福岡県弁護士会コラム(弁護士会blog)

2017年3月 1日

憲法リレーエッセイ 南スーダンの現状

憲法リレーエッセイ

会員 池上 遊(63期)

1 はじめに

2015年9月成立、2016年3月施行の安保法制法により、国際平和協力法が改正され、PKOに派遣される自衛隊は新たに駆け付け警護、共同宿営地防護といった任務の実施が可能となりました。現在、わが国は、アフリカの南スーダンへPKO部隊を派遣していますが、2016年12月に派遣された部隊から上記任務が与えられています。

遠い南スーダンで日本が果たすべき役割があるのか、現地の情勢がどうなっているのか、などに関心があり、現地で支援活動に従事する今井高樹さん(日本国際ボランティアセンター・スーダン現地代表)が1月22日に北九州でされた講演を聴いてきましたので簡単に紹介させていただきます。

2 南スーダンの現状

1956年にスーダン共和国がイギリスから独立、2度の内戦を経て2011年に同国から南スーダン共和国が独立しました。国連がPKO部隊(南スーダンミッション、UNMISS)の派遣を決定したのも同年です。そのわずか2年後の2013年、当時の副大統領をはじめとする一派がクーデターを起こして再び紛争が始まりました。今井さんは現状を「日本の戦国時代のよう」と評し、共存してきた二つの部族が南スーダン独立時に一旦はまとまったものの、財政や石油収入、国際支援で入ってくるお金をどのファミリーが使うかなど利権をめぐって大統領派、副大統領派の対立が生まれたと解説してくれました。軍隊は存在しますが、出身部族との関係でまとまりがなく今も内戦につながるおそれがあるそうです。ただ、今井さんの友人で南スーダンの方は、部族対立は結果であり、利害関係が軍の部族間対立を煽ったと言っているとのことでした。

2015年8月には、関係当事者が「南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書」に署名します(「外圧」によるものとのこと。)が、2016年7月に再度対立が激化し、現在は大統領派と副大統領派の間で再び紛争状態となっています。

自衛隊宿営地のあるジュバ(首都)でもヘリやロケット砲による攻撃が繰り返される一方、市場や国連食糧倉庫の襲撃、略奪(政府軍による略奪も含む。)もあり、これが国の軍隊かと思ったそうです。現在、市街地は比較的平穏だそうですが、警察が法令違反と言って市民を恐喝したり、入国管理局でも多額のお金を要求されるなど職権濫用が当たり前になっているようです。悪質なのが軍隊で、兵士による略奪やレイプを許しているという信じられない状況だそうです。インフレは700~800%、10年前には1ドルが2ポンドでしたが、今は100ポンドとなっているそうです。国連による支援が十分に行き届いていないことから、今井さんのグループは、人道支援として食料支援や教育支援に取り組んでいます。

3 南スーダンPKOと自衛隊

PKO部隊に対しては、2016年7月の紛争激化の際に市民が救助を求めたのに駆けつけなかったことなど助けを求めても何もしてくれないという批判が多いそうです。ホテルなどの施設を政府軍が襲撃しており、派遣すると政府との紛争になってしまうことから派遣できなかったようです。また、南スーダン政府も国連の避難民保護施設について反政府軍を匿っている、と批判しています。

駆け付け警護は現地の了解が必要で、南スーダンの現状では非現実的な任務です。自衛隊の任務は幹線道路建設の警護などですが、もし何かあっても戦闘の当事者が分からない、その結果同意を得ることもできない、誤って攻撃すれば敵とみなされることにつながります。

日本に対しては自動車メーカー「TOYOTA」の製品の質がいい、経済的先進国のイメージが強いようです。しかし、こうしたイメージも現地で何が起きるかで一転するでしょう。「駆けつけ警護」は必要ない。反政府勢力を含めバラバラになっている現状ではあらゆる勢力が集まって和平交渉を進める必要があり、非軍事的、外交分野にこそ日本の役目があると今井さんは話していました。

4 感想

南スーダンにはレベル4・退避勧告が発されています(外務省HP)。本原稿を書いている現在、報道によれば、2016年7月の紛争激化について破棄されたと政府が説明してきた自衛隊の報告書が「発見」され、同報告書に政府が否定する「戦闘」が起きていたとの記述があることが問題となっています。

紛争状態の現地に重装備の自衛隊を派遣してどんな支援ができるのか。日本が国際協調主義のもとで培ってきた信頼を失わないように本来の役割を果たすべきではないでしょうか。

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