福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2017年5月号 月報

連載/高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説 最終回/福岡県弁護士会の高齢者・障がい者分野における取り組み

月報記事

高齢者・障害者等委員会委員 大町 佳子(62期)

今回をもちまして、高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説~の連載を終了いたします。そこで、最後に、福岡県弁護士会の高齢者・障がい者の権利擁護に向けた取り組みを紹介したいと思います。

1 高齢者・障害者法律相談

福岡部会では、あいゆう相談として、無料電話相談を実施しています。無料電話相談には、電話をかけると天神センターで待機している弁護士が直接に対応するもの(毎週火曜・金曜の午後1時~4時)、天神センターの職員が受付をして担当弁護士から折り返すもの(平日の午前10時~4時)があります。相談は、高齢者・障がい者からの相談のみならず、その家族や支援者(施設等)からの相談も受け付けています。

無料電話相談では、相談担当弁護士が面談相談の必要性について判断し、面談相談が必要で、かつ、相談者が希望する場合は、面談担当弁護士へと相談を引き継ぎます。

その場合、面談相談が実施されることになりますが、面談相談には担当弁護士の事務所への来所相談と出張相談(高齢等の事情で担当弁護士の事務所への来所が困難な方のみ)があります。なお、出張相談は、法テラスの民事法律扶助制度の無料法律相談の資力要件を満たすか否かを問わず初回は無料となっています。これらの相談については、登録研修(登録継続研修を含む)を実施したうえで、登録要件を満たした弁護士に相談を担当してもらっています。

筑後部会では、毎週木曜日の午後1時から午後4時まで、「高齢者障害者無料電話相談」を実施しています。高齢者、障がい者ご本人のみならず、御家族、福祉関係の支援者等も対象にして、高齢者、障害者に関わることであれば相談内容を問わずに電話相談を行っています。

北九州部会では、弁護士会(あいゆう)の無料電話相談等は行っていません。ただし、北九州市と連携しており、北九州市各区役所で、1か月に1回、「高齢者・障害者あんしん法律相談」を実施しています。これにより高齢者・障がい者関係の法的問題を抱えている市民の方は、無料で弁護士による法律相談を受けることができるようになっています。

2 高齢者障がい者虐待対応チーム

福岡県弁護士会は、公益社団法人福岡県社会福祉士会と協力して、高齢者や障がい者の虐待事案について、市町村の活動・施策をサポートするために、各市町村との契約に基づいて、各市町村からの要請に対して、ケース会議へ弁護士と社会福祉士をペアで派遣しています。なお、各市町村へ派遣する弁護士と社会福祉士については、登録研修を受講してもらったうえで、高齢者障がい者虐待対応チームに登録してもらっています。

3 あいゆう研修

毎年、福祉職などの、弁護士以外の方も参加可能な形で、高齢者障がい者の福祉業務の専門家や弁護士による講義形式の研修を開催しています。昨年は、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律や、成年後見制度における本人の意思決定支援について研修をしました。

4 高齢者・障がい者の消費者被害研修への講師派遣

福岡部会では、消費者委員会と協力して、高齢者・障がい者の消費者被害を防止すべく、研修会に講師派遣をしています。この研修会は、福岡市の地域包括支援センターの管轄区域を対象にしており、その区域の民生委員やケアマネージャーが研修を受けられています。研修会の内容は、消費者被害の実態や防止方法、成年後見制度の説明などです。

5 成年後見人等候補者推薦制度

福岡部会では、福岡家庭裁判所本庁と協力し、家庭裁判所が弁護士を後見人等として選任する際の候補者名簿を作成し、候補者を推薦しています。

6 その他

その他、福岡県弁護士会では、福岡市医師会とのパートナーシップに基づく勉強会などを実施しており、高齢者・障がい者の特性の理解や、社会的制度の在り方について相互に理解を深めたうえでの連携を目指しています。

また、福岡部会では、法テラス福岡の弁護士ナビゲーションに対して相談担当弁護士の名簿を提供しています。さらに、福岡部会では、地域包括支援センターとの連携を目指して、地域包括支援センターでの法律相談を実施すべく、福岡市との調整を図っているところです。

北九州部会では、北九州市や行橋市で、包括支援センター等の職員に対する法律相談を実施しています。

筑後部会では、筑後地区の各自治体の高齢者、障害者関係部署、社会福祉協議会等と「筑後地区高齢者・障害者支援連絡協議会」を組織し、3か月に1回の頻度で各自治体の担当職員等との事例検討会に高齢者・障害者委員会所属の弁護士が参加して、実際の事例に基づいて対応方法等を検討しています。

7 最後に

これまで、この連載をお読みいただきありがとうございました。これからも、高齢者・障がい者の権利擁護に対するご理解とご支援・ご協力をいただきますよう、何卒、よろしくお願い申し上げます。

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