福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2014年12月号 月報

裁判ウォッチングのご報告

月報記事

法教育委員会委員 楠 木 玲(65期)

平成26年10月14日から20日まで、福岡地方裁判所において、「裁判ウォッチング」が実施されました。私は、14日の午後の部を担当しましたので、当日の様子について、ご報告致します。

まず、弁護士会館3階に集合後、参加者の方々に、裁判に関する簡単な説明のDVDを観ていただきます。
その後、3班に分かれてもらい、引率担当の各弁護士から、これから傍聴する事件についての簡単な説明と、傍聴に関する注意事項を伝えて、法廷へ向かいました。
私は、小学生のお母様方の集まり6名の担当でした。裁判傍聴の経験がある方はお一人だけでしたが、皆さま、裁判に興味津々の様子です。

当初、裁判員裁判事件を傍聴する予定でしたが、ちょうど休廷中であったため、急遽、他の事件を傍聴することになりました。
そこで、まず、民事裁判の弁論手続を傍聴しました。この裁判は、貸金請求事件で、被告側に代理人がついていない本人訴訟であり、分割払いの具体的な内容を決めていく内容でしたので、参加者の方にとってもわかりやすいものだったと思います。

次に、刑事裁判の傍聴に移りました。
途中から入った一件目の事件では、証人が遠方に住んでいて出頭が難しいため、期日外で所在尋問を行うこととなり、その調整についてのやりとりが行われていました。私自身、修習中を含め、このようなやりとりを見たのが初めてでしたので、とても参考になりました。
裁判ウォッチングのときは、他の先生方の裁判を堂々と(?)傍聴することができるので、引率担当者にとっても、法廷技術を学ぶことができる非常に良い機会だと思っております。

続けて、同じ法廷に入り、覚せい剤事件について、結審まで一連の手続を見ることができました。
傍聴の後、次の事件まで少し時間があったので、それまで見た事件について、私から簡単に説明をしました。
参加者の方々の一言目の感想は、「裁判は思っていたより分かりやすい」というもので、少し意外に感じました。その後、次々とご質問を頂きました。
例えば、裁判官が丁寧に被告人質問をされていたのを見て、「裁判官はじっくり書類を読んで裁判に臨まれるんですか」という質問があったので、起訴状一本主義の説明をしたところ、裁判官は事前に証拠を一切見ていない、ということに非常に驚かれていました。
しかし、その直後に、「そういえば、途中で検察官が書類を渡してましたよね。あれが証拠ですか。」という鋭い質問が来たり、「証拠の甲(号証)と乙(号証)とは、どう違うんですか。」という、あまり聞かれないだろうと思っていた質問が来たりしました。参加者の方は、どの方も非常に興味を持って傍聴してくださっており、細かいところまでよく見られているなぁと感心しました。
その後も、裁判員制度や量刑に関する質問から、検察官・弁護士の仕事だけでなく、書記官の仕事に関する質問まで、途切れることなく、たくさんのご質問を頂きました。

充実した裁判傍聴の後、弁護士会館に戻り、参加者の方々にアンケートを書いていただいて、解散となりました。
私が担当した参加者の中には、「一人で傍聴に来ても構わないんですか」と聞かれる方もおり、裁判に興味を持ってもらえて、とても嬉しく感じました。
今後も、たくさんの方に裁判ウォッチングに参加していただき、裁判に興味を持ってもらえれば幸いです。

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