福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2017年6月 1日

「転ばぬ先の杖」(第31回)「熊本地震災害女性電話相談」はじまりました!

転ばぬ先の杖

両性の平等に関する委員会 郷田 真樹(53期)

本年4月13日から、「熊本地震災害女性電話相談」がはじまりました。

この相談は、熊本地震にあわれた女性の方から、DV・セクシュアルハラスメント・性暴力・ストーカーなどの女性の権利に関することについて、弁護士が、無料でご相談をお受けするというものです(通話料のみご本人負担)。

本年9月28日まで、毎週木曜日(8月17日は除く)、午後1時~午後3時30分までの受付で 電話番号は 080−6423−9697です。

ご相談は、福岡県弁護士会の弁護士がお受けしますが、必要に応じて熊本県内の弁護士に引き継ぐこともできます。秘密は厳守しますし、匿名でのご相談も可能です。直接的な災害相談ではなく、災害・復興時にこうした問題に直面したということでお電話をいただいてかまいません。

大災害時には、DV・性暴力などの問題が、増加しやすいと言われています。

その理由としては、(1)経済的・身体的・権力的な格差が増大しやすいこと(たとえば避難所運営等で力を持つ者持たない者の格差が生まれやすいなど)、(2)避難生活などの中で個々人の弱点が外に対して晒され可視化されてしまうこと(「守るべき男性」がそばにいないシングル女性だ、親がいない一人暮らしの学生だ等が丸見えになるなど)、(3)被害者が被害を訴えにくいこと(「みんなが大変なのに個人的な相談はしにくい」、「私の被害よりもっと大変な人がいる」、「強い人に逆らったら非常時に生活できない」、「支援者が被害に遭っても、大変な目に遭った被災者を責めるべきではない」などと思ってしまう、相談しようとしても相談先が機能していないなど)、(4)加害行為が目撃されても「大変だから仕方がない」と大目に見られる場合もあること、(5)皆が強いストレス状態にありストレスが弱者に向かいやすいこと等、様々なことが考えられます。

そのため、日本政府は、災害時に性に基づく暴力や搾取が起こること、その防止が必要であること、被害者のニーズを考慮した支援や保護、ケアが必要であることなどを明記した、「自然災害におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント」という決議案を、第56回国連女性の地位委員会(2012年3月)に提出し、この決議はコンセンサス方式により採択をされています。

熊本地震においても、事情は同じと考えます。もちろん、実際の被害は無いに越したことはなく、可能な限り、被害が少なくありますようにと願ってやみません。

他方で、不幸にして問題が発生してしまった場合であったとしても、今からでもかまわないので、人に相談をし、話をしてみることで、出来事や自分の気持ちを振り返り、整理し、もしも必要があれば適切に専門家とつながり、自分らしい日々の生活へとつなげていくことができるかもしれません。

また、こうした相談窓口が存在していること自体で、災害時であっても、DV・セクシュアルハラスメント・性暴力・ストーカーなどの女性の権利の侵害は問題であり、人に相談をしていい事柄で、災害時だからという理由で許されてよいことではない、という意識が広まり、結果としてそれが、熊本の、あるいは将来の、新しい被害の抑止になればと願っています。

私達福岡県弁護士会が、単位会の枠を超えて、熊本地域の皆様のお役に立てれば、こんなに嬉しいことはありません。

ぜひ、たくさんの方達に、「熊本地震災害女性電話相談」の存在を知っていただけますと幸いです。また、本稿をお読みいただいた皆様に、熊本地域の方達ないしは熊本から避難をされている方達へ、情報を広めていただけますと、本当にありがたいです。

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