから3名の先輩弁護士が養成を終え、弁護士過疎地域で活躍されていますが、いよいよ私もあさかぜから巣立つこととなりました。2月末であさかぜでの養成を終え、3月から長崎県の対馬ひまわり基金法律事務所の後任所長として弁護士過疎地域での活動をはじめます。任期は2年の予定です。

あさかぜでの日々

およそ2年間の養成期間は、あっという間に過ぎていきました。私が公設事務所の中でもあさかぜに入所を希望したのは、多くの経験豊富な先輩弁護士と一緒に事件を担当でき、事務所経営も学べ、弁護士として大きく飛躍ができる環境にあると思ったからです。

実際にあさかぜ基金では、数多くの民事・家事・刑事の事件を、多くの先輩弁護士と共同受任でき、およそ2年の養成期間でたくさんの得がたい経験を積むことができました。特に、少年や両親に対する医師によるカウンセリングの設定、両親以外の親族の協力、学校や仕事先との調整など、指導担当の先輩弁護士と環境調整に尽力し再抗告まで争った少年事件や、外国人の子の引渡し事件などが印象に残っています。また、あさかぜでは、扶助事件の相談・受任、当番弁護士の出動・受任、国選弁護、破産申立事件など公設事務所で必ず求められる事件を数多く経験することができました。さらに、あさかぜ委員会を通じて、キャッシュフローデータを意識した事務所経営、事件処理(相談の受け方、受任率の向上、依頼者とのトラブル防止など)、ホームページ等の広報、事務職員の労務管理などについても学びました。これらの経験は、弁護士過疎地域である対馬における活動にも必ず役立つものと思います。

対馬ひまわり

対馬ひまわり基金法律事務所は2005年10月に開設された公設事務所です。井口夏貴弁護士、伊藤拓弁護士、青木一愛弁護士に続き、あさかぜで養成を受けた弁護士が4代連続で所長として活動することとなり、私で6代目の所長となります。島には、ひまわり基金の弁護士1名のほかに、法テラスのスタッフ弁護士1名が常駐しています。

離島である対馬においては、九州本土と異なり、島内に身近に相談できる弁護士がいなければ、法的ニーズを広く汲み取ることが難しくなります。また、島内だけで生活圏が完結しているため、人と人とのつながりが濃密で人の目を気にして弁護士への法律相談を控えてしまう人も多いと思われます。そうした離島特有の事情を少しでも改善し、島の身近な弁護士として法の支配を広く根づかせる手助けをしたいと思い、対馬を希望しました。弁護士へのアクセスの問題は、歴代の所長が築いてきた行政や福祉とのつながりをより密にすることや、各種の講演や広報活動等を通じて、事務所の存在を広く知ってもらい、気軽に相談できるように工夫することで解消していきたいと思います。

対馬の魅力

対馬は面積の9割が山林を占める自然豊かな島です。国の天然記念物に指定されている原始林や、リアス式海岸など勇壮な自然が広がっています。また、国の天然記念物であるツシマヤマネコや、渡り鳥など動植物もたくさん生息しています。人口はおよそ3万人。福岡からは飛行機で35分(1日4往復)、高速船で2時間強(1日2往復)で行くことができます。島の北端から韓国の釜山まではおよそ50キロしか離れていません。朝鮮半島に近い地理的条件から、古くから大陸と日本を結ぶ中継地として朝鮮半島との交流が盛んに行われていたため、書物・仏像・建造物・古墳などの文化財が多く残されています。また、砲台跡が島に31カ所もあり、対馬が古くから国境の島であったことを想起させます。青く澄んだ海の景色とともに、シーカヤックや釣りを楽しむこともできます。

対馬に来られたときは、ぜひ事務所にお立ち寄りください。

むすびに

私は、あさかぜを卒業しますが、これからはあさかぜや福岡県弁護士会で経験したことを活かして、対馬の人々のために力を尽くします。あさかぜ所員の弁護士は、弁護士過疎問題解消への思いを抱きながら、日々研鑽を積んでいます。引き続き、ご支援ご協力をいただきますよう、よろしくお願いします。

最後に、あさかぜ委員会をはじめとする会員の皆様方にはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

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