福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2017年5月 1日

憲法リレーエッセイ 飯塚市長選挙奮戦記

憲法リレーエッセイ

会員 小宮 学(37期)

1 はじめに

私は、2月19日告示、2月26日投開票の飯塚市長選挙に立候補した。

突然、前市長と前副市長の賭けマージャン事件が昨年12月22日付西日本新聞1面で報道され、年末には飯塚市政治倫理審査会が設置されることが報道された。

あれよあれよという間に、前市長と前副市長は、1月11日に1月31日付で辞職することを記者会見し、今回の飯塚市長選挙となった。

立候補の理由や公職選挙法について感じたことを簡単に紹介させていただきます。

2 飯塚市長選挙立候補表明

(1) 前市長と前副市長の賭けマージャン事件の報道以来、私は、漠然とではあるが、「飯塚市政は不透明であり、おかしいのではないか。」と思っていた。

前市長と前副市長の賭けマージャンは、元市幹部が経営するマージャン店「浜」で繰り返されていたこと、本年4月から飯塚市の指定管理者となる事業者が参加していたことが報道されていた。

現飯塚市長(前教育長)は、1月20日、教育長の辞任届けを提出し、その直後に飯塚市長選挙に立候補することを表明した。

(2) 1月21日付西日本新聞には、現飯塚市長(前教育長)について、「自ら明らかにした市長との賭けマージャンとともに、有権者がどう判断するかは未知数だ。」と報道されていた。

私は、「自ら明らかにした市長との賭けマージャン」とは、いったい何のことだと思って、ただちに他の新聞記事を調べた。

(3) 1月21日付毎日新聞には、「2010年の教育長就任以降7、8回ほど食事代などを賭けてマージャンをやったことを明かし『多くの人から出馬を促されたが、私が出馬できるか悩んだ』と述べた。前教育長によると前市長、前副市長とも2、3回一緒にマージャンをしたが、業者と同席したことや平日の日中にやったことは『ない』と否定」とあった。

(4) なんのことはない。現飯塚市長(前教育長)は、前市長、前副市長を交えて2回ほど、食事代や場所代を賭ける形で賭けマージャンをしていたのだ。

前市長、前副市長と同じ穴のむじなではないか。マージャンは4人いなければできない。現飯塚市長(前教育長)は、いったい誰と賭けマージャンをしていたのか。私は、現飯塚市長(前教育長)には、飯塚市長になる資格はないと思った。

突如、私は、賭けマージャン問題の真相を解明したく、1月28日に立候補の記者会見をした。無所属で立候補することを表明した。

3 私の戦略

私は、筑豊じん肺訴訟の原告弁護団事務局長を務めた。

初代弁護団長松本洋一(平成3年10月21日死亡)は、弁護団会議で、常々、「闘いは勢いである、小さくても勢いがある方が勝つ。」と言っていた。

筑豊じん肺訴訟は、提訴から最高裁判所の勝利判決まで18年4カ月もかかってしまったが、たった169名の炭鉱夫じん肺患者が国、三井鉱山(現・日本コークス工業)、三菱マテリアル、住友石炭鉱業(現・住石HD)、古河機械金属、日鉄鉱業に勝った。

故松本洋一の言葉を胸に、全力で闘った。

自民党以外の全政党から支持を得たく、推薦依頼文を発送した。自民党に推薦依頼を求めなかったのは、私が立候補の記者会見をした日に自民党が現飯塚市長(前教育長)の推薦決定をしていたためだ。結局は、日本共産党だけが私の推薦決定をした。

無党派層から支持を得たく、(1)賭けマージャン問題の真相解明、(2)市4役の資産公開制度の強化・創設、(3)11年前の合併後に廃止されたコミュニティバスの復活強化、(4)保育所待機児童の解消、(5)小・中学校のエアコンの設置、(6)白旗山メガソーラー乱開発ストップなどの政策を一生懸命訴えた。

告示後の1週間は、宣伝カーの上に立ち、毎日約20回、政策を訴えた。

3人の候補者の中で、宣伝カーの上に立ち、政策を訴えたのは私だけだ。

全国から約200人の弁護士仲間が、推薦文をくれた。毎日、弁護士仲間が応援弁論にやって来た。

4 敗北

私は、敗北した。現飯塚市長(前教育長)が26,320票、O候補が10,609票、私が8,553票だった。

2月27日付朝日新聞は、私の敗戦の弁を、「精一杯やった。私の意見は市民に届いた。今後に必ずつながる。新しい飯塚の出発点になる。」と報じた。

敗北した当初は、たった8,553票だと思ったが、「地盤、看板、鞄」がない私が、よく8,553票も取ったものだと今は思っている。

5 公職選挙法との闘い
(1) 飯塚警察署からの電話による注意

飯塚警察署刑事課知能犯係から数回電話による注意があった。

1回は、私がたまたま選挙事務所にいたので、電話対応した。告示前の2月15日(水)午前9時頃に電話がかかってきた。

公職選挙法143条17項には、「立札及び看板の類は、縦150センチメートル、横40センチメートルを超えないものであり、かつ、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の定めるところの表示をしたものでなければならない。」とある。

私は、同日、午前7時30分から柏の森交差点でハンドマイクを使って、「小宮まなぶ」とだけ書いた横断幕を掲げて、政策を訴えた。

告示前なので、「飯塚市長選挙」とは言ってはいけないし、書いてもいけない。「候補者」とも言ってはいけないし、書いてもいけない。

告示前に、ハンドマイクを使って、街頭で政策を訴えたのは、3候補者の中で私だけだ。

飯塚警察署刑事課知能犯係が言うには、この横断幕が縦150センチメートル、横40センチメートルを超えていたという。

私は、思わず電話口で、「お前は、憲法21条を知らないのか。」と怒鳴りたくなるのを、我慢して、「はい。はい。」と言った。

(2) その他

その他、公職選挙法との闘いは山ほどある。今の公職選挙法は、新人は選挙にでるなと言っているに等しい。

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