福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2016年9月号 月報

「実務に役立つLGBT連続講座」第1回/LGBTってなに?

月報記事

両性の平等委員会・LGBT小委員会 郷田 真樹(53期)

「LGBT」という単語を見聞きすることが増えた昨今。「LGBTって何?」とか、「情報が多すぎて何を知っておくべきかわからない」とかお考えの方もいらっしゃるかと思います。そこで、両性の平等委員会・LGBT小委員会から、「実務に役立つLGBT連続講座」を連載させていただきたいと思います。毎月1回LGBT、どうぞよろしくお願いいたします。

早速ですが、オリンピック選手の性別判定方法の変遷をご存知でしょうか。その人が「男性」なのか「女性」なのかは、身体的外見・DNA・ホルモンなどの何れで決まるものでしょうか。性別は当然に明らかなもののように思われがちですが、このように、極めて曖昧かつグレーゾーンを多く含む概念でもあります(答えは文末)。

こうした身体的な性別のほかにも、性自認(自分で自分の性をどう捉えるか。)、性的指向(恋愛や性愛の対象となる性が何か。「嗜好」ではありません。)が異性か同性か両性かなど、私達の性のありかたは多様です。

このうち、LGBTとは、女性同性愛者(Lesbian)、男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexual)、性同一性障害含む性別越境者(Transgender)などの頭文字をとった略語です。なお、本来はLGBTという枠囲いは不可能ですし、望ましくもないため、国連や国会では「SOGI(性的指向と性自認。Sexual Orientation and Gender Identity)と表現されています(本連続講座では、わかりやすさを優先して、当面はLGBTとして表記をします)。

このLGBTについて、まず知っておくべきことは何でしょう。

第一に、レズ、ホモ等の略称や、オカマ、オネエといった単語は当事者以外の人が使うと蔑称であり不適切です。呼称が必要な場面では、「レズビアン」、「ゲイ」などと正式名称で呼びましょう。

LGBTと言われる人たちは、少なくとも7.6%はいる等と報告されています。「佐藤 +鈴木+高橋+田中」の名字の人達とほぼ同じ割合です。つまり、弁護士本人や会館ないし各事務所の職員、裁判所や検察庁の人たちにも、当然LGBTの方たちはいらっしゃいます。相談者・依頼者・プライベートの友人知人も、もちろんそうです。ただし、長年の社会の不寛容さや差別意識などから、多くの人が自分の個性を隠したまま不自由な生活をしている現実もあります。日頃から、そうしたことを前提にした言動ができるよう意識してみましょう。

「男性」「女性」が、一括りの同じ人の集まりではないように、LGBTのあり方もそれぞれです。誰かが性自認や性的指向について何かを語ったとしても、「Lだね」、「それはTと言うんだ」等と勝手にネーミングやカテゴリー分けをする必要はありませんし、それは不適切です。ご本人の個性をそのまま受け入れたうえで、もしも何か調整を要することがあれば、お互いの気持ちや都合について、誠実に話し合ってみましょう。

LGBTの人たちが、その個性をカミングアウトするか否かは、本人の自由です。無理にカミングアウトを勧める必要は全くありません。本人の承諾なくそうしたことを話題にすることも不適切です。

他方で、本人がカミングアウトしたい時にそれができない環境は、他者の個性を認めない不寛容な環境であり、望ましくありません。LGBT以外の人も生活のしづらさを感じている可能性が高く、労働効率も悪いと推測されます。

急速に進むLGBTに関する議論は、私達が、自分のなかの固定観念に縛られず、目の前にいるその人を、ただその人らしく受け入れられるかどうかという試金石のように思えます。(次号に続く)

クイズの答え:ホルモン(テストテトロン)。DNAだけでは簡単に判別できないケースが存在するため。

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