福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2014年2月号 月報

あさかぜ基金だより ~いぶすきだより~

月報記事

会 員 城 石 恵 理(63期)

ご無沙汰しております。私は、弁護士登録から1年9ヶ月余り弁護士法人あさかぜ基金法律事務所に所属した後、平成24年10月に鹿児島県指宿市の法テラス指宿法律事務所に赴任しました。今回紙面をいただき、指宿の様子を簡単にご報告したいと思います。

1 指宿市は、地図で見て鹿児島県左側、薩摩半島の南端に位置し、市内に指宿簡易裁判所・鹿児島家庭裁判所指宿出張所がある、人口4万3231人(平成25年12月1日現在、以下同じ)の都市です。事務所から車で約1時間のところにある鹿児島地方・家庭裁判所知覧支部の管内であり、南九州市(中心部に知覧町があり、そこに裁判所があります。人口3万7205人)・南さつま市(人口3万6598人)・枕崎市(人口2万2685人)との計4市が同裁判所管轄地域となります。
同管内の常駐弁護士数は私を含めて3名、その他に非常駐の鹿児島市内の法律事務所の支所と、任期付公務員の弁護士がいます。指宿市内には他に弁護士がいないため、一般事件の相談・受任をすることができ、最近では、受任事件の約半分ほどが家事事件です。週に数件相談があり、弁護士としての経験不足を補うため、あさかぜで見聞した様々な先輩弁護士の法的考え方や依頼者との接し方を折に触れて思い出し、参考にさせていただいています。
同管内の刑事事件は、福岡と比較してかなり少なく、かつ鹿児島市内の弁護士が多数国選名簿に登録しているため、実は来鹿してからまだ1件も刑事国選・当番は経験していません。事務所の一般相談で、示談金の額についての相談を受けたり、在宅の窃盗事件の示談について依頼を受けることは数回あり、国選・当番対象外の事件等につき地域の法律事務所として補完的な役割を果たすニーズがあると考えています。

2 枕崎市・南さつま市までは、車で約1時間半はかかり、そこから相談に来所されたり、出張相談で出かけることもあります。同管内の4市のうち、枕崎市を除く3市は鹿児島市に隣接していますが、鹿児島市内までは遠い、高齢で行けないなど難色を示す相談者もおり、司法サービスへのアクセスが困難な地域・相談者層があることを実感します。司法過疎の完全な解消には、もう少し管内の弁護士数増加が必要であると感じることもあります。一方で、所得水準や裁判所等への距離など、これまで司法過疎となってきた理由の一端は明らかであり、難しい問題です。
また、独居高齢者の認知症等が原因の近隣トラブル相談や、高齢化した親の相続に関する相談など、当事者の判断能力に疑問を持たざるを得ない類型の相談もあり、受任には大変気を使います。離婚訴訟や相続など、未経験の相談や手続きも多く、赴任当初から現在まで、あさかぜ時代の指導担当弁護士や先輩弁護士にメールや電話をして助言をいただくこともたびたびあり、非常に心強く、ありがたく思っています。
私自身、鹿児島は初めてなのですが、あさかぜ時代の九州沖縄の協議会や開所式等に参加したり、あさかぜ委員会自体で他県の先輩弁護士と顔を合わせる機会があったことで、赴任する際も各地への親近感という点でも違いがあり、九弁連で養成した弁護士を九州・沖縄の各地へ赴任させるというあさかぜの理念は、地域への愛着という点でも意味のあることだと感じています。

3 南薩地域は、日本百名山の一つである開聞岳や錦江湾、桜島など、裁判所の行き帰りに素晴らしい景色を目にすることができます。砂蒸し温泉や新鮮な食べ物、町ごとに異なる焼酎も楽しめます。当初は恐る恐るだった車の運転にも慣れ、気分転換にドライブをすることも多いです。
しかしながら、司法サービスという点に目を移すと、司法過疎ならではの問題があり、養成を受けて赴任をするという制度も現時点ではまだ必要なものではないかと思います。特に、九州で養成されること、また多くの先輩弁護士に関わっていただくことが、赴任後、実務上も心理的にも非常に助けになると感じています。九州・沖縄の司法過疎が解消するまで、これからもあさかぜで弁護士を養成し赴任していくことは、決して無駄ではないと思いますので、今後とも、あさかぜ基金法律事務所をどうぞよろしくお願い致します。また、南薩地域の事件がございましたら、是非ご紹介ください。

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