福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2016年12月号 月報

あさかぜ基金だより

月報記事

会員 今井 洋(64期)

はじめに

あさかぜ基金法律事務所から、司法過疎地である長崎県壱岐市の法テラス壱岐法律事務所に赴任し、平成28年10月をもって、3年間の勤務を終えました。

あさかぜでは、九弁連の皆様に様々なご支援やご指導を頂き、司法過疎地での勤務を終えることができたのはその賜物と思っております。御礼を兼ねて、壱岐の実情等をご報告させて頂きます。

壱岐市のご紹介

長崎県壱岐市は、壱岐島全域がそのまま市であり、人口は2万8千人ほどです。長崎県ですが、福岡市との関係が非常に深く、福岡には、壱岐の人口を超える数の壱岐出身者やその家族がいるそうです。

島外との交通は、博多港へ高速船及びフェリーが1日10往復、唐津港へフェリーが1日5往復している他、長崎大村空港へ飛行機が1日2往復しています。

島内の公共交通機関は、バスのみですが、本数が少なく、普段の足として使うのは困難なため、ほとんどの人が自家用車で移動します。

高度経済成長期には、漁業や海運業、土木事業などを中心に活気があったようですが、現在は、どこもあまり景気が良くなく、地元紙などでは、民間の平均収入は、公務員の半分以下と言われています。

司法過疎地での業務

壱岐市は、司法過疎地とされており、当然ながら、弁護士は少なく、私以外にはひまわり基金法律事務所の弁護士が1名いるだけでした。

業務について誰かに聞きたいことがあっても、すぐに相談できる環境ではありませんが、法テラスの電話相談のほか、あさかぜ時代にお世話になった福岡の経験豊富な先生方に電話やメールで相談することができ、弁護士として勉強できるとともに、精神的にも助けられました。

弁護士業務は、幅広いうえ、最近でこそ、マニュアル本も多く出るようになりましたが、まだまだ経験が物を言うことが多いと感じます。マニュアルにない実務的な知識や、知識に留まらない意識などを教えていただけ、大変助かりました。

また、なかなか他の弁護士と話をする機会もないなか、業務で福岡や長崎市に行くと、大変温かく接して下さり、孤独感が癒やされました。

事件傾向等

あさかぜでは、指導担当の先生方と共同受任させていただく他は、自分で法律相談等で受任した債務整理や離婚などの家事事件といった扶助事件が多くを占めていました。

壱岐でも、多くは同様の扶助事件で、あさかぜでの経験が生きたと思います。

また、数は少ないですが、賃貸借や遺産分割、保全といった事件や、成年後見や破産管財、相続財産管理人といった裁判所案件もありましたが、あさかぜで指導担当の先生方と共同受任させていただいた経験が活かせました。

振り返ってみると、あさかぜで経験したことは、そのまま司法過疎地の業務に役立つものだったと思います。

ただ、数年前までは、弁護士事務所の存在を広めつつ、過払い等の債務整理が業務の中心でしたが、ここ数年は、債務整理事件の占める割合が、非常に低下しました。その代わり、家事事件の占める割合が多くなり、全国的な傾向と同じです。

おわりに

壱岐での相談者には、九弁連の先生方が行っていた法律相談センターで相談したという方や先代の先生方らに相談したという方もいました。

先達の先生方が続けてこられた過疎地対策で、弁護士への信頼を培ってこられたからこそ、私も壱岐の方から多くの相談を受けることができたのだと思います。

また、壱岐は、土地柄が素晴らしく、魚介は言うに及ばず、壱岐牛あり、温泉あり、弥生時代の王都であった原の辻遺跡もあり、皆様も一度来ていただければ日々の疲れが癒されることは間違いありません。

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