福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2018年2月号 月報

弁護士知財ネット 九州・沖縄地域会主催 知的財産を活用した高付加価値農林水産物の開発と展開セミナー(第2回)~農林水産知財の横断的解説と活用例の分析~@福岡

月報記事

弁護士知財ネット九州沖縄地域会事務局 網谷 拓(63期)

平成29年12月20日、弁護士知財ネット九州沖縄地域会主催、知的財産を活用した高付加価値農林水産物の開発と展開セミナーを、特別後援をいただいた株式会社NCBリサーチ&コンサルティング様のセミナールームにて開催しました。

当日は、約50名の方にご参加いただきました。

司会は松本幸太先生が務め、まず、弁護士知財ネット九州沖縄地域会幹事の柴田耕太郎先生から挨拶がありました。

その後、基調講演として、九州経済産業局地域経済部知的財産室室長の横田之俊様から「農水知財制度の解説」を、沖縄で活躍されている弁理士の大久保秀人先生から「農水知財取得・活用の実務」を、有限会社緑の農園専務取締役の早瀬憲一様から「農水知財活用企業の実例報告「つまんでご卵®」」を、それぞれお話しいただきました。

横田様からは、農林水産分野においても知的財産が関係すること、このことを踏まえ、知的財産を意識した取り組みが重要であることをご説明いただきました。

また、知的財産に関係したトラブル事例の紹介とトラブル対策として、どのような措置を講じるべきか、また、国として、どのような支援を行っているかについて、説明、紹介をいただきました。

次に大久保先生からは、商標法による権利保護、種苗法による権利保護の違い、それぞれの権利取得までに要する時間が異なるために生じる問題等について解説いただきました(「商標追い越し問題」等。農林水産省でも重要論点として解説しておりますので、気になる方は農林水産省のHPをご参照ください。)。

また、平成27年6月1日から施行された特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)に基づく地理的表示保護制度(GI)についての説明もいただきました。

大久保先生は、GIの登録申請をサポートするGIサポートデスクのアドバイザーを務めており、実務家として、日々の業務の中で感じる問題点について聞けて勉強になりました。

早瀬様からは、つまんでご卵のこれまでの歴史(「早瀬さんの美味しい卵」から「つまんでご卵」になるまでの歴史)、どのようにして卵を生産しているのかについて、お話いただきました。つまんでご卵は、「にわとりの幸せ」を追求した飼育方法で生産されているそうです。

一度、糸島に行かれる際は、つまんでご卵直売店に行かれてみてはいかがでしょうか。

その後、弁護士知財ネット九州・沖縄地域会幹事である田中雅敏先生をモデレーターとして、基調講演にてお話しいただいた方々で、パネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、活発な議論がなされました。例えば、海外進出を念頭に、どこの国に進出するのか、どこの国で、どの程度権利を取得し、ブランドを保護するのか、ブランド戦略について意見交換がなされました。

また、他方で、権利取得を目指すよりも、営業秘密として情報を秘匿しておくべきではないかといった議論もなされました。

この議論にて、農林水産事業について、いずれ海外進出を念頭に事業を行う必要があること、その進出にあたり、国も、弁理士、弁護士等の専門家も支援していくこと、その体制を整えていかなければならないことが確認されました(と私は感じました)。

来年度も、このような機会を提供できればと思いました。

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