福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2018年1月号 月報

中小企業法律支援センターだより 創業応援セミナー~創業時のお金のハナシ~

月報記事

中小企業法律支援センター副委員長 牧 智浩(61期)

1 はじめに

みなさま、明けましておめでとうございます。新年最初のセンターだよりですので、少し夢のあるハナシ(=創業支援のハナシ)をしようと思います。

昨年の11月10日に、「創業応援セミナー~創業時のお金のハナシ~」を、福岡市スタートアップカフェにて、九州北部税理士会、日本政策金融公庫、福岡県信用保証協会と共催しました。この4機関でセミナーを共催することは初の試みであり、企画会議を重ね、最終的に、4機関で共催することによる相乗効果を最大限に引き出すために、講演、パネルディスカッション、交流会・相談会の3部構成でセミナーを開催いたしました。

2 第1部(講演)について

まず、最初に、「創業時の資金調達のポイント」というタイトルのもと、日本政策金融公庫福岡ビジネスサポートプラザ所長の高橋秀彰氏と福岡県信用保証協会保証統括部創業・経営支援統括課課長代理の馬場健氏に金融機関の立場から見る資金調達のポイントについてご講演いただきました。

高橋氏によれば、創業計画書の作成における留意点は、(1)簡潔に読みやすく記載すること、(2)具体的に記載すること、(3)自分の強みをアピールすること、(4)事業意欲を伝える重要な書類であることから丁寧に書くこととのことでした。また、創業計画書を第三者(弁護士、税理士、金融機関)に確認してもらい、何度もブラッシュアップしてほしいとのことでした。

また、馬場氏からは、創業時の融資審査の際には、(1)経験・ノウハウ・意欲があるか、(2)事業計画が過度な計画になっていないか、(3)自己資金が十分か、また、その形成過程に問題がないかをチェックしているとのお話がありました。

参加者の大半がメモを取るなどして真剣に講演を聴いており、参加者の資金調達に対する関心度の高さを感じました。

3 第2部(パネルディスカッション)について

次に、「専門家に聞く!これだけは知っておきたい創業のイロハ」というテーマでパネルディスカッションを行いました。高橋氏、馬場氏に加え、九州北部税理士会所属の寺井博志税理士、当会の日隈将人弁護士がパネラーとして登壇しました。

パネルディスカッションでは、まず、第1部の講演内容の掘り下げを行いました。寺井税理士や日隈弁護士からの突っ込んだ質問に対し、高橋氏や馬場氏が、はぐらかすことなく真正面からこれに回答していたため、他では聞くことのできない創業時の融資審査の実態を垣間見ることができました。

なお、寺井税理士、日隈弁護士からの質問の一部をご紹介すると、「初年度赤字の損益計画書でも大丈夫なのか?」、「創業計画あるいは事業計画に士業が関与している場合、融資審査の際の信頼度が上がるのか?」、「法人と個人とで融資の受けやすさに違いがあるという噂は本当か?」といったものでした。

他方、高橋氏や馬場氏からは、弁護士や税理士の創業時の支援活動の内容、弁護士や税理士へのアクセス方法などについて質問がありました。

日隈弁護士が、無用な法的トラブルを避けることの重要性を概説したうえで、契約書やビジネスモデルに対するリーガルチェックなど具体的な支援活動を複数紹介しました。参加者や金融機関を含む関係者各位に、我々弁護士の創業支援活動を知っていただくいい機会になったと思います。

セミナー後に回収したアンケートの回答結果をみると、パネルディスカッションに対する満足度が非常に高く、4機関共催によるシナジーを最大限に引き出せたのではないかなぁ、と思いました。

4 第3部(交流会・相談会)について

セミナーを開催した会場で、そのまま参加者と登壇者との交流会を、同刻に別会場で相談会を開催しました。

交流会場では、各登壇者のところに参加者が集まり、色々と個別に話を聞いているようで、各所で盛り上がっていました。

また、相談会場では、相談ブースを5つ設け、合計10件のご相談をお受けいたしました。相談会では、4機関がそれぞれ個別のブースを設けるのではなく、各ブースに日本公庫、保証協会、税理士、弁護士が同席して相談を受ける形をとりました。

守秘義務等の関係からブースの設置をどのようにすべきかについては悩みましたが、4機関で共催することによる相乗効果を最大限に発揮するため、上記のような形で行いました。

なお、相談の内容については、当初の予想どおり、ほとんどが融資に関するご相談でした(苦笑)。私も1枠担当させていただいたのですが、事業計画についての相談がメインでした。もっとも、その相談をお受けする中で、事業計画に潜在する法的リスクについて簡単にご説明したところ、非常に喜んでいただけました。

また、別のブースでは、パネルディスカッションを聞いて、契約書に関するご質問をされた相談者もあったようです。

個人的には、相談会も成功だったと思いますが、1枠の時間が30分しかないため、4機関が同席しても、各機関から十分な説明ができなかった部分もあったのではないかと思います。これは次回への反省としたいと思います。

5 最後に

当初、参加人数がどれくらい集まるか不安であった創業応援セミナーも、約40名(関係者を除く)の参加者があり、盛況のうちに終わることができました。

本セミナーを開催するにあたっては、多くの方にご協力いただきました。

特に、釜山地方弁護士会との交流会当日という非常にお忙しい時であったにも関わらず開会のご挨拶をいただきました作間功会長、執行部との橋渡しにご尽力いただいた内田敬子副会長、広報面での多大な援護射撃をしていただいた対外広報戦略PTの吉田純二先生、南川克博先生には、この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

当センターでは、今後も、創業支援を含む法的支援を通じて、中小企業事業者の方たちに、弁護士をより身近に感じてもらえるように努めたいと思います。みなさま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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